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以前の「ひとこと」 : 2002年6月後半



6月16日(日) タイリングその他

 さて、昨日の2枚のよく似たタイリングパターン、家族に見せてみたら、どこがちがうのかわからないと言われました。そこで、そのとき説明に用いた絵を載せておくことにします。

「きつね」と「切妻」(1) 「きつね」と「切妻」(2)
「きつね」と「切妻」(1) 「きつね」と「切妻」(2)
「きつね」と「切妻」(1) 「きつね」と「切妻」(2)

 上の図は昨日ご紹介した2枚、下の図は、そのそれぞれについて、「切妻」は全部赤で、「キツネ」は全部青で塗ってみたものです。 こうしてみると、左側のパターンは赤と青が全く同じ形になっていることがわかります。(注:ただし平行移動では重なりません。鏡像反転のかたちになっています。) つまり、赤い帯も青い帯も、どっちも「キツネ」でも「切妻」でも作ることができるのです。

 これに対し、右側の図を見ると、赤と青のパターンは明らかに違います。赤の帯のうち、青の帯に対して飛び出している、青い正方形2つと接している三角形があります。この三角形があるため、赤い帯は「切妻」でしか作ることができません。

 できるかなというサイトの最新作、“生まれ変わるのは何時だろう? - 「次」に会えるのは何時…かな? - ” を読みました。 ある仮説を定義して、その定義を守りながら論理的に正しい推論をすすめてゆくと、こんな結論が得られる、という方法論の面白さが味わえるとても面白い文章です。

 <おまけのひとこと>
 昨日は土曜参観で、午前中も午後も子供の学校に行きました。国語で「ありのぎょうれつ」をやっていて、自分の小学校の国語の教科書にも入っていたな、となつかしく思い出しました。 午後のPTA懇親運動は、今年はソフトバレーでした。途中でメンバー交代しながら、リーグ戦で3試合やりました。2試合目の前半と、3試合目の後半に出場して、1勝2敗でした(自分が出場した試合は1勝1敗)。バレーなんて本当に久しぶりで、思うように足が出なくて困りました。今日は筋肉痛で、階段を降りるのがつらいです。




6月17日(月) 「ありの行列」

 土曜日、子供の参観日で学校に行くと、国語の時間に「ありの行列」という話をやっていました。アリがどうして餌のあるところと巣のあいだをちゃんと迷わずに行ったり来たりできるのか、ということを説明した科学エッセイのような話で、はるか昔、私が小学生の時に自分の国語の教科書に載っていたものと同じ話でした。

 そのエッセイによると、アリは、その種類に応じた「蒸発しやすい、独特のにおいを出す液」を分泌して、そのにおいをたどってゆくと餌のあるところに行かれるという仕組みになっているんだそうです。餌を運んでいる間は、どのアリもその液を分泌しつづけているんだそうです。

 私が小学生の頃、担任の先生に「なんでアリは餌を運んでいるあいだじゅう液を出しているのか?」と尋ねられて、「そういう習慣だから」というように答えてしまった記憶があります。先生の説明によると「蒸発しやすいからずっと液を出していないとにおいが消えてしまう」というのが正解でした。 ただ、私は「水分がとんでしまっても、においは残るんじゃないか?」 と思って、先生の説明が不満でした。 でも不満だったことによって、このエッセイはその後長いこと記憶に残りました。

 子供が学校から帰ってきたときに、「なんでアリは餌を運んでいるあいだじゅう液をだしているの?」と尋ねてみたら、「蒸発しやすいから」と素直に答えていました。 自分で考えたのかな、それとも学校でやったのかな、と思いましたが、それは尋ねずに、続いて「なんでアリの出す液って蒸発しやすいんだと思う? においが消えにくかったら、最初のアリがにおいの液で道をつけたら、他のアリは液なんか出さないでいいからその方が便利じゃないかな?」と意地悪く聞いてみると、「うん、そうだよね、不便だね」とあっさり説得されてしまいました。

 あわてて、「うん、でもね、本当は蒸発しやすくないと困る事があるんだよ。なんだと思う?」と聞いてみたのですが、「うーん、わかんない」と言われてしまいました。結局教えてしまいましたが、皆様おわかりになりますよね。

 過去の「ひとこと」についてのページを作り始めました。それに伴って、ほんの少しページの構成をいじりました。

 <おまけのひとこと>
 土曜日の午後のソフトバレーの後遺症で、ひどい筋肉痛です(なさけない)。 実際に試合に出ていたのは10分×2回程度だというのに、日ごろの運動不足が身にしみます。 緊張していて瞬発的に身体を動かすなんていうことをしたのは本当に久しぶりです。




