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基本主題とその発展

フーガの様々な様式に示したように、「フーガの技法」に含まれる曲は、
フーガ様式あるいはそれに類似した様式で作られており、
いずれも1つの主題に始まっています。そして、それぞれの曲の中で
用いられている主題は、全て第1曲すなわちContrapunctus1に示された主題を
基本として作られているのです。一見すると全く別のものに見える主題でも、
基本となる主題を装飾・変形したもので、音をたどればまるで
骨格のように主題の原型が浮かび上がってきます。

しかし、「フーガの技法」に含まれる曲が全て異なる変形主題を
用いているわけではなく、いくつかの曲には同じ形の主題が
用いられています。また基本主題のリズムが若干変更されている
だけのものもあります。こうした主題の変形の仕方によって、
「フーガの技法」に含まれる曲を以下のように分類してみました。


各曲のタイトル
原形
リズム変形
装飾変形1
装飾変形2
単独の
装飾変形
Contrapunctus 2
Contrapunctus 3
Contrapunctus 4
Contrapunctus 5
Contrapunctus 8 a 3
Contrapunctus 11 a 4
Contrap. a 4
Canon alla Ottava
Canon alla Decima
Contrapunto alla Terza
Fuga a 2 Clav.
/Alio modo Fuga a 2 Clav.
Fuga a 3 Soggetti
原形
リズム変形
装飾変形1
装飾変形2
単独の
装飾変形
※曲の途中で新たな変形主題が示される例もありますが、ここでは取り上げていません。
詳しくはContrapunctus234および12をご覧下さい。

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@ほぼ原型のままの主題

Contrapunctus1に示された主題は、フーガの技法に含まれる
すべての曲の主題の基本をなしています。


Contrapunctus3およびContrapunctus4の主題は、
基本主題の反行形となっています。主題の反行形は、主題の形自体には
実質変更が無く、変形というより模倣技術の範疇になります。


Contrapunctus9に用いられる主題は、基本主題の音の長さが
2倍になったものです。これも実質基本主題と同じだといえます。


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Aリズム変形による主題

Contrapunctus2の主題は、基本主題の8分音符を
付点リズムに変更したものです。


Contrapunctus12は曲の拍子が3/2となっており、
主題はそれにあわせてリズム変形されています。


Canon alla Decimaの主題はシンコペーションによる変形主題です。


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B装飾による変形主題1

Contrapunctus5において、基本主題の2部音符を付点音符に
変更した主題が登場します。この主題には基本主題にない音が
追加されており、装飾変形と見なすことができます。

青い音符が基本主題に追加された音です。

この主題はContrapunctus6およびContrapunctus7において、
若干形を変えながら用いられます。そしてこの3曲の中では
正置形、反行形の双方が示されます。なお、Contrapunctus6および
Contrapunctus7の中では、変形主題の縮小形や拡大形も見られます。

Contrapunctus6の冒頭部分。変形主題とその縮小形が重なり合います。

Contrapunctus10においてもContrapunctus5と同じ変形主題が
用いられます。ただしこの曲の中では反行形のみが示されています。

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C装飾による変形主題2

Contrapunctus8にはContrapunctus5の主題を
さらにリズム変形させた主題が登場します。
主題はアウフタクト(裏拍)に始まる4つの部分に分解されています。

青い音符は元の主題に追加された音です。

Contrapunctus8には反行形のみが示されます。
同じ主題がContrapunctus11にも用いられますが、
こちらは正置形、反行形の双方が用いられています。

Contrapunctus11の158小節では正置形と反応形の主題が重ねて示されます。

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D単独の装飾変形主題

Contrapunctus a 3には3連符で華やかに装飾された主題が
用いられています。主題の冒頭が基本主題とはかけ離れた跳躍に始まり、
一見変形主題とは思えないほどの変貌を遂げています。

青い音符が元の主題に追加された音です。基本主題にない音をえり分けるのも困難です。

Canon alla Duodecimaの主題も豊かに装飾されており、
原型が判りにくくなっています。

青い音符が元の主題に追加された音です。

Canon alla OttavaCanon per Augmentationemの主題は、
基本的にはContrapunctus5の主題に似ており、
それを装飾・発展させたものと見ることもできます。

青い音符が元の主題に追加された音です。


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