[Home]-[以前のひとこと]-[2020年6月前半]

以前の「ひとこと」 : 2020年6月前半



6月1日(月) 多面体の稜を巡るモデル(その1)、他

 一昨日と昨日、立方体の6つの面をぐるっと辿るような一筆書きの経路を立体化したような構造を作ってみて、そんなかたちのインテリア家具があるということをご紹介しました。これをブロックで作るのではなく、保存できる模型を作ってみようと思ったのです。で、せっかくならこのかたちにしようと思って作ってみたのがこちらです。

Fig.1 Fig.2

 普通のペーパーモデルの手法で作ってみたのですが、誤差が蓄積してバランスの悪いモデルになってしまいました。本来平行になっていなければいけないところの平行が出ていなかったり、高さがそろっているはずのところがずれていたりしています。

 例によって影のかたちが気に入っています。

Fig.3

 太陽光で影を作ればもっとくっきりした影になると思いますが、この影はライトを当てています。

 さてこのかたち、どんな多面体をどんなふうに巡ったかたちでしょうか? 昨日までにご紹介していたもの(Infinity Cube Tableの構造)とどこが似ていて、どこが違っているでしょう?

(つづく)



 いつも月の始めの更新では、可能であれば「お気に入り」の度合いの高いトピックをご紹介するように心がけています。最近はトピック(ねた)がどんどん増加していて覚えきれなくなってきていて、「ネタ帳」みたいなものを作っています(Fig.4)。

Fig.4 : topic list

 このリスト(読めないサイズです)の各行がPCのフォルダに対応しています。黄色いラインが「月」の区切りを示していて、この図で見えているのは今年の3月、4月、5月です。グレーの色を付けているのが「紹介済み」のトピックです。水色の色を付けているのは、音楽の関係とか、ここ(あそびをせんとや)でご紹介するような内容ではないものを表しています。

 月が変わるタイミングでこのリストを見直して、新しく増えたトピックの行の追記と、すでにご紹介した内容をグレーに塗る作業をしています。

 この作業の中で、3月くらいにこんな図を作っていたことを思い出しました。

Fig.5

 三平方の定理を示す図になっています。たぶんどこかで見かけたのだと思います。分割したパーツは回転させずに平行移動だけで大きな正方形を構成できるところが面白いと思ったのでした。(「ネタ帳」を見直さなければ埋もれてしまった話題の1つです。)

 この「三平方の定理」の図の話も明日に続きます。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 例年のことなのですが、5月〜6月くらいは晴れて夏のように暑い日と、雨や曇りで肌寒い日がめまぐるしく入れ替わります。体調管理が難しいです。






6月2日(火) 多面体の稜を巡るモデル(その2)、三平方の定理(その2)

 昨日ご紹介したこの模型ですが

 こちらのHamilton Cycle on Truncated Octahedron(切隅八面体のハミルトン閉路)というページに同じモデルがありました。あのKoos Verhoeff氏(1927-2018)の作品です。

Hamilton Cycle on Truncated Octahedron

 上記のページでは、このモデルをインタラクティブに回転させたり拡大縮小したりしてみることができます。また、Koos Verhoeff氏の作品が他にもいろいろと販売されているようです。



 この構造ですが、2種類の説明が可能だと思います。1つ目は、切隅八面体(Truncated Octahedron)

Truncated Octahedron

の24の頂点を1度ずつ巡る経路(ハミルトン閉路と言います)になっている、という解釈。下の2つの図の赤いラインです。

Fig.2 Fig.3

 Fig.2はFig.1と同じ視点から見たところ、Fig.3は、この閉路(Cycle)が3回回転対称になっている方向を垂直軸に合わせてみたものです。



 2つ目は、正八面体の12本の稜全てを巡るオイラー閉路の角を面取りしたもの、という解釈です。オイラー閉路というのはいわゆる「一筆書き」の閉路(最後に出発点に戻ってくる経路)のことで、全ての辺(稜)を1度だけ通ります。

 Bridges 2016Three Mathematical Sculptures for the Mathematikon(Tom Verhoeff and Koos Verhoeff) という論文の Fig.4にはこんな図が挙げられています。

Octahedron, octahedron with Euler cycle, cutting corners
(Tom Verhoeff, Koos Verhoeff)

 、ビーズ多面体を作っていたころに、正八面体に糸(テグス)を通す方法として、こんな風に通すと頂点で糸が目立たなくていいです、というような図を描いたことがありました。

Octahedron with Euler cycle

 さてこのかたちを環状多面体のペーパーモデルにするには、どんな設計になるでしょうか?

