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今日の疑問

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1月16日 各都道府県の都市システム(完結編)

 ありがたくももったいないことに、いまやすっかりお馴染みとなられた冴頭暖心先生(赤本執筆者でもあらせられる)が、Saland掲示板にご登場下さいました。以下、暖心先生のおほん御書き込みを、Saland掲示板から転載させていただき、各所に注をつけ、『注釈暖心先生王道地理読本』とさせていただきます。

 さ〜ら先生は1月13日の「今日の疑問」で、「『センター試験は推理ゲーム感覚で!』と常日頃言っている手前、県庁所在地やその他の県内主要都市の人口を知らなくても、なんとか類推して解ける方法はないかを模索してみたい」と、世界に向けて宣言されました。

 ところが、早くも2日後には挫折しております。

 さ〜ら先生はなぜ挫折したのか。それはこの問題に関する限り、県庁所在地の人口に関する知識がなければ解答不可能だからです。

 うぷぷ。。。おっしゃるとおりで、ぐう〜の音も出ません。

 県庁所在都市の人口に関する予備知識がなくても「推理ゲーム感覚で解けるの術」という題名で文章を書くなら、各所でごまかしをしないと無理でした。たとえば、各県の地勢がわかれば、とか、大都市圏内か地方の遠隔県かで考えれば、などなど、快刀乱麻的な切り口で説明しようとしても、こちらがたってもあちらは立たずで、例外が多く、誰が見ても、「ごまかしてやがる!」ってわかる、いいかげんな説明に終わってしまいそうでした。

そこで、「や〜んぴっ!」ってことにしたのであります。

 それについて述べる前に、都道府県内都市システムはどのようにして作られたのかについて書いておきましょう。

 日本の府県というのは明治維新後の廃藩置県によって設置されたものであることは誰もが承知していましょう。当初は紆余曲折がありましたが、県は、少なくとも地域としてみた場合は近世の藩を継承しています。

 その継承の仕方に二つのタイプがあります。一つは江戸時代の大藩の藩領がほぼそのまま県域に引き継がれたところ(たとえば、鹿児島県、熊本県、石川県、宮城県など)、もう一つは多数の藩領や天領が合わさって一つの県になったところ(たとえば、福島県、山形県、愛媛県、宮崎県など)です。

 地域としてみた場合、地理用語で言うと、前者は実質地域(*1)、後者は形式地域(*2)という性格があります。

 *1 実質地域:周囲の地方と明瞭に区別できる特色をもっている地域。形式地域の対をなす言葉。
 *2 形式地域:ある特定の目的や便宜のために人為的に設定した地域。たとえば、旧宗主国の支配前線を国境として画され成立した中南アフリカの国々は、植民地支配以前からあった地域のまとまりや民族分布を無視した国境によって国が生まれたので、それらは形式地域の例とされた。ただ、これらの国々も、独立後、長い年月がたち、国としてのまとまりが生まれ、それぞれに異なった地域に変わっていっているように、形式地域も、それが政治的経済的施策の単位になると、多くの場合は、そこに他とは異なる政治的経済的特色やまとまりが新たに生まれて、実質地域に変化する。

 江戸時代では、ある藩の領域内には都市というのは藩庁所在地の城下町だけであるというのが一般的です。藩領内に港町や宿場町などの純粋に経済的な都市というのが存在した藩もありますが、大部分は城下町が唯一の都市であったといえるでしょう。

 このような近世の地域構造は明治以降も引き継がれました。

 県庁所在地は旧城下町であることがほとんどですが、大藩を継承した県では旧城下町が県庁所在地となり、それが最初から県内最大都市となりました。県内に中心地が一つで、かつ大藩ですからその人口規模もかなり多かったために、一極集中型の都市システムとなったわけです。(*1)

 多数の藩が合わさった県では県内にいくつかの小中心が成立し、県庁所在地といえどもそのような地域中心の一つに過ぎず、多極型の都市システムとなりました。(*2)

*1 鹿児島県は薩摩藩、熊本県は熊本藩、石川県は金沢藩、宮城県は仙台藩。それぞれ大きな藩の藩領が、ほぼそのまま県域に引き継がれた。2000年国勢調査でも、鹿児島県・熊本県・石川県は一極集中型の都市システムを示す県である。なお、山口県は長州藩という大藩を継承しているが、多極型の県の典型である。これについては、暖心先生のご高説の続きを読もう。
*2 福島県は、会津若松の会津藩、東北本線沿い「中通り」の福島藩・二本松藩など、東部海岸沿い「浜通り」の相馬藩・平藩など、多くの藩領や天領が合わさって一つの県になった。山形県・愛媛県・宮崎県も同様で、山形藩は、山形藩・庄内藩・新庄藩などの諸藩と天領などが合わさって一つの県になった。2000年国勢調査では、いずれも一極集中型の典型とはいいがたい県であり、特に、福島県は多極型の県である。山形・愛媛・宮崎は多極型と一極集中型の中間であるが、これについても、暖心先生の続きを読もう。

 しかし、明治以降の工業化によって、この都市システムはしだいに変化していきます。

 京浜・中京・阪神・北九州の四大工業地帯では、工業化によって人口が増加した工業都市が成立することで(川崎・尼崎・八幡(北九州)など)、近世の地域構造が大きく崩れていきました。四大工業地帯の周辺の太平洋ベルトでも高度経済成長期の工業化によって都市の発達が顕著となり、近世の地域構造が大きく変化しています。

 山口県が大藩を継承しているにもかかわらず多極型であるのは、長州藩に多数の支藩があったことにくわえて、瀬戸内海沿岸の工業化による都市の発達が関係しています。(*1)

