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以前の「ひとこと」 : 2020年4月後半



4月16日(木) 穴開き三角形の相補的マッチングパズル(3つの正八面体)、他

 しばらくぶりに 穴開き三角形 の話題に戻ります。

穴開き三角形24枚セット

 この24枚のセットで、辺の両側の〇の有無が同じになるように、以下のような様々な配置が可能だということをご紹介してきました。

正六角形配置 平行四辺形配置

四方六面体配置 三方八面体配置

 これらのマッチング配置を「通常のマッチング」と呼んでいるのですが、これに対して「相補的マッチング」というのを説明しました。

(a),(b)が相補的マッチング

 3月13日に、24枚のタイルを8枚×3組に分けて、この「相補的マッチング」で3つの正八面体が作れます、という結論だけご紹介して、(つづく) としていました。今日はその解を載せたいと思います。ずいぶん前の「問いかけ」だったので、間をあけずに解の図を載せてしまいます。

図 1:3つの正八面体

 正八面体を真横から4つの方向から見た図を並べたイメージです。Oct1 は頂点の〇がゼロ個(黄色)の4枚と3個(水色)の4枚を交互に用いたものです。この8枚のタイルにはキラルなもの(鏡像対称ではないもの)はありません。 Oct2 と Oct3 は、頂点の〇が1個(緑)と2個(ピンク)をそれぞれ4枚ずつ使っています。面白いのは、Oct2ではピンクは全部鏡像対称タイルで緑は全部キラルなタイル、Oct3ではちょうどその逆になっているということです。



 Oct1を通常の正八面体の展開図の表示で描いてみました(図2)。

図 2

 gifアニメーションでくるくる回してみました(図3)。

図 3



 さて、この相補的マッチングで、正六角形配置や平行四辺形配置は可能でしょうか? 正六角形配置、周期的境界条件を意識してちょっと手作業で解を探してみたのですが、あと少しというパターンが見つかりました(図4)。

図 4

 これ、どこがミスマッチしているかわかりますか?

(つづく)



 arxiv.org の Mathematics New submissions(数学の新着論文)を見ていたら(このリンクはアクセスした日の新着を表示するはずです)、つい昨日、2020年4月15日に公開されたLook, Knave(Thomas Morrill) という論文がありました。このタイトルは何だろう? と思って開いてみたのですが、冒頭、それも Abstractの前に

Dedicated to the life and works of John Horton Conway.
(J.H.コンウェイの生涯と仕事に捧げる)

と書かれていました。この論文は、コンウェイの

 1, 11, 21, 1211, 111221, 312211, 13112221, 1113213211, ...

 という数列に関するもののようでした。この数列の規則はなんだかわかりますか? (上記の論文から関連情報を簡単に辿れてしまいますが…) こういうのはむしろ小学生とかのほうが得意かもしれません。これもまた、コンウェイの面目躍如といったところです。

(つづく)かなあ

<おまけのひとこと>
 過去のページの(つづく)としていたものの続編を書くときには、過去のページのほうに続編の在処のリンクを張ることを始めてみました。とりあえずは新しく書くものだけですが、少しずつ手を加えていこうと思います。






4月17日(金) 穴開き三角形の相補的マッチングパズル(正六角形の周期解)、他

 昨日は「穴開き三角形24枚セット」で正六角形のかたちに相補的マッチングしようとして失敗した図を載せました。

穴開き三角形24枚セット

 実はあれは、正六角形の向かい合う辺どうしも相補的にマッチングすることを意図して配置を探索した途中結果でした。

正六角形の周期解

 相補的マッチングの場合、頂点の周りのタイルの数は必ず偶数でなければなりません。そして、〇は必ず交互に現れます。解を手作業で探しているのですが、通常のマッチングのときと同様、まずは頂点の〇の数(0個〜3個)のタイルに分類しておいて、それぞれがどんな配置になっていればよいかをあらかじめ決めておいてから試行錯誤を始める、というやり方でパズルに挑んでいます。こんな配置を考えました(図1)。

図 1

 周期解なので、同じものを繰り返し並べることができます(図2)。

図 2

 図を作ってから気が付きましたが、ピンクと黄色の帯と、緑と水色の帯が水平になるように、反時計回りに60度回転させればよかったかなあと思いました。



 さて、図1をひな形にして手作業で解を探してみたら、こんな解が見つかりました(図3)。

図 3

 向かい合う辺どうしもちゃんとマッチしています。図3の六角形を繰り返しの単位として、コピーしてタイリングしてみました。

図 4

 面白いです。

(つづく)



 3月31日にご紹介した直角台形2つを組み合わせたピース5種類を正方形や長方形の枠に納めるパズルですが、

シルエットパズル

やっぱり実物をいじってみたくなって、アーテックブロックで試作してみたのです(図5)。

図 5

 こうしてみると隙間が少ないですね…

 図5のピースのセットと同じものをもう1組作って、3×5および4×4の枠にはめた完成形を作って、立てて飾ってあります。パズルの解が一目で見えるので写真は載せません。かわりに、パズルとしてはもう少し易しいこんなセットを考えてみました(図6)。

図 6

 実はこの黒のピース、アーテックブロックではジョイントで接合できません。これだけは両面テープで固定しました。(残念…)

 立てるとこんな感じになります(図7)。

図 7

 なかなかいい感じだと思っているのですがいかがでしょうか。

<おまけのひとこと>
 そういえば忘れていました。昨日の図4、「どこがミスマッチしているでしょう?」の答えの図を用意しました。こちらです。






4月18日(土) 容器を回転させて分子の右手型・左手型を作り分ける話、他

 週末なので別の話題にします。

 半年ほど前に、【記者発表】ロータリーエバポレーターのマクロな回転で分子の右巻き、左巻きを制御! ―生命のホモキラリティー起源の候補を高い再現性で初めて実証―*1 というプレスリリースが東大の生産技術研から発表されていたことを知りました。石井和之教授の業績だそうです。