(つづく)



 昨日の三平方の定理を説明する図(下図左)、4分割する正方形の分割の中心点を少し移動させてみます(下図右)。分割するとき、水平・垂直に切るのは同じです。

 これもやはり平行移動だけで一番大きな正方形を構成できています。

 次に、もともとの直角三角形(図の赤いところ)を極端に細長くしてみましょう。こんな図になります。

Fig.6

 青い正方形はとても小さくて、4ピースの正方形と5ピースの正方形の大きさは一見して区別がつきません。

Fig.7

 箱詰めパズルで、余分なピースも含めてぴったり箱に入れてください、というタイプのものがありますが、その基本原理の1つがこれです。



 毎日、「数学カレンダー」と「算数カレンダー」の問題を暗算で解く、というのを習慣にしています。正答率は8割〜9割くらいかなあと思います。土曜・日曜の問題は難しいものがあって、暗算では解けないことがあります。この間の日曜日、2020年5月31日の数学カレンダーの問題は「20200531は素数でしょうか?」というものでした。うーん、偶数ではないし、3の倍数でもないし、5の倍数でもないし、7でも割り切れないなあ、というところまで暗算で確認しましたが(20200530だったら7で割り切れるのですね)、そこで諦めました。後で電卓を叩きました。

<おまけのひとこと>
 JBpress の リーダーはコロナ後ではなく20年後に想い馳せよ アフターコロナは予測するものではなく、作るもの 岡村進 2020.5.31 という記事を読みました。(無料で読めるのは1か月間だけです。)  副題にもあるように、有名なアラン・ケイの「未来を予測する最善の方法は、自らそれを創りだすことである」という言葉を連想する内容でした。「そもそも在宅勤務が増えるか減るかは予測するものではない。あなたが決めることなのだ。」とか、共感しました。






6月3日(水) 多面体の稜を巡るモデルとマジックスネーク

 今週ご紹介しているこの模型、

 今日はどんなユニットがどんなふうに組み合わさっているのかをご説明しようと思います。

 これは実はマジックスネークの拡張版になっています。

 マジックスネークは直角二等辺三角柱のユニット24個が面で連結されていて、連結部は90度ずつ4方向に回転することができます。上の写真のように、マジックスネークの一番基本的な構造はボール状のかたちです。この構造で、ユニット3個をまっすぐになるように連結して等脚台形の柱の構造にすると、今週ご紹介している多面体の稜を巡るモデルになるのです。

Fig.1 : MagicSnake Fig.2 : MagicSnake x 3 Fig.3 : MagicSnake x 5

 CGの視点を同じにして、ユニットが同じ大きさに見えるようにしてみました。(Fig.3をもう一度並べておきます。)

Fig.4 : MagicSnake Fig.5 : MagicSnake x 3 Fig.3 : MagicSnake x 5

 100円ショップでこのスネークキューブの構造の玩具が売っています。これを3個買ってくれば、このかたちを作ることができます。(両面テープとかで繋いでやる必要がありますが。)

 向きを変えて、全部のユニットが白になる設定で描画してみました。

Fig.6

 これでこのかたちの模型を作るために必要な情報が得られました。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 このところ身体のあちこちに不具合が出てきたので(年齢なので仕方がない面はあります)、思い立ってしばらくお酒を飲むのをやめてみることにしました。ちょうど会社の健康診断まであと1か月ですし、そのくらいを最初の目標にしてみようかなと思っています。すぐ挫折するかもしれないですけれども。






6月4日(木) 多面体の稜を巡るモデルの紙模型の型紙、他

 今週ご紹介しているこの模型の最終回です。

 これを紙で作るために、こんなパーツを設計しました(Fig.1)。これが24枚必要です。

Fig.1

 A4の用紙に12枚レイアウトしたものを2枚印刷して作りました。グレーの部分は「のりしろ」です。これをこんな風に筒状に組みます(Fig.2)。この図には「のりしろ」はありません。筒の開口部になっている四角形は1辺の長さ1の正方形です。