*1 山口県の主要都市について、その人口規模と、県全体の人口に占める比率は、次の通りです。

  市の人口 対県人口比  
下関 252,309 16.5 関門海峡に臨む商業工業都市。県内で最初に市制施行。
宇部 174,427 11.4 大正期の海底炭田開発以後の工業都市。
セメント・石油化学の宇部興産発祥の地。
山口 140,458 9.2 長州藩が幕末に藩庁をここに移したため県庁所在地になる。
全国の県庁所在都市で人口最低。県内の市では唯一人口増加中。
防府 117,726 7.7 史跡・文化財の多い町。商工業都市でもある。
岩国 105,765 6.9 歴史も古いが、石油化学コンビナートのある町として発展。
徳山 104,658 6.8 長州藩の支藩徳山藩の藩庁。港湾都市。石油化学コンビナート。
下松 53,097 3.8 徳山とともに周南工業地帯を形成する重化学工業都市。
46,442 3.0 周南工業地帯の工業都市。
46,003 3.0 長州藩の藩庁。日本海に面する城下町。現在は水産観光都市。
工業未発達。萩焼のほか、ナツミカンの産地として有名だった。
小野田 45,084 3.0 セメントと化学の工業都市。小野田セメント発祥の地。

 さて、次から、冴頭暖心先生の論説は、お名前の通り、いよいよ冴えてきます。いままでのところは巷でいわれていることを暖心先生の冴頭で整理しただけですが、次は、いよいよ自説の展開です。若人は是非ともしっかり読まねばなりません。

 もう一つは多極型の県であっても、現在では県庁所在地への集中度が高くなっているということがあります。

 こうした現象がいつから起こったのかは正確には言えません。明治以降徐々に県庁所在地への集中が進んできたことは確かですが、私は学者ではありませんから憶測でものを言うことを許してもらえるなら、おそらく高度経済成長期に最も集中度が進んできたといえるのではないかと思います。

 この時期は重化学工業化が進んだというだけでなく、日本の土建国家性が顕著になってきた時期でもあります。県域経済圏というのが成立する産業は、許認可と既得権のかたまりである、一つは土建業、もう一つは金融業(地方銀行)です。この土建=金融経済が県庁所在地への集中度を高めたのではないかと私は考えています。

 したがって、土建=金融性が高い地方の県では、どうしても県庁所在地への集中度が高くなります。長野県のように、とても県域経済圏が成立しているとは思えない県でも県庁所在地の人口規模は他を圧しております。

 ここにきてようやく多極型の県でも明治初期の形式地域が実質地域となったといえるでしょう。(*1)

*1 地元県民、それも県庁所在地から離れた場所にいる県民の立場から言わせていただきますと、私は、いまだもって、「長野県民」だとか「信州人」だとか言われるのに抵抗があります。いまだに近世の諏訪(高島)藩の領域である「諏訪」の人だという意識が濃厚です。ところが、県知事選挙のときに、土建業界に勤務している知り合いが、「田中某が知事になったらうちの会社つぶれる云々」と言ったのを聞いて、俄然、県民としての意識に目覚め、「それならその会社つぶしてやろうじゃないか! でも誰がなっても土建屋は不滅だからつぶれっこないわい!」と思った次第です。その知り合いの一言を聞かなければ、県民としての自覚なしに投票していたでしょう。しかし、知事選が終わってだいぶたった現在は、また再び、「諏訪の人」意識に戻り、田中某の動向にもすっかり関心が薄らいでいます。「あんなところ、善光寺があるだけで役所と銀行以外、産業は何もないじゃないか! それに比べれば、我が諏訪は・・・」とか、「松本がいばるなら許してやらないこともないが・・・」と思っていますが、心情的にどうあれ、県庁所在都市の長野の人口が松本よりだいぶ多くなっているのは確かです。このまえ間違えて長野へ行ったとき、町の大きさにびっくりし、「やっぱ、人とカネの集まるところにはかなわんわい。」と思った次第です。

 工業化と土建国家性という二つの原理が近世の地域構造を崩してきたのですが、そうはいっても少なくとも大都市圏から離れた地域では、近世の地域構造が現在でもある程度維持されているといえます。

 同じ九州でも鹿児島県や熊本県が一極集中型で、宮崎県や大分県で集中度が顕著でないのは近世の地域構造から説明できます。また、東北地方でも宮城県が一極集中型で、福島県や山形県ではある程度分散的なのは近世の地域構造を反映しています。

 そして、いよいよ、結論です。

 日本の県内都市システムというのは歴史的に形成されたものです。したがって、現在の統計で共時的に考察しようとしても説明は不可能である、というのが結論です。さ〜ら先生の失敗はここにあります。

 まさに、おっしゃる通り。最後に、受験生向けのアドバイスです。なんて、暖かいお心なんだ!

さて、件の問題の解き方ですが、都市システムが歴史的所産であるとともに、センター試験の問題も歴史性をもっています。つまり過去を踏襲しているということです。

99年の例の問題は、97年追試地理B第3問問4をふまえたものです。次の問題です。

問4 県庁所在都市が、いずれも県内人口第1位の都市ではない3県の組合せを、次の1〜4のうちから一つ選べ。ただし、統計年次は1994年とする。
 1 秋田・富山・鹿児島 2 茨城・愛知・大分
 3 群馬・岡山・香川  4 福島・三重・山口

この問題をやっていたら99年の例の問題は簡単に解答できます。

 福島県は県庁所在都市が人口1位ではないのだから県庁所在都市の人口比率が38%もあるYではありえないと類推できます。センター試験の統計問題は類推で解く問題ですが、そうはいっても何の予備知識もなしに解ける問題ではありません。この場合は「福島県は県庁所在都市の人口が県内1位ではない」というのは必要な予備知識なのです。

