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Fuga a 2 Clav.

/Alio modo Fuga a 2 Clav.

転回対位法による単一主題の反行フーガ、3(4)声部、4/4拍子、各71小節


この曲は、転回対位法による3声の反行フーガに自由な声部を追加し、
2台の鍵盤楽器で演奏するように編曲したものです。
出版譜において、他の曲の編曲となっているのはこの曲だけであり、
また鍵盤楽器用であることが明記されているのもこの曲だけです。
("Fuga a 2 Clav."=2台の鍵盤楽器によるフーガ)


上4段が原形、下4段が転回形の編曲です。
出版譜において、この編曲には3連符の「3」が書かれていません。

Contrapunctus (inversus) a 3 と実質同じ曲ですが、
編曲の元になっているのは Contrapunctus a 3 ではなく、
自筆譜 XIV の初期段階です。詳細はこちらをご覧ください。
このため、この編曲と Contrapunctus a 3 とには、
拍子や音価をはじめ、様々な相違点があります。
上のBGMは、この相違や譜面の不完全さがわかるように、
あえて譜面に記されたとおりに演奏しています。

作品の内容としては Contrapunctus a 3 とほぼ同じですので、
曲の分析については Contrapunctus a 3 をご覧下さい。

出版譜の中で"Fuga"(フーガ)と題されているのは、
この曲と、続く未完の3重フーガの2曲だけです。
1751年にエマヌエル・バッハによって出された出版譜の広告においては、
この編曲は曲集の最後に置かれた「フーガ」として、
未完フーガとあわせて紹介されています。
(K.W.Ramler, "Critische Nachrichten aus dem Reiche der Gelehrsamkeit" に掲載)

この編曲の版下原稿は作曲者本人によるものではなく、
また印刷に用いる銅版もバッハの死後に作成されたと考えられており、
バッハがこの編曲を曲集に含めるつもりだったのかどうか、
研究者によって意見が分かれています。
もし含めるつもりがあったとすれば、少なくともバッハは、
拍子や音価をはじめとして、この編曲と Contrapunctus a 3 との
様々な相違点を修正しなければならなかったはずです。


音価と声部配置以外の譜面上の相違点を青い音符ないし数字で示しました。

以上のように、この編曲は出版譜に含めるには不完全であり、
また出版譜においても宣伝広告においても、
この編曲は未完フーガとあわせて扱われていることから、
おそらく故人略伝において未完フーガの前に説明されている、
バッハが完成できなかった「最後から2番目のフーガ」というのは、
この編曲を指しているものと思われます。
(故人略伝も、もともとはエマヌエル・バッハとアルトニコルによって
宣伝広告と同じ1751年頃に書かれたと考えられています。)


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