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令和4年12月31日 | 晦日 |
山小屋の外に出てみると、霙まじりの雨が降っていた。 道の上に落ちる雨を見ていると、人が流す哀しい涙のように思えてきた。 今年も多くの隠された涙を見てきたし、また来年も涙と出会うだろう。 ひとが死ぬということは、いやでも自分のむかしを思い出させることでもあるのに、最近やたら気付かされている。 年を取ることによって背負わされてきた様々な過去を美しく捨てることによって、素敵に生きる老人の姿を見せたいものです。 今年は今日で終わり。 あなたにグッド・ラック (幸運を) |
令和4年12月30日 | 黛まどか |
書かざりし日の あざやかに日記果つ 一年分の日記帳が終わりました。たくさん書くことがあった日、愚痴ばかりを書いた日…振り返るとさまざまな日がありました。 そんな中に何も書かれていない真っ白なページの一日が・・・。 サボったわけでも、書けないことがあったわけでもない。 あえて書かなかったあの日のことは今も自分の胸の中に大切にしまってあるのです。 白紙に記憶のディテールを一つ一つたどりながら、行く年を惜しんでいる作者です。 |
令和4年12月25日 | 年の瀬 |
歳と共に「わかったこと」は増えて行くが、皮肉にも「わからないこと」はそれ以上に増えて行く。 僕はすでに七十五歳、年金も受給している、まぎれもないヨタヨタの老人。 死神の恐怖におびえながら、前に進むより仕方がない。 まあいいか、明日があるさの繰り返し。 |
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友の顔 思い出しては書く賀状 |
令和4年12月18日 | 黛まどか |
冬至湯の身に覚えなき痣ひとつ 毎年十二月二十二日頃は冬至です。一年のうち昼がもっとの短い日ですが、同時に春の到来を予感させる日でもあります。 この日は昔からかぼちゃを食べたり、柚子を浮かべた風呂に入ったりして疫鬼を払ってきました。 柚子湯に浸かっていたいたときに見つけた痣。いつどこでぶつけたのか全く覚えのない痣でした。 きっと何か懸命にやっていたのでしょう。自らの傷をいとおしみながら、一年を振り返る冬至湯です。 |
令和4年12月11日 | 高倉健 |
「網走番外地」を撮られた石井輝男監督。 その第一作は北海道で撮影しました。 ある朝、監督がいつまで経っても部屋から出てこない。 それで僕が部屋まで迎えに行ったら、疲れて起きられなかったでしょうね、監督は、まだ寝ていらした。 ふと見ると、監督の布団に雪が積もっていたんです。 窓ガラスが割れて雪が吹き込んで・・・。 その姿を見た時に、もの凄く感動したのを覚えています。 当時の僕はまだまだ新人の俳優で、監督なんて雲の上の存在です。 その監督がこんな貧しい部屋で、こんな寝方をしている。 雪が降り積もった布団で寝る監督の部屋を覗かなければ、 今の自分はないかもしれません。 |
令和4年12月4日 | セピア色の映画館 |