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今日の疑問

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2004年12月8日 グリーンランドとオーストラリアの面積

だいちゃんさま:地図上で見る限り単純に比較して明らかにグリーンランドの方が大きいと思うのですが…。

だいちゃんさま以外の世界中の地理をかじったことのある人全員:面積は、地球儀か、または、正積図法で描かれた地図で比較してください。『メールは正確に』でおなじみのメルカトル図法の地図で比較しちゃだめです。

メルカトル図法
形は正しいが、面積は正しくなく、高緯度ほど拡大される。
正積図法の一例(ランベルト正積方位図法)
ほーれ見ろ! オーストラリアのほうがでかい。

2004年11月13日 100万分の1国際図と、20万分1地勢図

勉強中さんからの疑問です。

 国際図は100万分の1で、経度幅6度、緯度幅幅4度。
 それを36等分した地図が、経度幅1度、緯度幅40分の20万分の1の地図・・・・

 という説明があったのですが、100万分の1を36等分した範囲をしめしたものがなぜ20万分の1の地図になるのか分かりません。

さ〜らまんのお答え

 100万分の1の国際図を36等分した範囲を、長さで5倍に拡大して示したものが20万分の1の地勢図です。

 36等分した範囲と聞いたら、6×6=36だから、6倍に拡大するんだろうと考えがちですが、それだとつじつまが合わないから、勉強中さんのように、???になりますね。

100万分の1の地図と20万分の1の地図は同じ大きさじゃなくて、100万分の1の地図の方がひとまわり大きいのです。

 文章ではわかりにくいから図で示しますと、右図のようになります。

 20万分の1地勢図は、100万分の1国際図を36等分した区画の範囲を示しますが、その大きさは、国際図における5×5=25区画分の範囲と同じ大きさなんです。

2004年11月6日 サウジアラビアの外国人労働力

Qさん:サウジアラビアには外国人労働者がたくさんいるって聞いたんですけど、どのくらいいるんですか?

Aくん:JCCME(財団法人中東協力センター)のサイトに、前田高行「統計で見るGCC湾岸諸国の社会と経済(その1)GCC諸国の人口構成と今後の見通し」というpdfファイルの報告があります。その報告は、カタールに本部のあるガルフ工業化諮問機構(GOIC)発行の「Gulf Statistical Profile 1999」に依拠しているんですが、それによると、1997年におけるサウジアラビアの外国人数は約530万人です。

Qさん:ずいぶん多いんですね。

Aくん:そうですね。湾岸諸国全体で外国人の数は約1000万人だから、その半分がサウジアラビアにいることになります。

Qさん:ということは、サウジアラビアの外国人数は湾岸6か国中で最も多いわけですね。

Aくん:そうです。サウジアラビアの人口は約1900万人で、そのうちサウジアラビア人が約1370万人、外国人が約530万人ですから、比率では80%近いアラブ首長国連邦(UAE)ほどではないんですが、それでも、28%ですから、すごいです。

Qさん:そうですね。でも、その資料は信用がおけるんですか? あまりに多いので本当かな?って思っちゃいました。

Aくん:CIAの資料には、「more than 35% of the population in the 15-64 age group is non-national (2003)」と載っていました。

Qさん:35%以上ですか。ということは、GCCの資料の28%というのも過大な見積もりってわけじゃないんですね。


Aくん:ドイツやフランスでは、外国人労働者が定着が進んで雇用面や文化面での摩擦が問題となり、話題になっているますが、労働力人口に占める外国人の割合は、ドイツが9%、フランスが6%ですから、それに比べても、約30%というのはすごいですね。

Qさん:日本の労働力人口に占める外国人の割合は1.3%とか聞いたことがあります。1.3%で大騒ぎしているのに…。あれ? サウジアラビアの約30%というのは、総人口に占める割合ですよね。ということは、労働力人口に占める割合だと、数字がもっと大きくなるんじゃないですか?

Aくん:あっ、そうですね。同じJCCME(財団法人中東協力センター)のサイトに、四天王寺国際仏教大学教授富塚俊夫「サウジアラビアの直面する人口増加と若年層の就業問題」というpdfファイルの報告があります。その中に、経済部門別の労働力人口構成の推移という表(出典はIMF報告書)があります。それによると、1989年の労働力人口は約577万人ですから…

Qさん:えええええええ!! 577万人?! さっき、1997年の統計で、外国人数は約530万人だと言いましたよね。

Aくん:ええ。年次が違いますが、単純に計算すると…

Qさん:労働力人口の約90%が外国人!

