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V−10 環境工法では現場監督がキーパースン

 土木事業に環境の目的が加わると、全部が全部、図面表示をするのが困難なことは、前に書いた。そうなると、全体の雰囲気を伝えるには、手書きのパースを加えるとか、ディテールの場合は、やはり手書きの概念図とかを説明用に加えるとかして、設計者の意図を現場に伝える工夫が必要である。しかし、現場の作業を実際にする人が環境工法の意味を本当に理解しないと、満足のいくものはできない。

 そこで、設計者が現場に出かけ、実際に手取り足取りの作業指示をするというのはどうだろうか。逆に、現場監督専門の人が、設計者とのミーティングを重ね、十分理解してから工事に取りかかるという方法もある。

 筆者が経験したごくプリミティブで悪い例は、河川の低水護岸の自然石の石積みのやり方があった。現場では石工が作業にあたるが、昔と違って、となりにうまく重なり合う形の石を選んで積むという面倒な作業はせずに、手当たり次第に石を積み上げ、結果として、空隙が多くなるが、そこにはモルタルをたっぷり詰めて、涼しい顔をしていた。職人芸がなくなったというのか、歩掛かりが厳しいのでそこまで出来ないのか不明である。

 護岸の強度としてはモルタルの強度が出れば十分だが、環境工法の目的の一つの景観面から言うと、正面から見ると半分近くがモルタル面となり、及第点には至らない。

 もう一つの目的である生物環境の確保の面から見ると、石積みの間の狭い空隙に昆虫、小魚類が入り込む機能が期待されているが、モルタルを詰めすぎ、自然石表面と面一になるまでにしているので、これは完全な落第点になる。モルタルは自然石の控えの部分のみに充填し、石どうしを固定し、裏込めの土が吸い出されない程度でよく、外から見ると空積みに見えるのがよいのだが。

 

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