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以前の「ひとこと」 : 2020年3月前半



3月1日(日) 騎馬戦組手工法の格子天井(その1)

 2月9日のひとことの後半で、清和文楽館の棟に用いられている「騎馬戦組手工法」というのがあるということをちょっとご紹介しました。この格子構造がとても興味深かったので、自分でも模型を作ってみたいなと思ったのです。まずは構造を理解するためにCGを作ってみました。 少し大きな画像ですが、気に入ったものが出来たのでご紹介します。

図 1

 構造の理解のためなので、構造材を赤・青・黄・緑の4色にしてみました。図1は天井を下から見上げているイメージです。照明は下からではなく、格子構造の上からあたっていることにしているため、色がくすんでいますが、いかにもそれらしい雰囲気の絵になって喜んでいます。

 実物の画像です。

再掲図 図 2

 図3が平行投影法で部分的に見てみたところ、図4はもう少し広い範囲を見てみたところです。 

図 3 図 4

 だいたいイメージはつかめました。このCGのデータを基に紙の模型を設計してみます。

(つづく)



 EE Times Japanなどで、大変興味深いコラムをたくさん書かれている江端智一さんという方がいらっしゃいます。私はこの方のコラムや、ご本人のwebサイト こぼれネット に日々書かれている日記をよく読ませていただいています。 (先日、ちょっとした感想をメールでお送りしたのですが、お返事をいただけました。ありがとうございました。)

 その、2月24日の日記 にこんなことが書かれていました。

 私達のほとんどは、「核分裂」と「核融合」と同程度に、「細菌性疾患」と「ウィルス性疾患」、「飛沫感染」と「空気感染」の違いを認識できていません。
 というか、(私が記憶している限りでは)そもそも、私達、そういう教育を受けていません。

 そうなのですよね。(まあでも上記のようなトピックは私はたまたま知っているつもりですが、自分は常識がないという自覚はあります。)

 例えば今回の新型コロナウイルスで、コロナビールが風評被害を受けているのだそうです。 驚きです。

<おまけのひとこと>
 3月になりました。






3月2日(月) 騎馬戦組手工法の格子天井(その2)、他

 昨日、CGでご紹介した構造を紙で作ってみました。最初に写真をご紹介します。

図 1

 視点を下げてみます。(実はこれは反対側から見た画像です。)

図 2

 「騎馬戦組手工法」の凹凸感が見えて面白いです。

 ほぼ真上から見下ろしてみました(図3)。格子になっているのがわかると思います。

図 3

 パーツの柱は2×3×24という寸法にしました。パーツは12度回転させました。格子の単位は9にしました。(この情報で騎馬戦組手構造は一意に決まるはずです。)CGでパーツを描いてみました。

図 4

 上のCGを各軸方向から見た図を基に、パーツを設計しました。このパーツは2:1の長方形にぴったり納まる寸法です。(横が24、縦が2+3+2+3+2=12です。)A4の用紙はおおよそ3対2なので、パーツ12枚を配置すると用紙の効率が良いです。

図 5

 明日はもう少し(余計な)写真をご紹介します。

(つづく)



 今手元にある、ご紹介しようと思っているネタのストックを数えてみました。ネタのストックは10トピックくらい、トータルで30日以上のストックがあることがわかりました。問題は、思い付いた直後は「面白い!」と思っているのですが、時が経つにつれて「あんまりたいした話題ではないな」と妙に冷静になって、そのままお蔵入りになることです。

 というわけで、今日は単発の小ネタをもう1つご紹介します。こんな問題を見かけました(図5)。中心角が直角の扇形(円の4分の1)の中に小さな円があって、扇形の半径に接しています。その半径と平行な線(青い線)が円に接していて、その長さは8です。このとき、縦線の部分(扇形−円)の面積を求めなさい、という問題です。

図 5

 最初に見たとき「え、条件これだけ? 数字が足りなくない?」と思いました。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 この更新のテキストは3月1日(日)の16時過ぎに書いています。日曜日の夕方はちょっと気分が沈みます。妻が階下のピアノの部屋で弾き語りをしています。「涙そうそう」とか武満徹の「小さな空」が聴こえてきます。いい演奏だなあと思います。妻は音楽の専門教育を受けていて、私の音楽に対する態度とは真逆で、コツコツとトレーニングや練習、身体づくりの運動を欠かしません。定期的なレッスンで先生にみていただく機会があるわけでもなければ(そういう機会がないのも申し訳ないと思っています)、どこかで発表する機会が決まっているわけでもないのに、本当に真剣に真摯に音楽に向き合っています。

 下から聴こえてくるピアノが、ブラームスの晩年の小品の間奏曲(インテルメッツォ)op.118-2に変わりました。これも夢のように美しい曲です。 その後、ショパンのバラード1番に変わりました。バラードの1番(op.23)、本当に素晴らしい曲です。ショパンは好きな作曲家ベスト5には必ず入るのですが、そのショパンの作品の中でも、好きな曲ベスト10に入る曲です。練習なので、細部を確かめるように弾いているのですが、自分の家の中で、本物のピアノがこの曲を確かめるように鳴っているのを聴くことができるのは本当に幸せです。

 自分でこの曲を弾くことはとうの昔に諦めました。もはや自分が弾きたかったと思うこともなくなりました。この曲をこうして自宅で聴くことができて感謝です。






3月3日(火) 騎馬戦組手工法の格子天井(その3)、幾何の問題

 騎馬戦組手工法の格子天井の話の最終回です。模型の設計のために描いたCGは、中身の詰まった直方体に色を付けて描画していましたが、白い筒のCGも作ってみました(図1、図2)。

図 1 図 2

 CGでは照明もカメラの視点もレンズもいくらでも設定が可能です。静物の写真を撮る面白さを仮想空間で味わっているような感じです。

 模型のほうもかなり近寄って写真を撮ってみました(図3、図4)。

図 3 図 4

 ちょっとジョイントがゆるくて、外れ気味になってしまっています。でも、自分としては面白い写真が撮れたと満足しています。やっぱりCGより実物の模型のほうがいいなあと思います。



