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Canon alla Duodecima in Contrapunto alla Quinta
12度のカノン、2声部、2/2拍子、78小節


(主題)

カノン様式の曲ですが、曲の冒頭には変形された基本主題が示されます。
基本主題の音価を2倍にし、装飾変形したものです。


装飾された主題の骨格を青い音符で示しました。

後述のとおり、この変形主題は曲の後半にも示されます。

(曲の構造)

2声部の曲で、大きく前半・後半に分かれており、
後半は前半の繰り返しですが、12度の2重対位法によって
上下の声部が入れ替えられています。



12度の2重対位法はContrapunctus9でも駆使されていますが、
この曲では主題だけでなく曲全体にも適用されているのです。

曲の構造を以下の表に示します。
なお下記の曲の詳細にも示すように、この曲には
9-75小節をリピートするよう記号がつけられています。

小節
内容
小節数
前半
1-33
下声部が先行するカノン
33
後半
34-67
上声部が先行するカノン
(前半の上下声部を入れ替え)
34
コーダ
68-78
下声部に主題呈示、Finale
11

印刷譜においてリピート記号が用いられているのは、
この曲と8度のカノンの2曲だけです。

(曲の詳細)

先述のとおり、曲の冒頭に変形された基本主題が示されます。
主題はまず下声部に示され、9小節から上声部に12度上で模倣されます。
主題が12度上、すなわち実質5度上で模倣されていることから、
この曲はカノンでありながらフーガとみなすこともできます。
「音楽の捧げ物」でいうところのFuga Canonicaです。



9-16小節の下声部に示された旋律は曲中で対主題のように扱われ、
このあと常に主題に伴って示されていきます。
以下説明の中では、便宜上この旋律を対主題と呼ぶことにします。

17-24小節の上声部には、この対主題が模倣されますが、
このうち19-20小節の旋律が27-28小節の下声部に再び示されています。
27-28小節の上声部には19-20小節の下声部の旋律が模倣されており、
結果、上下声部が入れ替わる形となっていますが、
一方の旋律は15度下がり、もう一方は12度上がっています。


個々に半音上げ下げされている音符もあります。

実は、ここですでに12度の2重対位法が用いられているのです。

34小節から後半が始まり、前半で示された上下声部が
12度の2重対位法によって入れ替えられます。
34小節の上声部は d"、42小節の下声部は d で始まっており、
曲の後半は15度(実質8度)のカノンになっています。



曲の前半では冒頭の主題に対旋律がありませんでしたが、
後半では34-41小節の主題に先述の対主題が伴っています。
ただし対主題の34-36小節は一部変形されています。
続く42-49小節の下声部の主題には、前半同様対主題が伴いますが、
34-41小節と42-49小節の主題・対主題を比較すると、
主題は同じ主調なのに、対主題は12度差となっています。


青い音符で示した旋律が、37小節は b、45小節は f" で始まっています。

これもまた12度の2重対位法によって入れ替えられているのです。
このように曲全体の2重対位法以外に、主題とその対旋律にも
2重対位法を使用するという手法は、10度のカノンにおいても
一部の主題で行われていましたが、この曲ではより徹底されています。

68小節から下声部に再び主調の主題が示されますが、
この時の上声部には、34-41小節の下声部とほぼ同じ形に
変形された対主題が、12度上に移して示されています。


青い音符で示した旋律が、34小節は d、45小節は a' で始まっています。

曲は75小節からリピート記号で9小節に戻りますが、
68-75小節と9-16小節を比較すると、今度は対主題が15度下に、
主題が12度上に移された形になっています。


青い音符の旋律はそれぞれ f"、f で始まっていますが、
黒い音符の旋律(主題の途中)は、71小節が d、12小節が a' で始まっています。

75小節までを繰り返した後、曲はFinaleと記された終結部に達します。
74-75小節と76-77小節とを比較すると、更にここでも
上下声部の入れ替えが行われていることがわかります。


青い音符で示した旋律が、74小節は a'、76小節は d で始まっています。

最後まで12度の2重対位法にこだわり続けた名人芸的作品です。


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