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W−4 身近な自然と手つかずの自然 (19)

 「自然」という言葉の拡大解釈に歯止めをかけたいとする主張である。

 「身近な自然としての河川」という価値観を持つと、都会の近くを流れる河川の自然を、人工そのものである都市の補間物として、生活空間に組み込みたい、という大前提から自然の考え方を始めないと矛盾を来す。

 自然生態系を価値あるものにしているのは、人間の文明の影響を排除した、原生自然と呼ばれ、あるいは自然公園特別保護区域として一木一草たりとも保護される、手つかずの自然だろうと考える。

 そのような価値のもとで身近な自然を考える場合、都市住民の利用を考えるので、人間の影響を考えた自然になる。いわば公園的な自然とでも言おうか。山中であっても自然公園があるが、「公園」というからには多かれ少なかれ人間の利用を考えることが前提となる。

 これら公園的自然をどうするかというときに、「公園」という言葉に着目すれば、利用のし易さとかになるが、あくまで「自然」をテーマにする限り、人間が介在してもぎりぎり自然の形態を残すべきで、自然教育にも耐えるものでなければ、「自然」という言葉の目的外使用と言われてしまう。そういう自然をねらっているのでなければ、「身近な自然」というキャッチフレーズは返上し、単に河川空間を公園的に利用しているのだという理解にしたらよい。

 反対に手つかずの自然ではあり得ないので、自然生態系を完全に残すべきだなどの価値観を振りかざすことはもともと無理だということだ。

 

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