6月18日(火) タイリングパターンの構成要素の数え方

 さて、6月15日のひとことでちょっとご紹介した正三角形と正方形による別のパターン(図1)について、これをできるだけ小さな基本単位でタイリングするため、組成比を考えてみました。

タイリングパターン  ⇒  単純な基本格子をみつける  ⇒  要素を数える
図1 図2 図3

 このパターンは、図2のように補助線を入れて考えてみると、蜂の巣のような6角形の基本構造を持っていることがわかります。とすると、基本単位を構成する三角形と正方形の数は、この1つの赤い六角形の中の数を数えればよい、ということになります。

 ここで、このパターンの三角形には二通りあることにご注意下さい。図3の緑の三角形は、3つの辺のうち1辺だけが正方形と接し、残りの2辺は三角形と接しています。このタイプの三角形が6枚集まって、六角形を形作っており、これが基本構造の赤い六角形の中心になっています。

 一方、このパターンにはもう1種類、3辺とも正方形に接している三角形があります。図3の青い三角形がそうです。このタイプの三角形が正方形と交互に接続して、先ほどの三角形6枚による六角形を囲んでいます。

 さてでは、赤い六角形の基本構造の中の三角形と正方形の数を数えてみます。まず、緑の三角形が6枚、これは問題ありません。正方形は6枚ありますが、それぞれ隣の赤い六角形と共有されていますから、6を1/2倍して、ちょうど3枚分含まれます。青の三角形も6枚ありますが、それぞれ3つの基本構造にまたがって共有されていますから、6を1/3倍して、2枚分含まれることになります。

 ということで、このパターンは、

正方形:三角形=3:8

 ということになります。実際にタイリングの基本単位を設計するときには、上記の青と緑の三角形は区別して考えないといけないので、もう少し正確に言うと、

正方形:三角形(緑):三角形(青)=3:6:2

となります。これはあくまでも必要条件で、この条件さえ守れば必ずタイリングできるというわけではありませんが、これを知っているとタイリングパターンの設計がとても楽になります。明日以降、1つ2つご紹介しようと思っています。

 なお、今回はパソコン塗り絵用のbitmapは掲載しませんが、ご希望があればメールをいただければお送りします。(圧縮版:39kbyte, 非圧縮版:約1Mbyte、目が細かいものと粗いものがあります。) 紙に印刷して手で塗ってみるとか、キルトやパッチワークの下絵に利用する、とかいろいろ利用価値はあるのではないかと思っています。ちなみにうちの子供たちに印刷してやって、「別に繰り返し模様とかじゃなくていいから、この中から線をなぞったり三角や四角に色を塗ったりして、何かの形や絵を描いてみたら?」といって渡してみたのですが、ピンとこなかったようです。

 このように、基本構造の境界にあって共有されているものを等分して数えるという構成要素の数え方は、高校の化学などでも出てくる結晶格子の要素の数え方で利用される手法です。

 <おまけのひとこと>
 先週、家族が次々とかかっていた風邪は、最初にお腹が気持ちが悪くなって、次に猛烈に咳が出るというパターンで経過していました。私も昨日からかなり咳が出るようになってしまいました。




6月19日(水) タイリングの基本ユニットの例

 昨日は、下の図のようなタイリングパターンにおいて、三角形と正方形の数の比率を調べました。そうしたら

タイリングパターン

正方形:六角形を構成する三角形:正方形に囲まれた三角形=3:6:2

ということがわかりました。

 この知識を利用して、上の図のようなタイリングパターンの骨格を、同じ図形で埋め尽くせるような図形の例をいろいろ考えてみました。ここに挙げているものは一例です。平行移動だけでタイリング可能なもの、回転が必要なもの、さらに裏返し(鏡像変換)が必要なものなど、いろいろあります。

タイリングのユニットの例
タイリングのユニットの例

 それぞれどうやったらタイリングできるかおわかりになりますでしょうか? 回転が必要なものはどれでしょう? 鏡像反転が必要なのはどれでしょうか? 

