分析室1 分析室2 トップページ
X
3主題によるフーガ、3声部、2/4拍子、188小節


フーガの技法出版譜のContrapunctus8とほぼ同一の曲ですが、
拍子は自筆譜Xの2/4が、出版譜では2/2に変更されています。
あわせて音価も2倍に変更されているので、
XとContrapunctus8とで小節数に変わりはありません。


自筆譜Xの冒頭です。実際には出版譜と同じように3段(1声部1段)で書かれています。

Xの冒頭の上(\の末尾)の余白には、
この変更の指示が書き込まれています。
"Folgendes muss also geschrieben werden"
「次(の曲)はこのように書くこと」


自筆譜のイメージです。

こうした書き込みは、出版譜の銅版作成において、
自筆譜が参照されたことを示すものと考えられます。

自筆譜Xの135-136小節には大きな修正が見られます。
中声部を1オクターブ下に移す指示が書き込まれているのです。
同じ部分をContrapunctus8と比較すると、わかりやすくなります。
つまりContrapunctus8では、すでにオクターブ下に移されているのです。


135-137小節の中声部。上段が自筆譜、下段が出版譜です。
上段は出来るだけ自筆譜のイメージを再現しています。

この修正は、もしかしたら鍵盤楽器で演奏する上での
便宜を図ったものかもしれません。
というのも修正前のままだと、この135小節を演奏する際、
左手に10度もの跳躍が要求されるからです。

分析室1 分析室2 トップページ