 「キラリティー」とか「キラル」という言葉はこの「あそびをせんとや」でもしょっちゅう使っていますが、「キラル」というのは鏡に写したものが自分自身と重ねることができないかたちになる性質のことを言います。「鏡像対称性が無い」と言っても同じことです。こちらの生命の神秘解明につながるかも? - マクロな操作で分子を「ねじる」技術*2 という記事が、どんな実験をやっているのかがわかりやすいかなと思いました。また、今回初めて知ったのですが、日本最大の化学ポータルサイト Chem-Station(略称:ケムステ)というサイトがあるのですね。その中に、ロータリーエバポレーターの回転方向で分子の右巻き、左巻きを制御! ―生命のホモキラリティーの起源に踏み込む―*3 という記事がありました。ここはさすが専門のサイト、図も解説もしっかりしていてとても面白いです。このページから図を引用して少しだけ解説というか感想を書こうと思います。(引用した図はサイズも縮小してかなり粗くなっていますので、もう少しきれいな図を見たい方はぜひ引用元をご覧ください。)

 図1の左側に描かれているのが今回の合成のもとになる分子です。芳香族性を持つ、平面状の環状化合物です。中央にパラジウム(Pd)を配位した4回回転対称性を持つ構造で、周りには8本の長い炭化水素の鎖が付いています。この分子は、平面状の構造の部分が少し回転した状態で重なり合う位置に「会合」する性質を持っているようです。(「会合」というのは、共有結合やイオン結合のような強固な原子同士のつながりよりは弱い結合のことを言います。)この分子そのものは正方形と同じ対称性を持っているので、「キラル」ではありません。

図 1(*3より)

 これを「エバポレーター」と呼ばれる、化学反応をさせるための容器に入れてモーターで回転させます。そうすることでこの分子の会合体ができるのですが、モーターの回転方向を変えることで、ちょっとずつずれた会合の結果できる「らせん」を右巻きにしたり左巻きにしたり、自由に操れるようになったのだそうです。

 図1の右側に上下2つのグラフがあります。キラルな分子は光の偏光面を回転させる性質があるのですが、同じ分子の右手型と左手型では偏光の回転方向が逆になることが知られています。この2つのグラフが見事に上下に鏡像対称の形になっており、しかも凹凸が強く出ていることが、この手法で作られた「分子のらせん」の巻き方向の分離の純度の高さが高いことを示しています。

 元論文の本文には当たれていないのですが、この研究の凄いところは、単に「やってみました、こういう結果でした」だけにとどまらず(再現性の高い実験手順を確立しただけでも十分価値の高い成果ではあります)、なぜその現象が起こったのかを流体運動を考察することで示したことにあるようです。

図 2(*3より)

 人間の目に見える、10cmくらいのオーダーの反応容器を回転させるという現象が、0.1mmくらい(だいたい髪の毛の太さくらい)の流体運動を引き起こし、さらにその千分の一くらいの分子会合体の構造を支配する、ということのようです。大変面白いです。通常、キラルな分子を作るには、分子にとっての周囲環境である溶媒や触媒がキラリティを持つものを用いるのが自然です。私たち人間をはじめとする地球上の生物は、タンパク質をはじめとするキラルな分子を材料として身体を構築していますが、この材料は食物として体内に取り入れ、分解して加工されます。この体内の加工の工程にかかわるのは様々な酵素と呼ばれる分子なのですが、これが全てキラルな分子なのです。この実験のように、環境にも部品にもキラルな状態が何もないのに、ものすごく大きなスケールでの運動がきっかけとなってミクロなキラル構造ができた、というのがすごいことなのです。

 これをもっと大きなサイズのスケールで考えてみましょう。もとになる部品(図2の右端の分子)が仮に1メートルだとしたら、らせん構造のサイズは10メートルのオーダーになります。ちょっとした塔やビルのような建物のサイズです。そうすると、フラスコ回転による微小な流体運動はその一千倍、10kmのオーダーで生じている現象ということになります。局所的な風の流れ、という感じでしょうか。ロータリーエバポレーターはさらにその一千倍、10,000kmのオーダーということになります。ちょうど(?)地球がそのオーダーです。 地球の自転によってつむじ風の回転の向きが決まる、みたいなオーダーの話なのかなと思ったら、なんだか妙に納得感がありました。



 北半球と南半球ではトイレやバスタブの排水の渦巻が逆になる、という話があります。Gigazine に北半球と南半球で渦が逆回りになるのはなぜかを実際に同条件で実験した映像を同期再生 という記事がありました。容器のデザインや残留液体運動の影響を消すための努力などが非常に面白い記事でした。

<おまけのひとこと>
 お休みだと思って油断して、つい更新が遅い時刻 (朝7時過ぎ) になってしまいました。もう少し別な話題も書こうかなあと思ったのですが、今日のところはここまでにします。






4月19日(日) Yes-No MasterMind、リャードフのフーガ

 3月下旬に、arXiv にThe Exact Query Complexity of Yes-No Permutation Mastermind(Moura El Ouali, Volkmar Sauerland) という論文がアップされていたのを見て興味を惹かれました。

 マスターマインドというボードゲーム(リンクは Wikipedia です)については、以前もご紹介したことがありました(2018年7月18日)。

 これは二人で役割分担して遊ぶゲームで、一人が出題者になり、もう一人が解答者になって、出題者が決めた秘密の配列を当てるというゲームです。前回ご紹介したのは、解答者の最初の「配列」として何を選ぶのが有利か? という論文でした。 今回ご紹介するのは、この「マスターマインド」のルールを若干変更して難しくした場合に、解答者が正解にたどり着くまでに何度「問いかけ」をしなければならないか、その期待値に関して論じたものです。この「難しくしたルール」というのが面白かったので簡単にご紹介します。



 オリジナルのマスターマインドは、出題者は6色から選んだ任意の4色を好きなように並べて問題を作ります。ここで、同じ色を複数選んで良いか が重要です。必ず異なる4色でなければいけないとすると、問題は少しシンプルになります。前回ご紹介したのは「同じ色を複数選んで良い」という前提のゲームで解答者の初手の優劣を論じたものでした。今回は、「解の中には同じ色は高々1回しか現れない」という前提です。論文ではこの前提のある問題のことを AB問題 と呼んでいます。

 さらに、場所も色も合っているものを “〇”、色は合っているけれども場所は違っているものを “△” で表すとすると(ピンの色はいろいろ流儀があるようなので、〇と△にします。これは日本特有の表現らしいですけれども)、通常のマスターマインドでは、出題者は〇の数と△の数を伝えます。