 さて、昨日の面積を求める問題です。明かされている情報は、図の青線の長さだけで、ここから縦線を引いた部分の面積を求めなさいというものです。

問題図

 以下の議論のために、大きな4分の1円の半径を R、小さな白い内側の円の半径を r、と表記することにしましょう。 まず、これがマークシート方式のテストで出題されて、答えさえ合っていれば途中経過はどうでもよいとしたらどうしましょうか。 小さな円の位置はおろか、半径も明かされてないということは、r=0 でもおそらく成立するのでしょう。この場合、R=8 ですから、半径8の円の4分の1の面積ですから答えは 82π/4 = 16π、と簡単に求まります。

 …いくらなんでもこれは乱暴なので、ちゃんと考えてみましょう。図5のように、大きな円の中心と青線の両端を結んだ三角形を考えます。

図 5

 これは直角三角形になります。斜辺はR、直角をはさむ2辺は、片方は明かされている長さ8、もう片方は小円の直径になりますから2rです。そうすると、Rrの関係が三平方の定理で記述できます。

 それでは求める面積を計算してみましょう。R264+4r2 で置き換えて計算すると、なんと r が消えるのです。

 つまり、図の長さ8の青線を固定しておいて、そこに接する白い小円の大きさを変えてゆくと、それに伴って大きな4分の1円も大きくなってゆきます。でもその面積の差はいつも一定なのです。面白いなあと思いました。

<おまけのひとこと>
 このページのhtmlファイルはテキストエディタで直接編集しているのですが、しばらく前からエディタとして Visual Studio Code を使うようにになりました。タグを書くと自動でタグを閉じてくれるのがいいです。今日のように、文字を太字(ボールド)にしたり、二乗の添え字を書いたりするのがすごく楽になりました。






3月4日(水) 一見「六本組木」に見える構造(その1)

 アーテックブロックを使って、こんなかたちを試作してみたのです(図1)。

図 1

 一見、断面(木口)が1×2、長さが5の短冊状の板6枚を組んだかたち、もしくは断面がL字型の柱3本を組んだかたちに見えますがそうではありません。 

 特別な視点から見てみました(図2、図3)。

図 2 図 3

 よくわからないと思うので、CGも作ってみました。図4が無地(全部白)のもの、図5が3色に色分けしたものです。実物とは色の配置が違ってしまいましたがご勘弁ください。

図 4 図 5

 さて、これがどんなかたちなのかわかりますか? 図5の隙間にわずかに見えている色がヒントです。 アーテックブロックでつくったものも、ブロックのジョイントの連結を外したりせずに6つに分解したり組み立てたりすることができます。ただし平行移動だけではダメで、回転が必要です。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 通勤途上の事故の情報などが会社で共有されるのですが、対向車が荷崩れを起こして足場板が自分の車のフロントガラスを直撃した、という恐ろしい話をききました。幸い、物損事故で済んで人的な被害はなかったのだそうです。そういうことも身近にあるのだな、と思いました。油断しないようにはしますが、どうしようもない状況というのもあるのだろうなと思います。

 職場でも学校休校に伴う対応策についていろいろと方針や指針が出始めました。中学生以下の子どもがいる家庭が対象なので、私は対象外です。でもこの機会にテレワークとかが進むと良いのではないかと思ったりもしています。(そうはならなそうですが)






3月5日(木) 一見「六本組木」に見える構造(その2)

 さて、昨日の「一見六本組木に見える構造」ですが、お気づきの方もいらっしゃったかもしれませんが、これは1月27日のひとことでご紹介したGalaxy Craft #156をベースにしたものです。

再掲図 1

 これは、自分自身の鏡像とは重ならない、「右手型」と「左手型」がある(キラルな)かたちです。下の2つの図のように互いに鏡像になっている2セットを用意して、これを重ねることで昨日の疑似六本組木のかたちができたのです。

再掲図 2 図 1

 上の左側(再掲図2)の手前に右側がぴったりはまるとき、右側の3色のパーツがそれぞれどんな位置になっているのか、図を作ってみました(図2〜図4)。

図 2 図 3 図 4

 アーテックブロックによる模型のパーツの写真です(図5)。

図 5

 実はこのかたち、真ん中に単位立方体1つ分の空洞ができています。それを確認するために小さな立方体を仕込んでみました。組み上がると見えませんが、自分で納得できます。

図 6

 合同なセットだとうまく重ならず、片方を鏡像にするときれいに組めるのが面白いです。



 実は最初に鏡像の画像を作ろうとしたとき、単に基の画像を反転して用意しようかと思ったのです。で、ちょっと操作を誤って、左右反転にするつもりが上下反転をしてしまいました。そうしたらこんな図になりました(図7)。

再掲図 2(再) 図 7

 なんだか凹凸が逆に見えませんか?