Fig.2

 正方形の開口部を繋いでゆきます。視点だけ変えた図を2セット用意してみました。

Fig.3 Fig.4 Fig.5

Fig.6 Fig.7 Fig.8

 こういうシンプルな構造のCGは、影を付けると形を理解しやすくなる気がします。

 実際に組む時、途中の間違いを避けるためにこんな「見本」を用意して、それを眺めながら組みました。

Fig.9

 これはユニットはシンプルですが、完成品のかたちは美しいと思います。作るのはちょっとたいへんですが、お勧めのモデルです。



 ペーパーモデルの手法で作ると、どうしても誤差が蓄積します。このモデルは四角柱を連結したものなので、すべての面は四角形です。なので「面を連結した帯で編む」手法で作ることができるはずです。

 以前、こんなかたちを作ったことがありました。

Torus polyhedron paper model

 これは接着せずに組んでいるので隙間が見えますが、組んだ後で全体のかたちを整えることができます。今回のモデルをこの手法で組むと、ループの長手方向のパーツは複数個を繋ぐ必要がありそうですが、最後のかたちはきれいにできるかもしれません。でも大変そうなので、多分やらないと思います。



 ちなみにFig.9の「お手本」に使ったのは、カプセルトイで出てきた小さなマジックスネークでした。3月15日にご紹介した「くねくねパズル」というものです。こんなかたちに組んで

Fig.10

「ふしぎなボール」の台にしていました。

Fig.11

 今回、これを引っ張り出してきて「見本」にしたのでした。当時は「ふしぎなボール」のほうが欲しくて、「くねくねパズル」(マジックスネーク)が出てくるとがっかりしていたのですが、今となっては色の揃ったマジックスネークが3つあったら良かったかなあと思っています。



 そろそろ4時半になります。このページの更新のためにPCに向かっている机の脇の窓から外が見えます。今朝は朝焼けがきれいです。

Jun.4, 2020 4:20pm

 カメラの「色づくり」は、どうしても肉眼で見たものとは印象が違います。本物はもっときれいです。時間の経過とともに雰囲気も変わってゆきます。窓の外ではカッコウが鳴き始めました。今日は5時半過ぎには家を出られるかな。

<おまけのひとこと>
 「ふしぎなボール」の話の続編も書けていないことに気が付きました。最大手数に関する仮説はあるのですが、検証ができていません。はやく検証して書かないと忘れそうです。






6月5日(金) urban homeless cocoon

 少し前のページですが、hwang kim: urban homeless cocoon というデザイン作品が多面体という観点で面白いと思いました。都会のホームレスのための組立・分解が簡単なシェルターだそうです。純粋にかたちに興味があったので、大きな図を挙げていただいてある展開図を印刷して組み立ててみました。

Fig.1

 色は、たまたまですが水色の用紙を使ってみました。最後の「ふた」に相当する2枚は接着せずに開閉できるようにしました。

Fig.2

 A4用紙いっぱいに型紙を印刷して、それを切り取って組み立てました。

Fig.3

 実物大のものを段ボールで作って中に入ってみたくなります。でもコストと手間がかかりますし、すぐに飽きて邪魔になるでしょうから多分やらないと思います。



 この designboom というサイト、面白いデザイン作品が紹介されていて興味深いです。例えば2v geodesic dome kit creates an outdoor structure という、測地線ドームを自作するキットとか、

2v geodesic dome kit creates an outdoor structure

 多面体好きには大変魅力的なR(rock) / magazine rack というマガジンラックとか、

R(rock) / magazine rack

 画像は引用しませんが、建築では淡路島のらせん構造の家とか、北欧のデザイン事務所が中国に作ったらせん状の展望台とか、面白いデザインが紹介されています。



 こんなことばを知りました。

人間というものは、人から愛されたり、守られたりしていることに対しては極めて鈍感です。
逆に、自分の意に沿わないことに対してはとても敏感にできている。
(鍵山 秀三郎)

 とても納得感がありました。まずもって自分自身がそうだよなあと思います。失ってみて初めてわかる価値、というか。

<おまけのひとこと>
 今日も暑くなりそうです。






6月6日(土) Intrinsically knotted graph (本質的に結び目のあるグラフ)

 グラフ理論で、すべての頂点の間に辺が存在するグラフを完全グラフ(complete graph)と言います。Fig.1 は頂点の数が7の完全グラフの例です。K7 と表記されます。辺の数は (7 x 6) / 2 = 21 です。

