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以前の「ひとこと」 : 2002年6月前半



6月1日(土) 三面図が全て合同な正三角形になる立体

 「三面図が全て合同な正三角形になる立体」の実物をどうしても手にとって眺めたくて、週末を待ちかねて昨日の夜中にペーパーモデルを設計して作ってみました。とりあえず力技で寸法を計算しました。下の右の図をクリックすると、展開図のpdfファイルがありますので、よろしかったらご利用ください。(確かこのサイトはじまって以来の、初の「のりしろ」つきの普通のペーパーモデルです。)

三面図が全て合同な正三角形になる立体の説明図   面の形   展開図
立体の見取り図   面の形   展開図(tri3.pdf:7kbyte)

 この立体は凧型3枚と三角形6枚の2種類の面に囲まれた9面体です。3方向から見て同じ正三角形に見えるという事は、正三角柱を3本交差させた共通部分ということなので、それぞれの正三角柱によって切り出される面が3面ずつあるため 3×3で9面体になります。凧型の1つをABCDとして、後ろの尖った頂点をEとします。投影面の正三角形の1辺の長さが1であるとすると、Eを3次元座標の原点に置くと、A,B,C,Dの座標は以下のように表すことができます。ただし sc はそれぞれ15°の正弦と余弦です。

座標と距離計算

 あとは機械的に計算すれば各辺と対角線の長さが求まります。実際の作図の時は電卓の出番です。どうせ最後は数値化するのだから、3次元座標が決まったらあとは距離を数値計算してしまってもよかったのですが、一応原始的に手計算してみました。

 pdfファイルには、この9面体に加えてこの立体がすっぽり入る三角柱の型紙も入れてあります(単に正方形3枚です)。この三角柱に納めると、ちゃんと15°上を向いた形に安定します。できればこの外側はOHPシートのようなちょっと丈夫で透明な素材で作っていただくと、横から見ても正三角形になっていることが見て取れておもしろいのではないかと思います。

 <おまけのひとこと>
 今朝はPTA作業でこれから学校に行ってベルマークの整理をします。



6月2日(日) タイリング
ジオシェイプスによる壁飾り

 先日、下の子の友達が遊びに来たとき、その弟の2歳の子が、右の写真の「ジオシェイプスの壁飾り」を引っ張って落としてしまい、全体が折れ曲がって何箇所もはずれて分解してしまいました。

 幸いパーツ自体にはダメージが無く、単にもともと外れる部分だけがはずれただけだったので安心しましたが、作りなおすのも案外面倒です。そこで、撮っておいた写真を葉書サイズに印刷して、「このお手本通りに作りなおしてみて」と子供に頼んでみました。

 最初はちょっと苦戦していたので、無事だった約半分を平らに広げ、写真の向きを合わせて置いてやると、20分くらいでちゃんと元通り組んでくれました。

 楽しそうにやっていたので、タイリングのパターンの塗り絵をパソコンで作って印刷してあげたのですが、いまひとつうまくいかないようです。そこで、お手本と称していくつかの基本骨格をきれいに塗り分けたパターンを作って印刷して渡してみました。でも、思ったように塗れないせいか、ちょっとやってあきらめてしまっています。

 ところが私のほうがパソコンでタイリングパターンに着色する遊びが楽しくて、ついたくさん作ってしまいました。画像が増えたので、久々に別ページということであそびのコラムに入れました。

 <おまけのひとこと>
 最近、画像が増えていてサーバのディスクスペースを圧迫しています。あと400kbyteくらいで契約しているディスク容量を使い切ります。宣伝のバナー等が入る無料サーバとかは、自分のページとしては好きではありません。 といってわずか数メガバイトのために、月々数百円のオプションを支払うのも抵抗があります。どうしようかと思案中です。



6月3日(月) ワードプロセッサ

 何かちょっとした文章を書く場合など、「実際に手で書く」という機会が減ってきている、というか一切手書きはしないという方はたくさんおられると思います。キーボードに慣れてしまいさえすれば、コンピュータに助けてもらって文章を書くと、漢字は提示してくれるし、文や言葉を入れ替えたり追加したり削除したりといった編集は自在に出来るし、手で書くよりも便利な事がたくさんあります。

 ところが、数学の数式や図などを描きながら考えるというようなことになると、少なくとも私の持っているソフトウェアだけを使った場合、まだまだ手書きの方がずっといい、というか私の場合手書きでないと問題に没頭できません。ラフな図を描いたり、計算をしたりというのは手で紙の上でやっておいて、必要に応じてパソコンで清書する、という形式になってしまいます。ちょうどワープロを清書のために使っているようなものです。

 世の中には Mathematica とか Maple V とか(今はMaple のバージョンももっと上がっていますが)、数式を数式のまま処理してくれる便利なソフトウェアもあります。このあたりのソフトをきちんと使えるようになると、手で計算とかしなくなるんでしょうか?