 数日前までご紹介していた前回のタイリングの骨格は、下図のように基本ユニットは正方形:三角形=1:2という極めてシンプルなものだったため、基本ユニットは以下の3つでした。

タイリングパターン

 今回のものは、それに比べると基本ユニットになり得る図形の数が多くて、きれいなパターンを探索していて飽きません。

 <おまけのひとこと>
 たぶん完璧!あこがれの食べ物に挑戦!というページがありました。内容はもちろん面白いのですが、まずトップに挙げられた本の表紙の画像が

・エルマーのぼうけん
・ぐりとぐら
・おおどろぼうホッツェンプロッツ
・からすのパンやさん
であるというところで、とても嬉しくなりました。




6月20日(木) タイリングの基本ユニットの例(その2)

 昨日はタイリングパターンの基本ユニットの例を10例ご紹介しました。その多くは単に平行移動だけで平面を隙間無く埋め尽くすことができるタイプのユニットで、多分見ただけでタイリングのパターンをご想像いただけたものが多かったのではないかと思います。 今日は、もう少し難しい基本ユニットをいくつかご紹介します。

タイリング基本ユニット4例

 青と赤は、ひょろひょろっと細長い形です。両端の三角形を除いて、どの三角形も正方形もちょうど2つの図形としか接していない、一列に並んだ形状をしています。この2つはタイリングのパターンが全く違います。特に赤の方はちょっと珍しい周期性を持ちます。多分昨日・今日ご紹介した基本ユニットの中で、タイリングが一番難しいのではないかと思います。 黄色は、昔のアポロ月着陸船のような形です。この図形のタイリングパターンはちょっと気に入っています。4番目の緑色のジグザグパターン、これもちゃんとタイリング可能です。

 これらがどのようにタイリングされるのか、パズルなどがお好きな方はぜひ考えてみることをお勧めします。

 さて、昨日ご紹介した10例のパターンのうち、左下の赤い不規則なパターンを3つ集めたものをユニットとすると、以下のようなパターンを作ることができます。3回回転対称性を持ち、三角形の基本格子に乗っているパターンです。

タイリングパターン:カトレア
カトレア

 なんとなくカトレアの花の印象がありました。(家族からは「もみじ」という感想ももらいました。) ちなみにgoogleのイメージ検索で「カトレア」を探してみると、割と輪郭が似た写真が出てきました。でも、とんでもない思いがけない画像もいくつもでてきましたが。

 <おまけのひとこと>
 20日は早朝から用事があるので、フライングで更新します。




6月21日(金) タイリングのメタモルフォーゼ

 一昨日、昨日とご紹介してきたタイリングの基本ユニットのうち、とてもよく似ているものがいくつもありました。これは、例えば部品の三角形や正方形のどれか1つだけの位置を変えても 「タイリング可能」 という性質が維持されるものなどがあるためです。 こういったパターンをいくつか考えているうちに、エッシャーの「メタモルフォーゼ」のように、徐々に変化して行くタイリングパターンを作ってみたくなりました。

タイリング基本ユニット:二枚貝とザリガニ

 例えば上の図を、仮に「二枚貝」「ざりがに」と呼びます。 (「二枚貝」の方は、左側が蝶番です。「ざりがに」は左向きで、飛び出した正方形2つがざりがにのはさみ、左向きの飛び出した三角形がざりがにの頭、そして右向きの三角形2つがザリガニの尻尾です。)この2つの間をつなぐ、徐々に変化してゆくようなタイリングを考えてみました。

タイリングによるメタモルフォーゼ
メタモルフォーゼ

 せっかくコンピュータで作っているのですから、もっと横長にして、もうちょっとゆっくり変化するようにすればよかったんですが、横長の巨大なタイリング用紙(ビットマップファイル)を簡単に作るよいアイディアがなかったため、とりあえずむりやりこれだけの幅の中で変形させてみました。 エッシャーが巨大なメタモルフォーゼの作品を作ったときにも別々の紙に分けて描いていますから、ここでもそうしてもよかったんですが。

 <おまけのひとこと>
 昨日は出張で、東京駅でちょっと時間があったので、八重洲ブックセンターと王様のアイディアに行きました。おもしろいものをいくつか仕入れてきました。 またご紹介して行きたいと思います。




6月22日(土) 両手じゃんけん

 昔、大学の研究室で「両手じゃんけん」というのを教わったことがあります。 「じゃん、けん、ホイ、ホイ、1個、抜いて、ホイ!」と調子よく唱えながらやるじゃんけんです(リズム譜参照)。

