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Contrapunctus 4
単一主題によるフーガ、4声部、2/2拍子、138小節


この曲はフーガの技法の自筆譜には含まれていません。
自筆譜が最後に書き込まれたとされる1746年以降に作られたと推測され、
未完フーガ音楽の捧げ物のリチェルカーレと並んで、
鍵盤独奏用のフーガとしてはバッハ最晩年のものとなります。

(主題)

Contrapunctus1に示された基本主題が、
第3音(f)を軸とした反行形で用いられます。



この曲に示される主題とContrapunctus3の主題を比較すると、
主題と応答が逆転していることがわかります。
(詳しくはContrapunctus3の説明をご参照ください)

(曲の構造)

曲中の主題は、以下の表に示すように規則正しく配置されています。

小節
主題呈示の声部順序
1-18
ソプラノ→アルト→テノール→バス
27-42
ソプラノ→アルト→テノール→バス
61-80
バス→テノール→アルト→ソプラノ
107-114
バス+テノ-ル→アルト+ソプラノ
129-136
テノール→アルト

また主題呈示の合間は、多くがゼクエンツで埋められています。

ゼクエンツには頻繁に見られるものが2種類あります。
1つは次の楽譜に青い音符で示したモチーフを含むものです。



この特徴的なモチーフがしばしば示されることから、
Contrapunctus4は「カッコウ」と呼ばれることもあります。

ゼクエンツのもう1つは、以下のように低声部が
4分音符のモチーフを繰り返すものです。



この2つのゼクエンツが、声部を入れ替えたり
モチーフを変形したりしながら、曲中の随所に配置されています。
便宜上、「カッコウ」のモチーフを含むものを「ゼクエンツA」、
低声部が4分音符のモチーフを繰り返すものを「ゼクエンツB」と呼びます。

主題とゼクエンツの交互呈示から、曲を大きく4つの部分に
分けることができます。曲の構造を以下の表にまとめます。

 内  容
小節
小節数
第1部分 主題呈示、ゼクエンツA、B
1-26
26
第2部分 主題呈示、ゼクエンツA、B、A
27-60
34
第3部分 主題呈示、ゼクエンツA、B、A
61-106
46
第4部分 主題呈示、ゼクエンツA、B、主題呈示、コーダ
107-138
32

なお、曲中にはゼクエンツA、Bのどちらにも分類できない
ゼクエンツも見受けられることを付け加えておきます。

(曲の詳細)

5小節〜の応答に対主題が伴います。
この対主題は、11小節〜の主題と15小節〜の応答にも伴います。
また5-6小節に見られる8分音符の半音階が、
後の主題にしばしば添えられます。
下の楽譜には、対主題を青い音符で示しました。



曲中の主題はしばしば調性的変形を受けますが、時として
連続して呈示される複数の主題が曲の転調の流れに沿って変形されます。
61小節〜に呈示された主題を例として示します。
下の楽譜には、主題を青い音符で示しました。



61小節からバスに示された主題はヘ長調→ハ長調→ト短調と変化し、
65小節からテノールに示された主題はト短調→ニ短調と変化しています。
同様に転調を伴う連続した主題呈示が27小節〜、73小節〜にもあります。

曲には時折、ゼクエンツに伴って終止形が挿入されます。
終止形は52小節、86小節および102小節に見られ、
異なるゼクエンツの合間に挿入されています。
以下に示した箇所では、101小節でゼクエンツBが終わり、102小節に
ト短調の終止形が示され、103小節からゼクエンツAが始まっています。



これらは、Contrapunctus811の終止形とは違い、
主題呈示や曲の構造との関連は少ないと思われます。

107〜114小節には、シンコペーションによる変形主題が、
原形の主題と並行して示されます。
下の楽譜には変形主題を青い音符で示しました。



107小節〜のバスと111小節〜のソプラノに変形主題が示されていますが、
前者は半拍遅れ、後者は半拍前倒しに移勢されています。

曲の最後には、しばしば指摘されるようにb-a-c-hの音列、
すなわち「バッハ」の名を示す音列が見られますが、
いわれなければ気づかないほど旋律としては不鮮明なものです。



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