 <おまけのひとこと>
 楽譜を作るのも、手で書く方が速いと感じます。数式や図にしても、楽譜にしても、パソコンで作ろうとするとまだまだ使い勝手がよくないと思います。



6月4日(火) 多面体イラストを描く:正十二面体

 「立方体の見取り図を描いて」と言えば、たいていの人はそれっぽい絵を描けるのではないかと思うのですが、では正十二面体や正二十面体の見取り図を描けるかというと、お手本なしで誰でも描けるというものではないと思います。

 昨日、図を描くには手書きの方がはやいという話をしたときに、その典型として頭に浮かんでいたのがこの多面体のお絵描きでした。今日は私が手書きで正十二面体の絵を描く手順を紹介してみたいと思います。

正十二面体の描き方(1) 正十二面体の描き方(2) 正十二面体の描き方(3)
図 1 図 2 図 3

 最初に正五角形を1つ描きます(図1)。 この五角形が自分から一番遠い面のつもりです。 次に、それにかぶせるように、同じ大きさの正五角形を上下反対にして描きます(図2)。 最初に、図1の五角形の5つの辺の中点のちょっと外側に、5つの頂点をちょんちょんと打ってみてからそれを線で結ぶように描くとうまくいきます。 続いて、図3のように、最初に描いた五角形のそれぞれの頂点から、もともとの五角形を2等分するつもりで、外側に向かって線を五本描きます。

 (図2と図3の手順を逆にした方が描きやすいかもしれません。つまり、1つ五角形を描いたら、図3のように先にその頂点から線を五本出しておいてから、図2のように逆さの五角形を描くという手順です。)

正十二面体の描き方(4) 正十二面体の描き方(5) 正十二面体の描き方(6)
図 4 図 5 図 6

 続いて、図2で描いた逆向きの五角形からも、同様に外側に五本の線を引きます(図4)。 ここで、図3と図4で描いた10本の線は、向かい合う一組同士が同じ直線に乗っていないと変です。また、それぞれの線を延長すると、全て2つの五角形の中心を通らないといけません。まあそのあたりは厳密である必要はないのですが、そういうつもりで描くときれいに描けます。

 最後に、一番外側に正十角形を描けば完成です(図5)。 このとき、図3と図4で描き足した10本の放射状の線の長さが同じになるようにします。 また、十角形の向かい合う辺同士が平行になること、長さが同じになることを意識して描くのもコツです。

 図5だとなんの絵なのかよくわからんという意見もありそうですので、最後に手前に見えている稜の色を変えて、太くしてみました。手で描くときは、図5までを鉛筆で軽く描いておいて、最後に色鉛筆等で手前の稜を太くしっかりとなぞると見栄えがよくなります。

 <おまけのひとこと>
 こんな絵も、手描きなら1分もかからないで描けるのですが、パソコンで描くとその10倍は時間がかかります。(おかげで今日の更新は、いつもの3倍以上、ほぼ1時間近くかかってしまいました。でも図をたくさん描き貯めたので、明日からは楽に更新できそうです。)確かにパソコンで図を作っておけば再利用はできますが、どこかの稜をなぞってみたり、垂線を下ろしてみたり、補助線をいろいろ入れてみたりといったことを思考しながら試行錯誤するときなどは、やっぱり紙と鉛筆が一番使いやすいです。



6月5日(水) 多面体イラストを描く(その2):正二十面体

 昨日の正十二面体に続いて、正二十面体をフリーハンドで描くときの手順を説明します。できれば手で描いてみることをお勧めします。

正二十面体の描き方(1) 正二十面体の描き方(2) 正二十面体の描き方(3)
図 1 図 2 図 3

 最初に、正五角形(緑の点線)をぎゅっと押しつぶしたような、横に細長い五角形を描きます(図1の太い黒線)。これは適当でかまいませんが、一番手前の水平な辺が短すぎないようにしてください。 これは、水平に置かれた正五角形を斜め上から見下ろしているイメージです。