 この予備知識はこれだけ見るとかなり高度なものです。クイズミリオネアなら100万円レベルといえるでしょう。しかし、ほんの2年前の過去問にこれに関する問題があることを考えるとせいぜい3万円レベルの問題です。

 暖かいのであるが、次第に、辛口な口調になっていきます。心が本当に温かい人は、口調は冷たいものです。

 きついことを言うようですが、過去問をやったのもかかわらずこの問題ができない受験生は、過去の経験から学び、当面の課題を類推し推理することで解決するという能力に欠けています。そんな人は大学へ行っても得ることは少ないでしょうね。

 うう〜っ。きつい。

 でも、この冷たい口調の中に、受験生かくあるべしという暖心先生の熱い思いと励ましを読み取らねばなりません。さ〜らの甘い軽口言葉にだまされてはなりませぬ。暖心先生の最後のお言葉のようなきつい口調の中にこそ、明日を担う若人の生き方の指針があるのです。


1月15日 各都道府県の都市システム(2)

 このテーマに関して表を作成し、その表について、ぐいぐいと考察をすすめていけば、10回分ぐらいの長大なシリーズものになりそうな予感がし、すっかり嫌気がさしました。それに、脳みそがすっかり落ち着き払ってしまっている私さ〜らには、当初の目的(=県庁所在地やその他の県内主要都市の人口を知らなくてもなんとか類推して解ける方法はないか?)についてコンパクトにもの申す能力がありませんでした。そこで、これはやめにし、大幅に脱線して、いただきもののクイズを紹介してお茶を濁すことにします。

 このシリーズ第1弾の前回の記事に対して、各方面から貴重なるご意見ご指導を賜り、私、さ〜らは、感涙に夢精で(おっと失礼)噎いでおります。

 まず、地形の専門家エ・スケ氏から、市部人口やDID人口の割合の一般的傾向に関する知見と、石川・福島の判別方法に関して、主としてご専門の地形に着目した判別方法を教えていただいた。後者について紹介する。

エ・スケ氏:日本の地形がある程度わかっていれば、石川と福島の判別は楽だと思います。地形がわからなくても、地図帳さえ日頃からよく見ておけば、わかったかも。。。

 福島県は、東部海岸沿いの「浜通り」、中央部の東北本線が通過している郡山盆地と福島盆地からなる「中通り」、そして西部の会津盆地などからなり、県内がいくつかの小平野・小盆地からなっており、また、その他諸々の難しい理由もあって、各地にどんぐりの背比べ的な同規模の中心都市が発達している。多くの受験生は、各県について、そのような地形というか地勢を知らないから苦労しているんでしょうが。

 なお、エ・スケ氏からは、加えて、次のような感想も賜った。

 エ・スケ氏:いづれにせよ、解答当てれば良いのですから、センターまで尻に火のついた受験生諸君はあれこれ今の時期に悩まない方が良いと思いますヨ(^^) 

 まさに、その通りである。この記事は、私の楽しみのためにやっていますから、センター試験を目前に控えた方々は、この記事に触発されて泥沼に入り込まないようお願いします。センター試験ではなく、国公立二次・私大受験を目指している方なら、役に立つ部分もあると思いますが、あまり深入りしないで下さいね。

 さらに、前回の記事で、「たいへんに頭脳明晰なお方」、「しかしながら、頭脳明晰なお方というのは往々にして性格が冷たい」と私が勝手に断じてしまったお方からもメールを頂戴し、厖大な資料を添付していただいた。「頭脳明晰であるばかりでなく性格も暖かいお方」だったんだ!と認識を新たにした。以下、このお方を、「冴頭暖心」先生と呼ばせていただく。

冴頭暖心先生:都道府県の都市システムについて、だいぶ前に問題を作ったことがあります。多分にクイズ的、かつ難しすぎるので自らボツにしたものです。添付しますが、データが古い(1992〜93年)ので、今ではあてはまらない問いがあるかも。

 ありがたくももったいないことです。そこで、今回は、暖心先生ご出題のクイズをご紹介します。

 暖心先生の手になる名作は、2000年国勢調査データを使ってもほぼ成立するので、ごく一部を変えるだけにします。まずは、大問の問題文。

 日本の各都道府県の人口に対するその都道府県内の各市の人口の比率(以下単に人口比率と記す)を計算してみた。これについて以下の問いに答えよ。なお、東京都の場合は、23の特別区を一つの市とみなす。(C)暖心先生

この大問は、8つの小問から構成されており、その問1は、

問1 ほとんどの都道府県では人口比率が10%を超える市は1つだけである。このうち最大都市の人口比率が50%を越えている都道府県が2つだけある。2つの都道府県名を答えよ。(C)暖心先生

 

B 多核型・二極型の都道府県

 暖心先生の名作で、問1の設問文中、「ほとんどの都道府県では、人口比率が10%を超える市は1つだけである」というのは、「人口比率が10%を超える市が2つ以上ある都道府県はあまりなく」、また、「人口比率が10%を超える市がない都道府県は珍しい」ということです。そこで、次の問2は、

問2 人口比率が10%を越える市が1つもない都道府県が2つだけあり、いずれも関東地方の都道府県である。2つの都道府県名を答えよ。(C)暖心先生

 人口比率が10%を超える市が1つもないということは、どの都市もどんぐりの背比べ的だということでしょう。次の表は、そうした県、および、人口比率が10%を超える市が1つあっても、2位以下の人口がそこそこあって、どんぐりの背比べに類する県を集めたものです。*の埼玉県は、合併予定の浦和・大宮・与野市を合計し、さいたま市として算出したもので、参考までに載せただけです。