(つづく)

<おまけのひとこと>
 昨日は職場で昔直属の上司だった方お二人とそれぞれ少し長くお話をする時間がありました。もうすぐ終わる今年度を振り返っていろいろと凹むことが多かったのですが、おかげさまで元気が出ました。ありがたいです。






3月6日(金) 「ふしぎなえ」風な画像、他

 昨日の最後にこんな図を表示して、「凹凸が逆転してみえる」という話をしました。

 その印象を強調するにはどうしたらいいかなと思って、人のシルエットを配置したらどこが床でどこが壁なのかという認知を誘導できないかな、と思いました。安野光雅の「ふしぎなえ」とか、エッシャーの作品とかにも小人が出てきますが、その手法の真似です。こんな感じになりました。

図 1 図 2

 いかがでしょうか、それっぽく見えるでしょうか。

 もともとの構造をモノクロにして、角度を少し変えてみました(図3)。こうすると凹凸の見方が、どちらかが一方的に強いという感じではなくなってくるように思います。

図 3

 赤いシルエットと青いシルエットを置いてみました(図4、図5)。赤のシルエットが凸の印象、青のシルエットが凹の印象を誘導しているつもりです。

図 4 図 5

 両方を同時に置いてみました(図6)。

図 6

 うーむ、人が大きすぎますね。ちょっと調整してみました(図7)。

図 7

 こちらのほうが若干ましかな…。 でも今度は縁に座っている人とか、階段とかはしごとかが欲しくなったりしますね。でもそんな「絵」を描く技術は私は持っていなのでここまでにすることにしました。お手軽にできるのはこのくらいまでのようです。



 昨年の9月のNew Scientist という雑誌の記事に、Mathematicians find a completely new way to write the number 3(数学者は3を表す全く新しい方法を見つけた) という記事がありました。巨大な正負の3つの整数の3乗を足すと3になる式が見つかったのだそうです。同様に、42になる式も見つかったのだそうです。こういうときにはいつもお世話になっている高橋英明氏の「多倍長電卓 LM」を使って確かめさせていただいています。計算してみました。

図 8

 なるほどすばらしいです。それぞれの数字をコピー&ペーストできるように、テキストでも掲載しておきます。

5699368212219623807203 + (-569936821113563493509)3 + (-472715493453327032)3 = 3.
(-80538738812075974)3 + 804357581458175153 + 126021232973356313 = 42.

 面白いです。

<おまけのひとこと>
 だいぶ日が長くなってきました。最近は朝6時前くらいに家を出て、職場には7時前くらいに着くということが多いのですが(ちなみに起きるのは2時〜3時くらい、朝食が4時半くらいでそのあとでシャワーを浴びたり家の中を整えたりして出かけます)、今は家を出る時間には回りは明るいですし、職場につくときには日の出を過ぎています。おかげで東向きに走る区間(ほとんどないですが)ではまぶしいです。春だなあと思います。






3月7日(土) 不思議な割り算

 昨日、久しぶりに多倍長電卓LMを使った計算をご紹介したら、作者の高橋さんからメールをいただきました。いただいたメールには、私がLMを紹介させていただいたことへのお礼や、高橋さんご自身はLMを使われることはほとんどなくなったことなどを書いていただいてありました。嬉しいです。ありがとうございます。改めて過去の自分のページを検索してみると、高橋さんからLMを教えていただいたのは2003年の1月ですから、もう20年近く前になります。その後この「あそびをせんとや」では、桁数の多い数値計算の面白い例があると、LMを使ってご紹介をしてきました。

 私がLMをいまだに愛用させていただいている理由はいくつもあります。入力した式と結果が対比して見えること、入出力がテキストとして簡単にコピー&ペーストできること、C言語のような関数を定義して使えること、出力の書式を簡単に制御できること、などです。演算とその結果を対比してわかりやすく表示することができるのが魅力です。

 例えば最近やってみた、こんな割り算がありました。archimedes-lab.comというサイトのどこかで見たのですが、記録しそびれました。

図 1

 これは、999,999,999,999,999,999,999,998,999,999,999,999,999,999,999,999 の逆数です。一見、9が48個並んだ数字に見えますが、真ん中あたりの1か所だけ 8 になっています。この割り算の計算結果を表示すると、ご覧のように1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,… という数字の並びが24桁ごとに現れているのがわかります。お気づきかと思いますが、これはフィボナッチ数列です。(LMの表記の都合上、小数点以下の無駄なゼロの並びが e-48 という表記で省略されていますので、実はこの数列の前にはちゃんと 0 と 1 があります。)実に面白い、驚くべき結果です。もちろんこれは偶然などではなく、ちゃんと理由を説明することができます。

 LMを使うと「24桁ごとにスペース」「48桁ごとに改行」といった設定が簡単にできて、こういった結果をわかりやすく表示することができるのです。計算結果の表示を加工して作るのではなく(それだと写し間違いや書き間違いがあるかもしれません)、計算結果そのものをキャプチャして表示している、というのは自分としては安心感や納得感があるのです。

 ちなみに、全部が9(9が48個並んでいる数の逆数)だったらどうなるでしょう? 1/(10^48-1) と表記するほうが間違いが少ないと思います。今回の数値(途中の1か所だけが8)も、 1/(10^48-10^24-1) と入力するほうが間違いが少ないと思います。多倍長の計算ができる環境をお持ちでしたら(私は多倍長電卓LMをお勧めしますが)、ぜひ試してみてください。ついでに、1/(10^24-10^12-1) とか、1/(10^12-10^6-1)(=999,998,999,999)とかやってみると気が付くことがあると思います。

 実は今日の「不思議な割り算」は、もとになっているのは2004年8月16日で書き始めた、雑誌「数学セミナー」の記事「1/89の不思議」(萱場修:数学セミナー vol.43 no.9 pp.53-55)でした。ちゃんと説明しようとするとけっこう面倒なので、解説を書かずに終わっていたトピックだったと思います。すみません。

<おまけのひとこと>
 例によって朝早く起きて今日の更新分を書いてあったのですが、サーバにアップするのを忘れていました。






3月8日(日) バレーボールとビーチバレー、アニメーションの錯視

 「ハイキュー」というバレーボールのマンガがあります。その中にビーチバレーの話が出てきました。このあたりを読んでいて、普通のバレーボールとビーチバレーの関係が、西洋音楽の古典派以降(いわゆるクラシック)と古楽(いわゆるバロック音楽)の関係、特にモダン楽器と古楽器の関係によく似ているなあと思ったのです。バレーボールがモダン楽器(例えばピアノ)だとすると、ビーチバレーが古楽器(例えばチェンバロ)です。

