主題一覧 概要一覧 分析室1 分析室2 トップページ

Canon per Augmentationem in Contrario Motu
反行形による拡大カノン、2声部、2/2拍子、109小節


これまでの曲はすべてフーガ様式で書かれていましたが、
この曲と続く3曲は、後続声部が先行声部を常に模倣し続ける
カノン様式で書かれており、タイトルも"Canon"で始まっています。

(主題)

曲はカノン様式となってはいますが、冒頭には
装飾変形した基本主題が示されています。


装飾された主題の骨格を青い音符で示しました。

後続声部は反行形で、かつ音の長さが2倍に拡大されています。



後述のとおり、これらの主題は曲の後半の開始部分にも示されます。

(曲の構造)

2声部の曲で、大きく前半、後半に分かれており、
後半は前半の繰り返しですが、8度の2重対位法によって
上下の声部が入れ替えられています。



曲の構造を以下の表に示します。

小節
内容
小節数
前半
1-52
上声部が先行するカノン
52
後半
53-104
下声部が先行するカノン
(前半の上下声部を入れ替え)
52
コーダ
105-109
上声部に主題呈示
5

なおこちらにも示したように、バッハは当初
この曲のタイトルを以下のようにしていました。

"Canon per Augmentationem in Contrapunto all ottava"
「8度の2重対位法による拡大カノン」

このことは、バッハがこの曲を10度12度のカノンと
並列で扱っていたことを示していると考えられます。

(曲の詳細)

先述のとおり曲の冒頭に変形された基本主題が示されます。
これを追う下声部は反行・拡大形となっています。
この5小節〜の下声部を、Contrapunctus7のような反行形の応答と
同様と考えれば、この曲は拡大・反行フーガとも言えます。



上の楽譜に示した A、A' は、2小節のモチーフを反復しています。
このA、A'を反行・拡大形で模倣する下声部に対して、
上声部には更に4小節のモチーフB、B'が示されます。



このB、B'も下声部において反行・拡大形で模倣されますが、
これに対する上声部はそれぞれ独自の旋律となっています。



下声部が上声部の24小節までを模倣したところで前半が終了し、
後半は8度の2重対位法で上下声部が入れ替わります。



内容としては前半をそのまま反復しているだけですので、
後半の詳細は省略します。

曲の最後では再び上声部に主題を示し、コーダとしています。



主題一覧 概要一覧 分析室1 分析室2 トップページ