Aくん:90%というのは、出典と年度の違う数字を単純計算しただけなので、ちょっと多すぎるかもしれません。1999年度の東京大学の入試問題で、同じくIMFレポートを出典とした表(統計年次は1990年)が出ていましたが、それはアラブ首長国連邦の数値で、89.4%でした。サウジアラビアの場合は、労働力人口に占める外国人の割合は3分の2ぐらいだといわれています。

Qさん:外国人が3分の2ってことは、サウジアラビア人が3分の1だから190万人てことになります。外国人でないサウジアラビア人は1300万人もいるのに、働いているのは190万人ぐらいしかいないことになりますよ。サウジアラビアの人は働かないんですか?

Aくん:富塚先生の報告を読むと、労働力人口に占めるサウジ人の割合は、石油産業以外の製造部門でわずか4%、サービス部門で12%だそうです。

Qさん:サウジ人は怠け者なんですか?

Aさん:たしかに、自分たちは不労所得者であって、変なところで働いて自尊心が傷つくより失業していたほうがまし、と考えたりして、肉体労働は外国人にまかせればいいと考えたりする人が多いみたいですね。サウジ人の労働力人口が少ない理由はほかにもあります。次の図を見てください。何か気づきますか?


Qさん:うわっ! 確かに外国人が多いですね。特に男子が多い。これ、5歳きざみですよね。ってことは、5、10、15、20、25…、外国人は25〜39歳の男子が多い。

Aくん:そうですね。だから、総人口でみても、若年層男子の割合が高くなっています。

Qさん:サウジ人だけを見ると、富士山型というかピラミッド型というか、ですね。

Aくん:そうです。そのことと、労働力人口の少なさが関連しませんか?

Qさん:幼年人口が非常に多い。子供の多い国ですね。あっ、そうか、サウジ人の人口は1300万人もいるけれど、子供は働かない。労働力人口にならない。

Aくん:それと、女性。

Qさん:なるほど。戒律の厳しいワッハーブ派でしたっけ? イスラム社会だから、女性の大半も労働力人口にはならない。

Aくん:1300万人のうち、20歳未満が約半分だから、大人は750万人。

Qさん:そのうち、半分は女性だから、成人男子は375万人。

Aくん:高等教育進学率が20%ぐらいだから10万人ぐらいは大学生で、60歳以上の男子が約30万人いて、ほかに病気などで働けない人もいる。そうすると、労働力となりうる人は多めに見積もって300万人弱。

Qさん:そして、彼らの大半は、官庁ならいいが…

Aくん:肉体労働はいやだし、民間でこき使われるのはいやだと考えている。

Qさん:そうすると、200万人弱が働くことになりますね。

Aくん:民間企業の側も、プライドの高い彼らを雇用したがらない。

Qさん:大学を卒業した人は専門的な職業に就くんじゃないんですか?

Aくん:大学に行く人も、宗教学や社会学を専攻する人が多く、工学などはやりたがらない。技術者や専門家が生まれにくい。

Qさん:ということは、外国人は、肉体労働だけじゃなく、専門的な職種にもかなり就いているってことですね。外国人には女性もいますが、彼女らはどんな仕事についているのかしら。

Aくん:中流以上の家庭では、育児を自分でしないで、家政婦に任せるが、同じサウジ人を使用人とするわけにいかず、外国人を雇う。外国人女性には乳母や家政婦として働いている人も多い。



Qさん:外国人の女性の出身国で多いのは、インドネシア、スリランカ、エジプトですね。男性よりが多いのはインドネシアとスリランカだけですが、乳母はこの2つの国の人が多いのかしら。

Aくん:疑問は尽きませんね。なお、現在、サウジアラビア政府は、外国人労働力をサウジ人労働力におきかえるサウジアラビア人化計画を進めているようです。次第に状況は変わっていくでしょうが、急には無理でしょうね。