 言いたいことは、

 「A1(ビーチバレー)とA2(普通のバレーボール)の関係」と、「B1(古楽器)とB2(モダン楽器)の関係」が似ている

ということなのですが、関係性が似ていると思った理由をいくつか書いてみます。

〇 A1とB1の類似性

 ビーチバレーは環境条件(風や足元の砂)の変化で簡単にコンディションが変わってしまいます。競技者が全く同じようにプレイ(競技)したとしても、ほんのちょっとのボールや周囲の条件の違いで、結果は微妙に(または大きく)異なります。

 古楽器は環境条件(温度や湿度)の変化で簡単にコンディションが変わってしまいます。演奏者が全く同じようにプレイ(演奏)したとしても、ほんのちょっとの楽器や周囲の条件の違いで、結果は微妙に(または大きく)異なります。

〇 A2とB2の類似性

 バレーボールは道具が洗練されていて、コンディションはビーチバレーに比べて安定しています。最高速度も速く、力強いです。人数も多く、会場も観客席も(ビーチより)広いです。

 モダン楽器は道具が洗練されていて、コンディションは古楽器に比べて安定しています。最高音量も大きく、力強いです。大人数でプレイされ、会場も観客席も(古楽より)広いです。

〇 「A1とA2の関係」と「B1とB2の関係」の類似性

 ビーチバレーと普通のバレーボールには共通点や類似点があるので、ビーチ、普通のバレーのどちらかに習熟していれば、もう片方もある程度のレベルのプレイ(競技)をすることが可能です。ただし極めようとすると両者の違いが大きく影響してきます。

 古楽器とモダン楽器には共通点や類似点があるので、古楽器、モダン楽器どちらかに習熟していれば、もう片方もある程度のレベルのプレイ(演奏)をすることが可能です。ただし極めようとすると両者の違いが大きく影響してきます。

 こういう関係性になっているものはほかにもたくさんありそうな気がします。なのですが、良い例が思い浮かびません。クリケットと野球、これはちょっとこの2つが遠すぎる気がします。フィギュアスケートペアとアイスダンス、これはちょっと近すぎる感じです。

 これ以外に、スポーツカーとクラシックカー(ヴィンテージカー、アンティークカー)、エアコンと薪ストーブ、などを思いついたのですが、上に書いた「A1とA2」に対する「B1とB2」のように同じ文章のキーワードだけを入れ換えて同様な説明ができるというところまで関係の類似性を整理できません。

 ほかにも、美術や工芸の世界、お菓子作りやお料理の世界、家具や建築の世界などでもこんな関係性がある概念がありそうな気もします。論理的な思考のトレーニングとして、またはクイズやパズルのような感覚で、こういうことを考えてみるのは楽しいと思います。



 昨日ご紹介したarchimedes-lab.comというサイトに、こんなgifアニメーションがありました(図1)。

図 1

 元のgifアニメーションはもっと大きくてカラーですが、真似をして小さくてモノクロのものを作ってみました。一見、2つの立方体が互いに逆方向に回転し続けているように見えないでしょうか? (先日の「凹凸が反転して見える画像」、妻から「そう見えない」と言われてしまって、「そうかぁ…」と思いました。認知や認識は個人差がありますよね。「文章の解説の意図通りには見えなかったよ」というコメントは大変貴重で、そういうコメントをもらえることは凄く嬉しいです。)

 錯視現象について、ときどき「人間の眼(視覚情報処理)は不正確で不完全だから誤った認識をしてしまうのだ」というコメントを見かけることがありますが、実はそれは逆だと思っています。私たちの祖先が狩猟や採集をするときや外敵から逃れるとき、たとえば一部分しか見えていないものの全体の動きやかたち、大きさを推測するということを日常的にやっている中で、視覚情報処理のシステム(視覚モデル)は進化してきたはずです。生存に有利な優れた視覚モデルを持つ個体が生き残って子孫を残す確率が高いはずなので、錯視現象というのは、優れた視覚モデルの副作用である、という解釈が正しいと思います。

 人間の目というのは本当に優秀なのです。たとえば、製造業のものづくりの現場では品質が大変重要です。品質を維持するためには、多くの場合検査が必要です。この「検査」というのがとても厄介で、速度や精度やコストの面で人間の目に勝る検査システムというのは今の技術では作れないのです。(検査の種類によっては、単純なものであれば機械のほうが優秀だという検査ももちろんありますけれども。)どうしても自動化ができなくて、やむを得ず人間が検査をしている工程というのが世界中に山ほどあると思います。

 巧妙でおもしろい錯視現象というのは、私たちの視覚モデルや視覚情報処理の仕組みを解き明かす重要な手がかりになるのです。 例えばDeep Learning 系の機械学習のフレームワークを使って「回転」を認識するモデルを学習したとして、それに図1のgifアニメーションを入力すると、「回転している」という結果を出力する可能性があるのではないかと思います。もちろん、どういう特徴量を学習したかにもよります。そこは採用する NeuralNet の構造と学習アルゴリズム、選択する学習データセットによって決まります。

 と思ってちょっと調べてみると、やっぱりありました。深層学習によって「蛇の回転錯視」の知覚再現に成功というプレスリリースです。こちらの解説記事がわかりやすいかもしれません。一方、こちらのマスコミの書く記事が酷すぎるという記事を見ると、毎日新聞の記事では、これを「AIは(人間と同様)錯視のような間違った認識(エラー)をしてしまうことがある!」と紹介しているそうです。ああやっぱり「錯視=悪・不完全」という論理ですね…

<おまけのひとこと>
 週末でお休みで時間があるものですから(お休みの日こそ嬉しくて2時とかに起きてしまって嬉々としていろいろ調べたり試したり書いたりしています)、つい長々と書いてしまいました。本当は2つ目の錯視のトピックは、画像だけを提示して解説を書かないつもりだったのですが…