Fig.1:The complete graph on 7 points

 これは平面状に描かれているので、至る所で辺どうしが交差してしまっています。K7 の全ての辺が交差しないように、7つの点を3次元空間に配置することを考えてみましょう。(グラフを3次元空間の中の座標と辺で表現することを「三次元空間へのグラフの埋め込み」と呼びます。) 辺が交差してしまう条件は、7点のうちの4点が同一平面上に存在するときです。 なので7点のうちのどの4点の組み合わせを考えても同一平面上にならないように7点の配置を決めればよいことになります。

 さて、このK7 のグラフで、全ての頂点を1回ずつ巡って戻ってくる経路を考えます。(ハミルトン閉路と言います。)Fig.2 は、K7 の三次元空間への埋め込みの例で、ハミルトン閉路が三葉結び目(Trefoil Knot)になっている例を示しています。緑の細い線を含めて、完全グラフの全ての辺を表しています。

Fig.2 : 3D embeddinng of K7

 この図はIntrinsically Knotted Graphs からの引用です。このページにも書かれていますが、コンウェイとゴードンが1983年に、三次元空間に埋め込まれた7点の完全グラフのハミルトン閉路のうち少なくとも1つは自明でない結び目になっていることを証明しているのだそうです(Knots and Links in Spatial Graphs)。 先日亡くなったコンウェイの名前がこんなところにも出てきました。

 結び目を解析するソフトウェア WinKnot を使って、このグラフが自明でないことを調べてみました(Fig.3)。

Fig.3

 これが 3 x 3 x 3 の格子点の頂点に配置されているというのがいいですね。自分でもCGを作ってみました(Fig.4)。

Fig.4

 もう少し、ぱっと見て三葉結び目だとすぐにわかるかたちがいいなあと思って作ってみたのがこちらです(Fig.5)。7箇所の頂点の位置と、色と太さを少し変えました。

Fig.5

 これ、何か実物で模型を作ってみたら面白そうだなあと思いました。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 今シーズンも地下室の除湿器の運転を始めました。






6月7日(日) 7線分の三葉結び目の模型を作ってみる

 昨日のこの結び目、

 手持ちの材料で何か模型が作れないかなと思って考えてみました。最近あまり登場する機会がないジオシェイプス(GeoShapes)を使ってみようかなと思いました。

 外側の立方体の枠はジオシェイプスで作って中にひもを張る構造にすることにしました。頂点の部分は枠の外側でビーズを通して固定することにしました。これならば頂点の位置を変えることができます。

 作ってみたらこんな感じになりました(Fig1, Fig2)。

Fig.1 Fig.2

 外側の枠の存在感が大きすぎて、主役であるはずの中の「ひも」がよくわかりません。ジオシェイプス、単色で作れればいいのですけれども、同じ色がそんなにたくさんないのです(もう正方形パーツは数個しか残っていない)。特に、ひもと同じ色である緑を使わざるを得ないのが致命的です。



 次に、紙で立方体の枠を作って、主役の結び目はストローに糸を通したもので構成してみることにしました。

 こちらはこんな感じになりました(Fig3, Fig4)。

Fig.3 Fig.4

 これまた気に入らない模型になってしまいました。敗因は「すごく太いストローしかなかった」ことかなあと思いました。枠と中身を入れ替えて、ジオシェイプスのほうにストロー、紙の立方体に緑のひも、という組み合わせにすれば、もう少し美しい模型になるかもしれません。その場合、ひもの頂点の固定の仕方は一工夫必要ですが。

 まあそれでも実物を立体として作ってみるのは面白かったです。



 今年の2月に、こんなテンセグリティ構造を作ってみたということをご紹介しました。

 この構造を面白いと思う方が多いようで、最近、tensegrity table という画像や動画をたくさん見かけるようになりました(Linkはgoogle検索です)。

<おまけのひとこと>
 ここ数日、朝4時くらいからカッコウがさかんに鳴いています。我が家は寒冷地なので、寝室の窓は二重サッシにしていて、そのうち外側の窓はペアガラスです。それでもかなり大きな声が聴こえます。






6月8日(月) 絡み合う2つのリング多面体

 こんな多面体模型を作りました(Fig.1, Fig.2)。

Fig.1 Fig.2

 一見、錯視図形っぽい感じもしますが、それを狙ったわけではなくて、あくまでもこのかたちが作りたかったのです。この画像だけからこのかたちを理解することはできないと思うので、今週はこのかたちに至った経緯を少し書きたいと思っています。



 Fig.1、Fig.2 のかたち、六角形の環が2つからんだかたちをしています。素直に六角形の環の多面体を考えるとこんなかたちが思い浮かびます。JOVOブロックで作ってみました。