再掲図

 今回の論文の冒頭の関連研究のサーベイによると、オリジナルのマスターマインドを少し難しくした Black-Peg Mastermind というのが提案されていて、これは〇の数は教えるけれども△については言及しない、というルールだそうです。上の再掲図ならば、チャレンジ1では「(〇が)1個」、チャレンジ2では「(〇が)ゼロ個」と答えるだけで、△の数には言及しません。これは、問題(秘密のコード)の長さと使える色の数が同じだったとしたら意味を成しませんが、色の数のほうが多ければ難易度が上がります。

 この論文ではさらに、Yes-No Mastermind というルールを提唱しています。Black-Peg Mastermind をさらに難しくして、「位置も色もあっているもの(〇になるもの)があるか、ないか だけを Yes/No で答える」というルールです。 (ただ、この答え方だと最終的に正解に到達したかどうかわからないので、正解になったら Yes/No 以外の「正解」のメッセージを貰えるのだと思います。) これはなかなか大変そうです。 著者らはこの論文で、Yes-No AB-Mastermind について、コードの長さが n、使える色の数が k としたときの解答者の問いかけの回数の上限や下限について議論しています。

 肝心の結論はここでは説明しませんが (そこまできちんと読んでいないので正しく説明できる自信がないのです) 、この「Yes-No AB-Mastermind」、Yes/No の情報をどのように候補の絞り込み(枝刈り)に活用するのか、単なる順列を当てずっぽうに「問いかける」のに対してどの程度有益な情報になっているのか、ちょっと考えてみると面白そうだと思いました。



 ちなみに論文のタイトルで検索してみると、こちらのレビュー・レポートで論文の著者とレビュアー(レフェリー?)とのやりとりが公開されています。このGames -- Open Access Journal というサイトは、こういった査読のやりとりを含め、すべてオープンにしているのですね。感心しました。過去の論文も面白そうなものがあります。目を通してみたいと思いました。



 昨日、気分転換にちょっとだけリャードフを弾いてみました。

リャードフの楽譜

 この楽譜を買った時、「op.41-1と2の2曲のフーガが気に入った」と書いているのですが、そんなことはすっかり忘れていて、昨日弾いてみて「あれ、こんないい曲あったっけ? なんで知らなかったんだろう?」と思いました。 歳を取ると、本当に直近のことは忘れがちなのだなあと実感します。ポジティブに考えると「新鮮な気持ちで楽しめて嬉しい」です。

リャードフ:フーガ op.41-1 嬰ヘ短調

リャードフ:フーガ op.41-2 二短調

 YouTubeにアマチュアの方の演奏があったのでご紹介しておきます。

 19世紀の終わりにピアノを使ってピアノのために作曲された、古典的でありながらロマンティックな雰囲気も併せ持つ美しいフーガだと思います。そんなに難しくありません。お勧めです。

<おまけのひとこと>
 自宅にいるのは大好きなのですが、運動不足が心配です。






4月20日(月) 穴開き三角形の相補的マッチングをBurr Toolsでモデル化してみる

 週末をはさんで、「穴開き三角形の相補的マッチング」の話の続きです。

穴開き三角形24枚セット

 先日来、Burr Tools というパッキング(箱詰め)パズルや組木パズルを解いてくれるソフトウェアを使ってみているのですが、この「穴開き三角形の相補的マッチング」も、Burr Toolsで解析してみたいと思いました。 そのために、パーツの穴の有る無しをパッキングパズルのタイルの凹凸で表現することを考えてみました。 こんなテンプレートを考えてみました(図1)。

図 1

 三角形の3辺の3つの水色の菱形の有無で、〇の有無を表現しようという方針です。中央の赤い下向きの三角形は、この部分を突起として1段高くすることで「裏返し禁止」を実現しようと思いました。具体的にはこんな感じになります(図2、図3)。

図 2 図 3

 上の2つの図で、下側に描いた2つの穴開き三角形のタイルは相補的にマッチングしています。その様子を上側に描いた図1のテンプレートをもとにした凹凸のタイルで表現してみました。単位三角形の頂点でしかつながっていない部分がありますが、コンピュータで解析するためだけの構造なので気にしないことにします。

 この方針で24種類のパーツをBurr Toolsの中でデザインしてみました。4つほど例をご紹介します(図4)。

図 4

 Burr Tools に解析してもらうためには、これらのタイルを詰めるための「盤」の形状を用意する必要があります。まずは正六角形のパターンで、外周は任意(=周期的境界条件ではない)という条件の盤を用意してみました(図5)。

図 5

 図5の黒いマークが付いている部分が「パーツがあってもなくても良い」ところです。この設定で、外周部分は〇があっても無くても(凹でも凸でも)可、ということになります。

 この条件でBurrToolsで解を探し始めたところ、わずか30秒ほどで解の数は1万個を越えました。おそらく解の数は数千万以上になりそうです。図6に、そういった解の1つの図を載せておきます。

図 6

 こうして解をたくさん求めてくれるのがありがたいです。

(つづく)



 昨日、ソースが終わってしまったので新しい容器のものを開けました。このソースは何かの景品でもらったもので、自分で選んで買ったものではないのですが、妻が「ふたのふちが波打っていてかわいい」と言うのです。

図 7

 「これ、かわいいからこういうデザインにしたわけではなくて、機能的な意味があると思うよ」とコメントしたのですが、皆様わかりますでしょうか。ネットでちょっと検索してみると、この容器のふたの形状、あまり評判は良くないみたいですね。妻もとても開けにくそうでした。

<おまけのひとこと>
 昨日の「ひとこと」を読んでくれた妻が、「前の日の夕方に買った楽譜を翌朝忘れてるって…」と大笑いしていました。






4月21日(火) 穴開き三角形の相補的マッチングの周期的正六角形配置の対称解(その1)

 昨日、「穴開き三角形の相補的マッチング」の解をパソコンで探してみる、というのをご紹介しました。

穴開き三角形24枚セット

 自分で探さなくても良くなったので、いろいろな条件で探索してみたくなります。まず、正六角形配置の周期解で、きれいなパターンができるかどうかを考えてみました。



 先週末の更新で、手作業で正六角形配置の周期解(向かい合う辺どうしも相補的マッチングしている解)を見つけた、ということを書きました。この解の向かい合う辺のパターンを調べてみました。

