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Contrapunctus 7 a 4 per Augment et Diminut
拡大形、縮小形を伴う反行フーガ、4声部、4/4拍子、61小節


曲のタイトル Augment(-ationem) et Diminut(-ionem) は、
文字通り拡大・縮小を意味し、この曲の主題の特徴を現しています。

(主題)

基本主題をContrapunctus5同様に変形して主題としていますが、
曲の冒頭に示されるのは、音の長さを半分に縮めた主題です。



この主題に続いて反行形の応答が示されますが、
こちらは音の長さが基本主題と同じです。



さらに5小節〜には、音の長さを2倍に伸ばした主題が登場します。



Contrapunctus6と同様に、基本主題と同じ長さの主題を「原形」、
半分の主題を「縮小形」、2倍の主題を「拡大形」と呼びます。
Contrapunctus7では、この長さの違う3つの主題が、
それぞれ正置形と反行形で示されるため、
計6種類の主題が、一曲の中に混在することになります。

なお、Contrapunctus6の原形の主題は、末尾の8部音符に
付点が付いていますが、Contrapunctus7の主題には付いていません。

(曲の構造)

拡大形の主題は、曲中で各声部に1回ずつ示されており、
それが曲の骨格を成しているものと思われます。
曲の構造を以下の表にまとめます。

 内  容
小節
小節数
備 考
第1部分
バスに拡大・反行形(5小節〜)
1-19
19
第2部分
テノールに拡大・正置形(23小節〜)
全声部に縮小形
20-34
15
原形なし
第3部分
アルトに拡大・反行形(35小節〜)
全声部に縮小形
35-49
15
第4部分
ソプラノに拡大・正置形(50小節〜)
コーダ
50-61
12
原形なし

なお、バスには原形の主題が1回も呈示されません。

(曲の詳細)

上記のとおり、曲冒頭のテノールに縮小形の主題が示され、
これに重なって2小節〜のソプラノに原形の応答が続きます。
さらに続けて、3小節〜のアルトに縮小形の主題が示され、
5小節〜のバスにおける拡大形の応答を導きます。
ただしアルトの主題とバスの応答は、どちらも主音に始まる反行形で、
一般的なフーガの規則にはまったく当てはまりません。
以下の楽譜には、主題を青い音符で示しました。



バスの拡大形の主題上には縮小形の主題が立て続けに示され、
曲の冒頭12小節の間に、断片も含めて7つもの主題が登場します。
(6小節のテノールに縮小形の主題の断片が見られます。)

14小節〜のアルトと20小節〜のバスには奇妙な主題が見られます。
14小節〜のアルトの原形の主題は4番目以降の3つの音が短く、
20小節〜のバスの縮小形の主題は6・7番目の音が長くなっています。



こうした主題の部分的伸縮は、Frescobaldi,G.(1583-1643)などの
後期ルネサンスの作曲家の作品にしばしば見られます。

曲中には明瞭なゼクエンツはほとんどなく、33小節にのみ見られます。
ここで用いられているモチーフはContrapunctus3にも見られたものです。
ほかの曲のゼクエンツもそうですが、用いられているモチーフが
しばしば前後の流れに違和感なくつなぎ合わせられているのが、
「フーガの技法」のゼクエンツに見られる大きな特徴といえます。



曲中に示される4つの拡大形の主題のうち、
3つは縮小形の主題とだけストレットをなしています。
つまり、原形と拡大形のストレットが見られるのは1回だけです。



そして、3種類の主題が同時に重なり合うことはありません。

56小節からソプラノに1声部追加され、曲は5声部で終了します。



こうした曲の末尾における声部数の増加は、
Contrapunctus5611の各曲にも見られます。

(その他)

Contrapunctus7の演奏の仕方について、こちらをご参照ください。


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