両手じゃんけんのリズム譜

 リズム譜の3拍目、最初の「ホイ」のタイミングでまずそれぞれが片手で グー/チョキ/パー のどれか1つを作って出します。この時点ではまだ勝ち負けはありません。次の4拍目、2番目の「ホイ」で、もう片方の手で、やはり グー/チョキ/パー のどれか1つを作って出します。 最後に、「1個抜いてホイ!」の「ホイ」のタイミングで、相手の手を見ながら自分のどちらかの手を引っ込めます。 残す方の手の形を変えたら反則です。ここで残った手同士で普通のじゃんけんの勝負の判定をして、勝負がつくか、引き分けになります。引き分けたらもう一度、「じゃん、けん、ホイ、ホイ、1個、抜いて、ホイ!」です。

 例えば、自分が「グー」「チョキ」を出したとしましょう。 相手が「チョキ」と「パー」だったら、自分は「チョキ」を残せば引き分けか勝ちになります。逆に、相手が「パー」と「グー」だったら、相手が負けない戦略をとってくれば相手は「グー」を残すはずですから、「グー」を残すしかありません。

 ということで、両者が「負けない最善手を選択する」と仮定すると、このゲームは終了しません。 ところが先ほどの例で、自分が「グー」と「チョキ」、相手が「パー」と「グー」のとき、相手は負けないための最善手である「グー」を残すのではなく、自分が「グー」を残すことを期待して「パー」で勝負に出るかもしれません。

 なお、2つ目(図の(B))の手の出し方は、相手の1つ目の手を見て決めることができます。が、もちろんこの遊びに慣れないうちはそんな暇はないでしょう。 2つ目を出すときにいちばんまずいのは、右手と左手で同じものを出してしまうことです。これをやると選択の余地がなくなるため、相手は大変有利になります。

 「あっちむいてホイ!」という遊びがありますが、あれと同じようにスピードをどんどん速くしてゆく、というのがこの「両手じゃんけん」の正統的な遊び方だそうです。そうすると出す手が単純な繰り返しパターンになってしまったりとか、両手が揃ってしまったりとか、引っ込める手を間違えたりとかいうことが起こりやすくなって、実際にはそれほどは長続きしません。

 <おまけのひとこと>
 この週末は、学校などの子供の予定が盛り沢山で、とても大変です。私は仕事で忙しいし。




6月23日(日) 両手じゃんけん(その2)

 さて、昨日ご紹介した「両手じゃんけん」(最初に片手ずつ順番に手を作って出して、「せーの!」で同時に一方をひっこめて勝負するじゃんけん)を、3人でやったらどうなるでしょうか?

 こうなると瞬間的に判断するのは難しいので、違う形のゲームにしてみましょう。最初に参加者3名に「グー」「チョキ」「パー」の描かれたカードを1枚ずつ配ります。カードは裏からは区別がつきません。 3名のプレーヤは、最初に自分が出す手のカードを選び、自分の前に伏せて置きます。全員が出す手が決まったら、カードを表に向けます。次に、それを見て、2番目に出す手のカードを選び、今出したカードの隣に伏せて置きます。全員が2枚目のカードを出し終えたら、2枚目のカードも表に向けます。 この時点で、3人の前にはそれぞれ2枚ずつ、表向きのカードがあります。全員がその6枚をよく見たら、一旦手元にカードを戻し、今出した2枚のうちどちらを本番の勝負に出すかを決め、それを伏せて自分の前に置きます。 全員がカードを出したら、表を向けて勝負を決めます。

 1対1のとき、それぞれ2枚ずつのカードを出した段階で、勝負の可能性は4通り考えられます。二人のカードの組み合わせが違っている場合、4通りの勝負のうち、1つだけが引き分けで、あとは2対1で有利・不利があります。たとえば「グーとチョキ」対「グーとパー」ならば、「グーとパー」の方が有利です。そのため「グーとパー」の側は、「グー」を選ぶという「負けない選択」をすることができるのです。 じゃんけんの グー/チョキ/パー のうち、異なる2つを選ぶ選び方は3通りあります。この、2枚のカードの組み合わせのことを「手」と呼ぶことにすると、その3通りの手の有利・不利の関係は、やはり三すくみの関係になっています。

 ちょっと考えてみても、単に一発勝負ということにすると、あまり戦略性などが出てくる余地がないように思います。そこで、例えば20回戦とか試合回数を決めて、一人勝ちになったら3点、2人が勝って1人が負けたら勝った人それぞれに1点、などと点をつけるようにすると、状況に応じた戦略というのが出てくるかもしれません。

