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以前の「ひとこと」 : 2004年8月後半



8月16日(月) 1/89

 昨年の10月26日のひとことで、1/9801 という分数がどのような循環小数になるかという話をご紹介しました。 今月発売の数学セミナーのページをめくっていたら、「1/89の不思議」(萱場修:数学セミナー vol.43 no.9 pp.53-55)という記事があって、興味深く読みました。

 以下の計算結果を先に表示してしまうのは、パズルで言うところの答を先に書いてしまうようなルール違反の可能性もあるかな、と思いつつ、大変面白かったのでご紹介してしまうことにしました。興味のある方は、下の計算を見る前に数学セミナーの記事をご覧頂くか、あるいはまず1/89を計算してご覧になることをお勧めします。











・・・ というわけでちょっとあいだをあけて ・・・













>1/89
= 
+ .01123 59550 56179 77528 08988 76404 49438 20224 71910 11235
   95505 61797 75280 89887 64044 94382 02247 19101 12359 55056
   ...



>1/9899
= 
+ .00010 10203 05081 32134 55904 63683 20032 32649 76260 22830
   58894 83786 24103 44479 24032 73057 88463 48115 97131 02333
   ...



>1/998999
= 
+1.00100 20030 05008 01302 10340 55089 14423 33776 10988 59958
   81877 75963 73970 34431 46589 73632 60623 88450 83929 01294
   ...
e-6



>1/99989999
= 
+1.00010 00200 03000 50008 00130 02100 34005 50089 01440 23303
   77061 00987 15972 58441 81676 60947 77138 66163 75503 71412
   ...
e-8



 さて、上の計算結果にはどのような「おもしろいこと」があるでしょうか? (例によって多倍長電卓LMを使わせていただいています。)

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 昨夜、年表はなんとか完成しました。
 今日は送り盆でお墓参りです。




8月17日(火) カラーキューブパズルの最短解

 今年の6月4日から何回かと、6月13日6月16日に、カラーキューブパズルというパズルについて書いていました。

 このお盆休みに、toshiさんという方から、このパズルをコンピュータのプログラムで解析してみましたというメールをいただきました。それによりますと、36手が最短手数だそうです。解を教えていただいたので、私もトレースしてみました。下の図のように、確かに36手で完成させることができました。ありがとうございました。

36手

 上の図から、カラーキューブパズルの JAVAアプレットのページにリンクしていますので、よろしかったらお試し下さい。

 なお、toshiさんによりますと、全部が裏返ったときの空きマスの位置が中央でなくても良いのであれば、34手という解が存在するとのことで、こちらも解を送っていただいたのでトレースしてみました。

34手

 大変面白い情報を本当にありがとうございました。

 <おまけのひとこと>
 (つづく) と書いて続きを書こうと思っている話題が、リザードパズル風パズルの話と 1/89 の話があります。近々書く予定です。




8月18日(水) 立方体3つの相貫体の最内殻

 昨年の3月27日から数日に渡って、立方体3つの相貫体の模型を作る話をご紹介しました。詳しくはそちらのページをご覧頂きたいのですが、図を1つだけ再掲しておきます。

3立方体の相貫体

 さて、この3つの立方体の全ての共通部分(いちばん内側)はどんなかたちをしているでしょうか?

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 昨日書き忘れましたが、昨日でカウンタが13万を越えました。本当にありがとうございます。最近ちょっと更新がペースダウンしていますが、時間がとれれば書きたい話題はまだストックがたくさん残っています。ただ、今残っているストックは、いずれも説明がちょっと大変なものが多くて、デッドストックとなりつつあります。




8月19日(木) 立方体3つの相貫体の最内殻(その2)

 昨日、立方体3つの相貫体の一番内側の共通部分はどんな立体でしょう? という問題を書きました。実はこの答は、02年5月31日のひとことでご紹介した、下の図のかたちになります。

再掲図

 これが、立方体の相貫体の内側になっている様子をご覧頂きます。

図 1 図 2 図 3

 なぜこの立体の話を書いたかというと、実はこのかたちについていろいろ考えておられる方から、先日メールをいただいたのでした。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 ― 扇風機であ゛〜 ―というページを楽しく読みました。私ももちろん昔やったことはあります。




8月20日(金) 小さな多面体

 日経サイエンスの最新刊(2004年9月号)の表紙が、多面体骨格の絵でした。これは、DNAで組み立てるナノマシンという記事のものです。DNAやRNAというのは、様々な酵素等を道具として意図したところで切ったり繋いだりするための知見が蓄積されています。ものすごく小さなサイズで、さまざまな形状を設計して実際にそれをつくるというのはとてもすごいことだとおもいます。

