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V−8 人為はすぐばれる

 南米ペルーにナスカの地上絵という遺跡がある。砂漠に描かれたその巨大な絵は、色々な模様あるいは人間、動物などの抽象画のように見えることから、我々の祖先のなせる業であることは間違いがなく、それが上空遙かからしか認識できないので、何のために、またどのようにして描いたのかが謎となっている。

 ここで主張したいのは、人間の業はどのように認識されるのかの方である。

 土木事業で自然が豊かな区域で実施されるコンクリート壁面の作り方で、型枠に工夫して、表面に凹凸をいれ、あわせて曲がりくねった(サイケ調なものもある)線(陰刻)をいれることがはやっている。この動機を推測すると、自然には平らな面がないから、凹凸をいれる。ここまでは分かるし、このことによりコンクリート面の明度を抑え、自然の適度の暗さの中で目立たないようになるので、ここまでは100点満点だと考える。

 問題は、曲がりくねった線の方である。これも自然にない直線曲線を排すという理由からなのは分かる。しかし、型枠処理なので、同じパターンが縦横繰り返されているのがすぐ分かり、型枠の境界がパターンのとぎれから直線なのがすぐ発見されることも併せて、同一型枠の繰り返し使用であることが容易に想定できる。自然には繰り返し模様はないから、自然の中に隠そうとして、しっぽだけ出ているようなものだ。

 人の目はパターン認識に優れているという。その能力が徒になって、これら土木事業の自然へのカムフラージュが、懸命な努力にもかかわらず、「人のなせる業」であることが一目瞭然となってしまう。

 もともと土木構造物は人工のものであることは分かり切ったことだから、自然の中に隠すより、もし何か工夫がしたいのなら、むしろ歴史的建造物に似せて、石積風にするなりの方向がよいのではないか。

 

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