図 1

 向かい合う辺のペアに同じ色を付けて区別します。六角形の外周に並ぶ穴のパターンは図2のようになっていました。

図 2

 この中で、水色のペアが一番対称性が高いです。それぞれの単位三角形の穴の位置も左右対称ですし、それが2つ並んだパターンも左右対称です。次が緑のペアで、これは単位三角形は対称ではありませんが、2つ並びとしては左右対称です。ピンクのペアは、それぞれの単位三角形としては左右対称ですが2つ並びとしては対称ではありません。

 そこで、正六角形配置の最外周の穴の配置がもっと対称性の高いパターンに解があるのか、探索してみることにしました。以下のようなパターンを考えました。

図 3

 図3左は、正六角形の辺の2つの単位三角形の2つの辺の6か所すべてに〇がある辺と、1つも〇がない辺が交互に現れるパターンです。図3右は、最外周全てにおいて〇が1つおきに現れるパターンです。

 また、これらよりも若干対称性が下がりますが、図4のような外周パターンも考えてみました。

図 4

 図3、図4の合計4パターンの最外周は、いずれも図5のような対称性と連結性を持っています。

図 5

 Burr Tools で解析してみると、いずれもあっという間に解析終了してくれました。図3のパターンはいずれも672解、図4のパターンはいずれも820解、出てきました。そのままではパターンがわかりにくいので、図を作ってみることにしました。

(つづく)



 昨日、カゴメソースの新しい容器のふたが開けにくいという話を書きました。そうしたら、たびたび感想をお寄せ下さるKさんからメールをいただきました(いつもありがとうございます)。文面をそのまま引用することはしませんが、製造するメーカーの側に立った視点でのコメントで、私も同様な感想を抱いていたので大変共感しました。

 ふたの縁が波打っているのは、ちょっと回転させることでふたが押し出されて自然と外れるように、という機能的な工夫なのでしょう。でも、倒れたときとかにも密閉性が保たれて中身がこぼれないように、それなりの力を入れないと外れない設計なのだと思います。商品企画のときに、「使いたいときには一瞬でふたを外せて、しかも閉じるとしっかり封印、デザインも特徴的、これは素晴らしい!」となったのではないかと想像しました。

 ところが、「しっかり封印」されたものを「一瞬で外せる」ためには、大きな力が必要でした。そこが大不評のようなのです。“カゴメ ソース ふた” 等で検索してみると、否定的なコメントがたくさんありました。公式サイトでも、「お客様の声」のコーナーに 「カゴメ醸熟ソースシリーズ」のキャップの開け方について、イラストを修正いたしました というページが用意されていました。

図 6

 リンク先の<変更前>の絵ではキャップを指先で「つまむ」(pinch)感じですが、これでは力が入りません。<変更後>はキャップをしっかり「にぎる」(grasp)イラストに変更されています。ただ、私はこの変更後のイラストにもやや違和感を感じました。

 うーむ、私はこのイラストと違って、キャップを握る手の上下が逆で、親指が下になるようにしています。回転方向も逆です。そうすると、キャップが外れたときに自然とキャップの内側が上を向くようになります。(実は私は左利きなので、正確には「左手で親指が下になるようにキャップを握って、図と同じ方向に回転させている」のですが、上記の記述は「右利きだったとしたら」という仮定で左右の手を逆にして説明しています。)

 会社の食堂の調味料コーナーに、このタイプのソースのボトルが置かれています。他の人がこのボトルをどうやって開けているのか観察して統計を取ってみたいなあと思いました。でも今は、新型ウイルス対策で食堂の喫食時間は細かく定められ、黙って速やかに食事を済ませて退室することを求められているので観察なんてできませんけれども。



 一昨日の日曜日、運動不足解消のために、自宅から4キロ弱のところに3月下旬に新しくオープンした食品スーパーまで歩いてみました。google map のルート探索だと距離3.9kmで徒歩43分と出ましたが、それより若干短い40分弱で歩けました。途中、神社の敷地の脇を通ったときにネコヤナギの枝がありました。

図 7

 まだ芽吹いておらず、芽は硬いままでした。徒歩だとこういったことに気付けるのがいいですね。

<おまけのひとこと>
 4/12(日)に1時間半くらい里山を歩いた時には平気だったのに、4/19(日)にわずか4キロ歩いただけなのに昨日は筋肉痛が出ました。運動になるように意識して早歩きしたとはいえ、情けない…






4月22日(水) 穴開き三角形の相補的マッチングの周期的正六角形配置の対称解(その2)

 今週は月曜日から、「穴開き三角形の相補的マッチング」をパソコンに解いてもらうために三角格子の上に構造が等価になるように凹凸のかたちをデザインしてみた、という話をしています。毎回で申し訳ありませんが、パーツの一覧を載せておきます。

穴開き三角形24枚セット

 これに対応している三角格子上のパーツがこうなります(図1)。

図 1

 これを使って Burr Tools に探索してもらった結果を今日はご紹介します。



 最初に、正六角形の相補的マッチングの周期解のパターンAとパターンBです。それぞれ672解、見つかっています。

パターンA、パターンB

 こんな解が見つかりました(図2、図3)。それぞれ24枚のタイルが辺をはさんで必ず片側だけに穴があること、六角形のの最外周のパターンが指定通りになっていることをご確認ください。

図 2 図 3

 続いて、パターンCとパターンDです。こちらはそれぞれ820解見つかっています。

パターンC、パターンD

 こちらはこんな解が見つかりました。

図 4 図 5

 面白いです。



 コンピュータが生成してくれた解を1つ1つ眺めていると、こんなパターンに目がとまりました(図6)。ちなみにこれはパターンCの解の1つですが、図4とは異なる解です。

図 6

 図6の左が Burr Tools が出力してくれた画像です。このままだとわかりにくいので、手作業で図6右のように穴開き三角形のパーツに置き換えています。これを見て、面白いことに気が付きました。この部分です(図7)。

図 7

(つづく)

<おまけのひとこと>
 このページの更新作業中の4月22日(水)午前2時半ころ、長野県中部に地震がありました。我が家のあたりは震度1でした。20分後に2時50分頃にも同程度の地震がありました。もうこれ以上大きな災害がないといいなあと思います。






4月23日(木) 3×3×3の部屋を巡って(その1)

