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  V−5 人工的に地形を復旧して、生物は有り難がるか(?→@)

 これは環境の知識の誤解によるものではない。しかし、無意識で環境に害をなすこともある。  土木屋は図面に従って仕事をする。最近はやりのビオトープ作りなどは、直線曲線で表せないので、図面はどうするのであろうか。単なるスケッチでは仕事量の積算・検収が難しい。

 また図面だと枚数に限りがあるから、標準断面とか20bごとの横断図にしたがって仕事をするようになる。その他の間の部分の図面に書いていないところは直線か曲線でつなげばよいという前提となっている。その結果、見た感じからして人工感が拭えない。極端なものは、河床整正と称する真っ平らな人工河床になり、高水敷も平らになる。

 平らで、直線あるいは曲線の人工地形だと生物にはどうなるだろうか。

 生態系の多様性を確保するには微少地形が必要だと言われている。人工地形だとどこかしこも水分日照等の条件が同じ(または変化が単調)だから、極端な場合は、たった一つの植物種に有利となり、依存する動物種も限られ、あたかも農園のような人間のための生態系となってしまう。河川は元々多様な生態系を保持してきたのだから、多自然工法にあたってもこのことに留意し、窪地、小山、河岸の細かな出入りなど微少地形を残す復旧をしなければ失敗といわれてしまうだろう。

 河川の堤防法線が曲線なのは、洪水流下のためやむを得ないが、低水護岸法線は自然の出入りのある線に出来ないだろうか。平水時に護岸前面の流れがスムーズでなくても別段支障はないし、それをきっかけに洲が成長したり、淵が出来たりするのは、低水路内であれば、よいことではないだろうか。またそれら平行護岸によるよりも、むしろ水制工法を採用し、水制先端のポイントを守ることにより高水敷全体を守り、水制と水制の間は自然の河岸形成に委せる方が、河川工法と多自然工法とを同時に満足させるので合理的ではないだろうか。

 

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