2004年7月16日 試験に出ない一次産品生産国機構

 受験生に朗報です。

 国際組織はアルファベットの略号ばかりで、覚えにくいことこのうえないが、資源生産国カルテルについては、試験に出るのは、石油輸出国機構(OPEC)とアラブ石油輸出国機構(OAPEC)だけ。それ以外は、ありがたいことにもはやほとんど試験に出ないことになった(というか、出してもらっては困ることになった)。

 なんとなれば、OPEC、OAPEC以外の資源カルテルで、いままで出ていたものの多くは、現在、解散しているか、解散していなくても実質的に消滅しているからである。そもそも、これらの資源カルテルは、石油危機直後、ブームのように結成されたものが多いのだが、石油危機を引き起こしたOAPECと違い、資源を政治的に利用しようとしたことがなく、価格を過激に吊り上げるような行動もとったことがない。あるいは、OPECなどと同様に生産調整(=生産制限)によって価格を吊り上げようとしても、結果的に、何ら実効がなく、OPECほどの影響力をもったことは一度もなかった。まあ、一言で言えば力がなかった。どーして力がなかったかというと、市場占有率が低かったり、他の資源や工業製品によって代替が可能だったりするためである。

 出題頻度は低かったものの、私立大学などで比較的試験に出たのは、AIOEC、CIPEC、IBAなのだが、これらはみな、解散したり実質的に消滅した。なかにはけっこう活発に活動しているものもあるが、それらはマイナーで、もともと試験に出なかった。

 というわけで、実質消滅または解散したAIOEC、CIPEC、IBAなどに対し、レクリエムを捧げる意味も込めて、このたび、一次産品関連のいろんな国際機構をとりあげ、それらの結成年、加盟国の変遷、解散年などを調べて、表を作ってみました。

 わからないところが多く、まだ未完成ですが、おいおい調べて、わかり次第、表を埋めていきます。なお、これらのうちコーヒーとカカオの国際機構と熱帯木材機構は生産国と消費国が加盟する組織だから、生産国カルテルではありません。

略称 正式名称 結成年
本部
加盟国とその変遷(太字:原加盟国) 現加盟国数
OPEC 石油輸出国機構
Organization of the Petroleum Exporting Countries
1960年
ウィーン
イラン・イラク・クウェート・サウジアラビア・ベネズエラ・アルジェリア・カタール・インドネ
シア・リビア・アラブ首長国連邦・ナイジェリア(1993年エクアドル脱退、1996年ガボン脱退)
11ヶ国
OAPEC アラブ石油輸出国機構
Organization of Arab Petroleum Exporting Countries
1968年
カイロ
アラブ首長国連邦・アルジェリア・イラク・カタール・クウェート・サウジアラビア・リビア・バーレーン・シリア・エジプト・チュニジア 11ヶ国
CIPEC 銅輸出政府間協議会
Conseil Intergouvermental des Pays Exportateurs de Cuivre
1968年 チリ・ペルー・ザンビア・コンゴ民主・パプアニューギニア、モーリタニア(1989年インドネシア・オーストラリア脱退) 実質
消滅
IBA ボーキサイト生産国機構
International Bauxite Association
1974年 ジャマイカ・ガイアナ・スリナム・ギニア・シエラレオネ・ユーゴスラビア・オーストラリア・ドミニカ・ハイチ・ガーナ・インドネシア 1994年
解散
AIOEC 鉄鉱石輸出国連合
Assosiation of Iron Ore Exporting Countries
1975年 アルジェリア・チリ・インド・モーリタニア・ペルー・シエラレオネ・チュニジア・オーストラリア・スウェーデン・ベネズエラ・リベリア 実質
消滅
PTA タングステン生産者協会 1974年 ボリビア・タイ・韓国・オーストラリア・ポルトガル・ペルー・フランス   
IGMPC 水銀生産国グループ 1974年 アルジェリア・スペイン・メキシコ・ユーゴスラビア・トルコ   
ATPC すず生産国同盟
Association of Tin Producing Countries
   1994年中国、1999年ブラジル加盟   
ASEC 銀輸出国機構 1974年 メキシコ・ペルー   
SEALPA 東南アジア木材産出業者協会
South-east Asia Lumber Producers’Association
1974年 インドネシア・フィリピン・マレーシア   
ATO アフリカ木材機構 1975年      
ITTO 熱帯木材機構
International Tropical Timber Organization
   熱帯木材生産国33ヶ国と消費国   
ANRPC 天然ゴム生産国連合 1970年 スリランカ・シンガポール・インドネシア・マレーシア・インド・タイ・南ベトナム(後に脱退)・インド・パプアニューギニア   
UPEB バナナ輸出国機構 1974年 パナマ・グアテマラ・ホンジュラス・ニカラグア・コスタリカ・コロンビア・エクアドル   
ICO 国際コーヒー機関
International Coffee Organization
1963年
ロンドン
コーヒー生産国40ヶ国と消費国14カ国
日本も消費国として1964年に加盟。
54ヶ国と
EU
ICCO 国際ココア機関
International Cocoa Organization
   カカオ豆生産国19ヶ国と消費国23ヶ国
日本も消費国として加盟。
  