Fig.3 Fig.4

 ボルト・ナットのナットみたいなかたちです。ナットは内側は六角柱ではなくて円柱で、ねじが切ってありますが…

 この図の六角形の環は、単位となる正三角形18枚(3枚 x 6辺)でできています。側面はすべて正方形を使っています。ペーパーモデルの六角形の環の多面体は側面は垂直ではないので、このかたちとは異なります。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 昨夜は窓を開けたまま寝てしまいました。まずい…






6月9日(火) 4種類の平行六面体

 昨日、こんなかたち(六角形の環が2つからんだかたち)の模型をご紹介しました。(Fig.1 : 昨日とはまた違う視点の画像です。)

Fig.1

 これがどんなかたちなのかを説明する準備として、下の図のような4種類の平行六面体(菱形六面体)を作ってみました。面のかたちは正方形か、正三角形2枚の菱形か、どちらかです。稜の長さは全て同じです。

Fig.2 : 4 types of parallelepiped

 左から「正方形6枚」「正方形4枚+菱形2枚」「正方形2枚+菱形4枚」「菱形6枚」の平行六面体(菱形六面体)です。このなかで、右側の2つが面白いなあと思うのです。



 右の2つのCGを作ってみました。片方の多面体は正方形の面が2面あります。もう片方は全ての面が合同な菱形です。

Fig.3 Fig.4

 ・・・と言われても、わからないですよね。それぞれの8つの頂点は三次元直交座標の格子点上にあるので、座標系を描き加えてみました。

Fig.5 Fig.6

 いかがでしょうか。どんなかたちなのかイメージできますか? この2つの平行六面体、実は体積が同じなのです。そして、片方をいくつかに切り分けて並べ替えると、もう片方の多面体を作ることができるのです。どう切り分けたらいいかわかりますか?

(つづく)

<おまけのひとこと>
 以前数学協会の年次大会でお目にかかったことのあるTさんからご連絡をいただいて、その後の研究の成果を郵送していただきました。とても感激しています。今週末に作ってみて、ご紹介をしたいと思っています。(昨日も、家を出たのが朝6時前で、帰宅は夜8時半くらい、平日はなかなか時間が取れません。)






6月10日(水) 2つの平行六面体の構成要素

 昨日の2つの平行六面体の構成要素の話をしたいと思います。まずはこちらの菱形六面体です。

 単位立方体の 2 x 2 x 2 の格子を考えて、その上半分に内接する正四角推(底面が正方形で4つの側面が正三角形)、いわゆる「ピラミッド」のかたちを考えます(Fig.1)。この正四角推2つを、底面の正方形を貼り合わせて作れるのが正八面体です(Fig.2)。

Fig.1 : pyramid Fig.2 : octahedron

 一方、Fig.3 のように、単位立方体に内接する正四面体を2つ配置します。これは実は先ほどの正八面体にぴったり接するのです。(頂点が同じなので)

Fig.3 : 2 tetrahedra Fig.4 : rhombic hexahedron

 こうしてできたのが冒頭の菱形六面体でした。



 一方、もう片方の「正方形2枚、菱形4枚」の平行六面体も同様に分解してみましょう。

 今度は「ピラミッド」をFig.5 のように配置して、2つ目の「ピラミッド」は反転させてFig.6の位置に配置します。

Fig.5 : 1 pyramid Fig.6 : 2 pyramids

 正四面体2つは、ここに置きます。

Fig.7 : 1 tetrahedron Fig.8 : 2 tetrahedra

 これを全部合わせたものが目的のかたちになっています。

Fig.9



 ということで、正四角推(ピラミッド)1つと正四面体1つを合わせたものがユニットになっていて、それ2個の繋ぎ方で、2種類の平行六面体が作れるのです。なので当然体積も同じです。

Fig.10 Fig.11

 面白いなあと思うのですが、いかがでしょうか。(「いかがでしょうか」と言われても困るか…)

(つづく)

<おまけのひとこと>
 同じようなことを以前も書いたような気もするのですが、過去ページをちょっと検索しても見当たらなかったので今日はこの内容にすることにしました。自分がこういう図を眺めるのが好きなので、図をじっくり眺めて「なるほど」と思って下さる方がいたらいいなあと思っています。