3月9日(月) Mさんの穴開き三角形のマッチングルール:正二十面体

 2月24日のひとこと で、穴開き三角形のマッチングパズルの正二十面体編という話をご紹介しました。翌々日の2月26日の「おまけのひとこと」で、Mさんからこのパズルのマッチングの考え方(ルール)を変えてみたら?というご提案をいただいたことを書きました。 昨日Mさんから「解がみつかりました」というメールと解の画像を送っていただいたので、今日はそれをご紹介します。

 再度、穴開き三角形20種類の画像を載せておきます(図1)。回転させたり裏返したりしても同じにならないピースが20種類あります。

図 1

 今回Mさんからご提案いただいたマッチング条件は、「辺を共有する両側の〇の数の合計が3になること」 というものでした。

 このルールでマッチングできる例を図2にいくつか載せておきます。(三角形どうしが接していない辺は無視してください。)

図 2

 図2の (a) や (b) は穴の位置が相補的ですが、(c) や (d) のように穴の位置が合っていなくても合計が3であればOKです。このルールで、正二十面体の全ての稜の両側の〇の数が3になるように、図1の20種類のタイルを配置できるでしょうか?

 まず、必要条件から考えてみます。それぞれのタイルの辺の〇の数をタイルごとに調べてみました(図3)。

図 3

 頂点にある〇は両側の辺でダブってカウントされるので、このマッチングルールでカウントされる3辺の〇の数の合計は図3の赤い数字のようになります。正二十面体の稜の数は30なので、稜の両側の〇の数の合計が3ということは、全部で〇の数は 30×3=90 ということです。図3 の赤い数字の合計を計算してみると、ちゃんと90になっています。(たまたま、図3の縦方向の4つの数字の和が全て18になっています。5列ありますから、18×5=90 です。)

 この時点で「不可能ではない」ことがわかりました。また、詳細は省きますが、タイル20個の3辺(合計60辺)のうち、〇の数がゼロの辺が9、〇1個の辺が21、〇2個の辺が21、〇3個の辺が9、です。マッチすべき辺(ゼロ個と3個、1個と2個)の数が同じなので、この分析でも「不可能ではない」ことがわかりました。

 実は私はここで考えるのをやめて、鏡像を別タイルだとみなす24枚のセットの多面体の検討を始めたのですが、Mさんはこの条件で正二十面体に20種類を配置できることを示して下さいました。すばらしいです。(自分が見つけた答ではないので、解は今日のところは掲載しません。)



 漫画家の秋月りすの「OL進化論 38巻」がようやく発刊されたので買ってきました。4年位前に発売予定日が告知されていたのに出版されず、どうしたのかなあと思っていました。30周年だそうです。登場人物はスマホとかを使うようになっていますけれども、年代や家族構成などは相変わらずです。(登場しなくなってしまった人たちもいますが…) もはや「サザエさん」のレベルに近いのではないかと思いました。 面白かったです。

<おまけのひとこと>
 そろそろ車のタイヤ交換のタイミングを考えないといけない時期になってきました。今年は大雪は降らずに助かりましたが、「もう降らない」とはまだ言えないです。4月に入ってからかなあと思っています。






3月10日(火) 穴開き三角形のマッチングパズル:四方六面体編(その1)

 昨日予告しましたが、穴開き三角形の24種類(下図)を使って多面体の表面にマッチングすることを考えてみました。

 前回も書きましたけれども、全ての面が合同な正三角形の凸多面体のうち、面の数が最大なのが正二十面体です。正三角形24枚の凸多面体は存在しません。24枚全てを使うとすると、凸ではない多面体になります。対称性が高いデルタ二十四面体にはどんなものがあるだろう?と考えてみて、連想したのが菱形十二面体でした(図1)。

図 1 図 2

 菱形十二面体はその名の通り菱形12枚の多面体です。この菱形を二等分すると、二等辺三角形24枚の多面体ということになります(図2)。ただしこのままだと正三角形ではありませんから、無理やり正三角形24枚を図2と同じ配置にしてみましょう(図3、図4)。

図 3 図 4

 このように、立方体の各面にピラミッド(正四角錐)を貼り付けたかたちになります。凸多面体ではありませんが、24枚の正三角形による多面体になります。この二十四面体に、24種類の穴開き三角形をマッチングする配置を検討してみました。

(つづく)



 ちなみにこの(図4の)かたちですが、四角錐の高さを低くすると四方六面体と呼ばれるかたちになります。四方六面体というのは、切隅八面体(正八面体の6つの頂点を切り落とした多面体)の双対多面体です。図5が切隅八面体、図6が四方六面体です。

図 5:切隅八面体 図 6:四方六面体

 四方六面体を構成する二等辺三角形は直角二等辺三角形にかなり近い三角形ですが、図4のかたちに24種類のタイルを配置するパズルのことを「四方六面体型配置」と呼ぶことにします。



 昔、我が家の小さな庭に植えた木が大きくなりました。若いころによく考えずに面白がって樫の木とモミの木を植えたのですが、これがどんどん大きくなって、今や2階の屋根より高くなりました。昨年の台風の時など、倒れて自宅やお隣に被害があったら大変、と心配でした。また、植えたときにちょっと家に近すぎて、枝が家の壁にこすれたり、根っこが家の基礎を傷めるのでは? と心配にもなってきました。 一方、これらの木には小鳥がたくさん来るようになりました。窓から間近に見えたり、さえずり声が聴こえたりするのは楽しいです。切ってしまったらせっかく鳥が来るようになったのに、それもなくなってしまうなあと残念です。

 どうしようか…と思って、とりあえず剪定もしくは伐採の見積もりをお願いしました。 現場で木を見てもらいながらいろいろと教えてもらったのですが、結論としては背の高い2本は根元から切ってしまうことにしました。 今までも数年に一度くらいは伸びすぎた枝を落としたりしていたのですが、今後、木に登って枝を落とすといった作業は自分では難しくなるでしょう。周りに迷惑をかける要因は少しでも減らしておいたほうがいいかな、と思いました。庭にはそれほど背の高くならない木も何本か残りますし、その木にも鳥は来るので、それでいいかなと思いました。まあ鳥は警戒心が強いので(生き残るためには当然の戦略だと思います)、環境が変わったら当分の間は警戒して寄り付かなくなると思いますが。

