以前の「ひとこと」 : 2019年12月後半
12月16日(月) Gerhard Kowalewski
多面体の骨格構造などを作るときに愛好している方が多い、ゾムツールというブロックがあります。(下図は2005年10月にご紹介したものです。)
ゾムツールの公式ページの下のほうに、“Construction Games with Kepler's Solid”(Gerhard Kowalewski著、 David Booth訳)という本のpdfが公開されていることを知りました。普通にトップページからは行かれないみたいです。
著者のKowalewski(1876-1950)はドイツの数学者だそうです。この本そのものは2001年に翻訳版が出版されたようです。このときに翻訳者による補遺(appendix)が追加されているようなのですが、その中にゾムツールが出てくるため、このpdfがゾムツールの公式サイトで公開されているのだと思います。
表紙には菱形三十面体の2種類の写真が置かれています。右のものは、菱形の対辺を結ぶ色の異なる帯が全部で6本、菱形三十面体を巡っており、されにそれは編むように交互に上下になっていることが見て取れます。左下のものは、5色×6枚の菱形が対称的に配置されていることがわかります。同じ色の6枚は、ちょうど立方体の6つの面と同じ、互いに直交するかたちになっています。さらに6本のゴムが掛けられています。(ゴムが捩れているのを直したい…)
こういう娯楽数学系の文献や論文は、まず図だけをざっと眺めて想像(妄想)を膨らませます。最初にこんな図がありました(pdfの6ページ目の Figure 2)。
図 2 正方形のタイルを対角線で4つの直角二等辺三角形の領域に分けて、4色で塗り分けたときに全部で6通りの塗り方ができる、という話のようです。ここでは回転はOK、裏返し(鏡像反転)はNGです。
本の図とは順番が違いますが、自分でも6種類、実際に色を付けた図を描いてみました(図3)。使う色は赤・青・黄・緑としました。回転はOKなので赤の位置を固定します。赤に向かい合う色が青、黄、緑の場合がありますので、その3つを最初に横に並べます(図3の上の段)。それぞれに対して残った2つの色の入れ方が2通りあるので、全部で6通りになります。
図 3 図3の上下のペアは鏡像対称になっています。
図1の本の第1章ではこの6種類のタイルを平面に並べることが議論されているのですが、正方形が6枚あるのですから、これで立方体を作りたくなるのは自然な発想だと思います。図3の6枚のタイルを1枚ずつ使って、辺の色が接するように立方体を構成することはできるでしょうか?
(つづく) <おまけのひとこと>
12月も後半に入りました。今週は、今日明日(月・火)はこのページの更新をするつもりですが、水曜日以降は更新ができないと思います。すみません。
12月17日(火) Kowalewskiの菱形十二面体の塗り分け
昨日の“Construction Games with Kepler's Solid”(Gerhard Kowalewski著、 David Booth訳)という本のpdfを知ったのは、こちらのKowalewski's Coloring of the Rhombic Dodecahedron(Kowalewskiの菱形十二面体の塗り分け)という Wolframデモンストレーションからでした。
これは、菱形十二面体を3色もしくは4色で塗り分けることができるものです。図1、図2は3色で塗り分けた例です。図1が二次元(2D)のNet図、図2が三次元(3D)表現です。3Dのほうは回転させたり光の当て方を変えたりできます。
図 1 図 2 この塗り分けは、「同じ色は隣接しない」(=全ての次数が3の頂点の周りには3色が使われる)、「次数4の頂点は2色の市松模様になる」という条件を満たします。同じ色の4枚の菱形は、輪っかのように菱形十二面体を一巡しています。
図3、図4は4色による塗り分けの例です。今度は次数4の頂点の周りには4色が使われます。
図 3 図 4 これをインタラクティブに簡単に試せて楽しいです。
(つづく) <おまけのひとこと>
昨日予告をさせていただきましたが、今週は忙しくて、明日以降の更新は難しいかなと思っています。というわけで3日分まとめて載せてしまうことにしました。
12月18日(水) Kowalewskiの菱形十二面体の数値配置問題
昨日に続いて、Kowalewski's Settlement Problem for the Rhombic Dodecahedron(Kowalewskiの菱形十二面体の数値配置問題)という Wolframデモンストレーションのご紹介です。
昨日ご紹介した菱形十二面体の各面に、12,13,14,21,23,24,31,32,34,41,42,43 の12の数字を、隣り合う面には必ず共通な数字を含むように配置せよというパズルです。