 あんまり同じ話題が続くのもいかがなものか…と思って、今日は別の話題について書こうと思います。



 1つのフロアが3×3の9部屋、それが3階建てで全部で27部屋の建物を考えます(図1)。ルービックキューブみたいですね。

図 1

 壁や天井・床で隣り合う部屋には通路があって行き来ができます。重力がない宇宙ステーションだと思ってもいいです。

 通路が見えるように、部屋を思いきり縮小してみました(図2)。

図 2

 さて、この27部屋を1回ずつ巡って、全部の部屋を1度だけ訪れる経路を考えます。(グラフ理論の言葉でいうと、「ハミルトン路」を考えます。)素直に考えるなら、こんな例が自然だと思います(図3)。

図 3

 左下手前の部屋から始めて、1階のフロアを行ったり来たりして全部の部屋を巡り終えたら2階に上がって同様に9部屋を巡り、最後に3階も全部巡って終わり、です。

 それでは問題です。

 【問題1】 図のように、頂点の部屋から始めてすぐ隣の部屋で終わる経路はあるでしょうか?

図 4 :【問題1】

 この問題は、「全ての部屋を1回だけ巡って最初の部屋に戻る閉路は存在するでしょうか?」と言い換えることができます。 例えば下の図5は、閉路を作ろうとして失敗した例です。頂点を1つ、通り損ねています。

図 5 :閉路の失敗例

 【問題2】 中心の部屋からスタートして、全ての部屋を1回だけ巡る経路はあるでしょうか? どの部屋で終わってもかまいません。

図 6 :【問題2】

 ご存じの方には簡単な問題かなと思います。ついでにもう1問。

 【問題3】 27部屋の対称性を考慮したとき、経路の両端の部屋の位置関係のパターンは何通りあるでしょうか?

(つづく)



 昨日、このパターンの中に面白い特徴を見つけた、という話を書きました。

 この部分だけ、「穴開き三角形」のタイルで描画してみます(図7)。

再掲図 図 7

 お気づきでしょうか。これは正八面体の展開図になっていて、しかも相補的マッチングが完成しているのです。いや、まあそれだけのことなんですが…

<おまけのひとこと>
 勤務先の職場が、五月連休前の1週間も休業することになりました。もちろん年間のお休みが増えるわけではなく、振替になるだけですが。 職場の若い人たちが、外に出られない長期休みに何をするかということについて職場内SNSでやり取りしていて微笑ましいです。(我ながら年寄りっぽいコメントです。) 私は、過去に作ったたくさんの模型を整理しようか、とか、このサイトの中身のリンク集やまとめのページを作ってみようか、とか、せっかくなので新しい楽器を練習してみようか、とか(多分2週間あれば100時間は練習できると思うので、そこそこ自己満足の域には達すると思うのですが、披露する機会もないしなぁ…)、バロック音楽の通奏低音の数字付き和声の練習をみっちりやってみようか、とか(まあでもこれは実践で使い続けないと意味がないので、今更やっても仕方がないか…)、新しいコンピュータ言語を勉強して使いこなせるレベルを目指そうか、とか、ちゃんと読めていない手元の数学の本(たくさんあります)を真面目に勉強してみようか、とか、いろいろ楽しそうな案を考えてみています。
 もちろん感染せず、健康に過ごせることが大前提です。






4月24日(金) 3×3×3の部屋を巡って(その2)

 1つのフロアが3×3×3の27部屋を、それぞれ1回だけ訪れるルートについての話の続きです。昨日の問題の解説を書きたいと思います。

 まずは【問題1】、大きな立方体の頂点の部屋とその隣の部屋がスタートとゴールになるような順路があるでしょうか、という問題ですが、これは「無い」が正解です。

 この27部屋を、隣接する部屋の色が異なるように塗り分けてみると、図1のように2色で塗り分けが可能です。 (グラフ理論では、こういうグラフを二部グラフと言います。)

図 1

 黄色の部屋からは赤の部屋にしか行かれません。赤の部屋からは必ず黄色の部屋にしか行かれません。どのような経路を考えても、赤-黄-赤-黄… となります。黄色の部屋の数は14で、赤の部屋の数は13です。ということは、黄-赤-黄-赤-…と辿ってゆくと、最後は必ず黄色で終わらなければなりません。隣接する部屋で終わることはできないのです。

 なので、【問題2】、中心の部屋から始める順路はあるでしょうか? という問いの答えも「無い」が正解です。

 赤の部屋から始める以上、黄色が最後にどうしても1つ余ります。

 この「2色に塗り分ける」という方法は、平面の格子パターンのパズルや問題でもよく使われる考え方です。



 次に【問題3】、全ての部屋をめぐる順路の両端の部屋の位置関係のパターンは? という問題ですが、可能性があるのは、3×3×3の大きな立方体の頂点か、面の中心の部屋しかありません。それらの中から異なる位置関係になっているものを列挙してみます。

 最初に、両方の部屋が頂点になっている場合です。

図 2 図 3 図 4

 大きな立方体の対角線の両端(図2)、面の正方形の対角線の両端(図3)、稜の両端(図4)の3つの可能性があります。いずれも経路が存在することを示すことができます。考えてみてください。

 次に、片方が大きな立方体の頂点、もう片方が面の中心の場合です。

図 5 図 6

 頂点から見て、その頂点を含む正方形の面(近い面)が3面、含まない面(遠い面)が3面あります。近い側を選んだのが図5、遠い側を選んだのが図6です。

 最後に、面の中心同士を選んだ場合です。これも2パターンがあります。

図 7 図 8

 1点を固定して考えると、その点を含むつの面の隣の面(4面あります)の中心を選ぶか(図7)、反対側の面の中心を選ぶか(図8)の2通りが考えられます。

 以上7通りになります。いずれもその2部屋を両端とした、全27部屋を1度ずつ巡る順路があることがわかります。図を見ながら考えてみてください。



 さて、ここまでがある意味準備体操のようなものでした。ここからが本題です。

 昨日お示しした、大きな立方体の対角線の両端を端点とした経路ですが、通過するそれぞれの部屋で、経路が「直進しているのか」「折れ曲がっているのか」を色分けしてみました(図9)。