6月11日(木) 斜六角環柱

 今週ご紹介している三次元の直交格子の格子点を頂点とする正三角形と正方形を組み合わせた多面体ですが、そもそもは斜めになった六角形の環の多面体を説明するのが目的でした。今日はようやくその説明にたどり着きます。



 昨日も登場したかたちですが、正四角推(ピラミッド)と正四面体(正三角錐)を1つずつ合わせた五面体を考えます(Fig.1)。これを2つ並べると平行六面体になります(Fig.2)。このかたちの上下の面だけが正方形です。

Fig.1 Fig.2

 さらにもう1つ追加します(Fig.3)。このかたちは六面体です。正方形の面が1つ、正方形2個をつないだ長方形が1つ、菱形が2つ、等脚台形が2つです。内部の余計な稜を消すとFig.4のようになります。これを斜等脚台柱と呼ぶことにします。

Fig.3 Fig.4



 この「斜等脚台柱」2つと、菱形六面体6つでできるのが 斜六角環柱 です(Fig.5)。ようやくこのかたちが説明できました。

Fig.5

 このかたちは、六角形の環は平面上にあって、正三角形を18枚つないだかたちになっています。側面は環の内側に正方形の面が2つ、環の外側に長方形の面が2つありますが、それ以外は正三角形で構成される菱形や平行四辺形の面になっています。



 斜六角環柱をこんなふうに区切ってみると、また面白いです。これは合同な五面体18個に分解したものです。

Fig.6

 1つ1つの五面体は、ピラミッドと正四面体を組み合わせた、今日のFig.1のかたちです。



 そして、斜六角環柱の環の内側の正方形どうしが接するように配置してみると、絡み合った2つのリングの構造になります。

Fig.7

 これは最初に作ってみた2つの環のCGなのですが、じつはこれ、今週冒頭にご紹介した模型とは違った形になってしまったことがわかりました。

 何がどう違うのでしょうか?

(つづく)



 Go Knots 3D というパズルのアプリをやってみました。

Fig.8

 最初のうちは易しすぎますし、広告が多くて、パズルを解いている時間より広告を再生している時間のほうがずっと長い感じです。(なのでその間は別のデバイスで別のことをしています。)でも、LEVEL 80とかになってくると、少し楽しいです。

 それなりの物理シミュレーションをしているようで、ちゃんと解けている(完全にひもが取り除ける条件を満たしている)はずなのに、システムがそのように認識してくれないことがあったりとか不満もありますが、でもこういうゲームができるのは面白いです。ユーザーの評価は極端に二分されているようですが、どちらの意見もわかる気がします。

<おまけのひとこと>
 左手の親指がしびれる症状が悪化して、かなり痛みが出てきました。でも以前受診した整形外科では「治りませんよ」と言われているので、どうしたものかと思っています。この症状の出方はおそらく末端の指の周辺でも脳でもなく、途中の神経の経路のどこか(脊髄とか)に問題があるのだろうという感じです。(素人の仮説ですが)






6月12日(金) 斜六角環柱2個の絡み目

 月曜日に紙模型の写真でご紹介した、斜六角環柱2個の絡み目がどんなかたちなのか、今週はずっとご紹介をしてきました。最終回の今日は2個の絡み目のCGと型紙の図をご紹介してこの話題を終わりにします。



 昨日のCGと今回作った模型が何が違うのか、2つのCGで比べてみました。

Fig.1 Fig.2

 この2つはちがうかたちです。上側のリングを固定して、下側のリングの向きを垂直軸回りに180°回転させています。今回の模型は Fig.2 のほうのかたちにしたのでした。

 Fig.1 や Fig.2 は、片方のリングの長方形の面が床に接するように置いた姿勢になっています。この姿勢は実物では実現しません。(転んでしまいます。)実物はいろいろな向きに置くことができますが、その中でも気にっている姿勢のCGを作ってみました(Fig.3, Fig.4)。

Fig.3 : parallel projection Fig.4 : perspective projecton

 Fig.3 が平行投影法で、Fig.4 が透視投影法で描画したものです。古典的なCGにならって床面を市松模様にしています。こうすることで投影法がよくわかります。

 Fig.4 のCGは、先日ご紹介したこの画像に似ていると思います。



 この紙模型は、こんな型紙を2組用意して、それを組み立てました。この図では「のりしろ」は付けていません。赤い太線はカットします。

Fig.5

 写真でご紹介したモデルはA4の用紙に型紙2組を配置して印刷して作ったものです。ちょっと小さくて作りにくかったです。A4用紙いっぱいに上記の型紙を印刷して作ったほうが作りやすい大きさになりそうです。