これは、答の図を見てしまうことがパズルの面白さを大きく損なうタイプのパズルではないので、解の一例をご紹介します。
図 2 (余談ですが、図2は菱形十二面体のNet図ではありません。最外周の4つの面は、この図だと四角形に見えますが、頂点が5つあるので五角形になってしまいます。この図の最外周の境界の正方形は何だ? ということです。)
これもやってみると楽しいです。「立方体だったらどうだろう?」「菱形三十面体だったらどうだろう?」と考えてみると、理屈がわかります。図3は立方体の各面に、12,13,21,23,31,32を配置した例です。
図 3 (つづく) <おまけのひとこと>
これは、12月17日(火)の早朝に書いています。数日分をまとめて書こうかなと思っていたのですが、何を書くかは今朝(3時半ころ)起きてから決めました。準備がなかったので、ほとんど画面のキャプチャの図ばかりです。今日の図3は今朝作りましたが…
12月19日(木) Kowalewskiの菱形三十面体の塗り分け
一連のシリーズの続きです。菱形十二面体の次は菱形三十面体です。こちらにKowalewski's Coloring of the Triacontahedron(Kowalewskiの(菱形)三十面体の塗り分け)です。
今日は詳しくは書きませんが(いつもだって詳しくは書いていないかもしれませんが)、一昨日の菱形十二面体と同様なユーザインタフェースです。菱形三十面体のほうは5色または6色で対称的に塗り分けることができます。
図 1 3Dの図と2Dの図です。
図 2 図 3 インタラクティブに菱形三十面体の面に色付けして、いろいろな向きから見てみることができるというのは、この多面体のかたちや構造を理解するうえでとても便利だと思うのです。とりあえず「5色で、同じ色が隣接しないように」ということだけを条件に塗っていってみると面白いです。
(つづく) <おまけのひとこと>
多面体の塗り分けは面白いです。
12月20日(金)スチュアート・コフィンのパズル #217 “マーチンの脅威”
一週間近く更新を中断してしまいましたが、今日から再開したいと思います。日付は飛ばさずに、まとめ書きして追いつく計画です。
〇
スチュアート・コフィン(Stewart Coffin)という大変すばらしいパズルデザイナーがいます。特に、多面体構造の組木パズルに関しては、世界でも最も優れたパズルデザイナー(の一人)です。先日、コフィンの作品番号217の「マーチンの脅威」(Martin's Menace)という4ピースの箱詰めパズルを知りました。今日はそのご紹介をします。
「マーチンの脅威」は、正方形5つをつないが「ペントミノ」というかたちのうちの4種類を与えられた長方形の枠の中に収めてくださいというパズルです(図1)。
図 1 以前(2014年5月1日)にもご紹介しましたが、12種類のペントミノにはそれぞれアルファベットの名前が付けられています。
ペントミノピースの名前 このパズルでは、F, T, Y, Z の4つが選ばれています。一見、枠の寸法は、ペントミノの単位正方形の1辺の長さを1としたときに、5×6の長方形に見えました。
でも、それだとあまりに簡単すぎます(図3)。
図 2
図 3 このパズルを知ったのはたまたま動画で見たからなのですが、ひどいことにその動画の表紙画像(動画再生前に見えている静止画)が、パズルの答だったのです。公開している人はその罪深さが全くわかっていないのでしょうけれども、ミステリーのトリックや結末をいきなり大書しているようなものです。
でもまあ見てしまったので、逆に答から枠の寸法を計算してみました。5×6よりひとまわり小さい、4.91…×5.81… くらいの寸法でした(図4)。なるほどこの寸法だと一見普通に入りそうで、でも入らなくてイライラしそうです。
図 4 このパズルはもともとは“Four Fit”という名前を付けられていたのだそうですが、あのマーチン・ガードナーがこのパズルに挑戦して、数週間がんばったにもかかわらず解くことができなかったそうで、その逸話にちなんでコフィン自身が「マーチンの脅威」と改名したのだそうです。(パズル名の単語の頭文字がF-FだったのをM-Mにしているのですね。) 製品や動画へのリンクは今日は載せないことにしますが、検索するとすぐに出てきます。
こういうパズルは、木やプラスチックや金属などの丈夫で変形しない素材の実物を使って試行錯誤してみないと、難しさや面白さがわからないです。箱詰めパズルは、昔は隙間ができないデザインのものが普通でした。明らかにピースの面積の合計が枠の面積より小さい、隙間が多い箱詰めパズルの最初は何で、いつくらいからたくさん発表されるようになったのか、知りたいなあと思いました。
<おまけのひとこと>
22日(日)の午前中に、20日(金)、21日(土)の2日分の更新をのんびりしています。
12月21日(土)Eitan's Twist Cube