 また、遺伝情報伝達だけではない、合成RNAをナノ装置の足場にという記事もありました。

 一方で「ナノテクがもたらす未知の危険」に警告なんていう記事もあります。

 <おまけのひとこと>
 何度も書いているような気がしますが、最近新聞等でよく目にするDNAという言葉の使われ方、例えば会社組織のDNAがうんたら、というような表現が気になって仕方がありません。「DNAって何の略語だかご存知ですか? 遺伝というのは、どんな性質がどのような仕組みで伝わると考えられているかご存知ですか? あなたの表現したい概念は、DNAというものについて知られている知見が、うまいたとえになっているんですか?」と尋ねてみたくなります。(大人げない)




8月24日(火) 簡単な言葉をどう説明するか

 すみません、このところとても忙しくて、また更新が間が空いてしまっています。

 昨日、とある方の講演会を聴いたのですが、その中で「基本的な概念を言葉で説明するのはいかに難しいか」という話がありました。例えば、「右」とか「花」というものは何なのか、日本語で説明するとどうなるでしょうか? 辞書を作るとしたら、何と書いておいたら正しく、わかりやすく伝えることができるでしょうか。

 「右って説明できる?」とあてられた私は、確か芳ヶ原伸之さんだったか安野光雅さんだったかの何かで読んだ、「北を向いたときの東」という答を言ったのですが、予想通り「じゃあ東西南北を定義して」と言われました。

 ちなみに先生がご用意されていた答の一例は、「大部分の人にとって、肝臓がある側」というものでした。これはもちろんどんな定義がよいか、という問題ではなくて、基本的な概念を言葉だけで説明するのがいかに大変か、ということの具体例です。

 ・・・では、「花」ってどうやって定義したらよいでしょうか? 辞書を見る前に、自分なりに考えてみてください。

 <おまけのひとこと>
 最近また朝の道路が混雑するようになってきました。8月に入ったら朝7時過ぎの道路はだいぶすいてきたのですが・・・。




8月25日(水) 波のシミュレーション

 昨夜、様々な物理現象のJAVAによるシミュレーションのページに行き着いて、いろいろ遊んでみました。そのようなページはたくさんあるのですが、操作性や自由度が気に入りました。

 図は、左側のみに反射壁がある条件での、振動源が1点である場合の波形シミュレーションです。反射壁の位置なども、マウスで編集できます。

 このページにはほかにもたくさんのシミュレータがあったのですが、ちょっと試して、画面をキャプチャして、さてURLを記録しようというところでブラウザが落ちてしまって、どこのページだったかわからなくなってしまいました。残念。(ちなみに英語のページでした)

 <おまけのひとこと>
 「クレマチス」という花をご存知でしょうか。私は、祖母が大切にしていたので印象深い花です。先日、20人くらいでとある方の話を聴いたときに、「クレマチスって知っていますか?」との問いに、その場で知っていると手を挙げたのは私ひとりだけで、ちょっと驚きました。 あの花の紫色、これがなかなか再現が難しい色なんだそうです。




8月26日(木) 色相環

 最近、色の勉強をしています。昨日のクレマチスの色の話も、そんな中で出てきた話題でした。 色については、きちんと系統的に書かれたページがたくさんありますが、この「あそびをせんとや」のページらしい話題をちょっと書いてみようかと思っています。

 色を系統的に分類する方法として、中学校とかの美術の教科書などに、明度・彩度・色相で色を整理できますというような図が載っていることが多いと思います。 具体的にそれを絵の具で作ったのがマンセルという画家で、マンセルの色立体とかマンセル色票などというものがあります。(ちなみにこのマンセルという人は画家なのだそうですが、では現存するマンセルの絵画作品は存在するかと思って探してみても見つからない、それどころか色の専門家にマンセルの作品を見たことがあるか、知っているかと尋ねても、知っている人を知らない、ととある色彩工学の先生が言っていました。美術の専門家ならば知っているのでしょうか。)

 このマンセル色票の、とある明度・彩度での色相環を、RGB値で真似てみました(下図)。普通は色を丸く配置するのですが、面倒だったので四角くしました。

 もちろん、コンピュータディスプレイで表示できる色というのは限界がありますし、またこの画面をご覧頂いているディスプレイそれぞれの色再現能力も様々だと思いますので、この図はあくまでも「目安」です。

