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Contrapunctus 5
単一主題による反行フーガ、4声部、4/4拍子、90小節


(主題)

Contrapunctus1に示された基本主題が付点音符で装飾され、
第3音(f)を軸とした反行形で用いられます。
この装飾された主題は、Contrapunctus6710にも用いられています。



曲冒頭の主題への応答は、さらにその反行形
(基本主題と同じ向き)となります。



Contrapunctus5には、この正置形と反行形の2種類の主題が、
調性的な変形も交えながら示されていきます。

(曲の構造)

この曲に示される主題は、すべてストレットになっており、
単独で示される主題はひとつもありません。
さらに主題は4つずつグループをなしており(コーダを除いて)、
同じグループの主題は同じ間隔でのストレットとなっています。
曲の構造を以下の表にまとめます。

ストレットの主題同士の間隔(カッコ内は詳細)
小節
小節数
第1部分 3小節(4つの主題が順次同じ間隔で示される)
1-16
16
第2部分 3小節(4つの主題が順次同じ間隔で示される)
17-32
16
第3部分 1/2小節(4つの主題が2つずつストレットをなす)
33-46
14
第4部分 1と1/2小節(4つの主題が2つずつストレットをなす)
47-68
22
第5部分 1小節(4つの主題が2つずつストレットをなす)
69-85
22
(コーダ、2つの主題が同時に示される)
86-90

なお曲中に示される主題は、部分ごとに
様々なパターンで正置形と反行形が対応しています。
参考までに曲中の主題の向きを以下の表にまとめます。

主題の向き(呈示される声部)
小節
第1部分
正(アルト)→反(バス)→反(ソプラノ)→正(テノール)
1-16
第2部分
正(ソプラノ)→反(テノール)→正(バス)→反(アルト)
17-32
第3部分
反(バス)→正(ソプラノ)、正(テノール)→反(アルト)
33-46
第4部分
正(バス)→正(テノール)、反(ソプラノ)→反(アルト)
47-68
第5部分
正(ソプラノ)→正(テノール)、反(テノール)→反(アルト)
69-85
正(バス)+反(アルト)
86-90
※表中の「正」は正置形、「反」は反行形を示す。
※正置形はこの曲の冒頭に示された形を指す。

(曲の詳細)

曲の冒頭から示されたアルトの主題の4小節目に、
バスの応答が続きます。明確な対主題は曲を通じて見られません。



この主題・応答のどちらも主調の範囲に収まっていますが、
主題と応答で主音と属音が入れ替わるというルールは守っています。
しかし、続くソプラノの主題とテノールの応答は、
どちらも主音で始まっており、一般的なフーガの規則から外れています。
以下の楽譜には、その主題と応答を青い音符で示しました。



どちらの主題も、曲冒頭のアルトの主題に対する応答として
示されたのであれば説明のつく形となっているのです。

29小節〜には、Contrapunctus36にも見られるような、
奇数拍のゼクエンツが示されます。
下の楽譜には、ゼクエンツの反復を青い点線で示しました。



曲中には、これ以外にもモチーフの反復や模倣はありますが、
ゼクエンツと呼べるほど明瞭なものは、これ以外には見られません。

先に曲の構造において示したように、33小節以降、
主題は4種類のタイミングでのストレットを見せます。
1/2小節(33小節〜、41小節〜)、1と1/2小節(47小節〜、57小節〜)、
1小節(69小節〜、77小節〜)、同時(86小節〜)の4種類です。



86小節〜の主題については後ほど説明します。

53小節〜および65小節〜には、主題の断片による、
4声部にわたるストレットが見られます。
下の楽譜には、各声部が見分けやすいように、
アルトとバスを青い音符で示しました。



65小節〜は53小節〜の反行形になっています。

86小節〜のコーダには、主題の正置形と反行形が同時に現れます。
下の楽譜のアルトUとバスUに見られる主題(青い音符)がそうです。
これにつけられているソプラノTとテノールの対位も、
主題にあわせて反行風になっています。



曲は86小節から2声部追加され、6声部で締めくくられています。
(86小節で途切れたアルトTは、88小節〜のソプラノUに引き継がれます)
こうした曲の末尾における声部数の増加は、
Contrapunctus6711や自筆譜のTなどにも見られます。

その他

出版譜のタイトル Contrapunctur5 は、明らかに誤りです。

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