 <おまけのひとこと>
 今週末も忙しいです。




6月24日(月) 竹ビーズによる多面体:正二十面体

 しばらく前、盛んにビーズ多面体を作っていたときに、「竹ビーズ」というパイプのようなビーズを使って、多面体の骨格をいくつか作ってみました。下の写真は正二十面体です。

2分竹ビーズによる正二十面体 2分竹ビーズによる正二十面体と十円玉
図1 図2

 使っているビーズは「2分竹」と言う名前のもので、その名の通り長さが6mm、外径が1mmくらいのとても細かいビーズです。右側の写真は、大きさがわかりやすいように十円玉の上に載せてみたものです。こう細いとゴムは通らないので、細いテグス糸を使って作ります。ゴムで作ったときには多面体の1つの面ごとにゴムを結んで作りましたが、テグスで作るときには結ぶと全体の形がゆがみやすいので、できれば1本のテグスで1箇所だけで結んで作るのが望ましいです。この二十面体ももちろんそのように作ってあります。

 さてこの二十面体、6mmの竹ビーズ30本で出来ているのですが、テグスの長さはどのくらい必要だと思いますか? また、どのような順番でテグスを通していったらいいでしょう?

 <おまけのひとこと>
 こういうビーズ細工を作ってみると、ビーズというのは意外と長さの精度が高くないということがわかります。まあでも一粒1円以下の値段ですから仕方が無いのかもしれません。 ちなみにこの正二十面体の材料費は、ビーズとテグスで実費で40〜50円くらいです。でも手間はとてもかかっています。




6月25日(火) ビーズ多面体に糸を通す

 さて、昨日の竹ビーズによる正二十面体ですが、どうやってテグス糸を通すか、また必要な糸の長さをどうやって決めるかを考えてみたいと思います。

正二十面体   1つの頂点
正二十面体   1つの頂点

 上の図のように、正二十面体の1つの頂点に注目してみます。出来上がった多面体の形がきれいに整うためには、頂点には、ビーズが均等に集まっていなければなりません。そのためには右の図の黒い矢印のように、隣り合う全ての2つの稜(ビーズ)を、テグス糸が続いて通っていることが大切です。もしも通し忘れがあると、その2つだけが離れてしまってそこが開いてしまい、きれいではありません。

 また、同じ図の赤で示したように、隣以外のビーズにテグス糸が通っているのもよくありません。こうするとテグスを引いて締めたときに、頂点に集まる5つのビーズが不自然な位置関係になってしまいます。 昨日の写真の頂点付近をご覧下さい。5つのビーズがきれいに集まって5角形になっているのがご覧頂けるかと思います。上の図の赤い線のようにテグスが横切ってしまうとそれが見えてしまうのできれいではないのです。

 つまり、テグスは隣り合う全ての2辺を連結し、かつ隣ではない辺へは通さないことがポイントです。 多面体では1つの稜(辺)は2つの面に共有されていますから、隣り合う全ての2辺を連結するためには、全てのビーズは最低2回、テグスが通ることになります。ということで、理論的には6mmのビーズ30本でできる正二十面体は、結んだり通したりするための余裕を無視すれば、6mm×30本×2回で、36cmのテグスが必要ということになります。

 さて問題はこのように隣り合う全ての2辺を連結し、かつ全ての辺を2回だけ通って元に戻ってくるような経路があるかどうかです。 もう1つ条件を加えると、今通ったばかりの同じ辺を逆戻りすることは許されません。これをやると糸が外れてしまいます。 ちょっと面白いパズルですので、よろしかったらお考え下さい。 まず正四面体から順にプラトンの5つの正多面体について考えてゆくのがお勧めです。

 …と、こんなときにも正多面体のイラストが描けると便利です。 しばらく前に連載した「多面体のイラストの描き方」は、実を言うとこのビーズに糸を通す順番の説明をしようと思って作った絵でした。 イラストを描くこと自体が面白い話題かなと思ってそちらをまずご紹介したのでした。

 <おまけのひとこと>
 小学校のプールがはじまりました。 昨日の朝、子供が「2時間目がプールだ」と言って張り切って出かけて行きました。昨日は涼しい、というか寒かったので心配していたのですが、水温が22度以上ないとできないということで、帰ってみると「出来なかった」と残念そうでした。
 そういえば、先週の土・日に梅酒を漬けました。4リットルのビンを3個使いました。今の時期は梅酒を漬けるための材料などが店頭に並んでいます。ビンや焼酎、氷砂糖のパッケージには梅酒の漬け方の説明が書いてあるのですが、分量の説明がみんな違います。焼酎なら焼酎をたくさん使う比率の分量説明になっているし、氷砂糖なら砂糖の分量が多い説明になっています。
 そこで、それぞれのビンごとに比率を変えて作ってみることにしました。秋くらいには飲めそうです。楽しみです。




