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Contrapunctus 9 a 4 alla Duodecima
2主題によるフーガ、4声部、4/4拍子、130小節


alla Duodecimaすなわち「12度による」と題されています。
12度の2重対位法を用いた曲です。詳しくは後ほど説明します。

(主題)

この曲はいわゆる2重フーガで、曲の冒頭に第1主題として、
基本主題とは違う新しい主題が示されます。



また35小節以降、第2主題として基本主題が示されます。
基本主題は音価が2倍に拡大された形となっています。
自筆譜では基本主題がそのまま用いられていたのですが、
「フーガの技法」出版譜編纂の際に、曲全体にわたって
音の長さが2倍に変更され、結果的に拡大形になったのです。



第2主題=基本主題は、常に第1主題と同時に示されます。



この2つの主題は、このあと様々な声部配置で呈示されますが、
下記の曲の詳細において説明しているように、
12度の2重対位法によって入れ替えられるのです。

(曲の構造)

曲は間奏をはさみながら主題呈示を繰り返します。主題の呈示により、
曲を以下の2つないし3つの部分に分けることができます。

 内  容
小節
小節数
 主題の調性
第1部分
第1主題の呈示
1-34
34
主調-属調-主調-属調
第2部分
第1主題と第2主題を
結合して呈示
35-88
54
主調-平行調-主調-属調
89-130
42
主調-下属調-主調

なお、主調で示された第1・第2主題の結合において、12度の2重対位法で
入れ替えられているのは89小節〜(第2部分後半の冒頭)だけです。

(曲の詳細)

曲の冒頭に、第1主題が呈示されます。



上の楽譜にA、Bと示した青色の音符のモチーフは、
曲の中で頻繁に用いられ、ゼクエンツになっていることもあります。
モチーフAによるゼクエンツは81小節〜、112小節〜など、
モチーフBによるゼクエンツは66小節〜、85小節〜などに見られます。
下の楽譜の箇所では、27-28小節のテノールに示された主題の末尾を
追いかけるように、ソプラノ、バス、アルトの順でモチーフBが示されています。



モチーフBにつけられた対旋律が、次々と変化するのも興味深いです。

35小節〜には、テノールの第1主題に並行して、
2倍に拡大された基本主題=第2主題がソプラノに示されます。



どちらの主題も同じ音(d、d'')で始まっていることに注意してください。
このあと、45小節〜、59小節〜、73小節〜、89小節〜、99小節〜、
および119小節〜に2つの主題の結合が見られます。
そのうち、89小節〜の主題結合を以下に示します。



こちらはバスの基本主題が d、ソプラノの第1主題は a' で始まっています。
つまり、89小節〜の第1主題は、35小節〜の第1主題に対して、
基本主題をはさんで12度上の位置に示されているのです。
(度数はオクターブの差を無視して数えています)
この12度ずらしても結合可能な両主題には2重対位法が用いられており、
タイトルの alla Duodecima は、この技法による作品であることを示しています。
Canon alla Duodecimaも、タイトルの"Contrapunto alla Quinta"が示すとおり、
12度の2重対位法を用いて作られています。

他の主題結合のうち、45小節〜、73小節〜、99小節〜においても、
第1主題を12度上に移して呈示しています。

75-76小節のソプラノには第1主題の断片が見られます(青い音符)。



また、85-88小節には基本主題の断片が見られます(青い音符)。
断片はソプラノ、アルトと続き、89小節〜のバスの基本主題を導きます。



主題全体にわたるストレットが困難であるか、あるいは
ストレットにした場合判別がつきにくくなるような主題では、
こうした断片によるストレット風の効果がしばしば用いられます。

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