 この図では100色の色があります。この中の色は、多くの方は、かろうじて隣り合う2色を見分けることが出来る限界くらいだと言われています。(ご覧頂いているディスプレイの性能に強く依存する話です。)そこで、それを検証するJavaアプレットを作ってみました。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 昨夜は、御返事が書けなくて心苦しかったメールをいくつか書きました。そうしたら夜中の2時くらいになってしまいました。メールを書くのが遅いのです。




8月27日(金) ファルンスワース・マンセルテスト

 昨日、マンセルの色相環の100色を四角く並べた図をご覧頂きました。 この100色を25色ずつの4グループにわけて、それを順番に並べる色覚検査があるのだそうで、それをファルンスワース・マンセルテストとか、マンセルの100ヒューテスト(マンセルヒューというのは、マンセルの色相のことです)などと呼ぶのだそうです。 被験者をやったことのある人にきくと、かなり時間がかかる、疲れるテストだそうです。

 このテストをパソコン上で簡単に体験できるようにしてみようかと思って、昨日のカラーチャートを用意してみたのです。もちろん、正式な検査には、正しい色票を使わなければいけません。パソコンの画面のような、ディスプレイによって特性が違うような表示装置を使ったのでは、意味のある検査はできません。でも、間違い探しとかジグソーパズルのような「遊び」としては面白いかも、と思って作ってみました。

 下の画像、もしくはこちらからリンクしています。かなりサイズが大きいので、使いにくいかもしれません。使い方等はリンク先のページをご覧下さい。

 実は最初は、100色全部をランダムにシャッフルするバージョンを作ってみたのです。これならせいぜい100ピースのジグソーパズルを解くくらいの時間でできるかな、と思ったのです。ところが、あまりに面倒で解く気になれませんでした。

 今のバージョンは、隣り合う2個を入れ替えるというものにしてあります。入れ替える箇所の数は、htmlファイルからパラメータで指定できますが、まずは1箇所だけを入れ替えるようにしてあります。お試しいただけたらと思います。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 今日は、いつもの職場よりも近いところに、いつもより1時間遅く行けばいいので、のんびり更新しています。




8月28日(土) ファルンスワース・マンセルテストの雰囲気を体験する

 マンセルの色相環の100色を四角く並べたもののうち、1箇所だけが入れ替わっているので、その場所をあててくださいというJAVAのアプレットを御紹介しました(こちら)。 もうちょっとパズルっぽいものにしようかな、ということで、100色全部ではなくて、そのなかから均等に25色を選んだものを丸く並べて、それを正しい順番に並べなおして下さいというパズルに仕立ててみました。

 下の画像、もしくはこちらからリンクしています。使い方等はリンク先のページをご覧下さい。

 いかがでしょうか。昨日のものとどちらが面白いでしょうか。実は、同じものの50色バージョンも作ってあるのですが、やってみたい方はいらっしゃらないでしょうねきっと。

 <おまけのひとこと>
 パソコンを身近な人にたとえると「忠実な部下」という記事がありました。私は、はるか昔のプログラム電卓の時代から、コンピュータというのはパズルの問題を出してくれる遊び相手、という感覚でした。例えば昨日のアプレットのように、どこか1箇所だけ自分にわからないようにこっそり入れ替えてくれて、それを自分が正しく当てたら「あたり!」と言ってくれる、というのは、自分ひとりだけではできない遊びです。 上記の記事の分類だと、「友人」と「忠実な部下」の中間くらいということになるんでしょうか。




8月29日(日) 確率

 こんな問題を聞きました。

 Aさんは、ある検査を受けました。検査結果について先生と面談したところ、「あなたは検査結果が陽性でした。がん患者の90%がこの検査で陽性になりました。」と言われました。Aさんは、「自分は90%の確率でがんなんだろうか。」と思ってとても心配になりました。 Aさんががんである確率は90%なのでしょうか?

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 先日、“三井の森ハーモニーの家”というところに、リコーダーとトラヴェルソ(フルートの古楽器)の演奏を聴きに行きました。パレストリーナの4声のリチェルカーレが気に入りました。また、大変響きのよいホールで、ここで楽器を鳴らしたら気持ちがいいだろうな、と思いました。
 Web でこのホールに関する情報を探したのですが、みつかりません。唯一、こちらの諏訪弦楽アンサンブルネットワークというページの中に、こちらですとかこちらのような写真をみつけました。
 こちらのページの一番下に、今度このホールでチェンバロのコンサートがあるという情報が載っています。このホールでチェンバロを聴いたらすばらしいだろうな、と思うのですが、この日は行かれないことがはっきりしているので、残念です。




8月30日(月) 確率(その2)

 昨日、病気と検査の確率の話をちょっと書きました。整理します。

がん患者の90%がこの検査で陽性になりました。
Aさんは同じ検査で陽性です。
Aさんががんである確率は90%です。

・・・これは正しい推論でしょうか?