 また、この型紙には完全な六角形のリングの面があります。絡み目にするためには、少なくとも片方のリングはカットする必要があります。

 正方形と正三角形を組み合わせただけのかたちですが、とても面白い多面体になります。興味がある方は作ってみることをお勧めします。また、何か多面体が作れるブロックをお持ちでしたら、それで作ってみても楽しいです。(パーツの数はけっこう必要ですが。)お勧めです。



 立方体を4つの平面で切断して、少し隙間をあけたようなデザインの bluetooth speaker がありました。Cube Portable Bluetooth Speaker という製品です。デザインが素敵です。スピーカーは使わないので買いませんが、多面体をいくつかの(ランダムに見える)平面で分割する、というのは面白そうです。

 上記の商品紹介のページの写真のいくつかを見ると、一見ランダムにカットされているように見えますが(Fig.6)、実は特定の面からみると対称性が見えます(Fig.7)。きれいな正三角形ですね。しかもこの正方形の面の対角線に対して対称になっています。

Fig.6 : random ? Fig.7 : equilateral triangle

 一見ランダムっぽく見える、でも規則性と不規則性のバランスがすばらしいデザインだと思いました。

<おまけのひとこと>
 そういえばこのページのアクセスカウンタが68万を越えました。20年でこの数字ですから、平均するとおおよそ1日当たり100ということになりますが、最近はその半分くらいです。ありがたいことだと思っています。






6月13日(土) 武純也さんの紙鎖多面体

 先日ちらっと書きましたが、以前、数学協会の年次大会でお目にかかった武純也さんから、紙鎖多面体をいただきました。週末を待ちわびて、今朝の午前2時ころから組み立ててみました。今日は写真だけご紹介します。

Paper Chain Polyhedra (Junya Take)

 解説は明日(以降)書きたいと思います。

(つづく)



 昨日でご紹介してきた斜六角環柱の絡み目をJOVOブロックで作ってみました。確か写真を掲載していなかったと思うのでご紹介しておきます。

Fig.2 Fig.3
Fig.4 Fig.5

 これはとても気に入ったので、おそらく当分の間は分解せずに飾っておくつもりです。

<おまけのひとこと>
 今日はこれから神経内科を受診してみようと思っています。






6月14日(日) 工藤清さん、武純也さんの紙鎖ループ菱形十二面体

 昨日ご紹介した紙鎖多面体のひとつである「紙鎖ループ菱形十二面体」を少し詳しくご紹介します。写真左側が組立前、右側が組立後、です。

Paper Chain Loop rhombicdodecahedron (Kiyoshi Kudo/Junya Take)

 これを製作して送って下さった武純也さんによると、このデザインは手づくりおもちゃの科学館工藤清さんのアイディアだそうです。

 紙鎖多面体というのは、もともとは正方形4枚の輪を3つ、鎖状につないだものから立方体を作るというパズルで、広く知られていると思います(図は2010年4月23日のものです)。

Paper Chain Cube (traditional)

 これはこんな風に組み立てることができるのですが、

How to assemble a cube from "paper chain".

 正方形の筒を回転させることで、表面に現れる面のパターンを変えることができるのです。

 さらに、正方形を菱形に変えて、菱形六面体を紙の鎖で作ったとき、同じ鎖から鋭角型と鈍角型の2種類の形状が作れること、さらにいずれも2種類の色を表面に出すことができることを過去にご紹介しました。2010年5月12日あたりから説明をしています。これ(2種類×2色の菱形六面体が同じ鎖から作れること)は私のオリジナルではないかなあと思っています。

 この紙鎖多面体、いろいろな発展が考えられるのですが、武純也さんから頂いた、工藤さんのアイディアで作られた菱形十二面体は、鎖がループしています。菱形6枚の輪が4つ、下の図のように絡まっています。

loop chain (4 elements)

 6枚 x 4本 の輪っかの色分けは以下のようになっています。

Color coding of parts(Kiyoshi Kudo/Junya Take)

 これをループ状に閉じた鎖の状態にしてうまく組むと、全ての面が緑の菱形十二面体と全ての面が黄色の菱形十二面体を作ることができます。こういうものを作り慣れている(はずの)私がやっても、ちょっと手こずりました。作るのはとても楽しかったです。「ループしていても組めるのだ」というところがとても新鮮でした。ありがとうございました。

(つづく)



 ちなみに、立方体を2色に作り分ける鎖はこんな塗り分けが必要でした。

Color coding of "paper chain cube".

