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分析室2

ここでは、フーガの技法の自筆譜を分析します。
個々の曲の構造に関する分析は分析室1にゆずり、
自筆譜と出版譜を比較して、相違点をまとめます。

フーガの技法のバッハ自筆の楽譜帳には、
12曲のフーガと2曲のカノンが含まれます。
それらは以下の表のように2曲ずつ対を成して並んでいます。
 I IIや、XXIのように、拍子や小節数まで似ている対もあります。
ただし2曲のカノンの位置だけは、転倒が起きているようにも思われます。

赤字のタイトルをクリックすると各曲の説明を表示します。
番号
拍子
声部数
小節数
 様 式
 I
4/2
4
37
 単純フーガ
II
4/2
4
35
III
4/2
4
39
 (付点リズムによる変形主題)
IV
2/2
4
90
V
4/4
4
65
 2主題によるフーガ
VI
4/4
4
49
VII
4/4
4
79
 反行・縮小(拡大)フーガ
VIII
4/4
4
61
IX
9/16
2
103
 カノン
X
2/4
3
188
 3主題によるフーガ
XI
2/4
4
184
XII
4/4
2
44
 カノン
XIII
4/3
4
56
/56
 転回対位法によるフーガ
XIV
2/4
3
71
/71
XV
4/4
2
55
 XIIの改作

1740年代後半に、バッハはフーガの技法の出版を企画しましたが、
その際、曲の順序を変えたり、新たな曲を加えたりと、
様々な変更を行いました。個々の曲についても、延長したり
拍子を変えたりと手を加えています。さらには新たに作曲された作品の
原稿の一部が自筆譜に付け加えられたりしています。下の表には、
自筆譜と出版譜との曲の対応や、曲の変更点をまとめています。

赤字のタイトルをクリックすると各曲の説明を表示します。
番号
拍子
声部数
様式
小節数
出版譜のタイトル 変更等
 I
4/2
4
単純
37
Contrapunctus 1 4/2→2/2
小節数2倍
4小節延長
II
4/2
4
単純
35
Contrapunctus 3 4/2→2/2
小節数2倍
6小節延長
III
4/2
4
単純
39
Contrapunctus 2 4/2→2/2
小節数2倍
2小節延長
IV
2/2
4
反行
90
Contrapunctus 5
V
4/4
4
2主題
12度の
2重対位
65
Contrapunctus 9 a 4
alla Duodecima
音価2倍
小節数2倍
VI
4/4
4
2主題
10度の
2重対位
49
Contrapunctus 10 a 4
alla Decima
/Contrap. a 4
音価2倍
小節数2倍
22小節延長
VII
4/4
4
反行
縮小
79
Contrapunctus 6 a 4
in Stylo Francese
VIII
4/4
4
反行
拡大
縮小
61
Contrapunctus 7 a 4
per Augment et Diminut
IX
9/16
2
8度カノン
103
Canon alla Ottava
X
2/4
3
3主題
188
Contrapunctus 8 a 3 2/4→2/2
音価2倍
XI
2/4
4
反行
3主題
184
Contrapunctus 11 a 4 2/4→2/2
音価2倍
XII
4/4
2
8度カノン
反行
拡大
44
(→XV 改作
XIII
3/4
4
転回対位
56
/56
Contrapunctus inversus 12 a 4
/Contrapunctus inversus a 4
3/4→3/2
音価2倍
XIV
2/4
3
反行
転回対位
71
/71
Contrapunctus a 3
/Contrapunctus inversus a 3
2/4→4/4
音価2倍
XV
4/4
2
8度カノン
反行
拡大
55
Canon per Augmentationem
in Contrario Motu
(XIIを改作)
4/4→2/2
音価2倍
小節数2倍
Motu)※1
2/2
2
8度カノン
反行
拡大
109
Canon per Augmentationem
in Contrario Motu
(XVを修正)
Clav.)※2
2/4
(4)
反行
転回対位
71
/71
Fuga a 2 Clav.
/Alio modo Fuga a 2 Clav.
(XIVの編
曲)
※2
4/4
4
3主題
239<
Fuga a 3 Soggetti 新規追加
未完成※3
4/4
4
反行
拡大
26<
Choral.
Wenn wir in hoechsten Noethen
Canto Fermo in Canto
新規追加
※1 出版譜のCanon per Augmentationem in Contrario Motuの版下原稿です。
※2 出版譜に含まれる曲の草稿で、タイトルはありません。個別に綴じられています。
※3 この草稿における最後の7小節が、出版譜ではカットされています。
※4 病床のバッハが口述筆記させたといわれる曲で、おそらくフーガの技法とは無関係です。

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