 次に図2のように、今描いた五角形の手前の水平線を1辺とする正三角形をイメージします(図2の青いの点線)。そして、今イメージした正三角形の底辺をまず描き、その線を基準にして最初に描いた五角形を上下反対にして図3のように描きます。

正二十面体の描き方(4) 正二十面体の描き方(5) 正二十面体の描き方(6)
図 4 図 5 図 6

 続いて、今描いた2つの五角形の頂点を、図4のように順番に結んで行きます。もしも上の五角形と下の五角形の向きが同じならば、単純な五角柱になるところですが、片方の五角形の辺の中点のところにもう一方の頂点が来る、というかたちになっているため、図4や図5のように側面はジグザグの稜線になります。これによって、上向きの三角形と下向きの三角形が交互に並んだ形になります。こういった形状の立体を反角柱(anti-prism)と呼びます。

 続いて、図6のように、上下2つの五角形の頂点から、垂直に線を引きます。このときの線の長さは、図6の赤い稜の長さと同じになるようにします。この線の先端が、目標である正二十面体の上下の頂点になります。

正二十面体の描き方(7) 正二十面体の描き方(8) 正二十面体の描き方(9)
図 7 図 8 図 9

 次に、図7のように、まず上の頂点から五角形の各辺に線を引きます。これによって上側の正五角錐が描けます。同様に下側も五角錐を描きます(図8)。 これで完成です。 見慣れないとやっぱり若干わかりにくいので、図9のように手前の稜線に色をつけてみました。

 外郭の正六角形から出発して、手前の見えている稜線だけを描いていく方法もありますが、ここで説明した、最初に中央の反5角柱から描き始める方法が好きです。

 <おまけのひとこと>
 「ジオシェイプス」を購入したいのですが、どこで買えるでしょうか、というメールをいただきました。ジオシェイプスの公式のホームページはこちら(英語)なのですが、日本国内にはあまり情報がないようです。2年ほど前に東急ハンズ渋谷店で見たことがありますが、私が店頭で見かけたのはそれが最後だったように思います。(単に田舎住まいでほとんどお店に行かないので、実際はわかりません。)
 国内ですと、類似の製品としてポリドロンというものがあるようです。こちらのほうは正6角形や正5角形のパーツに補強がなくてすっきりしていますし、辺の長さが√2のものがあったり、直角二等辺三角形や長方形などのパーツもあります。今度こちらに手を出してみようかと思っています。



6月6日(木) 多面体イラストを描く(その3):20・12面体

 正多面体が描けると、そこから派生する準正多面体もそれらしく描くことができるようになります。今日は、正十二面体と正二十面体の中間である20・12面体(icosidodecahedron)をご紹介します。なお、この立体については、以前この「表紙のひとこと」で、昨年9月30日に割り箸模型の写真を、また先月5月13日にはビーズ模型の写真を載せています。

正十二面体 各辺の中点をマーク マークを結ぶ
図 1 図 2 図 3

 一昨日ご説明したように、図1のように正十二面体を描いたとします。そうしたら、図2のように各辺の中点にマークします。マークができたら、正十二面体の各面の5角形を、ちょうどひとまわり小さくするように、マークを順に結びます(図3)。

20・12面体 20・12面体(陰線つき) 20・12面体の大円
図 4 図 5 図 6

 不要な線を消すと、図4のようになります。図2,3,4は、わかりやすいように背後の線(陰線)を消してしまってありますが、陰線を描き加えると図5のようになります。ただし、図5では奥と手前(点線と実線)を逆にして、ちょっと見方を変えています。

 この立体は、図6のように10本の稜が1つの大円になっています。このような大円が6本組み合わさった形です。

 <おまけのひとこと>
 学生の教養の頃、「図学」という科目が好きでした。



6月7日(金) 「折紙の数学」

 昨日、こんな本を買いました。

『折紙の数学』
 ─ユークリッドの作図法を超えて─ 
・ロベルト=ゲレトシュレーガー 著
・深川 英俊 訳
・森北出版
・2002年4月30日初版
・ISBN4-627-01681-6
・2,800円+税
「折紙の数学」

 折り紙の基本公理を定義し、ユークリッドの公理と対比させながら、折り紙でどのような作図問題が解けるのかを議論している本で、とても面白いです。特に、著者が選択した折り紙の基本公理のうち、以下のものがポイントです。

