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V−1 自然は人により整備されないと保全されないものか

 「常識」の代表例である。自然公園など整備が行われた区域の維持が行き届かず、雑草が繁茂し、荒れて台無しになったと言うことがあるが、元の自然に戻っただけではないか。T−Aでいう人間の自然への接近性が損なわれた。あるいはT−Bでいう景観が人間にとってよくなくなった事例と言うべきで、T−@の観点から自然はむしろ回復した事例と見るべきだろう。

 代表的意見で『山は手を入れないと荒れて、山林環境が失われ、ひいては治水利水上の機能まで損なわれてしまう』というのがある。確かに手入れをしなければ、下草が生い茂り、間伐なしには用木が育たず、山林経営としては危機を迎えることになる。しかし、自然保護の観点からはこれほど良いことはない。人が入らなければ次第にその土地に最適の樹種が取って代わる極相林の形態になり、いずれは原生林になるからだ。治山砂防上も最も安定するし、林業経営上必要な林道建設によりどうしても避けられない山腹土砂崩壊、自然破壊も回避できる。

 山村の生活が成り立たなくなるのは確かだが、論拠に自然まで持ち出すのは行き過ぎである。

 これらはすべてABの人間にとっての自然と@の自然本来とを混同していることによるものであろう。

 以上は山の自然の事例だが、河川の高水敷でも、元の雑草ばかりの状態を花畑に整備する場合などは同様の事例であろう。

 

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