  県人口 県庁都市 1位都市人口 1位 2位 3位 4位 5位 6位 主 要 都 市
埼玉県 6,938,004 浦和 484,834 7.0 6.6 6.6 4.8 4.8 4.4 浦和、川口、大宮、川越、所沢、越谷
茨城県 2,985,424 水戸 246,748 8.3 6.5 5.6 5.1 4.5 2.8 水戸、日立、つくば、ひたちなか、土浦
千葉県 5,962,349 千葉 887,163 14.9 9.2 7.8 7.5 5.5 4.7 千葉、船橋、松戸、市川、柏
*埼玉県 6.938.004 さいたま 1,023,937 14.7 6.6 4.8 4.8 4.4   さいたま
長野県 2,214,409 長野 360,117 16.3 9.4 5.7 4.8     長野、松本、上田

 どんぐりの背比べ的な県には、人口比率が10%を超える市が2つあるような2極型の県や、3つ以上の主要都市のある多核型の県があります。上記の表中の県は多核型または無核型の県です。そこで、暖心先生の問3〜7は、

問3 人口比率が10%を越える市が2つ以上ある都道府県は16ある。このうち人口比率が10%を超える市が3つあるのは3都道府県だけであり、4つ以上ある都道府県は1都道府県だけである。人口比率が10%を超える市が3つある都道府県のうち、2つは東北地方、1つは九州地方の都道府県である。3つの都道府県名を答えよ。

問4 人口比率が10%を超える市が2つ以上ある都道府県のうち、1位と2位の市の人口比率の差が5ポイント未満である都道府県は5つあり、このうち2つは問3で答えた都道府県の中にあり、あと3つは、関東地方,中部地方、中国地方、にそれぞれ1つずつある。この3つの都道府県名を答えよ。なお、岡山県はこの3つには含まれていない。

問5 人口比率が10%を超える市が2つ以上ある都道府県のうち、人口1位と2位の市の人口比率を合わせると50%を越える都道府県が3つある。3つの都道府県名を答えよ。なお、問4で答えた都道府県はこの3つには含まれていない。

問6 大多数の都道府県では都道府県庁所在都市がその都道府県の人口最大の市となっているか、そうでなくても都道府県庁所在都市の人口比率は10%を超えているのが普通である。しかし、この2つの条件に当てはまらない都道府県が問2で答えた都道府県以外に2つある。その2つの都道府県名を答えよ。なお、都道府県庁所在都市がその都道府県の人口最大の市となっていない都道府県は全国で5つだけである。

問7 人口比率が10%を超える市が2つ以上ある都道府県は問3・問4・問5で答えた都道府県以外に7つあり、このうち2つは問6で答えた都道府県である。残り5つのうち3つは島根県、福岡県、大分県で、あと2つは中部地方と九州地方の都道府県である。2つの都道府県名を答えよ。なお、長野県はこの2つには含まれていない。以上(C)暖心先生&さ〜ら

 答えは、以下の表も参照して下さい。以下の表で、セルが青色の県は2極型またはそれに準じる県、セルが空色の県は3極型あるいは多核型の県です。

  県人口 県庁都市 1位都市人口 1位 2位 3位 4位 5位 6位 10%以上の都市または主要都市
青森県 1,475,635 青 森 297,763 20.2 16.4 12.0 4.3     青森、八戸、弘前
福島県 2,126,998 福 島 360,143 16.9 15.7 13.7 5.6 3.1   いわき、郡山、福島
群馬県 1,247,573 前 橋 284,256 22.8 19.2 11.9 10.1 9.3 6.4 前橋、高崎、太田、伊勢崎
神奈川県 8,489,932 横 浜 3,426,506 40.4 14.7 7.1       横浜、川崎
富山県 1,120,843 富 山 325,693 29.1 15.4 5.1       富山、高岡
静岡県 3,767,427 静 岡 582,120 15.5 12.5 6.3 6.2 5.5 3.4 浜松、静岡
三重県 1,857,365 津   291,106 15.7 10.0 8.9 6.7 5.8 5.4 四日市、鈴鹿、津
鳥取県 613,229 鳥 取 150,436 14.1 13.0 4.6       鳥取、米子
島根県 761,499 松 江 152,618 20.0 11.5 6.6       松江、出雲
岡山県 1,950,656 岡 山 626,534 32.1 22.1 4.6       岡山、倉敷
広島県 2,878,949 広 島 1,126,282 39.1 13.2 7.1       広島、福山
山口県 1,528,107 山 口 252,390 16.5 11.4 9.2 7.7 6.9 6.8 下関、宇部、山口
福岡県 5,015,666 福 岡 1,341,489 26.7 20.2 4.7       福岡、北九州
大分県 1,221,128 大 分 436,490 35.7 10.4 5.5       大分、別府
長崎県 1,516,536 長 崎 423,163 27.9 15.9 6.3       長崎、佐世保
宮崎県 1,170,023 宮 崎 305,777 26.1 11.3 10.7 5.0     宮崎、都城、延岡

最後の設問です。

問8 以上の問1から問7までの答えとならなかった都道府県のうち,人口50万人以上の市を有する都道府県は9つあり、このうち6つは政令指定都市を有する都道府県である。残りの3つのうち、1つは新潟県である。のこりの2つの都道府県名を答えよ。(C)暖心先生&さ〜ら

以上、暖心先生ご出題のクイズに対して、お暇な方は答えてみましょう。そして、「我こそは!」という人は、掲示板またはメールにてお知らせ下さい。正解者には粗品を進呈します。


1月13日 各都道府県の都市システム(1)

 受験生の疑問が集中する問題というヤツがあって、センター試験でいえば、1999年追試第5問問6もその一つだ。

次の表は、石川、埼玉、福岡、福島の4県に関するものである。X〜Zに該当する県は?