 一致する場合も含めた2つの点 P1 と P2 とさらに一致する場合も含めた2つの直線 L1 と L2 が与えられたとき、それぞれ焦点が P1 と P2 で準線が L1 と L2 である2つの放物線 p1 と p2 の共通接線を折ることができる。

 これだけ読むと、「え、折り紙でこんなことできたっけ?」と思ってしまうのですが、これは単に点 P1 が直線 L1 上に、同時に点 P2 が直線 L2 上に乗るように紙を折るという操作に過ぎません。

 この操作ができることによって、ユークリッドの「目盛の無い定規とコンパス」では作図できなかった数々の問題が解ける、たとえば三次方程式の根を折り出すことが可能となり、角の三等分が可能となり、正七角形を折ることが可能になり、といったことが実際の折り方とともに説明されています。

 「折り紙(origami)とは紙を折って作る芸術のことである。 Kami とは「紙」を意味する日本語であり、ori とは日本語で「折る」ということである。従って、ori-kami または origami は紙を折ることを意味する日本語である。」(p.8より引用)などと語源が説明されているのを読むとなんだか嬉しくなります。

 <おまけのひとこと>
 “Origami”というキーワードで検索をかけると、海外のページがたくさん、それこそ何十万件もヒットして驚きます。



6月8日(土) 多面体イラストを描く(その4):切頂二十面体

 さて、手で適当に描く多面体のイラストの描き方の説明の4回目は、時節柄サッカーボール(切頂二十面体)を描いてみました。先日(6月5日)描いた正二十面体がベースになります。

正二十面体 切頂二十面体の描き方 サッカーボール
図 1 図 2 図 3

 図1は正二十面体です。正二十面体の各辺を目視で適当に3等分して、印を付けます。そして、正二十面体の各面の三角形が6角形になるように、各頂点が5角形になるように印を結んでいきます。図2は、元となる正二十面体を点線で、新たに描き加えた切頂二十面体の稜を赤で描いてみました。

 図3は、ベースとなった正二十面体の線(点線)を消して、5角形のところを塗りつぶしてみました。いわゆるサッカーボールです。中央下の下向きの5角形がなんとなく平べったくて大きいように見えますが、これは元にした正二十面体の絵がちょっとつぶれ気味だったことと、各辺の3等分点が適当でいいかげんだったためです。(そのせいでハロウィーンのかぼちゃちょうちんのようにも見えない事もないですね)

 多面体のイラストは、実はビーズ多面体に糸を通す順番を説明する絵を載せようと思って図を用意しはじめたときに、そういえばこういうイラストの描き方ってあまり説明しているのを見かけないなと思って、掲載することにしたのでした。最初は正十二面体と正二十面体だけにするつもりだったのですが、つい、ついでに派生して描ける準正多面体も載せてしまいました。というわけでこのシリーズは今日でおしまいです。

 なお、サッカーボール(切頂二十面体)をきちんと作図する方法としては、こんなページがありました。

 <おまけのひとこと>
 しばらく前から流行ったフィギュア付きのお菓子、いわゆる食玩(食品玩具)の中で、唯一気になったのが北陸製菓ペンギンズランチという製品です。こちらのページにパッケージの解説と、別ページで8種類のフィギュアの写真が紹介されています。

 会社のお昼休みに生協の購買部をのぞいたら、この製品が120円で売っていたので、試しに2つ買ってみました。出てきたのは2番のコガタペンギンというのと、3番のケープペンギンというものでした。確かに一昔前に比べると、立体の造形や着色は大変立派になっていますが、でも、当たり前ですが値段相当の品物だな、と思います。悪い買い物ではなかったと思いますが、とりあえず2個買って満足しました。 例えばたくさん買ってゲームの駒とかにしたら楽しそうだな、とは思いますが、もっと買って揃えたいとは思いませんでした。

例えば哺乳類というのは、かなりよくできたフィギュアでも素材の感じに違和感を覚えます。恐竜などに興味があれば、爬虫類だとその違和感が少ないのかもしれません。ペンギンというのはその意味でよい企画だと思うのですが、どうなんでしょうか。

 …例えば、正多面体や準正多面体やその双対のフィギュア(?)の食品玩具を解説カード付きで売り出したらどうでしょう? 「切頂八面体や菱形十二面体を集めて積み上げよう!」とか。 そうしたら山ほど購入するんですけど。 …絶対売れなそうですね。