2004年6月6日 ハンガリー平原(アルフェルド)とハンガリー盆地は同じものか。

 まずは、勉強中さんですからの疑問です。

地中海と縁海のちがいがよく分かりません。本によるとペルシャ湾は地中海で、ベンガル湾は縁海と書いてあります。

 この疑問をいただいて、思った感想。地理なんてぇーのは、いいかげんな学問だから、−ってバカにしているわけじゃありませんぜ、にいさん! あんましきちっとしていないところがいいんであります、カチッとしすぎているものには未来はないかもしれないが、いいかげんだから、どこへ行くかわからない、んでもって、そこからいいものが生まれてくるやもしれませぬ、、、ん?? 何の話でしたっけ? そうそう、いいかげんな学問だから、しゃちほこばって、用語にきっちりした定義があるなんて思うと、先に進めません。そもそも相手が、変幻自在の自然であったり、生身の人間の動きであったりしますから、きちんと定義して分類することなんかできないのであります。まあ、多数決的理解や呼称で我慢しておく、それが一番でさあ。

 こないだも、こんな疑問をいただきやした。曰く、

ハンガリーのあの平らなところ、あれは、平原なんですか? 盆地なんですか? いくつか地図帳を見たら、「ハンガリー平原」と書いてあるものと、「ハンガリー盆地」と書いてあるものがあるんですよ。

 なるほど、そうですね。そこで、さ〜らまんのおこたえ。

 どっちでもいいですよ。地名の呼称は習慣です。そもそも、平原は平坦であまり木が生えてなくて見通しがいい原っぱみたいなところ、盆地は山に囲まれた平坦なところ、だから、盆地は平原の一種です。だからどっちでもいいんです。

 平原というと、普通はだだっぴろい感じがしますし、盆地というとなんか狭っくるしい感じがしますけれど、北イタリアの「ロンバルディア平原」なんざぁ、パダノ=ベネタ平原の中の狭い地域(ポー川中流北岸地域)だけを指し示していますから、客観的な狭い広いで決めてるんじゃなくて、そこの人が主観的に広いと思えば平原というのかもしれませんし、そもそも平原には広いなんて意味は入っていません。

 盆地は狭っくるしい感じといったが、広さは関係なくて、山に囲まれた平らなところは盆地だから、広い盆地があります。アマゾン盆地、コンゴ盆地、大鑽井(グレートアーテジアン)盆地、タリム盆地なんざぁ、その代表例です。平らならいいんで、標高も関係なくて、北アメリカには、「グレートベースン(大盆地)」というのがあります。これは名前は盆地だが、ワタクシは勝手に高原として扱ってます。

 平原の方だって、平野といったり低地といったり平原といったりです。たとえば、「パダノ=ベネタ平野」「西シベリア低地」「ヒンドスタン平原」「トゥラン低地」。まっ、西シベリア低地は見通しがいいって感じはしませんから平原でなくてもいいんですが。

 しかし、ハンガリーについては、ワタクシも、ちょいと疑問がありまして、帝国書院の地図帳では、つい先ごろまで、「ハンガリー盆地」と記載されていたのに、ごく最近、たぶん去年あたりから、「ハンガリー平原(アルフェルド)」と変えてます。で、疑問というのは、それはなぜかな?というものです。

 たぶん、帝国書院は現地語帝国主義ですから、現地では、あそこは盆地なんて呼ばれていなくて、平原と呼ばれているんだから、平原と呼ぶべし!と判断したか、あるいは、誰かから強く言われてそうしたんだと思います。

 なぜ変えたのかは、聞けばわかるから、あとで聞くことにして、次の疑問。変える必要があるのかしらん?

