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V−9 見た目のできばえが機能を害する話

 これはコンクリート表面処理等の土木構造物の見た目の善し悪しの話であるが、完成検査の話でもある。

 ゼネコンすなわち土木建築工事総合請負業は、施主(土木の場合、公共セクター)を、お客様どころか神様と思っているのではないか、と私は疑ったことがある。目的物が完成し、いざ検査という段階になると、きれいに洗い清め、場合によっては雑巾掛けをすると聞いた。どうせすぐ汚れるのだから無駄なことだが、検査の前に、より美しく見てもらいたく準備をするという心情は分からないでもない。

 問題なのは前項でも述べたコンクリート表面処理のことだ。以前は、河川護岸の平場コンクリートの表面をきれいに仕上げるために、金ゴテをあて、つるつるにした例があったと聞いた。もちろん積算にはなく、金のかかる話だが、クラックは入りやすいし、水に濡れると滑りやすく、百害ばかりなので、どうせならと、コンクリート打設後に竹箒で表面をざらざらに処理するように指導したことがある。

 多自然の観点からは、検査での見栄えと逆になることがあるのではないか。表面が凸凹の方が、光が乱反射するので、暗く見えて良いし、何よりも自然に見える。前項でも述べたように、わざわざ型枠でそのようにしたり、出来上がった表面にサンドブラストをかけ骨材が現れるようにすることもあるからだ。

 完成検査の欠点の一つは、出来上がり寸法を過度に気にすることだ。多自然だと寸法よりむしろ生物の生息環境の復旧がしやすいかが問題となる。図面では平らに作ることになっているが、出来が良くなく、凸凹に出来た場合、検査は通りにくいが、生物環境としては結果オーライでそのままにした方がよい場合もある。筆者はフトン籠(籠マット)でこの例を知っている。凸凹だと土が着きやすいのだが、検査に通るために、手作業できれいな平面に仕上げ(積算では中込め石は大部分が機械積み)、結果として高いものにつき、環境工法は高いので大変だと嘆いている向きもあった。

 

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