6月9日(日) タイリングの問題

タイリングの骨格  問題です。まずは直感的に答えてください。

 先日載せたあそびのコラムのエッセイのNo.26“タイリング”でご紹介した、右の図の繰り返しパターンですが、このパターンで出てくる正方形の部分とと正三角形の部分の面積は、どちらが広いでしょうか? 言い換えると、このパターンが無限に広がっているところでランダムに1点を選んだとき、たとえばこのパターンの壁紙に向かって適当にダーツを投げたとき、当たった針の先が正方形の内部である確率と、正三角形の内部である確率はどちらが高いでしょうか?

 ヒント:このパターンの、正方形と正三角形の組成比はどのくらいでしょうか?

 <おまけのひとこと>
 以前ご紹介したK.SATOH's official websiteの「折り紙の小部屋」に、リュートを弾く天使が紹介されていました。佐藤さんのページの「折り紙の小部屋」で紹介されている作品とその解説はとてもすばらしいです。







続いて解答です。ちょっと間を空けて…








6月10日(月) タイリングの問題:解答編

 さて、昨日の問題ですが、たとえば以下のように考えまることができます。

タイリング基本パターン1 タイリング基本パターン2 タイリング基本パターン3
図1:基本パターン1 図2:基本パターン2 図3:基本パターン3

 このパターンは、実は正方形1個に対して正三角形2個が対応します。例えば上の図1では菱形と正方形がつながった形、図2では正方形の両側に三角形がついた潰れた正六角形、図3では正方形の隣り合う2辺に三角形がついたきつねのお面のような形、をそれぞれユニットとして塗り分けてみたのもです。

 ここで、正方形の周りに4個の三角形がくっついた星型をイメージしてしまうと、正方形と三角形の比が1対4のように誤解してしまいやすいので注意が必要です。この星型を並べると、正方形の隙間ができてしまうのです。

 ということで、正方形と三角形の数の比は1対2だということがわかりました。では面積比は、たとえば辺の長さを2とすると正方形の面積は4、正三角形は底辺が2で高さが√3になるので面積は√3 です。従って正方形部分と正三角形部分の面積比は 4対2√3となって、およそ8対7で若干正方形部分が広いという結論になります。

 なお、ここでご説明したような手法は、問題を解く手順としては、あるタイリングパターン特有のものになってしまって汎用性という点で劣るかもしれません。 (まあこの例くらいだったらこれで十分という気もしますが。) ではもっと一般的にはどう解くか、についてはまた後日。

 <おまけのひとこと>
 昨日、今日の解答編を掲載する前に、メールで正解を送っていただきました。ありがとうございました。その解答では「正方形1つに4個の三角形が接しているが、三角形は2つの正方形に共有されているから1対2だ」と説明されていました。シンプルでよい説明だと感心しました。

 正方形1枚と正三角形2枚が、辺を完全に共有して単連結になるパターンは、上記図1から図3の3パターンしかありません。最初に正方形1枚と正三角形1枚から、ホームベース型の5角形を作ります。(これ以外の図形は作れません。)この5角形に、第2の正三角形を接続すると、上記の図1〜3のどれかになってしまいます。

 …今思いついたのですが、この3種類を適当に混ぜたタイリング、というのも考えられそうです。



6月11日(火) タイリングの問題(その2)

タイリング:正方形と正三角形2枚  昨日、右の図のような正方形の間を正三角形でつないだような格子模様の基本パターンは3種類ある、というお話を紹介しました。

 とりあえず説明しやすいように、これらの3つのパターンに名前をつけることにします。まず右の図の赤い色をつけたところ、正方形の隣り合う2辺に三角形がついた形を“キツネ”、右上の緑色の六角形は、そろばんの玉のような形なので“ソロバン”、そして右の黄色い菱形と正方形をつないだ形は、なんとなく切妻屋根の見取り図のように見えるので“切妻”、と呼ぶことにします。(「への字」という呼び方も考えたのですが、切妻のほうがいいかな、と思いました。)

 これらの3パターンはそれぞれ1種類だけでタイリング可能です。「切妻」は、図の格子に限定すると鏡像、つまり裏返しのパターンも必要になりますが、格子にとらわれなければ裏返さなくても平行移動だけで平面をうめ尽くすことができます。

