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  V−7 何でもかんでも緩くは困る(A→A)

 一時期緩いのがはやった。緩傾斜堤防、海岸の緩傾斜ブロックなど。これらは力学的にもその他の科学的理由からも、用地などに余裕があれば、積極的に採用すべきことであった。また、河川海岸の利用者からも親水性が増してよいという評判をいただいた。

 しかし、どこでも緩いのがよいかというとそうではない。低水護岸は場合によっては5分程度のきつい勾配がよい場合もある。

 話は少し変わるが、多自然工法で、ヨーロッパの河川をモデルとすべきと言われた時期があった。河岸の遊歩道に沿って、手で触れられるぐらいの「近さ」に、水が「豊富」に流れる景色が親水性の理想とされた。しばらくして彼我の河川では流況の安定度に格段の違いがあり、日本のような流量変動の大きい河川では、人工流量を流す用水路でもないかぎり、この理想はかなえられないことが分かる。

 となると、日本では、流量が「少ない」とき、低水護岸が緩ければ、水面が平面的にも「遠く」なるので、上記の景色は更に実現しなくなる道理である。一般に護岸の天端高は豊水位に余裕高を加えて設定するから、通常の場合ですら天端から見ると水位はかなり低くなる。流量変動の大きい河川では、余裕高の設定は不可欠である。

 水が引くと、緩斜面が徒となって、長大な斜面が現れるので、そこにはゴミがたまり、泥で滑りやすくなっている。その歩きにくいブロックの上を斜面に沿ってずっと下っていかないと水面には達しない。親水性をねらった緩勾配がかえって親水性をなくしている。

 こういう所では、逆転の発想で、護岸勾配をきつくすれば、平面的な距離は遠くならない。手で水は触れられないが、水面を見下ろすことは出来る。かりに転落者があった場合、自力ではい上がれるように、垂直は避け、5分程度の勾配とするのがよいと思うのだが、どうであろう。

 

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