☆ ☆  県人口に対する比率(%) 
  市部人口 人口集中地区
人口
県庁所在都市
人口

福 岡

85.4
76.5
69.5
64.1
77.7
68.4
49.4
37.1
06.7
26.0
38.5
13.4

 爆発的売れ行きのK合出版(特定の出版社の宣伝になるといけないのであえて名前を伏せる)の解説書でもよいのだが、あいにく手元にないので、特に理由はないが、そのライバルである赤本の解説を以下に掲載する。K合出版の解説書は赤本に追随して今年から出したものだから、ライバルと言ったら赤本が笑うかな?

 Xは県庁所在地の人口比率がきわめて低いことに注目。東京に近い埼玉県は、市部人口や人口集中地区人口の比率が高い。また、ほぼ全域が東京の通勤圏であるので、県内に中心的な都市が成立していない。県庁所在都市の浦和といえども県内で突出した人口規模の都市ではない。したがってXが埼玉県である。

 YとZの区別はかなり難しい。石川県の県庁所在都市の金沢は北陸地方の中心都市で、人口も40万人を超えるから県庁所在都市の人口比率がかなり高いと予想できる。福島県では、県庁所在都市の福島よりいわき・郡山のほうが人口が多いので、県庁所在都市の人口比率はずっと低いと考えられる。したがって、Yが石川県、Zが福島県である。

 すばらしい解説である。解説執筆者はたいへんに頭脳明晰なお方である。しかしながら、頭脳明晰なお方というのは往々にして性格が冷たいからなのか、それとも、字数に制約があるので、懇切丁寧な解説をすることができないのかのどちらかで、これを読んだ受験生は、「えっ? 県庁所在地やその他の県内主要都市の人口を知っていなきゃいけないの?」と思って、ビビるかもしれない。

 そして、さ〜らもここで力説しておく。「しっかりビビってもらいたい。推理ゲーム的勉強だけで100点取ろうなんて甘い了見ではいけませんぜ。」と。しかしながら、「センター試験は推理ゲーム感覚で!」と常日頃言っている手前、県庁所在地やその他の県内主要都市の人口を知らなくても、なんとか類推して解ける方法はないかを模索してみたい。

 まず、市部人口や人口集中地区人口の比率の高い県が、東京、大阪、名古屋などの大都市圏とその周辺の都府県であることは当たり前なので、これについては、さ〜らも、「市部人口や県庁所在都市人口の比率が福岡より高いXが埼玉県なのは当たり前田のクラッカー!」と冷たく言うにとどめる。

 ところが、県庁所在都市人口の比率は少しやっかいだ。

 そこで、小中学生の社会科研究みたいですが、この比率が高い県はどんな県だろうか? 逆に低い県はどんな県だろうか?について調べてみました。データは、2000年国勢調査(速報値)です。

A.一極集中型の県

 下の表は、各都道府県内で、「人口1位の都市の人口=1」としたとき、「人口2位の都市の人口<1/2」の都道府県である。このうち、1位都市の人口比率が30%を超えている県など、表の右に◎や○を付した県は、人口第1位の都市の人口規模がずばぬけて大きく、2位以下の都市を大きく引き離している。典型的な一極集中型の都市システムの都道府県のセルは黄色で示しました。

 表中、1位都市の人口比率、2位都市の人口比率、1位都市の面積比率は、いずれも、各都道府県全体に占める比率で、単位は%です。また、表中、*印のところで、2位都市の人口比率の後ろに(  )書きしてある数値は、1位都市の人口を1としたときの2位都市の人口です。

  県人口 県庁所在
都市人口
人口1位の
都市の人口
1位都市の
人口比率
2位都市の
人口比率*
1位都市の
面積比率
1位の人口
比率が突出
1位の人口
が特に突出
北海道  5,682,950 札 幌 1,822,300 32.1 6.3 (0.20) 0.1
秋田県  1,189,215 秋 田 317,563 26.7 5.6 (0.21) 4.0  
岩手県  1,416,198 盛 岡 288,844 20.4 6.4 (0.31) 3.2 × ×
山形県 1,244,040 山 形 255,333 20.5 8.1 (0.40) 4.1 × ×
宮城県  2,365,204 仙 台 1,008,024 (3) 42.6 5.1 (0.12) 10.8
栃木県  2,004,787 宇都宮 443,787 22.1 8.1 (0.37) 4.9 × ×
東京都  12,059,237 特別区 8,130,408 (1) 67.4 4.4 (0.07) 28.4
神奈川県 8,489,932 横 浜 3,426,506 (5) 40.4 14.7 (0.36) 18.1 ×
新潟県  2,475,724 新 潟 501,378 20.3 7.8 (0.38) 1.6 × ×
石川県  1,180,935 金 沢 456,434 (7) 38.7 9.2 (0.24) 11.2
福井県  828,960 福 井 252,274 30.4 8.2 (0.27) 8.1  
山梨県  888,170 甲 府 196,155 22.1 6.1 (0.28) 3.9 ×  
愛知県  7,043,235 名古屋 2,171378 30.8 5.2 (0.17) 6.3
岐阜県  2,107,687 岐 阜 402,748 19.1 7.1 (0.37) 1.8 × ×
滋賀県  1,342,811 大 津 288,232 21.5 8.6 (0.40) 7.5 × ×
京都府  2,644,331 京 都 1,467,705 (2) 55.5 7.2 (0.13) 13.2
大阪府  8,804,806 大 阪 2,598,589 29.5 9.0 (0.31) 11.7   ×
兵庫県  5,550742 神 戸 1,493,595 26.9 8.6 (0.32) 6.5   ×
奈良県  1,442,862 奈 良 366,196 25.4 8.7 (0.34) 4.5   ×
和歌山県 1,069,839 和歌山 386,501 (8) 36.1 6.6 (0.18) 4.4
広島県  2,878,949 広 島 1,126,282 (6) 39.1 13.2 (0.34) 8.7 ×
徳島県  823,997 徳 島 268,116 32.5 7.8 (0.24) 4.6
香川県  1,022,843 高 松 332,866 32.5 7.8 (0.24) 10.3
愛媛県  1,493,126 松 山 473,397 31.7 8.4 (0.26) 5.1  
高知県  813,980 高 知 330,613 (4) 40.6 6.1 (0.15) 2.0
佐賀県  876,664 佐 賀 167,972 19.2 9.0 (0.47) 4.3 × ×
熊本県  1,859,451 熊 本 662,123 (10) 35.6 5.7 (0.16) 3.6
大分県  1,221,128 大 分 436,490 (9) 35.7 10.4 (0.29) 5.7 ×
宮崎県  1,170,023 宮 崎 305,777 26.1 11.3 (0.43) 3.1   ×
鹿児島県 1,786,214 鹿児島 552,099 30.9 4.5 (0.15) 3.2
沖縄県  1,318,281 那 覇 301,107 22.8 9.1 (0.40) 1.7 × ×