図 9

 ご覧のように、経路が直進している部屋は、1階・2階・3階それぞれ3部屋ずつ、合わせて9つあります。この「経路が直進している部屋の数」はいくつまで増やせるでしょうか? 経路の端点の部屋の位置は、上記の図2〜図8のどのパターンでもかまいません。

 私はいまのところ11という解を見つけています。おそらくこれが最大だろうと思っています。これがすでに知られている問題なのかどうか私は知識がないのですが、いかにもすでに検討されていそうな問題だと思っています。(この解を見つけたときの思考プロセスを覚えてしまったため、解そのものも覚えてしまいました。頭の中で思い出して楽しんでいます。)

(つづく)

<おまけのひとこと>
 昨日(4/23)の午後、震度2〜3くらいの地震が30分間の間に3回ほどありました。その前後にも小さな揺れが続いているようです。その35時間前くらいの4/22の午前2時半くらいにも地震が2度ありました。この規模の小さな揺れが続いているのがとても気持ちが悪いです。大きな地震がないといいのですが、万一に備えて避難の準備などをしておく必要があるなと思っています。






4月25日(土) 折り紙のシャツ型ギフトバッグ他

 週末なので軽い話題です。先日、YouTubeの シャツ型ギフトバッグ Origami Shirt Bag という動画を見て、真似して折ってみました。A4サイズの用紙1枚から、切ったり貼ったりせずに折り出せる折り紙作品です。

 たまたま手元にあったコーティングされた柔らかい針金で、針金ハンガーも作ってみました。ついでに木製の小さな洗濯ばさみ(30個入り100円+税)も並べてみました。

図 1

 残念ながら折り紙の構造上、ハンガーを首と襟から出すことはできないのです(ちょっと切り込みを入れれば可能です)。A4サイズの紙から折り出せる、容器として実用性もあるこのシャツ型バッグの折り紙、気に入りました。

 連休中に、自分のページの過去の折り図をまとめたページを作ってみようかなあなどと考えています。



 我が家の小さな庭には春の花の球根が植えてあって、毎年勝手に芽を出して咲いてくれます。今年もチューリップやヒヤシンス、スイセンなどが咲いています。香りのよいヒヤシンスを妻が摘んできて、昔、洋菓子屋さんで買ったプリンの容器に生けてありました。隣に今年の年賀状用に折ったネズミの折り紙を飾ってくれてありました。

図 2

 なんだかちょっと嬉しいです。



 木曜日の朝の出社時、いつもより少し家を出るのが遅くなってしまったのですが、高速道路を運転中にFMラジオを入れてみたらバッハのフルートソナタをやっていました。大好きなロ短調(BWV 1030)でした。トラヴェルソによる演奏の後で、同じ曲の3度低いト短調版があるということが紹介されました。演奏される機会が多いロ短調は、バッハの最後の職場となったライプツィヒで作曲されたものなのですが、その前に宮廷音楽家として仕えていたケーテンで、同じ曲のト短調版の通奏低音の楽譜だけが残っているのだそうです。旋律楽器がなんだったのかは譜面がないので不明なのだそうですが、音域から言ってオーボエなのではないか、という説が有力なのだそうで、BWV(バッハ作品番号) 1030b (アルファベットが付いた作品番号は同じ曲の本人による別な楽器の編成の編曲を表しています)という番号が振られています。その終楽章が演奏されました。これはこれでとても面白い演奏だったのですが、やっぱりフルート(トラヴェルソ)のほうがいいなあと思いました。音域が高くて演奏は大変なのですが…

 これを聴いて、閉じこもって暮らす今年の五月連休にはバッハのフルートソナタ全曲を演奏(練習)してみようかなと思いました。難しすぎて手を付けていない曲が2曲ほどあるのです。いい機会なので何度かさらってみようと思いました。ついでに、作ろうと思って途中でほったらかしになっているバッハのヴァイオリンソナタのフルート版への編曲も仕上げたいと思いました。1つ目標ができました。



 同じく木曜日の朝、出勤で車で家を出た直後に、家の前の畑の法面の上に雉のつがいがいるのが見えたので車を止めて写真を撮ってみました。道はなだらかに下っているので、見つけたときには雉のいた地点とそれほど高さが違わなかったのですが、車を止めたときにはだいぶ見上げる感じになってしまって、ほとんど雉の頭の先しか見えませんでした。

図 3:雉のオス 図 4:雉のメス

 こんな写真では、何が写っているのかまるでわかりませんね…。でも「雉のつがいを見た」という証拠写真として載せておきます。

<おまけのひとこと>
 週末なので、いつもより遅い時間の更新(朝6時半過ぎ)になってしまいました。






4月26日(日) バッハのヴァイオリンソナタ BWV 1018 をフルートで

 日曜日なので音楽の話題です。興味がない方、ごめんなさい。



 昨日の更新で書きましたが、久しぶりにバッハのソナタをフルートでやってみたくなりました。去年の五月連休に作り始めてほったらかしになっていた、バッハのヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第5番(BWV 1018)の第一楽章と第二楽章の楽譜を昨日の午前中に3時間ほどかけて作って、印刷して午後に試してみました。

 原曲はヘ短調(f-moll)ですが、フルートで演奏するために、思い切り上げてロ短調(h-moll)にしてみました。これだとチェンバロでは不自然に高いので、モダンフルートとピアノで試してみました。楽譜は公開できるレベルまで仕上げていないので、midiデータだけ置いておきます。譜例はオリジナルのヴァイオリンのものです。

第一楽章:BWV1018b-1.mid

 第一楽章、たいへん美しい楽章です。朗々と歌う旋律も素敵ですが、淡々と進む鍵盤が素晴らしいです。鍵盤だけ弾いていても楽しいです。

第二楽章:BWV1018b-2.mid

 激しい第二楽章です。この曲がまた素晴らしいです。旋律楽器も大変ですが、鍵盤が忙しいです。この曲をグールドがピアノを担当して収録しているCDがあるのですが、これがとても好きな演奏で(第一楽章や第三楽章のヴァイオリンの演奏の解釈は独特で、賛否が分かれるところだと思います)、この激しさはヴァイオリンという楽器に合っていると思います。(でも好きな曲なので無理やりにでも自分の楽器でやりたい)