 では問題です。

  • 「キツネ」と「ソロバン」を同数個使って、格子を塗り分けてください。
  • 「ソロバン」と「切妻」を同数個使って、格子を塗り分けてください。
  • 「切妻」と「キツネ」を同数個使って、格子を塗り分けてください。
  • 「キツネ」と「ソロバン」と「切妻」を同数個使って、格子を塗り分けてください。
  •  隙間ができてはいけません。

     なお、もしよろしければptn03.lzh(14kbyte) という圧縮されたbitmapを用意してあります。これを展開していただいて、ペイントソフトなどの塗りつぶし機能を使って塗り分けると、とても楽ですし、楽しいです。

     <おまけのひとこと>
     昨日のサッカーの試合で、日本と同じH組のベルギーとチェニジア戦がありました。日本が決勝トーナメントに進む可能性が高くなるためにはどっちを応援したらいいの? という話がそこかしこで聞かれました。今のシステム、つまり4チームによるリーグ戦で半分に絞るという方式は、試合数も多くなりますし、そう簡単には予選敗退が決まらないし、興味が持続するという点でとてもよく出来たシステムだと思います。
     例えば簡単な問題ですが、「予選リーグで2勝したら、決勝に進めることは決まるでしょうか?」





    6月12日(水) タイリングの問題(その2)解説編:キツネとソロバン

     昨日、下図のような格子模様をうめ尽くすことができる最小単位である基本パターン3種類に、「キツネ」「ソロバン」「切妻」という名前をつけました。そして、これらのうちの任意の2つを同数個使ったタイリング(ただし下図の格子に拘束される)はどんなパターンがあるでしょうか、という問題を作ってみました。

    帯状のパターン

     実はこの図のように、それぞれのパターンは単独で幅1、もしくは幅2の帯を作ることが出来ます。ということでこの帯を並べれば、これらの基本パターンを任意の比率で用いたタイリングが出来ます。

     …と、これでは面白くもなんともないので、このような自明の解以外のパターンをちょっと探索してみることにします。今日はまず、「キツネ」と「ソロバン」のパターンでのタイリングを考えてみました。ちょっといじっていると、こんなパターンがみつかりました。

    パターン1 パターン2 パターン3
    パターン1 パターン2 パターン3

     パターン1は、赤・青・黄・緑の4つが集まって、幅4の帯を作っています。

     パターン2は、赤と黄色の「ソロバン」の、幅1の帯の間に、幅3の帯があるように見えます。見方を変えて赤と青、黄色と緑をそれぞれグループとみると、右上から左下に向かって、斜めの帯が見えてきます。また、赤、もしくは黄色だけに注目してみると、千鳥格子のような配置になっていることがわかります。

     パターン3は、縦方向の帯のパターンは消滅し、左上から右下に向かって、「ソロバン」と「キツネ」のでこぼこした列が見えます。

     今、わかりやすいように「ソロバン」と「キツネ」はそれぞれ赤・黄と青・緑の色をつけて、同じ色が接しないように塗り分けています。でも、この条件だけだと、上記のパターンはそれぞれ別の塗り方もあります。タイリングの骨格がまったくいっしょでも、色遣いをちょっと変えるだけでパターンの印象が変わって面白いです。

     <おまけのひとこと>
     子供たちが風邪をひいてしまったらしく、一人は一晩中咳が出ますし、もう一人は胃が気持ちが悪いらしく、夜中に何度も洗面器にもどしています。困ったものです。まあ何をしてやれるわけでもないのですが、こちらも眠れないので、時々様子を見ながらこうしてパソコンをいじっています。




    6月13日(木) モンテカルロ法

     HotWired を見ていたら、“サッカーW杯:コンピューターはフランス敗退を予測していた?” という記事があって、興味深く読みました。 このような予測手法というのが1回勝負のスポーツの世界に対してどのような意味があるのかよくわからないな、というのが正直な感想です。 もちろん、関連する商売の売上予測といった観点で、需要はあるんだろうなとは思います。 まあ上記の記事にもあるように、こういった情報を最も必要とするのは、賭博の胴元でしょうけれども。

     それはともかく、技術的にはどうやってサッカーの試合をモンテカルロ・シミュレーションするんだろうというのは興味があります。もともとのモデルが間違っていたら、どれほど多数回の試行を重ねてもなんら意味のある結論は得られないからです。 (例えばすでに答えがわかっている、過去の情報と試合結果を教師データとして学習するとか、いろいろ方法はあると思いますが。)