昨日のCoffin #217のパズルを検索していたら、ルービックキューブ系のパズルで、今まで自分が見たことがないタイプのものがあったので画像を載せさせていただきます。
機構は通常の3×3×3のルービックキューブと同じもののようです。上下の面は9分割された正方形ですが、側面が曲面になっていて、一つ隣の辺と滑らかに連結するようなかたちになっています。正方形の面の3×3分割の仕方が異なる2タイプがあるようです(図1、図2)。
図 1 図 2 こんな風に説明されている図もありました。
変形してゆくとこんなかたちにもなったりするようです。
図 3
図 4 図 5 ルービックキューブ系のパズルも膨大な種類がありますが、私はほんの数種類を持っているだけです。まあこれは持っていなくてもいいかな…
<おまけのひとこと>
どちらかというと、そろそろモノを減らす方向で考えないといけないなあと思っています。
12月22日(日) 4色6種類のタイルで立方体を覆う(その1)
一週間ほど前、“Construction Games with Kepler's Solid”(Gerhard Kowalewski著、 David Booth訳)という本をご紹介して、その冒頭に載っていたこんな6枚のタイルの話を始めました。
この6枚をちょうど1枚ずつ使って立方体を構成することを考えます。ただし立方体の稜の両側の色は同じになるようにします。これは比較的簡単なパズルなので、いきなり答を載せてしまいます(図1)。
図 1 図1の上の段、横一列に並べたタイルの一番左のものをまず中央に置いて、そのまわりに色を合わせながら適当にタイルを置いていくと、比較的簡単に求まりました。
稜の両側の直角二等辺三角形の色が同じといことは、立方体に組んでみると、それぞれの稜に小さな正方形を貼り付けたかたちになっているはずです。4色×3枚の正方形を貼り付けるイメージです。図にしてみました。
全部着色すると訳が分からなくなるので、それぞれの色ごとに4つの図にしてあります。同じ色の3枚の正方形を貼りつける稜の3つの方向は、立方体の3つの軸方向(タテヨコ高さ、もしくはタテヨコ奥行き)についてそれぞれ1方向ずつになっています。また、3本の稜は互いに「ねじれ」の位置関係になっています。
図 2 タイルのほうに注目してみると、立方体に組んだときに向かい合う面になっている3組は、それぞれ鏡像対称のタイルになっています。
図 3 1枚のタイルの向かい合う辺の色の組み合わせが、上の図3の左のペアはいずれも[赤緑]-[青黄]、中央のペアは[赤青]-[黄緑]、右のペアは[赤黄]-[青緑]になっています。
1つの解は簡単に求まりましたが、他にも解はあるのでしょうか?
(つづく) <おまけのひとこと>
先週は土曜日まで仕事で、特に最終日の土曜日がきつかったので、日曜日はほとんど終日寝ていました。それでも夜もしっかり眠れました。だいぶ回復してきたかな、と思った矢先に雪が積もっています。この更新は12月23日(月)の早朝(夜半)から書き始めているのですが、更新が終わったら雪かきです。また疲れそうです…
12月23日(月) 4色6種類のタイルで立方体を覆う(その2)
昨日の続きです。(実は2日分同時に更新していますが。) 6種類のタイルを1つずつ使って立方体を構成する他のパターンはないかなと思って調べてみると、もう1つ見つかりました(図1)。 昨日のものがパターンA、新しくみつけたものをパターンBとします。
図 1 この2つ、実はよく似ています。十字架型の展開図の中央のタイルは固定しておいて、まず、その向かい合う面のタイルを180°回転します(図2の(1))。そうすると隣のタイルと色が合わなくなるので、色が合うように並べ替えるのですが、図2の(2)のように、4つのタイルは回転させずにただ単に時計回りに位置を変えてやるだけで整合性のとれた展開図Bができました。
図 2 実は、“Construction Games with Kepler's Solid”(Gerhard Kowalewski著、 David Booth訳)の本文中には立方体の表面にタイルを貼るという議論はされていないのですが、後半の翻訳者による補遺(pdfの61ページ)に、同様な議論がされていました。
図 3 ちなみに展開図Aと展開図Bを組み立ててみると、全体として鏡像対称になっています。赤の色だけに注目してみると、こんな風になっています。
図 4 昨日も、同じ色の稜はタテヨコ高さの3方向に互いに「ねじれ」の位置関係になっている、という話をしましたが、1本(図4では横方向)を固定すると、残りの2本の選び方は図4の2通りしかありません。
これ以上細かい説明は書きませんが、「なるほど、おもしろいなあ」と思いました。
<おまけのひとこと>
平成の時代には12月23日は天皇誕生日で祝日でした。先週の疲れと今朝(これから)の雪かきを考えると、今日がお休みだったら良かったのになあと思わずにはいられません。(未練がましい)