6月26日(水) ビーズ多面体の糸の通し方:正四面体

 ビーズにテグス糸を通してビーズ多面体(稜モデル)を作るとき、隣り合う辺を必ず連続して通るようにテグスを通すとよい、そのためには各ビーズは最低2回ずつテグスが通る、という話をしました。 そのような通し方の例を、まず正四面体でご説明します。

 下の左の写真が正四面体です。これは3分竹という9mmのビーズ6本で作りました。正四面体の場合、各辺ちょうど2回ずつ通って、かつ全ての隣り合う2辺を連続して通る経路というのは、例えば右の図のようなものがあります。こう言った経路はもちろん1つではなく、いくつも考えられます。(この例はあんまり対称性の高い解ではないです。)

正四面体  ⇒  正四面体:糸の通し方の例
正四面体   テグスの通し方の一例

 正四面体くらいだと試行錯誤でこういった経路をみつけることができますが、立方体や正八面体(いずれもビーズ12本)だと、発見的手法ではかなり大変ですし、ましてや正十二面体や正二十面体(ビーズ30本)になると、行き当たりばったりではうまくいかないと思います。

 とりあえず私は、下の図のように考えてみました。求める経路は、以下のように正四面体を2つずつの面に分割する閉路3つが重なり合ったものだと考えます。この3つの閉路を乗り換えながら巡ることによって、全ての角を1回ずつ通る経路になります。どういうタイミングで乗り換えるかによって、いろいろ組み合わせが発生します。

正四面体を分割する3つの閉路
正四面体を2分割する3つの閉路

 さて、他の4つのプラトン多面体についても、全体をちょうど2分割する閉路の重ね合わせで、求める「糸の通し方」の経路の例を考えることができます。 おわかりになるでしょうか? 明日以降またご紹介します。

 …という程度の解しか用意していなかったのですが、昨日さっそく、解の対称性についてきちんと考察された解答をメールでいただきました。

 <おまけのひとこと>
 実際にビーズ多面体を作るときは、正四面体くらいなら理論的な最小値である「各ビーズ2回」で作れるのですが、それ以上になると、「どのビーズがどの部分なのか」が把握できなくなってくるため、結局各ビーズは平均3回以上テグス糸を通して、部分的に完成させながら作っています。




6月27日(木) ビーズ多面体の糸の通し方:正六面体・正八面体

 昨日に続いて、ビーズによる正多面体に糸を通す話です。今日は正六面体と正八面体の例をご紹介します。

正六面体
図1:正六面体を2つに分ける4つの閉路

 正六面体(立方体)の場合、このような閉路を重ね合わせると、「全ての角を1回ずつ通って各辺を2回ずつ通る経路」ができます。 1つの閉路は6本の稜を通り、従って6つの頂点を通ります。 立方体の頂点は8つありますから、1つの閉路では通過しない頂点が2つあります。 どこか1つの頂点に注目すると、上の4つの閉路のうち、3つがその頂点を通過して行きます。その3閉路が、頂点に集まる3つの角を1つずつ通って行きます。

正八面体
図2:正八面体を2つに分ける4つの閉路

 正八面体の場合もやはり1つの閉路は6本の稜を通ります。正八面体の場合は頂点は6つですから、どの閉路もかならず1回ずつすべての頂点を巡ります。正八面体の頂点には4つの面が集まっています(次数4である)ので、4つの閉路が1つずつ、4つの角(コーナー)を作っています。

 さて、昨日の正四面体、今日の正六面体と正八面体の閉路についてちょっと考えてみます。例えば自分が小さなアリになって、多面体の稜の上を歩いていると想像してください。稜が道路で頂点は交差点だとします。そうすると、これらの閉路は交差点を順番に「右・左・右・左」と交互に曲がっていることがわかります。 実は正十二面体や正二十面体でも同様に、「右・左・右・左…」と交互に曲がる閉路を複数個重ね合わせることによって、同様な経路を得ることができます。