 勤務先で、社内でそれなりに高い立場の人が交代で定期的にコラムのようなものを書いたりしているのですが、20年くらい前に「若いころに植えた木が大きくなってしまったので思い切って伐採した」という話を読んだのをよく覚えています。当時は「そんなものなのかな?」と思って読んだのですが、今はよくわかります。

<おまけのひとこと>
 妙に暖かい朝です。3月とは思えません。






3月11日(水) 穴開き三角形のマッチングパズル:四方六面体編(その2)

 穴開き三角形を四方六面体の面の位置にマッチング配置するという問題ですが、解を見つけることができました。解の立体のCGを作ってみたのでご紹介します(図1)。

図 1

 この視点からの画像だと、24面のうちピースが判別できるのは10面くらいだと思います。(おそらく明日の更新で見つけた解をご紹介する予定です。)

 この穴開き三角形のマッチングパズルを解くにあたって、プログラムを書いて力づくで解をみつけようか、それとも手作業で解いてみようか迷いましたが、まずは手作業で考えてみることにしました。

 まず、頂点の構造を調べてみます。この二十四面体は、頂点の次数(頂点に集まる三角形の数)が6の頂点が8つ(図3の赤い丸)、次数が4の頂点が6つあります。各頂点に集まる面の三角形の頂点に注目すると、全部の面の頂点に〇があるか、全部の面の頂点に〇がないか、どちらかになります。〇が集まる頂点を黒、〇がない頂点を白で塗分けることにすると、全部で14の頂点は白黒7つずつになるはずです。

図 2

 ここで、改めてピースの一覧を眺めてみましょう(図3)。今、頂点に注目して議論しているので、三角形のピースのうち、頂点の〇の数がゼロ個のピースを黄色(4つ)、頂点の〇の数が3個のピースを水色(4つ)、頂点の〇の数が1つと2つのピースを緑とピンク(それぞれ8つずつ)に塗分けてみます。

図 3

 二十四面体の三角形の面のうち、ちょうど4面は3つの頂点が黒、また別の4つの面は3つの頂点が白になっていなければなりません。それを考慮して頂点を2色に塗分けてみたのが図4です。

図 4

 投影図だと考えにくいので、立方体の展開図のかたちに描き直してみました(図5)。図の中の数字は頂点の〇の数を表しています。展開図なので同じ頂点が複数個所に描かれる場合があるため、図5の黒の頂点と白の頂点の数は7ではありません。

図 5

 これを「お手本」に、24種類のピースを並べてみました。適当にやってみた結果を図6に載せます。残り2枚というところで行き詰まりました。赤い点線の部分に2枚を配置すると、マッチしない辺が2か所出来てしまいました。(どこだかわかりますか?)

図 6

 どことどこがマッチするのかを考えながら並べてゆくのは本当に楽しいです。解が見つかるまでに1時間くらいかかったでしょうか。見つけたときはとても達成感がありました。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 大相撲春場所、応援している御嶽海が初日から三連勝していて嬉しいです。

 今日の更新の図は前日に作ってあったのですが、今朝、テキストの部分を書いていたら、図4が間違っていることに気が付いてあわてて作り直しました。間違った図では3頂点が黒の面が2面しかなかったのです。よく見ないと危険です。






3月12日(木) 穴開き三角形のマッチングパズル:四方六面体編(その3)

 穴開き三角形を四方六面体の面の位置にマッチング配置するという問題ですが、見つけた解を掲載します(図1)。図が大きくてすみません。

図 1

 正四角錐が6つ、立方体の展開図の位置に並んでいます。これは、図2のように四方六面体のような多面体にすることができます。

図 2

 図1の展開図のかたちだと、全部の稜がちゃんとマッチングしていることがよくわかりません。図2のように組み立ててしまうと、最大でも半分の面しか見ることができません。また、36本の稜のうち、両側がちゃんと見えてマッチングが正しいことを確認できるのは半分以下です。それが気に入らなくて、この多面体の内部に入ったつもりで、広角な画像を作ってみました(図3)。

図 3

 …やっぱり全体像がわかりません(視点も良くないですが)。仕方がないので90度ずつ回転させて4方向から確かめてみました(図4〜図7)。

図 4 図 5
図 6 図 7

 図の左右のピラミッドの頂点を結ぶ線を軸に、手前から奥へ回転させています。図5→図6で穴のない面(三角ですけれども、麻雀牌の「白」みたいです)がどこに移動しているのかを見ると、回転方向がわかりやすいかと思います。

 24枚の正三角形でできるきれいな多面体、ほかにもないでしょうか?

 この完成した構造を連続して回転するアニメーション画像を作りました。こちらのblog に載せましたので、よろしければご覧ください。 (2020.07.10 追記)

(つづく)



 近づくと読めなくなる不思議なひらがな 大学生が考えた『読める文字』の境目という記事がありました。大変面白いです。フォントを作ってしまった方もいらっしゃるそうで(オリジナルをデザインされた方ではないので非公開です)、ひらがな五十音の画像だけが公開されていました。その画像からいくつかの文字を切り貼りさせていただいて、こんな画像を作ってみました。

 自分の名前を作ってみても面白そうです。

<おまけのひとこと>
 今回の新型コロナウイルス対応ということで、会社でも社内会議の実施の指針というのが周知されました。当面は会議室の定員の半分以下で実施しましょうということです。今朝は定員30人の会議室を確保して、8名くらいでの打ち合わせを予定しています。この程度の対策で済んでいるうちはまだいいです。






