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V−12 磯焼けの犯人は河川工事という濡れ衣

 海にウニなどの餌となる海草が全く育たない現象を磯焼けと称しているが、これはその海に流入する河川の工事に起因するとする論がある。海草の栄養分たる鉄分など微量元素が、河川の護岸工事あるいは工事に伴う河床地形変状により、補給されないために、海草が全く育たないというのである。

 この論は仮説としてはかなり興味がもてる。しかし仮説は証明されなければいつまでも仮説であり、他人への説得材料には使えない。私は寡聞にしてこの証明作業の進展を全く知らない。どこかでやっているのであろう。

 (一方で、微量栄養分の偏りにより、在来海藻の競争種である表面付着性の石灰藻が優占となった、という説がある。ただしこの説は河川工事を原因としてはいない)

 この証明は純粋に演繹的な科学手段で行うのは困難だろう。微量元素だから、洪水時、低水時、海が荒れているとき、凪いでいるときと、すべて定量比較するのが、大変だし、だいいち磯焼け現象が起こる前のデータがとれていない。濃度を変えての研究室内の海草生育実験なんか不可能である。通常とられる手段は、全国の磯焼け海岸に流入する河川のデータをすべて収集して比較検討し、河川あるいは海域での水温、潮流等の他の条件はそれぞれ違うものの、帰納的に結論を出すしかないだろう。もちろんその前に、河川工事によりこれら濃度が変化するかも調べる必要がある。

 これらの証明はいずれ誰かがやってくれると思うが、それまでは巷間言われている、「ウニが異常発生したため、海草が食い尽くされ、陸でいう山羊の過放牧による植生食害に起因する砂漠化に似たものが海の中でも起こった」とする、一部の箇所ではあたっていると言われる説にすがるしかない。

 

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