 では、「右・右・左・左」と2回ずつ曲がったらどうなるでしょうか? とりあえず図だけ載せておきます。

正六面体   正八面体
図3:正六面体   図4:正八面体

 正八面体は、5つのプラトン多面体の中で唯一頂点の次数が4で偶数です。そのため、稜の一筆書きができます。

 <おまけのひとこと>
 先日、子供の保育園の日曜参観に行ったら、子供たちが描いた「お父さんの絵」というのが飾ってありました。それぞれの絵には先生の字で、お父さんのこんなところが好き、というコメントが一言ずつ書き加えられていました。うちの子のところにはなんて書いてあるだろうと思って見たら

 「おとうさんのおもちゃを貸してくれるから好き」

と書かれていました。後日、子供を送っていった妻が、「おとうさんのおもちゃってなんですか?」と先生から尋ねられたそうです。 このページで再三ご紹介している 3D GeoShapes(ジオシェイプス)とかLaQ(ラキュー)とかBoYonGolo(ボヨンゴロ)とかキャストパズルとかプラパズルとかそういうものなんですけれど、先生にわかってもらえたかちょっと心配です。




6月28日(金) ビーズ多面体の写真

 ビーズ多面体の糸通しの話はちょっとお休みして、今日はその他のビーズ多面体の写真をご覧下さい。 いずれも長さ6mmの2分竹ビーズで作っています。どれもちょうどコインの上に乗るくらいの大きさ(小ささ)です。

正十二面体   菱形十二面体   ねじれ立方体
正十二面体
ビーズ30本
  菱形十二面体
ビーズ24本
  ねじれ立方体
ビーズ60本

 テグスで作っているので、正十二面体は面がきれいに平らにならなくて、ちょっとひずんでいます。菱形十二面体は、ビーズが3本集まっている(次数が3の)頂点と、ビーズが4本集まっている(次数が4の)頂点があるのですが、次数が3の頂点が平らになってしまいがちで、そうなると正八面体のような形状になってしまいます。

 ねじれ立方体(snub cube)は、不用意に持つとどこかの頂点がぼこっと陥没してしまうことがあって、作るときにも気を遣いました。なんとなくゆがんで見えるのは、工作の腕が悪いというのもあるのですが、ビーズの長さが不揃いということもあります。 (例えば写真で見えている上の正方形の一番手前の水平な辺を含む下向きの三角形(▽)がありますが、この三角形の左上から下の頂点を結ぶビーズは明らかに短いです。) 作るときにそれなりに選別はしたのですが…

 これらの立体も、ともかく「すべての角を1回ずつ通り、頂点では必ず一番左か右へ抜ける」というルールで作ってあります。

 <おまけのひとこと>

 あらゆるモノがネットワークでつながる――「Auto-ID」の可能性と課題という記事を読みました。ここで述べている世界が望ましいものなのかよくわかりませんが、ちょっと面白い数字が出ていたのでご紹介します。

「ICタグのメモリ容量は96ビット。少ないと思うかもしれないが、例えば54ビットあれば今年生産された米粒1つ1つに固有の認識番号をつけることができる。96ビットあれば、世界中のあらゆる商品に個別のタグ情報を付加することができる。ちなみに128ビットあれば世界中全ての分子に、256ビットあれば全ての原子にタグ情報をつけられる」(Ashton氏)。

 さて、今年生産された米粒は何粒でしょう?




6月29日(土) 米粒の話

 昨日、54bitで1年で生産される米粒を数え尽くせるという話をご紹介しました。昔、これに似た寓話をどこかで読んだことがあったのを思い出しました。詳細は覚えていないのですが、話のポイントは以下のようなものでした。

 昔どこかの国の賢者が、王様から「褒美を取らすので何なりと申し出よ」と言われたときに、それでは1日目は麦を1粒、2日目は前日の倍の2粒、3日目はやはり前日の倍の4粒、以下同様に4日目は8粒、5日目は16粒、というように毎日前日の倍の数の麦を1ヶ月間下さいと申し出て、「そんなささやかな願いでよいのか」と認められたというのです。 さて1ヶ月後、王様は自分の穀物倉から麦の袋がどんどん運び出されているのに大変驚いたそうです。 それに対して賢者は、毎日2倍にしていくと1ヶ月後にはどうなるかを説明し、麦の袋を王様に返して、軽率な判断をしないこと、一見自分に有利なように見える約束をするときはよく気をつけることなどを諭したそうです。

 この話、1ヶ月ではなくて、将棋盤だったかチェス盤だったかの1マス目に1粒、2マス目に2粒、3マス目に4粒、4マス目に8粒、というふうにマス目の数だけ2倍にして行って、最後のマス目の麦の粒を褒美に欲しい、といったものもきいたことがあります。