12月24日(火) 4色6種類のタイルの菱形化(その1)
昨日、正方形を対角線で4等分して4色で塗り分けた6種類のタイルで立方体を作る話をご紹介しました。このタイルは裏返しは認めず、回転は認めていました。仮にタイルが正方形ではなくて菱形だったとすると、回転が制限されます。図1のように、6種類のタイルを90°回転させたものは同じとみなしますが、
図 1 これが菱形だとすると、もはや別のタイルになります(図2)。この12枚の菱形の塗り分けはすべて異なります。また、回転を許せばこれ以外の4色の塗り分けはありません。
図 2 図の黒い矢印は、4つの色を反時計回りに順送りしていることを表し、赤い点線は左右に鏡像反転していることを示しています。
菱形12枚と言ったら思い浮かぶのは菱形十二面体です。
菱形十二面体 正方形のときと同様、この12枚を1枚ずつ使って、稜の両側が同じ色になるという条件で菱形の表面を構成できたら面白いな、と思いました。菱形十二面体の展開図を用意して、ちょっと試してみることにしました。こんな図を用意して(図3)、
図 3 こんな風に埋め始めました(図4)。
図 4 …どうもうまくいかないのです。こんな図を用意して、色を塗っていくというのもやってみました(図5)。
図 5 図5は、黒い太線が菱形十二面体の稜を表し、グレーの細線が各面の対角線で4つに区切った「色の仕切り」を表します。一番外周の4つの三角形は、1つの菱形の面を4つに分割していることを示しています。なので、最外周の4つの直角三角形は4色になっていなければいけません。また太線の両側は同じ色になります。こんな風に塗り始めました(図6)。
図 6 (つづく) <おまけのひとこと>
クリスマスイブです。昨夜妻と「特にいつも通りでいいよね」「そうだよね」という会話をしました。現時点では上記の「菱形十二面体の塗り分け」が完成していないので、明日の朝の更新の時間までにできるといいなあと思っています。
12月25日(水) 4色6種類のタイルの菱形化(その2)
菱形を対角線で4等分して4色で塗り分けたタイルを、隣り合う色が同じになるように菱形十二面体の各面に貼ってみるというのを試してみました。まずは使うタイルの制限を外して、同じタイルを何度使ってもよいことにして、条件を満たす貼り方を探してみました。こんなパターンが見つかりました。
図 1 射影図のほうも最後まで塗ってみました。これは図1の展開図と同じパターンになっているはずです。
図 2 さて、この塗り分け方について、頂点のまわりの色のパターンに注目して調べてみましょう。菱形十二面体には、次数(頂点の周りの稜の本数)が4の頂点が6つと(図3)、
図 3 次数が3の頂点が8つあります(図4)。
図 4 図のように、次数4の頂点を結ぶと正八面体、次数3の頂点を結ぶと立方体になっています。両方を重ねてみるとこんな感じになって(図5)、これが菱形十二面体の各面の対角線になっていて、各面の4つの直角三角形を4色で塗り分けることになります。
図 5 図1で示した塗り分け(タイル配置)を立体にしたときに、図3、図4の頂点の周りの色のパターンはどうなっているでしょうか? 私は図6のように展開図を菱形十二面体に巻き付けるように配置して行って、各頂点の周りの色をイメージしてみました。
図 6 (つづく) <おまけのひとこと>
図を作っていたら時間切れになってしまいました。
12月26日(木) 菱形十二面体の稜の塗り分け(その1)
菱形を対角線で4等分して4色で塗り分けたタイルを、隣り合う色が同じになるように菱形十二面体の各面に貼ってみるという話をしています。すでにお気づきの方もいらっしゃると思いますが、実はこの問題、菱形十二面体の稜を4色で塗り分ける問題と等価です。先日、立方体の6枚の4色タイルで覆う例をご紹介しましたが(再掲図)、これも要するに立方体の12本の稜を4色で塗り分けることになっていました。
再掲図 稜の塗り分けの条件は、頂点に集まる稜の色はすべて異なることと、面を囲む辺の色はすべて異なることです。この2つの条件を満たす稜の塗り分けができれば、各面の4色タイルが決まります。昨日ご紹介した4色タイルによる菱形十二面体の展開図から、稜の塗り分け図を描いてみました(図1、図2)。
図 1 図 2 いかがでしょうか。美しいと思いませんか(自画自賛)。図1は次数3の頂点、図2は次数4の頂点が北極/南極になるような向きにしています。骨格モデルなので、ややわかりにくいかもしれないなあと思って「ぷるぷる立体表示」のgifアニメーションを作ってみました。
図 3 図 4 ファイルサイズを気にして小さい画像サイズにしたので、これはこれでわかりにくいかもしれません。
それぞれの色は菱形十二面体の中にどのように分布しているでしょうか? ちょっとわかりにくいかもしれないので、各色ごとに別な画像にしてみました(図5〜図8)。
図 5 図 6 図 7 図 8 それぞれの色の配置はどうなっていると考えればよいでしょうか?