 では、これはどうでしょうか?

がん患者の90%は利き手検査で右利きでした。
Aさんは利き手検査で右利きです。
Aさんががんである確率は90%です。

・・・これは正しい推論でしょうか?

 これが正しい推論だ、という方はいらっしゃらないと思います。では、Aさんががんである確率を知るためにはどうしたらよいのでしょうか? 検査の結果はどのように理解したらよいのでしょう?

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 昨日から、アクセス解析というのをやってみることにしました。ブックマークからいらしてくださる方が多いということがわかって、嬉しく思います。 また、スペキュレイタさんが、8月28日に、先日御紹介した色のパズル(こちらとかこちらとか)にコメントを下さっていることがわかったりして、なるほど blog のトラックバックというのはこんな感じなんだろうかと思ったりしました。コメントありがとうございました。このパズル、うちの家族はおもしろがってやってくれたのですが、他の方はどうなのだろうと思っていたのでした。

(つづく)




8月31日(火) 確率(その3)

 「がん患者の90%がこの検査で陽性になりました。Aさんはこの検査で陽性でした。Aさんががんである確率はどのくらいでしょうか?」という話を書きました。答は、「これだけの情報では何も言えない。」ということになります。

 大腸がんの検診として、便潜血検査というものが広く行われています。例えば、こちらの大腸がん検査、便潜血についてというページに、詳しく説明が載っています。このページのデータによると、

偽陰性率(見逃してしまう可能性):進行がんでは10%
的中率(陽性の人ががんである確率):3%

 だそうです。(とりあえず以下の話をわかりやすくするために、進行がんのみに限定して議論します。)

 このような初期の簡易な検査というのは100%ではありませんから、がんであっても陰性と出る人もいれば、がんでなくても陽性という結果になる人もいるわけです。整理すると、検査を受けた人は下の表の4つのグループのどこかに属することになります。

 上記の「偽陰性率が10%」ということは、この表のAグループとBグループをあわせたものを100としたときに、Bグループにはいる人数が10だということです。このときAグループは90です。これが、一昨日お話した「がん患者の90%がこの検査で陽性になりました。」という状況です。

 一方、的中率が3%ということは、AグループとCグループをあわせたものを100とすると、Aグループは3である、ということになります。ですから、この検査の場合は「陽性であってもがんである確率は、過去のデータから統計的に見ると3%である」ということになります。(ちなみに、偽陰性率がゼロでない以上、陰性であってもがんである確率はゼロではありません。ここでは具体的な数値はわかりませんけれども、もちろん3%よりもずっと小さい値でしょう。)

 この表で、BグループとCグループが少ないほど、検査結果と病気の有無の相関が高い、つまり検査の性能は高いということになります。もちろん、検査の性能だけを高くするのであれば、時間とコストと身体的負担のかかる、より精密な検査を受ければBグループやCグループは減らすことが出来ますが、多くの人が毎年そんな検査を受けるというのは現実的ではありません。

 ここでは、この検査の意義について議論したいわけではなくて、確率には注意しないと、誤った論理に誘導されることがありますよ、という例をお話したかったのでした。

 <おまけのひとこと>
 通勤に使っている車が、9月に車検になります。もう8万キロ以上乗っていて、だいぶくたびれてきました。が、もう少しがんばってもらおうということで、今回も車検を通すことにしました。 昨日の夕方、車屋さんに車を置きに行って、代車で帰ってきました。新車の軽自動車(MRワゴンという車)を代車に出してもらいました。これなら、さしわたし180cmある私のスピネットも載せられるなあと思いました。
 お店でカタログスペックをみせてもらったのですが、4WDなので車体重量が890kg ほどありました。車検に出した車は同じ4WDなのですが680kgで、これに比べると重量は3割増です。しかも、私の車と違ってミッションはATですし、パワーステアリングもついています。でもエンジンの出力はカタログ上同じですから、どうしたって「きびきびと走る」というわけにはいかなそうです。
 やっぱり軽自動車は、余計なものはいらないから、マニュアル車で軽くて反応がいいのがいいな、と思ってしまいました。

 今日は台風で、朝6時に「小学校は10時15分からに時間を繰り下げます」という連絡網が回ってきました。こちらはもう2学期がはじまって2週間くらいになります。




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