 この話が昨日の54bitの話とどう繋がるかというと、米粒を2倍にするということは、2進数で桁を1桁増やすことに相当します。私達がいつも使っている普通の10進法の数字は、桁が1桁増えれば値は10倍になりますが、コンピュータで使われる0と1、onとoffだけで表される数字は2進法ですから、桁を1桁増やす、つまり1ビット増やすということは値を2倍にするということと同じです。

 つまり、毎日2倍ずつしていくと、その数字を2進法で表すと毎日1桁ずつ、1ビットずつ増えて行くことになります。先ほどの賢者の褒美の例で言うと1日目は1粒、2日目は2粒、と毎日倍にしていくと、54日目に世界中で1年に生産される米粒の数にまで到達するということです。これは、2×2×2×…と、2を54回掛けた値、つまり254 です。チェス盤の例だとすると、それを64まで続けるわけですから、2の64乗ということで、2の54乗×2の10乗で、なんと世界の米の生産量の一千倍ということになってしまいます。(2の10乗は1024)

 さて、この2の54乗、いったいどのくらいの大きさの数でしょうか? log102 がだいたい0.3ですから、2の54乗は10の(0.3×54)乗ということになって、だいたい10の16.2乗くらい、つまり10進法で17桁くらいの数になります。ちなみにWindowsに標準の電卓で計算してみると18,014,398,509,481,984 という結果になりました。もちろん大切なのはこの17桁の正確な値ではなく、だいたいどのくらいの大きさなのかという感覚です。

 小学校の頃、算数の教科書に「がいすう」という単元がありました。分数や少数の仲間かと思ったら、それとは全く違う概念でした。「四捨五入」とかもそのあたりで習ったかもしれません。「がいすう」というのは漢字で書くと概数ですが、この考え方の重要性というのは、正直言って大学に行って有効数字何桁という発想が身につくまで、全くわかっていませんでした。 

 <おまけのひとこと>

 Windows の [スタート] ボタンの [プログラム]→[アクセサリ]→[電卓]を選んで電卓を立ち上げて、プルダウンメニューの[電卓の種類(V)]から関数電卓を選んで、[2][x^y][5][4][=]と押すと、2の54乗が計算できます。

 最近は梅雨寒で、どうも体調がよくないです。子供の小学校のプールも、6月20日にプール開きをしたにもかかわらず、結局6月は一度も入れずじまいでした。昨日あたり気温はわりと上がったので、夕べ「今日はプール入れた?」と聞いてみたら「水温が18℃しかなくて入れなかった」と言っていました。




6月30日(日) 米を計る

 昨日米粒の話をしましたが、米粒が何万粒、何億粒と言われてもそれがどのくらいの量なのかよくわかりません。以前から米を買うときにはキログラム単位で買うのに、ご飯を炊くときには1合、2合という単位で炊くのが気になっていました。 1合は米粒なん粒なのか、1合の重さはどのくらいなのか、ということを私は知らなかったのですが、これって日本人の常識なんでしょうか?

 とりあえず1合の粒の数を予想してみました。スプーン1杯の米粒の数はまあおおざっぱに言って100粒くらい。(10粒ということはないでしょうし、1000粒はないでしょう。) で、1合はスプーン10杯よりはずっと多いけれど、1000杯は絶対にないだろうから、これも100杯として、1合はだいたい一万粒くらいかなと予想してみました。

 重さの方は、重さの感覚は自信が無いのですが、カップ1杯の米の重さは1kgは絶対にない。1kgはおおよそ牛乳パック1つ分くらいです。といって10グラムということはありえない。確か音楽のCDが15gくらいじゃなかったかと思います。だいたい米は水に沈むので水よりも重いはずですが、米粒は隙間があるので、まあ水と同程度とすると180gくらいでしょうか。

 Webで検索するといろいろ情報が出てきますが、皆さんもちょっと予想してみると楽しいと思います。

 最近、LaQというブロックにはまっています。下の写真は下の子が作った「吊り橋」です。橋を渡っているのはTOMYのトミカシリーズのトミカタウンについてきた人形です。

LaQブロックによる吊り橋

 ジョイントの角度に意外と自由度があるため、こんな風にたわんだ形もできます。この自由度を利用して、いろいろな多面体を作ってみました。またご紹介しようと思います。

 <おまけのひとこと>
 今日は上の子が学校の「カモ当番」です。




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