『コンサイス外国地名辞典』で調べますと、

ハンガリー盆地:
ハンガリーからユーゴスラビア北部、ルーマニア西部にかけての盆地。
【正称】オルフェルド Alfold盆地(ハンガリー)。
【別称】パノンスカ-ニジナ Panonska Nizina盆地(セルボクロアチア)。
    キピア-ドゥネリ-デ-ミジュロク Cimpia Dunarii de Mijloc盆地(ルーマニア)。
    パンノニア盆地 Pannonian Basin(英)
ドナウ川により西側のトランスドナウ台地と東側のドナウ川・ティサ川流域を占める大ハンガリー平原とに分かれる。

 あれ〜っ? 変だな。ハンガリー盆地の中にハンガリー平原があるということになってるじゃないか。

そこで、平凡社の百科事典を見た。

ハンガリー盆地:
ドナウ川の中流域に広がる盆地。北と東はカルパチ山脈に囲まれ、西はアルプスのふもと、南はディナル・アルプスに区切られる。
ハンガリーでは、カルパチ盆地(Karpat medence)という。
面積はほぼ30万km2。(中略)
ハンガリー大平原、ドナウ川以西の丘陵地、北西部の小平原、南西部のザグレブ盆地、東部のトランシルバニア盆地などに分かれる。

ふむふむ。やはり。 ハンガリー盆地の中にハンガリー大平原や小平原がある。

そこで、ネットで調べてみた。

Carpathian Basin is a synonym for the territory of historical Hungary in the everyday language of Hungary. In geographical point of view it includes at least three great basins: Little Hungarian Plain (Kisalfold), Great Hungarian Plain (Alfold) and the Transylvanian Basin.
The Pannonian plain is a large plain in central/south-eastern Europe that remained when the prehistoric Pannonian sea dried out. The river Danube  divides the plain roughly in half. The plain is roughly bounded by the Carpathian mountains, the Alps., the Dinaric Alps  and the Balkan mountains .
キシュアルフェルド(小平原。キシュ・アルフェルド。キシュオルフェルド)
ハンガリー盆地(カルパチア盆地)の北西部の平原をこう呼びます。盆地の中央にあるのは「大平原(ナジアルフェルド)」と呼ばれています。ハンガリー語で「Alfold」は盆地の意。
Nagy-Alfold [Great Alfold], great central plain of Hungary extending into Serbia and W Romania. The level region is drained by the Tisza and Danube rivers. Formerly wooded, the Alfold gradually became a steppe region as the Magyar and then the Mongol invaders (13th cent.) cut down many trees, exposing the soil to dry winds. Grasslands covered most of the Alfold until the late 19th cent., when extensive irrigation and drainage projects transformed parts of it into fertile farmland; grains, vegetables, feed crops, and livestock are now raised. The Alfold, on a primary invasion route to Europe, has been the scene of many major battles. The Little Alfold (Hun. Kis-Alfold) is located in NW Hungary and extends into S Slovakia and Austria.

で、面倒だからこれ以上はやめますが、まあ、よくわからんが、次のような結論に達したことにしておきます。

ハンガリー盆地(パンノニア盆地またはカルパティア盆地でもいい)の中に、(ハンガリー)大平原や(ハンガリー)小平原がある。
 注記:ハンガリー盆地といえば(*)プスタだが、これについては、田中清和氏からのご教示を得た事実があるので、後日、記事にします。(2006.2.13追記)

 というわけで、「平原でも盆地でもどうでもいい」という前言は撤回します。

 帝国書院の新しい地図帳の「ハンガリー平原」の文字はハンガリー領内におさまっているけれど、揚げ足をとるなら、ドナウ川以東の大平原や北西部の小平原だけでなく、南西側のトランスドナウも含んでいるような位置に書かれているじゃないか。さらにまた、ハンガリー盆地全体であるかのような誤解を与える可能性があるから、なんか変だ。従来の「ハンガリー盆地」を廃止し、あえてわざわざ、より狭い地域名である「ハンガリー平原」を新たに書き込んだ意図がわからん。