 第三楽章はヴァイオリンが最初から最後までずっと重音を奏でているので、単音しか出せない管楽器だとまるで雰囲気が変わってしまいます。潔くどちらかの音だけを吹くか、重音を構成する2音を順に吹くか(前打音的にするか、等価にするか、ギターのトレモロみたいにするか…)等、いろいろ選択肢がありますが、いずれにせよ雰囲気が変わります。方針が定まらないのでしばらく楽譜は作らずに放っておこうと思います。



 髪がだいぶ伸びてむさくるしい感じになってきました。ただこの時期、散髪に行くのも気が引けます。と思っていたら妻が電動バリカンを買ってきてくれて、散髪をしてくれるというので昨日やってもらいました。床屋さん2回分くらいの金額だったそうです。最初はお互いにおっかなびっくりだったのですが、感じがわかってきてからはある程度大胆にカットしてもらって、おかげさまですっきりしました。 周囲の人に不安や不快な思いをさせないように、良い意味で目立たないレベルに身だしなみが整っているということが大事なのだと思っています。もっとも、当分は人に会うようなところには最低限しか出ないですが。

<おまけのひとこと>
 昨夜、午前二時半くらいにまた地震がありました。数日前から震度3くらいの地震が続いています。心配です。






4月27日(月) 穴開き三角形のマッチングをBurr Toolsで解く(その1)

 すみません、しつこく「穴開き三角形のマッチング」の話題に戻ります。

穴開き三角形24枚セット

 先週、穴開き三角形の相補的マッチングの解を探索するために、こんなモデル化をしてみました。

相補的マッチングのモデル

 順番が逆になってしまいましたが、穴の有無を合わせる通常のマッチングの探索もしてみたいと思って、パーツをデザインしてみましたのでご紹介します。



 穴の有無が同じ場合にのみ噛みあうようにすればよいので、二通りの形状を考えればよいはずです。最も簡単なのは凹凸がないパターンですから、凹凸の有無で〇の有無を表現すればよいと思いました。

 基本となる形は三角格子でデザインします。ピースのそれぞれの辺の3か所に凹凸を作らなければいけないので、基本形は図1左のように考えました。

図 1

 辺の中央の穴は図1中央のように表現し、三角形の頂点にある穴は、両側の辺に効力があるので、図1右のようにします。

 相補的マッチングのときには裏返しにならないように片面に突起を用意しましたが、図1のデザインであれば裏返すと凹凸部がかみ合わなくなりますので、裏返しを防止する必要はありません。(組み上がった解全体が裏返る解がでてきてしまいますが、それはいいことにします。)

 図2左は通常のマッチング(ノーマルマッチング)でパーツ4枚で正四面体になる組み合わせの例です。これを今回の凹凸のモデルで表現すると、図2右のようになります。

図 2

 この考え方で、24通りのピースを準備してみました(図3)。

図 3

 「穴開き三角形」のデザインの時と違って、鏡像対称性があるパーツは1つしかありません。また、互いに鏡像体になっているパーツもありません。

 この24枚のセットで、まずは正六角形のパターンで外周の〇の有無は自由、というゴールのパターンを用意して(図4)、解を探索してみました。

図 4

 あっという間にものすごい数の解が出てきました。最後まで計算していませんが、おそらく数千万解はありそうです。そのうちの1つを載せておきます。

図 5

 この例は残念ながら周期解にはなっていない(向かい合う外周どうしがマッチングしない)ですし、外周のパターンの規則性は低いです。でも、これで探索する準備が整いました。

(つづく)



 Nova Plexus - Stainless Steelというパズル(?)が北米で発売されているようです。これは素敵なかたちです。

図 6

 Nova Plexus は濱中さんの過去の表紙24で知りました。上記の販売サイトのページを見ると、輪ゴムがセットとして付いているようです。輪ゴムで仮止めしながら組んで、最後に輪ゴムを外すことを想定しているのだと思います。

 久しぶりにこの手の模型も作ってみたいな、と思いました。

<おまけのひとこと>
 フルートを吹くと、後頭部の右側が痛くなるのです。昔からときどきそういうことがあったのですが、このお休みは頻発しています。1時間近く吹いているとかなり痛くなるのです。吹くときの姿勢が悪いせいかもしれないな、と思っています。






4月28日(火) 穴開き三角形のマッチングをBurr Toolsで解く(その2)、「格子からみえる数学」

 昨日、穴開き三角形のノーマルマッチング(穴の有無を合わせたマッチング)をBurr Toolsというソフトウェアで探索するためのパーツのデザインをご紹介しました。これで、周期的境界条件を満たしつつ、対称性が高いパターンがないかなと思って探してみているのですが、相補的マッチングのときと違って、なかなかきれいなパターンが見つかりません。比較的ましなものとして、こんな条件のものがみつかりました。

図 1

 これは、周期的境界条件を満たしています(正六角形の向かい合う3組の辺がそれぞれマッチングしている)。また、上下に鏡像対称性があります。また、一瞬だけ「3回回転対称性があるのかな?」と期待させるパターンになっています。

 図1の外周の条件でBurr Toolsが見つけてくれた解の1つをご紹介しておきます(図2)。

図 2

 この解の、普通の「穴開き三角形」のパーツを並べた表現の図も載せておきます(図3)。

図 3

 これ以上きれいな解が見つからなかったので、この探索はいったんここまでとすることにしました。

(つづく)



 「格子からみえる数学」(枡田 幹也、福川 由貴子 著、2013年7月発行、日本評論社)を拾い読みしました。6章の「綺麗な格子図形」が面白かったです。

 普通の平面の正方格子の格子点(xy座標がどちらも整数値の点)を頂点とする正多角形は作れるか、ということから議論を始めて、3次元空間の格子点を頂点とする正多角形や正多面体の存在、n次元空間における正多胞体の話などに展開してゆく章です。

 平面上の格子点を頂点とする正多角形は、実は正方形しか作れません。1946年に証明されているそうです。(W.Scherrer, Die Einlagerung eines Regul?ren Dreiecks in ein Gitter, Elemente der Math, 1(1946), 97-98) 3次元以上の格子点になると、正方形に加えて正三角形、正六角形が存在しますが、作れるのはここまでで、次元をいくら上げても正3,4,6角形以外は存在しないです。