3月13日(金) 穴開き三角形のマッチングパズル:三方八面体編(その1)、ほか

 穴開き三角形24種類を1枚ずつ使って対称性の高い多面体の面に配置するという話をしています。昨日までで四方六面体という多面体の面と同じ位置関係になるように正三角形をマッチング配置することができるという例をご紹介しました。今日は三方八面体という多面体に注目してみます。図は載せませんが、三方八面体というのは切隅立方体の双対多面体です。

 三方八面体というのは図1のように、正八面体の各面に背の低い三角錐を貼り付けたかたちをしています。ちょっと背を高くすると凸多面体ではなくなってしまいます。

図 1

 貼り付ける三角錐を正四面体にすると、こんなかたちになります(図2)。

図 2

 いわゆるケプラーの星型八面体です。正四面体2つの相貫体(複合多面体)になっています。このかたちが正三角形24枚で構成できるのです。これは24種類の穴開き三角形でマッチング配置可能でしょうか?

(つづく)



 穴開き三角形のマッチングについて、Mさんからいくつもアイディアをいただいているのですが(ありがとうございます)、その1つに「24枚のタイルから3つの正八面体が作れないでしょうか?」というのがありました。

 正八面体なので、頂点の次数が4ですから「相補的マッチング」が可能です。相補的マッチングというのは、

 上の図の(a)、(b)のようなマッチングのことです。辺を挟んで向かい合う位置のどちらか一方だけ必ず穴があるのです。(c)や(d)は穴の数の合計は3になっていますが、両側に穴があったり、どちらにも穴がなかったりする場所があるのでダメです。

 この「相補的マッチング」の条件で、24枚のタイルセットから3つの正八面体が作れることに気が付きました。もう一度タイルセットを表示します。

 一番簡単なのは上の図の黄色と水色の8枚による正八面体です。残りの16枚のうち、緑4枚とピンク4枚の2組で、それぞれ正八面体の相補的マッチングが可能です。この3つの正八面体のマッチングのセットは全体として美しいのです。後日、解をご紹介しようと思います。

(つづく)



 昨日会社で、「ちょっと三次元の数値計算のプログラムの相談があるんですけど…」と声をかけられました。 三次元座標の3点の位置が与えられたときに、その3点を通る円の中心の座標を計算するプログラムが必要なのだけれども、そのものズバリの関数とかを作っている人が周りにいなかったのだが、持っていないか、という質問でした。

 ちょっとした実験に使うなら、オープンソースの線形代数のライブラリを使うとか、手計算してプログラムを書いてしまったらどうか? と提案したのですが、「いわゆる『車輪の再発明』をしたくない、無駄なコーディングやデバッグの時間をかけたくないので、無ければ仕方がないけれども有れば利用させてほしい」ということでした。プログラマとしては正しい感覚です。

 私もすぐに提供できるものは手元にはないけれど、コードそのものは自分で書いてほしいけれど、計算式と検算用(デバッグ用)のExcelくらいならたぶん作ってあげられるけれど、必要? と尋ねたらぜひ欲しいとのことなので、ざっと計算してみました。

 ちょうど別事業所に外出直帰する30分前くらいの相談だったので、殴り書きで10分くらい計算して、「できた!」と思って結果だけ本人にメールして、「具体的には明日説明するね」と伝えました。ところが家に帰って検算用のExcelを作ってみたら結果が変なのです。「おかしい…」と思ってもう一度丁寧に手計算し直してみたら、式が間違っていました。上の図は修正後の式で、答えがすぐにわかる典型的な例を数パターン試してみて、おそらく正しいだろうと思っています。

<おまけのひとこと>
 今日は庭の木を伐採してもらう予定です。胸が痛みます。でも、雰囲気が変わって庭が明るくなるはずです。前向きに考えたいです。






3月14日(土) 碓氷峠の信越本線廃線跡に行く

 最初にひとことだけ。昨日、穴開き三角形24種類で相補的マッチングで3つの正八面体が作れますということをご紹介しましたが、Mさんから続報をいただいて、「通常のマッチングでも3つの正八面体が作れました」と、解を送っていただきました。ありがとうございます。とりあえず自分で考えてみてから解を見せていただこうと思います。解があるとわかって解くのは安心感が違います。



 週末なのでいつもとは違う話題です。先日、妻が軽井沢に用事があるというので、有り余っている有給休暇を取得して車で送迎してきました。(新型コロナウイルスの影響で社内の会議にも開催制限がかかり、珍しく打ち合わせ等の予定が全くない日だったのです。) 軽井沢は同じ県内とはいえ、公的交通機関で行こうとすると東京に行くよりもはるかに時間がかかってしまうのです。現地で私は2時間ほど空き時間があったので、近くの碓氷峠の旧道に行って信越本線の廃線跡を見てきました。 平日で天気が悪く、交通量もほとんどなく、人もほとんどいませんでした。

 軽井沢駅の前から東に向かうと、すぐに旧道の碓氷峠の道が始まります。カーブの多い道ですが、幸い全区間でセンターラインのある2車線です。途中、上り車線と反対の下り車線の制限速度が異なっている(片側が40、反対側が30と書かれている)区間があるのが面白いです。

 小さな沢を渡る橋が見えたので、最初にそこに車をとめて見に行ってみました(図1)。

図 1

 近くに行ってみると、線路が残っていて沢の両側はトンネルになっていました。さらにその向こうには複線のもう一方の軌道の小さなアーチが見えました(図2の右側)。

図 2

 ちょっとだけトンネルの中に入ってみて、振り返ってみました(図3)。

図 3

 この路線は1997年に新幹線の開通とともに廃線になりました。私は1984年に大学に進学してから1990年に父が倒れて大学院を休学→退学するまで東京に暮していて、この区間は年に何度も乗車をしていました。当時のいろいろなことを思い出しました。両親と大学の合格発表を列車で見に行ったこと。3人での鉄道での移動は人生で最初で最後でした。父が倒れたと連絡をもらって実家に駆け付けたこと。いずれもここを通ったはずです。歳をとって経験や思い出が増えるというのは良いことだと思います。