という表を作ったら2時間たったので、本日はこれでおしまい。続きは明日かあさって。

(1/15付記)注の補足

「1位の人口比率が突出」欄:◎1位都市の人口比率>50%
              ○1位都市の人口比率30%
              ×1位都市の人口比率<25%
「1位の人口が特に突出」欄:◎2位都市の人口/1位都市の人口<0.15
              ○2位都市の人口/1位都市の人口<0.25
              ×:2位都市の人口比率>10%または、2位都市の人口/1位都市の人口>30%


1月9日 ショッピングセンターとディスカウントストア

 Tomさま(♂)の疑問もう一つ。

以下の文章の空欄に該当する語句は「ショッピングセンター」のようだが、「ディスカウントストアー」でもいいのではないか?

 ・・・モータリゼーションの発達と郊外への人口の拡大・移動によって、都市郊外の幹線道路沿いを中心に、百貨店などの核テナントと駐車施設を伴った大規模な(  )が成長している。

お答え ショッピングセンターとディスカウントストアは別物です。

 おっ!! これも、一部の受験地理マニアの間で好評の、あのすばらしい問題集、K出版(特定の出版社の宣伝になるといけないのであえて出版社名を伏せる)『入試精選問題集地理B』掲載の問題(出典は慶應・商で改作なし)ですね! (影の声:「んもう! さ〜らさんたら、このところ、宣伝上手なんだから! 宣伝もあまりにすぎると、逆効果になりますよ!」)

 ショッピングセンターとは、問題文にもあるように、「百貨店など」を「核テナント」としていくつかのテナント(お店)が集まっているところで、一つの店ではなく、店の集合体(むかしながらの言い方をすれば、商店街)を指します。他方、ディスカウントストアーとは、安売り店のことにすぎません。

 ものの本(もったいつけずに言うと『IMIDAS』ですが)によると、ディスカウントストアとは、低価格販売を重点戦略とする小売業態の総称。また、ショッピングセンターとは、デベロッパーが計画・開発し、運営する小売業・飲食業・サービス業等の集合的施設。

 なお、ショッピングセンターの一種に、パワーセンター(この語はT国書院の教科書に掲載されている)というものがありますが、これは、複数のディスカウントストアーが集まったショッピングセンターです。


2001年1月8日 『入試精選問題集16地理B』にミス発見!!

 隠れG-SALANDERのTomさま(♂)から、以下のようなメールが舞いこみました。

 K出版(特定の出版社の宣伝になるといけないのであえて出版社名を伏せる)『入試精選問題集地理B』の第30問の問2(p54)で、Bはアイスランドかサモアか決めにくいのではないか?

 

お答え おっ!! すばらしい問題集を利用していますね。さて、お尋ねの件ですが、それぞれの国情について詳しく知らないのが当然なので、確かに決まりにくいかもしれないけれど、この手の問題は、先進国・途上国の図式で決めます。

まず、問題と答えを載せます。以下(出典は東洋大学/社会・経済ですがとりあげた国と統計年次を変えて改作してあります)です。

問1 下の表2中の1〜5は次のいずれかである。総人口と食用穀物自給率の統計に当たるものはそれぞれどれか。
 1994〜1996年の平均の食用穀物自給率(%)  1996年の国民総生産(千億ドル)
 1992年の出生率(パーミル)  1994年の第1次産業従業者比率(%)  1996年の総人口(千万人)

問2 表中のA・Bはそれぞれ、次のどの国か。
 1.アイスランド 2.アルゼンチン 3.サモア  4.日本   5.ナイジェリア

表2

国名
インド 104  61  28.5  3.58  93.94 
タンザニア 74  48  43.1  0.52  3.08 
A    65  6  10.1  51.49  12.59 
ソロモン諸島 ・・・  ・・・  24.7  0.02  0.04 
オーストラリア 506  5  14.7  3.68  1.83 
B    ・・・  ・・・  16.3  0.72  0.03 
スイス 62  5  11.9  3.14  0.71 
アメリカ合衆国 182  3  15.6  74.34  26.55 

注:・・・はデータ入手できず。『世界国勢図会』による

 問1の答えは、総人口が5で、食用穀物自給率が1です。2と3は、途上国で高く先進国で低いことに注目し、2が第1次産業従業者比率、3が出生率です。そして、残りの4は国民総生産です。
 問2の答えは、A・Bは、2・3がともに先進国的な値であることに注目し、人口も勘案して、Aが日本、Bがアイスランドとなります。

 なお、この問題には、別に、カロリー摂取量と食糧供給量の統計(表1:省略)もついており、A・Bの国名判定には、その表1もヒントにすることになります。

 ということで、さて、以下が、Tomさま(♂)へのお答えで、最後の方には表1に関する説明も加えてあります。

 先進国・途上国の図式で決めます。アイスランドは先進国、サモアは途上国です。

 サモアは途上国なので、出生率がアメリカ合衆国並みの16.3パーミルということはありえないだろうとか、または、GNP/人=0.72/0.03=・・・・・・ あれ? ガーン!! ミス発見! B国の4のGNPは0.72じゃなくて0.072、すなわち、0.07が正しかったよ〜ん!!