 現地語主義か。それも曲者。ハンガリー平原(Alfold)のように、一国内の地名ならいいが、ハンガリー盆地のように異なる言語を用いる複数国にまたがる地域の場合、どうするのか? 両名表記か? ならば、極論すれば、日本海だって韓国・朝鮮式呼称の「トンヘ」も併記するしかなくなるがな。帝国書院の地図帳では、最近、「大鑽井盆地」をあらため、「大鑽井(グレートアーテジアン)盆地」としたが、どうしてそういう無粋なことをするのか!とワタクシは思う。名訳をつけた先人の苦労が水の泡だ。日本文化の否定だ! 現地語帝国主義者め!

 おっと、いかん、熱くなってしまった。国際的に認知されている地名を優先ということだろうか。ならば、日本海は当然「日本海」でいいが、ハンガリー盆地はどうなんだろうか? 国際的に、「カルパチア盆地=パンノニア盆地=ハンガリー平原」ということが決まったのだろうか?

 そんなに目くじら立てる必要のないことではあるが、謎は、なぞは深まるばかりである。

 

* 勉強中ですさんの地中海の疑問に対し、お答えするのをすっかり忘れていました。

 大洋:太平洋、大西洋、インド洋の3つ。
 付属海:地中海と縁海。(大洋の一部。)
   地中海:一つまたは二つ以上の大陸の中に入り込んだ付属海。
   縁海:大陸の前面にあって島や半島などによって不完全に囲まれた付属海。

 したがって、地中海は、二つ以上の大陸の間という観点からすれば、その代表例として、北極海、豪亜地中海、アメリカ地中海、ヨーロッパ地中海がある。豪亜地中海は「入り込んだ海」というのに、ちょっと異論もあろうが、他はすべて、入り口がなんとなくすぼまっていて、二つの大陸の間に入り込んでいる感じがする。しかし、大陸が一つでも、その中に入り込んだ海も指し、その例として、ハドソン湾、バルト海、ペルシャ湾があげられる。これらはすべて入り口がすぼまっていて、確かに「入り込んだ海」といえる。また、紅海は、二つの大陸の間であり、大陸の間に入り込んだ海でもある。


2004年5月24日 ミシシッピ川の流量変化

 疑問発見掲示板で、勉強中ですさんから頂戴した疑問です。


勉強中ですさん:

 河川の流量変化についてお伺いしたいのですが、メコン川はサバナ気候の雨季に流量が最大になり、レナ川は氷が溶ける6月に流量が最大になるのは分かるんですが、ミシシッピ川の流量が、4月に最大になるのはなぜですか。上流の雪が融けて流量が増えるのですか?
さ〜らまんのお答え:

 ご名答です。
 以上。
地理情報の部屋より(無断で)頂戴しました。
そのお部屋の中に、
世界の河川の流量変化がすぐわかるページ

があります。すばらしいです。
証拠:センター試験でレナ川やオビ川の流量の年変化を問う問題が出され、ダミーとしてミシシッピ川が出ていました。
大学入試センターのサイトで、出題意図を公開していますので、該当部分を読んでください。以下に抜粋しておきます。

大学入試センター平成15年度 試験問題評価委員会報告書 地理歴史
 地理A、地理B 第3 問題作成部会の見解 より抜粋。

 というわけで、解説は全くいらないのですが、変なものを作りましたので、掲載します。下の図です。作成に当たり、データは、ここからとりました。

 これを見ると、融雪水はロッキー山系から流れ出るミズーリ川、プラット川、カンザス川、アーカンザス川、レッド川からも来るが、そちら側は降水量そのものが少ないので、各河川の流量は少ないですね。もちろん、各河川の流量は少ないけれど、流入する河川の数が多いから、全部合計すればバカにはできません。

 とはいえ、ミシシッピ川中下流の流量に大きく貢献しているのは、ミシシッピ本流や東部から流入するオハイオ・テネシー水系です。そして、こちらも、北部へ行けば行くほど、4月の流量ピークが目立ちますから、融雪水が4月の増水の原因であるとわかります。


2004年5月11日 ワジの呼称あれこれ

 知の大洋くんからいただいた疑問第1弾です。

知の大洋くん:
 ワジって北アフリカ以外では何て呼ばれているんですか?