(つづく) <おまけのひとこと>
こういうCGを作るのはとても楽しいです。
12月27日(金) 菱形十二面体の稜の塗り分け(その2)
菱形を4色で塗り分けたタイルを隣接する色が同じになるように菱形十二面体の各面に貼る話、昨日は稜の塗り分けというかたちで解の1つをご紹介しました。もともとは、4色で塗り分けたタイルは12種類あって、その全部を1回ずつ使う解があったらいいなあというところから話が始まっていました。この解で使っているタイルを調べてみることにしました。
見つかった解の展開図はこちらでした(再掲図1)。
再掲図 1 同じタイルに同じ番号を振ってみるとこうなりました(図1)。
図 1 6種類のタイルをちょうど2回ずつ使っていました。 これが、もともとの12種類(再掲図2)のうちのどれに当たるのかを調べてみると、
再掲図 2:12種類の4色菱形タイル こうなっていました。上の段の3種類と下の段の3種類です。
図 2 もともと、正方形の4色タイル6種類を回転させて12種類の菱形の4色タイルを作っていました(再掲図3)。
再掲図 3:6種類の4色正方形タイルの向きを変えたもの 実は今回の6種類×2の6種類は、もともとの4色正方形タイル6種類にきれいに対応していたのでした。
図 3 これに気が付いたときにはとても面白いと思いました。
さて、6種類×2枚のタイルを使っていることがわかったのですが、同じタイルのペアは菱形十二面体の上でどんな位置関係になっているのでしょうか? 何も根拠はありませんが、対称性を考えるとなんとなく最も離れた互いに平行になっている面に使われているのかな、と想像しました。実際どうなのでしょうか?
(つづく) 〇
おまけです。昨日の稜の塗り分け(再掲図4)において、
再掲図 4 相対する稜(最も離れていて互いに平行な稜のペア)はすべて同じ色になっています。そのペアの頂点どうしを結んで面を張ってみました。1色ずつの図にしてみたのでご覧ください。
図 4 図 5 図 6 図 7 それぞれ3枚の短冊状の板が、互いに直交せずに交わっている美しいかたちです。ちなみに張った板は平行四辺形になります。図8は図5を真横から見たところです。
図 8 三枚の長方形を組み合わせた「板状の三枚組木」のかたちは好きで、過去に過去のひとこと(2007年11月9日以降)でもCGやそれをもとにした紙模型などをご紹介しました。
(つづく) <おまけのひとこと>
昨夜はいつもより少し遅い夜10時前にベッドに入ったのですが、夜11時半過ぎに目が覚めて眠れなくなって朝の3時くらいまでかけて今日の図やCGを作りました。それからさすがにもうひと眠りして、今、朝5時半です。今日が年内の可燃ごみ収集の最終日なので、この更新が終わったら、なかなか整理が進んでいなかった書斎(と呼んでいるピアノの部屋の一角)の片づけをします。
12月28日(土) 菱形十二面体の稜の塗り分け(その3)
昨日の「6種類×2枚ずつの4色菱形タイル菱形十二面体の各面に貼る」話の続きです。同じタイル2枚の位置関係を調べました。すると、2枚は次数4の頂点を共有する(ただし稜は共有しない)位置関係になっていることがわかりました。図1〜図3で、同じ色に塗った面が同じタイルを使っています。
図 1 図 2 図 3 全部重ねてみるとこんな図になりました(図4)。
図 4 これだと6種類の色の配置がわからないですね。
図1〜図3で、同じ色の面が「つながっている」と考えると、これは6本組木のパーツの位置関係になっています。この構造から連想するのが、いわゆる「エッシャーの星形」と呼ばれる6本組木の古典的なパズルです。(再掲図 1:2003年6月10日のひとことより)
再掲図 1 こんな貯金箱も持っていました。(再掲図2、3:2003年11月5日のひとことより)
再掲図 2 再掲図 3 この構造(3つのペアが三つ巴になって互いに押さえ合って安定する構造)の「手先のパズル」として気にっているのが“Spacecubes”というものです。私が持っている説明書では“Chain Reaction”と呼ばれています。昨日、片付けをしていたら出てきたので、久しぶりに作ってみました。
図 5 楽しいです。2010年7月7日あたりから数日、このパズルについて書いています。上記のSpacecubesの公式ページの写真を見ると、各パーツに製品名が刻印されていますし、組んだ時にペアになっているパーツどうしに隙間がないようです。私の持っているChainReactionのほうはパーツ精度が低いので、寸法にばらつきもありますし、金型の継ぎ目のバリが残っているので、組み立て難易度は高いです。公式ページのこちらに、組み立て手順のイラストがpdfファイルで公開されていますが、これはある程度のパーツ精度を前提としていると思います。