     「モンテカルロ法」で検索をかけてみたら、最初に出てきたのがこちらのページでした。どうやら本が1冊まるまる公開されています。大学のサイトらしいのですが、絶版の本を著者ご本人が公開されているのかな、とトップページを見に行ってみたら、統計科学のための電子図書システムのWebページということで、絶版図書を徐々に公開されているんだそうです。こういうのは非常にありがたいです。

     <おまけのひとこと>
     トップページの構成をちょっとだけ変えました。ライブカメラは当分復活の兆しがないので、ディスクスペースとしてはわずかなのですが、とりあえずリンクを外しました。




    6月14日(金) 多次元立方体の影

     このページで何度かご紹介してきたH.Hamanaka very private Home Pageの表紙の画像で、このところ多次元立方体の3次元への投影の絵が載っています。

     以前、私のページの4月17日のひとことなどでもお話しましたが、多次元立方体の投影図は、ある特別な方向から投影すると菱形多面体になります。(実は最初間違った事を書いていて、最近修正しました。)上記のページの過去の表紙のところに、4次元立方体から順に7,8次元立方体までの画像と説明図があって、非常に面白いです。お勧めです。ぜひご覧下さい。

    菱形三十面体 ⇒  菱形三十面体:手前と奥
    図 1 図 2

     私もちょっと絵を描いてみたのですが、わかりにくいですね。 図1は菱形三十面体の骨格の絵で、図2は、それを3色で塗り分けたものです。青が手前で見えている骨格で菱形10枚分のお皿のような形、水色がそのちょうど反対側で同じく10枚の菱形のお皿、ただし青と水色のお皿は、向きと膨らんだ方向が反対です。そして赤が平行な10本の稜で、この2枚のお皿をつなぎます。この赤の構成する10枚の菱形を取り除いて、青と水色のお皿を直接貼り合わせると、菱形20面体になります。これが5次元立方体の投影図になります。それを平行移動した図1の形が菱形三十面体で、6次元立方体の投影図になります。

     <おまけのひとこと>
     子供たちの風邪はだいぶよくなってきたのですが、今度は妻が具合が悪いといっています。気のせいか私もなんだか不調です。単に睡眠不足が原因ならばいいんですけれども。 今日だけはどうしても体調不良では休みたくありません。サッカーを見るためのずる休みだと思われたら心外です。 (まあそんなこと誰も思わないだろうと思うのですが) もし本当にサッカーを見たくて休むなら、ちゃんとそう言って休みます。そんなことしませんけれども。




    6月15日(土) タイリングの問題解説編つづき

     ちょっと間があいてしまいましたが、先日ご紹介した、正方形1つと正三角形2つからできる3種類の図形を使って平面をタイリングする問題の答の例の続きです。

     こんなふうに、単なる帯状のパターンではなく、ちょっと凝ったパターンも作ることができます。

    「きつね」と「切妻」(1) 「きつね」と「切妻」(2) 「ソロバン」と「切妻」
    「きつね」と「切妻」(1) 「きつね」と「切妻」(2) 「ソロバン」と「切妻」

     さて、上の図の2つの「キツネ」と「切妻」のパターン、どこが違うかわかりますか? (色の塗り方だけが違うわけではありません。)

     さて、正方形と正三角形によるタイリングパターンとして、次のようなものもあります。

    タイリングパターンその2

     この新しいタイリングパターンは、全ての頂点が等価ではなく、2種類の頂点があります。三角形が6つ集まった頂点と、三角形3つと正方形2つが集まった頂点です。(今までご紹介してきたタイリングの骨格は、全て後者の頂点でした。)

     この骨格からも、非常に面白い「塗り絵」ができます。とりあえず問題ですが、この骨格において、三角形と正方形の数の比率はどのくらいでしょうか?

     <おまけのひとこと>
     今日は土曜参観で学校に行きます。土曜参観があると、振替で学校が一日お休みになるのですが、振替は来週の月曜日なのかと思っていたら、なんと昨日の金曜日が事前振替休日だったのだそうです。
     土曜参観は、午前中3時間、全部を開放していて、ぜひ全部の時間を見てくださいとのことです。さらに午後にはPTA懇親運動会というのがあって、2時間ほどですが体育館で運動をします(親のみ)。役員さんも大変です。




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