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その他の共通要素

ここでは曲の様式や作曲技法などの他の項目に該当しないものの、
いくつかの曲の共通して見られる特徴などをまとめました。
これらは各曲を関連付ける何らかの意図があったのか、
それともバッハのクセなのか、明確に判別する事は難しいです。

なお、フーガの技法以外のフーガにもしばしば見られる
ゼクエンツオルゲルプンクトなどの要素は省いてあります。


1)終結部の音形

Contrapunctus234、及び6の各曲は、
曲の終結部に共通の音形を用いています。
下の例に青い音符で示しました。


各曲の最後の小節を並べてあります。

また、Contrapunctus810の終結部にも共通の音形が見られます。
下の例に青い音符で示しました。


両曲の最後の小節を並べてあります。

2)バス声部のトリル

トリルは曲集中あちこちに用いられていますが、
特定の音形を伴うバスのトリルが何曲かに用いられています。
特にContrapunctus310では連続して繰り返されています。


青い音符でトリルとそれに伴う音形を示しました。

形は若干違いますが、転回対位法による2つのフーガにも
同様のトリルが見られます。


青い音符でトリルとそれに伴う音形を示しました。

3)繰り返されるモチーフ

Contrapunctus311には同じモチーフが見られ、
それぞれ異なったやり方で繰り返されています。
Contrapunctus3ではゼクエンツのバスに繰り返されています。


青い音符で示したモチーフが繰り返されています。
上の2声はゼクエンツになっています。

これに対してContrapunctus11では曲のあちこちにちりばめられています。


青い音符で示したモチーフが若干形を変えながらあちこちに見られます。

4)曲の段落

比較的長い曲や、複雑な構造を持つ曲においては、
しばしば和声的断裂による段落分け(仮終止)が挿入されます。
段落分けされた後には新たな展開が用意されています。

曲の段落分けはフーガの技法以外の作品にもしばしば見られますが、
後述するカデンツァとの区別のため、あえてここで取り上げました。

複数の主題を持つContrapunctus81011においては、
新たな主題を導入する前に段落分けを行っています。
下の譜例には、段落分けを青い線で示しました。


各曲の主題導入前後の部分です。

またContrapunctus510においては、主題以外のモチーフが
導入される前にも段落分けを行っています。


各曲のモチーフ導入前後の部分です。

5)カデンツァ

曲の途中や終結部の近くなどで、曲が和声的に断裂される事があります。
上記の段落分けとは違い、曲の展開には直接関連がなく、
また即興的要素が多分に含まれています。
これらは以下の2つに大別することが出来ます。

5-1)挿入句があるもの

Contrapunctus278に見られます。高声などが自由な旋律を奏します。


各曲の該当する部分です。

Canon alla Decimaでは曲の終結部分において、
即興的な挿入句を演奏者に要求しています。
下の楽譜に青い文字で示したCadenzaがそれに当たります。


Canon alla Decimaの最後の部分です。

5-2)完全に断裂するもの

Contrapunctus16及びContrapunctus a 3に見られます。
Contrapunctus1では連続して2回の断裂があります。
これらを即興的挿入句が要求されているものと解釈する演奏者もいます。


各曲の該当する部分です。青い線で和声的断裂を示しました。


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