 もう少し下ってゆくと、有名な第三橋梁(めがね橋)が見えてきました。

図 4

 軽井沢の側からの写真と(図5)、横川の側からの写真(図6)です。

図 5 図 6

 霧雨の中、風情のある雰囲気でした。 

 さらに下って行って、碓氷湖(坂本ダムのダム湖)にも寄ってみました。ここはさらに「この天気のときに来られて良かった」と思えました。

図 7 図 8

 webで検索してみると、紅葉のシーズンの鮮やかな晴天の写真などが見られますが、水墨画のような雰囲気の、遠くにレンガ造りとおぼしき橋が見えるこの風景を見ることができて良かったです。ダム湖の周りは歩いて一回りできるように整備されているみたいでした。時間もなく、天気も悪かったので歩くのは断念しました。いずれこのあたりは再訪したいと思います。



 廃線ウォーク haisen-walk.com というサイトがありました。このサイトには、この碓氷峠を越える信越本線跡についての詳しい説明と、実際に歩いてみることを想定したガイドが掲載されています。お勧めです。



 軽井沢に行った帰りに、昨年のゴールデンウイーク に購入してとても気に入った「しょうがスープ」を2つ買ってきました。

 前回は上越線の土合駅に行った帰りでした。次に買うのはいつ、どこに行くときだろうと思いました。

<おまけのひとこと>
 昨日の大相撲春場所6日目、御嶽海、全勝同士の朝乃山との対戦に勝ってくれて嬉しいです。今日は白鵬です。頑張ってほしい…

 昨日の最後の図、与えられた3点からの距離が等しい点を求めるという計算結果の図の表記に誤りがありますよ、というご指摘をMさんからいただきました。ちゃんと見ていただけていること、またそれを教えていただけたことにとても感謝しています。実は最初は求める点をCと表記していたのですが、途中で A,B,C という文字が使いたくなって、求める点の表記をQに変えたのです。でも1か所だけ変更漏れがありました。早速修正して図を差し替えました。ありがとうございました。






3月15日(日) ふしぎなボール(&くねくねパズル)

 先日、カプセルトイのふしぎなボール&くねくねパズル の「ふしぎなボール」のほうを入手しました。(リンクは公式サイトですが、いつまでリンクできるのかはわかりません。)

 こんなかたちのパズルです。カプセルには入っておらず、カプセルと同じくらいの大きさです。全体は大きな球(ボール)のかたちをしていて、中には小さな球が11個入っています。11個すべて別の色です。大きな球には正十二面体の12の面の位置に小さな丸い穴が空いています。穴の縁には全て異なる色が塗られています。ボールが11個で穴が12個なので、必ず1つの穴が空席になっています。このパズルの目的は、全部の小球を同じ色の穴の位置に移動することです。

図 1 図 2

 大きな球の中にはスポンジのような弾力のある素材が入っていて、それが小球をそれぞれの穴に押し付けています。移動させたい小球を指で押し込んで空席に持っていくと、前の位置が新たな空席になります。有名なスライドパズルの「15パズル」というのがありますが、あれの立体版のような感じです。

 小球が移動できる穴の位置関係は図3のように正二十面体の頂点の構造になっています。小球は、正二十面体の12の頂点の間を稜に沿って移動します。

図 3

 同じものを正二十面体の平面グラフにしてみました(図4)。

図 4

 せっかく図を作ってみたのですが、図3の斜視図のほうがわかりやすいですね。図4はボツにしました。



 このパズル、ちょっといじってみるとパズルのロジックそのものの難易度は高くないことがわかります。なぜかというと、任意の2つの小球を入れ替えることができるのです。(この点が15パズルとの最大の違いです。15パズルは任意の2つを入れ替えることができません。)図5のように、空席を利用して2個をぐるぐると位置を回転させると入れ替わることが簡単にわかると思います。

図 5

 このパズルの難しさは、それぞれの小球をどこに持って行ったらいいのかを把握するのがちょっと大変、というところにあるのかなと思いました。私たちは頭の中で概念を操作するとき、対象物に名前を付けます。注目している小球の色を見分ける名前を付けられないと、「どの小球をどの場所に持って行こうとするのか」をきちんと把握するのが難しくなります。

 たとえば神経衰弱などの記憶系のゲームも、名前を付けるのが難しいようなものや素人が見分けるのが難しいものだと、ものすごく難しくなると思います。たとえば鉄道車両とか車のような乗り物、お料理やお菓子、芸能人やスポーツ選手、家紋とか幾何学的な文様、知らない言語の文字、花や樹木、小鳥や貝類や魚類や昆虫といった生物、などなど、その分野が好きでよく知っている人と、その分野に暗くてよく知らない人では勝負にならないでしょう。

 「去年マリエンバードで」という古い映画があります。この映画の中に「ニム」という二人ゲームが出てきます。大切なものを賭けて戦われるゲームです。たとえば自分がこういうシチュエーションで神経衰弱をプレイしなければならなくなったとしましょう。ただし神経衰弱のカードセットは自分でデザインしても良い、という条件が付けられたとしましょう。対戦相手は自分のライバルです。あなたならばどんな対象物を選びますか?



 さてこの「ふしぎなボール」というパズル、もっとも手数がかかる初期位置はどんな状態でしょうか? またそのときの手数はどれだけでしょうか? 初期配置の空席の位置は任意とします。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 「過去のひとこと」のページは半月ごとにしています。15日は過去のページの最下段になるので、いつもならもっと軽くて完結した、「つづく」にならない話題を選ぶのですが、今回はつづきのある話題になってしまいました。ただ、現時点では最後の問いかけの仮説を検証できていないので、つづきを書けるのはしばらく後になると思います。






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