(つづく) 〇
昨日、スーパーで買ったお刺身のパックの隅に、樹脂製の菊の花のかたちの飾りが入っていました。
図 6 これ、花弁は全部で何枚あるのかな、どんな回転対称性を持っているのかなと思って数えてみました。4重の同心円の構造になっています。最外周は花弁が3つずつの組が10組、その内側は花弁2つずつの組が10組、その内側は花弁2つの組が8組で数が減り、一番内側は花弁は1つになって、8枚になっています。
これはどうやって量産しているんだろう、コストや仕入れ値はどのくらいなんだろう、お刺身のパックにこの菊の花の飾りがあるのとないのとでは売れ行きにどのくらい影響があるんだろう、これが無かったら値段はどのくらい下がるんだろう(たぶんほとんど変わらないだろう)…などといろいろ思いました。
ちょっと検索してみると、ブログにプラ菊という記事を書かれているのを見つけました。傘寿の男性のブログのようです。80歳を過ぎてこんなブログを書かれていてとても尊敬します。この方も書いていらっしゃいますが、
殺菌作用もなく
飾りだけで
捨てられるために作られている
途方もなく安い値段でこの「プラ菊」の製造が商売として成立しているのがすごいなあと思います。私は「飾り」というのは馬鹿にならないと思っていて、特に色の効果は大きくて、モノを良く見せるために重要だと思います。「こんなものは要らない、無駄だ」という論理はとてもよく理解できるのですが、「不要なものが入っていて不愉快」と考えるよりは、「ほとんどコストが変わらないのに美味しそうに見えて、その結果本当に美味しいと思えて(そいういう効果があります)幸せ」と考えるほうが個人にとってはその瞬間は幸せだと思うのです。
腐敗しないプラスチックという素材はそれゆえにとても重宝されましたが、逆に生分解されないためいつまでもミクロな分子構造を保ったまま存在し続けているのですね。そういう問題もありますし、こういった製品を製造する人、材料を供給する人、製造装置を作る人、等々、「何かを無くす」というのはそれを仕事としている人たちにとっては場合によっては死活問題になります。今のところ私たちの社会は、総意として(各個人の行動の結果として)この「プラ菊」が入っているほうが良い、と判断しているということになるのかな、と思います。
<おまけのひとこと>
年末年始休みに入って時間があるので、お刺身のパックのプラ菊1つからもついいろいろ考えたり調べたり書いたりしてしまいます。おかげで今朝の更新の時刻は遅いです。(8時半過ぎ)
12月29日(日) 菱形十二面体の稜の塗り分け(その4)
菱形十二面体の稜を4色で塗り分ける話、まだ続きます。菱形十二面体には次数4の頂点(=稜が4本集まっている)が6つ、次数3の頂点が8つあります。次数4の頂点には4色全てが1つずつ集まりますが、では次数3の頂点はどうでしょうか? 全部で4つの色から3つを選ぶ選び方は4通りです。選ばれなかった残りは1つですから、「使われなかった色」で考えるほうがわかりやすいです。
次数3の頂点に、「使われなかった色」の記号を書き込んでみました(図1)。
図 1 同じ色の組み合わせの頂点が2つずつあることがわかります。また、それぞれのペアは菱形十二面体の相対する頂点になっています。この事実も、この色分けの美しさの1つの根拠だと思います。
〇
さらに別な見方をしてみましょう。菱形十二面体は、立方体の6つの面にそれぞれ四角錐を貼り付けたかたちをしています(図2)。
図 2 各面に東西南北(E,W,S,N)と手前(Front)と奥(Rear)という名前を付けて、それぞれの面の四角錐の稜の色がどうなっているのか、赤の位置を固定して並べてみました。
図 3 図3で W,R,N,E,F,S の順に並べた理由は、12月16日にご紹介した正方形の4色の塗り分けの6つのパターンの図の順番に合わせたかったためです。
再掲図 このように、菱形十二面体の稜の4色の塗り分けは、6つの次数4の頂点の周りの色の構造に注目すると、正方形の4色の塗り分けと同じく6通りすべてを1回ずつ使っていることがわかりました。これもまたこのパターンの面白さの1つです。
〇
立方体から菱形十二面体に拡張して考えた話が、再び立方体に戻ってきました。図3の四角錐を、正方形を「田の字」に分割して4色で塗ったものと置き換えてみます。展開図で描くとこうなります。
図 4 これを立方体に組み立てたときに、同じ色の6つの小正方形の中心を結ぶとどんなかたちになっているでしょうか?