さ〜らまん:
 ワジ、ワディは、はアラビア語だからアラビア語圏の北アフリカやアラビアで使われてるんですが、他の呼称は知らない。で、いま調べたら、南アフリカではドンガ、北アメリカではスペイン語起源のアロヨ(*)が使用されているらしい。

知の大洋くん:
 ありがとうございました。疑問が氷解しました。

さ〜らまん:
 どうしてそんな疑問が生じたんですか?

知の大洋くん:
 カナートってのがイランでの呼称で、北アフリカではフォガラと呼ばれているでしょ。だから、ワジも地域によって呼称が違うんじゃないかなーって思ったんです。変なこと聞いてすみませんでした。

さ〜らまん:
そーいうことでしたか。すばらしい!! 謝らないでください。なるほどです。

* arroyo フィリピンのアロヨ大統領もArroyo。昨日行われた選挙の速報がそろそろ出ているが、アロヨ氏が勝った模様です。

 感心しました。知の大洋くんは知の求道者でもあります。

  試験に出ないことですが、整理しますと、

涸川の呼称 起源 使用地域
wadi アラビア語
英語で、wadi、wady。
北アフリカとアラビア
wash たぶん英語  
arroyo スペイン語 アメリカ合衆国西部
donga 南アフリカ
nullah インド東部起源の単語
たぶんヒンディ語
インド

 似た話はいろいろあります。たとえば、市場は、ペルシャ語では「バザール」、アラビア語では「スーク」。遊牧民の移動式テントは、モンゴル語では「ゲル」、中国語では「包(パオ)」、ロシア語では「ユルタ」(ユルト)」。スラムは、コルカタでは「バスティー」、ブラジルでは「ファベーラ」。こんなのいちいち覚えてなきゃいけないのか!って私はときどき思います。地理の勉強なのか、外国語あれこれの勉強なのかわからん、という感じがするからです。


2004年5月10日 山岳氷河の分布

 今日は、知の大洋くんからいただいた疑問第2弾です。「知の泉」とか「知の宝庫」というが、「知の大洋」なんて聞いたことない!とおっしゃるかもしれませんが、まあ、お名前なので、目くじらを立てないでください。「知の大洋」くんです。「茅野大洋」くんでも、「知の海」くんでもありません。茅野の人ではありませんし、「知の海」くんなんてお名前だったら、「血の海」を連想してしまうから、まずいのです。

知の大洋くん:
 現存する氷河の恩恵について、いろいろ考えてみたんですが、オーストラリアのスノーウィーマウンテンズ計画で、スノーウィー川の水を使っていますよね、あの水はもともと氷河の融水だと思うんです。だから、スノーウィーマウンテンズ計画も、もとをたずねれば、氷河の恩恵を被っている、と言っていいと思いますが、どーでしょうか?

さ〜らまん:
 スノーウィーマウンテンズに氷河あるんですか? サザンアルプス山脈にはありますが。

知の大洋くん:
 あの水は単なる雪解け水ですか? 失礼しました。

 というわけで、疑問は解決したのである。オーストラリア大陸に山岳氷河は(もちろん大陸氷河も)ありません。

が、本当にそうだろうか? と少し心配になって調べたら、すばらしいサイトを発見してしまいました。http://map.ngdc.noaa.gov/website/nsidc/glacier/viewer.htm
下の地図はそこから得たものです。ただし、この図で示されるのは、氷河の位置であって、面的な広がりではありませんから、ご注意ください。下の図をクリックすると、そのサイトに行きます。そこでいろいろ遊んでみるとなかなかおもしろいです。

 山岳氷河の面的な広がりは、たいへん狭いもので、面的な広がりも含めて分布を見るには、GLIMSさんのサイトこのページがいいかもしれません。そこによると、アフリカのキリマンジャロ山とケニア山とルウェンゾリ山にある山岳氷河なんかこれっぽち(下図)です。

ニュージーランドのもこれっぽち(下図)。

ヨーロッパ中部のはちょい広いがこれっぽち(下図)。


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