 気をとりなおして、正しい数値で計算すると、0.07千億ドル/0.03千万人=2万ドル以上。GNP/人が2万ドル以上という値は先進国の水準だ。したがって、B国はアイスランドであって、断じてサモアではありま温泉。

 表1の方では、B国は肉類はスイス並みで日本より多く、牛乳・乳製品もスイス・アメリカ合衆国並みに多く、欧米型食生活の国に決まる。サモアならソロモン諸島と同じ(事実は違うかもしれないにしても)オセアニア型食生活ではないだろうか? と考えて解く。「魚介類の摂取量が多いからアイスランド」ということだけなら、「海に囲まれた島国サモアだって多いかもしれないじゃん!」といういちゃもんも成立しますが、肉類や牛乳・乳製品の方を見れば、B国がサモアでないことは明らかです。

 というわけで、Tomさま(♂)の疑問自体はよくある疑問ですが、おかげでミスを発見することができました。ありがとうございました。

 今回は、ミスを発見できた喜びのあまり、K出版(特定の出版社の宣伝になるといけないのであえて出版社名を伏せる)『入試精選問題集地理B』を持っていない人には不親切な文章を書きましたが、お許し下さい。


12月20日 仏教とキリスト教

 二宮書店の『データブックオブザワールド』の各国要覧を調べたら、シンチャンウイグル自治区の民族は、45.5%を占める多数派民族のウイグル人のほかに、漢族が40.4%、カザフ族6.9%、モンゴル族、ホイ族、キルギス族、タジク族が若干いるようですね。これを見て、いくつか疑問が湧きました。

疑問1 ウイグル族はイスラム教徒ですが、カザフ族、ホイ族、キルギス族、タジク族もイスラム教徒と考えていいですか?

疑問2 モンゴル族はラマ教と考えていいですか?

疑問3  ラマ教なんですが、ラマ教は大乗仏教の片割れのようですが、ラマ教と大乗仏教は何が違うのですか?

お答え ラマ教なんて言い方は気にくわないね!

 疑問1と疑問2については、おっしゃるとおり、「いいです」がお答えです。

 それぞれの民族の宗教は、疑問1では、カザフスタンのカザフ人、ニンシャホイ(回)族のホイ族、キルギスのキルギス人、タジキスタンのタジク人と同じイスラム教、疑問2では、モンゴルや内モンゴル自治区のモンゴル人と同じラマ教と考えてよいです。中には、「おいらは無宗教だい!」と言って偉そうにする軽はずみなインテリもいるかもしれませんが、それについては考慮しなくてよいでしょう。

 なお、チベット人も、チベット自治区以外に、チンハイ(青海)省やスーチョワン(四川)省などにけっこういるが、彼らの宗教も、みんなラマ教です。

 チベットにはダライ・ラマがいる(インドに亡命していますが)からラマ教だ!と覚えておくといいでしょう。ついでに、よく間違えるのは、「チベット高原の遊牧で飼育されている固有の家畜を答えなさい」と聞かれたときです。もちろん、正解は、ヤクなんだが、宗教がラマ教なものだから、その語呂で、ラマとかリャマと口走りがちです。リャマはアンデス固有の家畜なので、間違えないようにしましょう。

問題は疑問3ですね。ラマ教ってなんだ? 

 ラマ教のラマは坊さんという意味で、ダライ・ラマなど歴代の坊さん(かつては政教一致だったから政治指導者でもある)を崇拝する点に特色があるので、ラマ教と呼ぶだけで、本当は正統派中の正当派の大乗仏教です。「インドから伝わってきた大乗仏教と土着のボン教が融合した特殊な仏教」というような説明もなされますが、考えてみれば、日本の仏教こそ、本来の仏教からすれば特殊もいいところで、土着の、あるいは東アジア特有の先祖崇拝と結びついておおいに変質していて、チベットのラマ教の方が仏教らしい仏教じゃないでしょうか。だから、ラマ教なんて呼ばずにチベット仏教と呼ぶ方がいいと私は思います。しかし、入試で、そのように力んでみても仕方がないので、「チベットの仏教はラマ教」というふうに覚えておきましょう。

 以下、おおいに脱線して、農民さ〜らのつぶやき

 だいたい、葬式をしたり、お盆にご先祖さまが帰ってくるなんて言ったりするのは、どう考えても、仏の道からはずれた変な風習だ。先祖祭りをしたがるのは、儒教をはじめとする東アジア人の性癖だから、日本の仏教は、仏教ではなくて東アジア教じゃないかと思うのだが、そんなことを言っても、変質したものが幅をきかしているご時世では犬の遠吠えにすぎないだろうね。