(つづく) <おまけのひとこと>
昨夜、息子と娘が帰省してきました。みんなでコタツでおでんを食べながらお酒を飲んで楽しかったです。今日はこれから息子はスキー場で友達とスノーボードをやるそうで、スキー場まで送ってきます。経路探索で調べると、うちから車で25分です。朝8時集合で、リフトが動き始めたらすぐに滑り始めるのだそうです。怪我や事故がないように、楽しんできてほしいと思います。
12月30日(月) 菱形十二面体の稜の塗り分け(その5)
一昨日にご紹介した、菱形十二面体の稜の4色の塗り分けで同じ色になった平行な稜のペアで構成される平行四辺形3枚の構造(再掲図)、実際に作ってみました。
再掲図 二組作ってみました(図1)。
図 1 右奥のほうを最初に作ったのですが、スリットの長さがぎりぎりで、カードが歪んでしまいました。反省して、スリットの長さに余裕を持たせたら、今度は安定しなくなってしまいました(左手前)。左手前の置き方は、床に接していないパーツは水平にならなければいけないのですが、ちょっと垂れています。ただ、このスリットの余裕のおかげでこの3枚は平らに畳むことができます。右奥のほうは畳めません。
パーツはこんなかたちです。
図 2 これを組むのはそんなに易しくありませんでした。直交するカード3枚を組むほうがはるかに簡単です。
(つづく) 〇
重い重い腰を上げて、昨夜からようやく年賀状の作成をはじめました。いつものように風景写真とパズルや多面体系の話題と、隅っこに干支の折り紙の画像を入れることにしました。普段は具象物は折らないので、ねずみの折り紙を折り図を探して折るところから始めました。
図 3 グレーの(文字通り「ねずみ色」の)折り紙のストックがなかったので、こんな色を使ってみました。白い紙の上に置いて写真を撮って、画像加工ソフトでヒストグラム補正をして背景を白飛びさせて画像を作成しました。この画像をお使いになりたい方はどうぞご自由に。(ってそんな人はいないでしょうが)
〇
昨日の朝7時過ぎに車の窓ガラスの霜を削り落として、息子をスキー場に送ってきました。自宅(標高1,000mくらい)を出るときの車外温度計がマイナス7℃、スキー場(標高1,500mくらい)ではマイナス9℃でした。雲一つなくよく晴れていました。ちょうど朝8時ころに林の中から太陽がのぼってきました。
息子が友達と合流するのを見届けた後、帰宅途中に白樺湖の駐車場に車を停めてちょっとだけ写真を撮りました。図4が蓼科山、図5はスキー場です。スワンボートが凍った桟橋に一列に係留されているのがなんだかかわいいです。
図 4 図 5 息子はスノーボード初挑戦だったそうで、無事怪我もなく夕方までたっぷり滑って、夜は駅周辺で友達と食事をして帰ってきたようです。(伝聞形なのは私はすでに寝ていたためです。) 今日30日も午後から夜にかけて予定があるそうで、学生時代最後の冬休みを存分に楽しんでいるようでとても良かったと思います。
娘のほうは明日31日の朝までうちに滞在するのですが、夜は自宅で私のお酒の相手をしてくれています。(行きつけのお店が昨日も今日も満席で予約できませんでした。) 本金(ほんきん)酒造の「太一」(たいち)というお酒が好きで、一升瓶を買っておいたのですが二人で2日で空けてしまいました。私はビールも飲んでいるので、たぶん娘のほうがたくさん飲んでいます。 「おいしいね、おいしいね」と娘と酒が飲めるなんて幸せだなあと思います。
<おまけのひとこと>
年賀状、毎年30日に作って31日に郵便局に出しに行くというのが定番のパターンになってしまいました。これだと絶対元日には届かないのですが、ぎりぎりまで始めない悪い癖です。
12月31日(火) The 金庫3/Rocca
大晦日です。今日は軽い話題です。
カプセルトイのコーナーがあると、ついチェックしてしまいます。カプセルトイはキャラクターものが多いですが、さすがにそういうのには興味は無くて、パズルやギミック(仕掛けやからくり)に興味があります。
28日(土)の夕方の普通列車で子供たちが帰省してきたのですが、駅まで車で迎えに行く途中で立ち寄った大型店舗で、The 金庫3(リンクは開発元のサイトです)という300円のカプセルトイがあって、1つ入手してみました。
図 1 図 2 図 3 カプセルトイのカプセルに入る大きさですので、タテヨコ奥行が5cm×4cm×3cmくらいです。全面にはプッシュボタンが6つとダイヤルが1つあります。この「金庫」の凄いところは、開錠パターンを任意に設定することができるという点にあります。
