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Choral.
Vor deinen Thron tret ich
BWV668、オルガンコラール、ト長調、4声部、4/4拍子


晩年のバッハが、病床で口述筆記させたといわれている作品です。
未完成に終わった「フーガの技法」に、穴埋めとして加えられました。
こちらで曲の分析を行っていますのでご参照ください。)
従来、いわゆる「18のコラール編曲」(BWV651-668)のうちの1曲と
みなされてきましたが、今日では疑問視されています。

「トリオソナタ」(BWV525-530)や「カノン風変奏曲」(BWV769a)などとともに
手稿譜で伝えられており、そのうち「18のコラール編曲」や「カノン風変奏曲」は
記入時期が「フーガの技法」の作曲〜出版準備の時期と重なっています。
BWV668は、当然ながらバッハの手によって記入されたものではありません。
またあいにく、この曲の後半を記したページは、現在失われています。

「フーガの技法」の印刷譜には、完成された曲が掲載されているのですが、
両者を比較すると、手稿譜のほうがより発展していることがわかります。
例えば7小節では、以下の青い音符の部分に違いが見られます。



このほかにも手稿譜には付点が追加された音符がいくつか見られます。
この変更がバッハの意図によるものだとすれば、
この手稿譜以前に初期段階の原稿が存在し、
それが「フーガの技法」に掲載されたのかもしれません。

それにしても病床のバッハは、なぜ「フーガの技法」の完成よりも
このオルガンコラールの完成を優先したのでしょう。
もしかしたら、「フーガの技法」はすでに完成していたのでしょうか?

なおBWV668は、「オルガン小曲集」に含まれるBWV641に
基づいていると考えられています。参考までにご紹介します。


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