 仮に、全ての頂点が格子点上にある正n角形が存在したとします。その1辺の長さを考えると、必ずこのかたち

になっているはずですから、格子点上にある「一番小さな正n角形」が存在するはずです。それをPとしましょう。Pの頂点はすべて格子点上にありますから、下図左のように、隣り合う頂点を結ぶベクトルを考えて、そのベクトルを平行移動して全ての始点を1つの頂点に集めてみます(図右)。こうしてできた新しい正n角形も、もちろん全ての頂点が格子点の上にあります。

図 6

 こうしてできた新しい正n角形の大きさについて考えてみましょう。nが7以上であれば、この新しい正n角形は、もとのPよりも必ず小さくなります(nが7以上ならば、図の赤い二等辺三角形の底辺は斜辺より短いです)。これは、Pが最小の格子n角形であるという仮定に反します。したがって、そういう(全ての頂点が格子上にある)正n角形は存在しません。

 あとは正3,5,6角形が存在しないことを言えばOKです。

<おまけのひとこと>
 ほとんど全く出歩かずに閉じこもっています。






4月29日(水) 穴開き三角形の相補的マッチング:平行四辺形の周期解、他

 今日明日で、穴開き三角形のマッチングの話題で書きそびれている最後の2つのトピックを紹介して、一連のこの話を終えたいと思います。



 穴開き三角形の相補的マッチングの平行四辺形の周期解を手作業で探してみました。最初に頂点の〇の配置を図1のように決めました。

図 1

 規則的できれいな配置だと思います。拘束条件が強いので、短時間の試行錯誤でこんな解が見つかりました(図2)。

図 2

 CGを作ってみました(図3)。

図 3

 周期的に配置してみました(図4)。

図 4

(つづく)



 この連休は閉じこもっているので、数か月ぶりにフルート(トラヴェルソ)を練習しています。久々に吹いたらピッチは安定しないし音色はひどいし息は続かないし散々だったので、基礎練習に戻ることにしました。

 チューナーを見ながら一音ずつロングトーンをしてピッチを確かめる練習をして、とにかく音域が狭くてテンポもゆっくりな曲を丁寧に丁寧に吹く練習をしました。こういうときによく使うのが、[標準]やさしいフルート曲集 上巻同 下巻です。

 下巻の後半になると、かなり音域も広くて忙しい曲も出てきますが、これをとにかく最初のほうからひたすら丁寧に演奏してみます。この練習を2時間くらいやって、(自分の出せる音の中では)だいぶ音色がましになってきました。

<おまけのひとこと>
 webマンガのオデット ODETTE というのを読んで、ちょっと気に入りました。こちらに作者インタビューの記事もありました。






4月30日(木) 穴開き三角形の相補的マッチング:四方六面体解、ネクタイの結び方の論文

 2月20日からご紹介を始めた穴開き三角形シリーズ、当初は全く考えていなかったほど話題が広がりましたが、今日でいったん最終回です。相補的マッチングで四方六面体の配置を作ってみたので、それをご紹介します。



 まずは見つけた解を載せておきます。これは手作業で探しました。

図 1

 立方体の各面にピラミッド(四角推)を貼り付けたかたちです。全ての面が見えるように、立方体の展開図のかたちで載せています。ピラミッドの頂点にあたる、次数4(4面が集まる)頂点が6つと、立方体の頂点にあたる、次数6の頂点が8つあります。いずれも偶数の次数の頂点なので、相補的マッチング(〇の有り無しが交互になっている)が可能でした。

 手作業で解を探索するにあたって、いつものように頂点の〇の有無のパターンを設計しました(図2)。

図 2

 CGを作ってみました(図3〜図6)。左右のピラミッドの頂点を結ぶ軸の周りに(「ぶんぶんごま」を回すように)手前から奥の方向に90度ずつ回転させて、全ての面が見えるように4つのCGにしてあります。図1の展開図と合わせてご覧ください。

図 3 図 4
図 5 図 6

 この配置が見つけられて嬉しかったのです。

 それにしても、当初ご紹介したときにはこの話題がこんなに広がるとは思ってもみませんでした。ノーマルマッチングと相補的マッチング、正六角形配置の周期解、四方六面体や三方八面体の多面体配置、Burr Toolsで解くための凹凸デザインなど、とても楽しかったです。

 まだご紹介していない細かい結果も少し残っているのですが、区切りよく今日で終わりにしたいと思います。



 しばらく前に見つけた論文のご紹介です。More ties than we thought(Dan Hirsch, Ingemar Markstr?m, Meredith L Patterson, Anders Sandberg, Mikael Vejdemo-Johansson) という論文です。「ネクタイのさらなる結び方」とでも訳せば良いでしょうか。

 2003年3月8日から数日間、「ネクタイの数学」という本をご紹介したことがありました。上記の論文はもちろん、この本を冒頭に引用しています。

"More ties than we thought" Figure.1 より

 この機会に改めて、オリジナルの論文Tie knots, random walks and topology(Thomas M.A. Fink, Yong Mao 2000)にあたってみました。natureにも簡潔な紹介記事が載っていたのだということも知りました。

"NATURE | VOL 398 | 4 MATCH 1999 p.31" Figure.1 より

 ネクタイのある結び方が三角格子の上のランダムウォークになっているというオリジナルの発想はやはり素晴らしいなと思いました。

 家に閉じこもっているこの時期、ネクタイを締めてどこかに出かけるなんていう機会もないですが、この際これらの論文や記事を参考に実際にいろいろなネクタイの結び方を試してみて、写真を撮ってみたりするのも楽しいかもしれないなと思いました。



 上記の論文を検索していたら、The Mathematics of Tie Knots(ネクタイの結び目の数学)というプレゼンテーション資料がありました。上記の論文の共著者のお一人かなと思ったのですが違ったようです。WASHINGTON AND LEE UNIVERSITYの数学の准教授のElizabeth Denne氏の資料のようで、写真も豊富で素敵な内容です。この方のblog、Visions in Math が素晴らしいです。3Dプリンタで作った有名なカオスのローレンツアトラクタの模型を始めとして、様々な材料や手法で数学の興味深い構造を可視化・実体化されていて、興味の方向が似ているなあと思いました。そういう情報源に新たに出会えるのはとても幸せです。

<おまけのひとこと>
 このページの更新は、最近はだいたい午前1時〜3時の間に作成しています。明け方にもう一度寝るときと、そのまま起きているときがあります。今日はもうひと眠りできるかな…






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