 これを鎖にするとき、真ん中の 2色-2色の帯の輪を中央にしないと、全部の面の色をそろえる組み方ができません。(1色は揃えられるはずですが。)

 今回の菱形十二面体、鎖の組み方を変えても作れるのだろうか? というのがちょっと疑問に思いました。



 武さんはさらに紙鎖多面体の研究を進めていらっしゃるそうです。とても楽しみです。

<おまけのひとこと>
 日曜日で雨が降っていて、のんびり更新していたら11時くらいになってしまいました。






6月15日(月) 武純也さんの紙鎖(直線型)菱形三十面体

 武純也さんからいただいた紙鎖多面体のもうひとつ、「紙鎖(直線型)菱形三十面体」を少し詳しくご紹介します。まずは完成写真です。

Fig.1 : Paper Chain Rhombic triacontahedron (Junya Take)

 菱形三十面体も、過去にいろいろな素材で作ってみました。たとえばこちらとかこちらとかです。

30 Unit Origami model, 60 unit card model model woven paper band

 上の図の右の、紙の帯を編んで作る菱形三十面体が、今回の紙鎖菱形三十面体に近い設計思想のものです。でも、紙の帯を編むほうはパーツはバラバラなのでずっと作りやすいですし、帯は必ず1面ごとに多面体の外側・内側・外側・内側…と「編む」構造になるため形が安定して仕上がりがきれいになります。

 一方、紙鎖多面体のほうは輪っかの鎖になっているため、パーツを望む位置にもってくるのがちょっと大変です。また、各パーツ(輪っか)の面のうち、ほとんどの面が内側に隠れるものもあれば、逆にほとんどの面が外側に出る面もあります。そのため形が整いにくいです。ただし、パーツのトポロジカルな位置関係は鎖の形で決まっているので、パズルとしてはこちらのほうが優れていると思います。

 組立前の鎖の状態の写真です。 

Fig.2 : Paper Chain for Rhombic triacontahedron (Junya Take)

 同じ鎖を2セット頂いているのですが(ありがとうございます)、いずれも帯の色分けは同じです。直線型の鎖を構成する10個の黄金菱形はこんな風に色分けされています。

Fig.3 : Color coding of parts(Junya Take)

 たいへん驚いたことに、2つの色は対称ではないのです。つまり、「同じ色が外側になるように組みなさい」という問題を考えたとき、水色とピンクでは問題が異なるということになります。

 武さんからは組立手順のテキストも同封していただきました。それを見ながら組んだのですが、それでも大変でした。組むのはとても楽しかったです。

 さらにもう1セット、菱形二十面体の紙鎖モデルも送っていただいてあるのですが、これはまだ組み立てていません。



 私もこの鎖の構造を少し考えてみようかな、と思いました。平面上に図を描いて考えることができると少し楽になります。菱形三十面体の平面へのマッピングとして、以前こんな図を計算して作ってみたことがありました。

planar expression of rhombic triacontahedron

 これは稜を直線で表していますが、昨年12月にこんな図をご紹介したことがありました。

planar expression of rhombic triacontahedron

 魚眼レンズで菱形三十面体の中を撮影したような図です。そういえばそういう写真を撮ったことがありました(2003年8月26日)。

insade image of rhombic triacontahedron taken with a fisheye lens

 自分がいろいろ試すために、次のような画像を作ってみました。

Fig.4 : planar expression of rhombic triacontahedron

 この画像をローカルにコピーしていただくと、画素数が 512 x 512 になるはずです。ペイント系のソフトで面に色をつけていくと、いろいろ遊べると思います。お試しください。(敢えて 24bit color で保存しています。)

<おまけのひとこと>
 今日の更新の過去ページへの参照先は古いものが多いです。いい加減、もっと検索性の高いコンテンツ構造にしたほうがいいのだろうなと思うのですが、まあでもそれを利用するのが主に自分だと思えば、今のgoogleのサイト内検索に頼る、という方法で構わないか、と思ってしまいます。






[←2020年5月後半]  [↑表紙へ]  [2020年6月後半→]

[Home]-[以前のひとこと]-[2020年6月前半]
mailto:hhase@po10.lcv.ne.jp
2001-2020 hhase