6つのボタンにはそれぞれ on と off の状態があります。各ボタンに対して、on のときが開錠なのか、off のときが開錠なのかを独立に任意に設定することができるのです(図4)。なので、設定できる開錠パターンは2の6乗で64通りあります。
図 4 このデザインにとても感心しました。全てプラ部品なので、無理な力をかけるとすぐに壊れてしまいそうです。最初は加減がわからずにおっかなびっくりでしたが、わかってみるととてもスムーズです。初期状態では1〜6のボタンすべてが on で開錠というパターンになっていますが、さっそくパターンを変えてみました。図1〜3のものは変更後の画像です。いくつかのボタンが押し込まれているのが写っています。
「からくり箱」としてとても気に入ったので、昨日もう1個買ってきました。まだ未開封です。開錠パターン、忘れてしまいそうです。
この「The 金庫」シリーズ、これが3作目なのですね。カプセルトイは数ヶ月で商品がどんどん入れ替わっていって、しばらく前に出たものは入手が困難です。こういうフィギュアの製造販売というのは儲かるのかな、1つの商品企画のコスト(金型投資代や塗装、組み立て、添付する説明書のデザインと印刷、梱包など)はどのくらいかかるんだろう、と思いました。
カプセルトイマシンを設置している店舗も何らかの利益があるからマシンを置いているわけです。もちろん集客効果を期待している面はあるとは思いますが、でも貴重な店舗の面積をカプセルトイに割くからには、多少は実入りはあるのでしょう。マシンは買取なのか、リースなのか、それとも場所だけ貸しているのか…
300円のカプセルトイがいくつ売れたら黒字になるのでしょう。出荷の卸値はいくらくらいなのでしょう。ざっくり半値として150円? 1万個売れたとして150万円、これで儲けを出すのは厳しそうです。 例えば、分子模型のキットとか、空間充填できる多面体のキットとか、仮にカプセルトイの量産ノウハウで作ったらどのくらいの予算でできるんだろう、と思うのです。まあ自分だけのためなら、3Dプリンタの三次元造形とかで十分なのかもしれませんけれども。
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もう1つ、Roccaというスタイリッシュなゲームをデザインされているサイトを知りました。上記のサイトのLine Upのページを見ると、素敵なカードゲームや積み木、ボードゲームが紹介されています。
特に正六角形のカードを使ったカードゲームが美しいです。ブランド名の Rocca(ロッカ)は「ろっかっけい」から来ているのですね。それぞれのゲームを紹介するページには、pdfファイルでルールが公開されています。
図 5:Rocca Town 図 6:Rocca Rails どこかで出会ったら買ってしまいそうです。デザインが美しいというのはとても大事なことですね。
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今年も今日で終わりです。古いスタイルで細々と続けているこのサイトも、ありがたいことに定期的にご覧くださっている方がいらっしゃるようです。ありがとうございます。何かのきっかけで知ったことを調べ始めて、そこから連想することを思いつくままに考えたり図を作ったり模型を作ったりしているととても楽しいのですが、そういう面白さを共感して下さる方がいらしたら嬉しいなと思っています。
11月の後半に始めた「カラータイルの敷き詰め」の話、これは本当は Wangのタイルの話の導入のつもりでした。ところがそこに行き着く前に別の話題を始めてしまって、その後12月のはじめのころにKowalewskiの4色タイルの話に戻したのですが、そこから立方体の稜の塗り分け、菱形十二面体の稜の4色の塗り分けへと話が進んでしまって、Wangのタイルの話はどこかに行ってしまいました。
まあでもそういうのが楽しいのです。きっと来年もこんな感じでこのサイトの更新を続けていると思います。今年もありがとうございました。来年もよろしければぜひご覧ください。
<おまけのひとこと>
今、朝の5時を回りました。妻も起きてきました。これから例年通り「お年越」の買い物に行きます。以前は早朝の買い物のために早起きするのは特別感がありましたが、今や毎日もっとずっと早くから起きているので(今日も2時半から起きています)、「早起きしたなー」という感じはしません。