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Fuga a 3 Soggetti
3主題によるフーガ、4声部、4/4拍子、233(239)小節で中断


3つの主題を持つフーガですが、
そのすべてがこの曲独自の新たな主題です。
「フーガの技法」に含まれるフーガとしては唯一
基本主題が使われていない曲です。

また他のフーガが"Contrapunctus"(対位)と題されているのに対し、
この曲と2台の鍵盤用編曲の2曲だけは
"Fuga"(フーガ)と題されています。

(主題)

曲の冒頭にはシンメトリックな音列からなる第1主題が示されます。


音列が3小節目の f を中心に左右対称になっています。

この主題を基本主題の変形と見る方もいるようですが、
フーガの技法のほかの曲を見る限り、おそらくバッハは
このように主題の骨格が変わるような変形は行わないと思われます。

21小節からは第1主題の反行形も示されます。



114小節からは8分音符を主体とした活発な第2主題が示されます。
第3音(f)から始まる主題は、バッハのフーガの主題としては珍しいです。



147小節からは、第1主題と第2主題が結合されます。



193小節からは第3主題として、b-a-c-h(シ♭-ラ-ド-シ)の音列、
すなわちバッハの名を示す音列による主題が示されます。
第6音(b)から始まる主題も、他にあまり例がありません。



213小節からは第3主題の反行形も示されます。


主題末尾の16分音符は省略されています。

233小節からは、これまで示された3つの主題が結合されます。


第2主題は頭に一音追加されています。

3つの主題が初めて結合されたところで、自筆譜は中断されています。
出版譜にはこの3主題の結合部分が含まれていません。
(このページの上の演奏では3主題の結合を含めています。
この部分を省いた演奏は第3部分のページで聞くことが出来ます。)

(曲の構造)

曲は和声的終止形で区切られた3つの部分からなります。
各部の詳細については、表の赤字をクリックして下さい。

 内  容
小節
小節数
第1部分
第1主題の呈示
1-113
113
第2部分
第2主題の呈示
114-146
79
第1・第2主題の結合
147-192
第3部分
第3主題の呈示
193-232
41<
(47<)
(3主題の結合)
(233-)

この曲同様3つの主題を持つContrapunctus811と比較すると、
同じ3重フーガでも、バッハは各主題の呈示や結合の順序に、
曲ごと異なった様々な工夫を凝らしていることがわかります。

(その他)

この曲の80-81小節のアルトには、ソプラノの第1主題に伴って
基本主題に類似した音形が見られます。
また80-83小節のテノールには第3主題に類似の音形もあります。



このアルトの音形が基本主題を意識したものであるなら、
この曲が「フーガの技法」の一員である証拠となるのですが、
その真偽は定かではありません。

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