 変質したものが幅をきかしているのは、仏教に限らず、キリスト教だってそうだ。たとえば、もうすぐやってくるクリスマスだが、キリストは本当に12月25日に生まれたのかね? クリスマスは、冬至とだいたい重なるから、キリスト生誕祭りが冬至祭りと結びついたものだと言われている。おいらは農民だから、その話がすっかり気に入って、もっとラディカルに考えることにした。キリスト生誕祭りと冬至が結びついたんじゃなくて、冬至祭りそのものにキリスト教が便乗しただけで、キリスト生誕とはまったく無関係だったと考えることにしたわけさ。

 そうするってえと、キリスト教は、もともとの農業暦を、うまいこと宗教暦に組み込んで人々を惹きつけているってことになる。日本では、さらに、それを、クリスマス商戦とやらの商業暦に変えたり、人間には本来さかりがつく発情期はないのに(正確には年がら年中いつでも発情できるらしいのに、ことさらに)、若い男女がさかりあうような仕組みをつくり出したりして、なかなかうまいことやると感心する。

 おいらにとっては、クリスマスっちゅうのはケーキを食う日にすぎなかったが、クリスマスが冬至祭りだと気づいちまってから、ケーキは、パンプキンケーキに限ると思っている。

 というわけで、いま、世界全体では、クリスマスを祝うキリスト教徒が多数派になっちまって、クリスマスを祝わないキリスト教はあやしいキリスト教だとされているんじゃないかな? 仏教だって、同じように、日本では、先祖祭りをしない仏教はあやしい仏教と言って差し支えないだろうね。何でもかんでも、「昔に帰れ!」という主張にろくな主張はないわけで、宗教だって時代とともに変質し、地域ごとにその場所に即したものに変わっていくのが自然というものだ。

 クリスマス前のかようなつぶやきを、世界に向けて発信して、得になることはな〜んにもないのだが、駄文つづりが日課になっているので、ごめんなさい。


12月14日 EEAとリヒテンシュタイン

 Saland掲示板(12月4日)に、Sjun_eagleさんより、EEAに関する疑問を頂戴しました。それをネタにフィクションの疑問をでっちあげます。

疑問1
EUがあるのになぜEEAが設立される必要があったのですか?
しかも設立が1993年で、EUがECになった年と同じ。
目的が統一市場がなんたらで...。
結局、EUとやっている内容と重複していませんか?

疑問2
リヒテンシュタインはスイスと同様、EEAに加盟していないと聞きましたが、
1995年に加盟しているんじゃありませんか?

さ〜らの答え

疑問2について

ぎゃふん。おっしゃる通り、リヒテンシュタインはEEAに参加していますね。

新情報については、若者の方が敏感で、老人は昔のことを知っている分だけ、
しい変化に気づかないことが多いものです。

どんどん勉強して、老講師や老教師を、ぎゃふんと言わせてやりましょう。

疑問1について

EEAは、EUEFTAの市場統合を目的とするもので、EFTA加盟国に対して、市場統合されたEU市場への、より幅広いアクセスを約束した協定です。EUにとってではなく、EFTA加盟国にとって意味があります。

 だからこそ、EUの市場統合とEEAの発足がほぼ同時なのでしょう。政治統合まで射程に入れているEUに入るのはいやだが、経済的にはEUと緊密な関係を発展させたいという国は、EUに入らないでもEEAに入れば、市場統合のうまみにあずかれるというわけでしょう。

以下、略年表

創設提案がなされた当時、EU(EC)はまだ12か国で、EFTAは7か国でした。

1992年2月
1992
年5月
1992
1992年12月
1993年1月
199311
1994年1月
a
1995年1月
1995年5月
マーストリヒト条約調印
EEA
の創設協定に、ECEFTA加盟7か国が調印。当時はEES(欧州経済空間)
スイス、国民投票で
EEA加盟提案が否決される。
リヒテンシュタイン、国民投票でEEA加盟が賛成多数。
EU
の市場統合完成。
マーストリヒト条約発効。
EEA発足。国民投票で加盟が否決されたスイスとなぜか知らないがリヒテンシュ
タインを除く
EFTA5か国とEU12か国。
オーストリア・フィンランド・スウェーデンの
EU加盟。EFTA脱退。
なぜか知らないがリヒテンシュタインが
EEA加盟。

現在、EEA加盟国は、EU15か国と、スイスを除くEFTA(アイスランド・リヒテンシュタイン・ノルウェー)の計18か国。

「なぜか知らないが」が入っているのが、まじ、悲しいっす(若者言葉の口まね)。

 

さ〜ら侯爵夫人のよこ槍(1)

 みなさま、お久しぶりです。2月の疑問「英国王室の称号について」以来、ご無沙汰しておりましたから、覚えていらっしゃるかしら? さ〜ら侯爵夫人ですわ。あのとき以来の出来事といえば、皇太后さまは8月4日に百歳をお迎えあそばされてますますお元気ですし(*)、ウィリアム王子さまも6月21日に18歳のお誕生日をお迎えあそばされ、いよいよ成人王族として社交界にデヴューですわね。

*Her Majesty passed away peacefully at Windsor in March 2002. She was 102 years old and was given a full state funeral.(2002年4月付記)

 リヒテンシュタインと聞いて、つい、口を挟みたくなりましたの。リヒテンシュタイン侯国の国歌は、なんと!イギリス国歌と節回しがまったくいっしょですの。そういうこともあって、英国王室に詳しい私さ〜ら侯爵夫人は、リヒテンシュタイン侯国についても少しは存じておりますわ。

 リヒテンシュタイン侯国について、お知りになりたいのでしたら、植田健嗣『ミニ国家リヒテンシュタイン候国』(郁文堂)を、お読みになったらどうかしら。

それでは、ごめんあそばせ。おほほほほほ・・・。

さ〜ら侯爵夫人のよこ槍(2)

 リヒテンシュタイン侯国といえば、現侯爵ハンス・アーダム二世さまの父君でいらっしゃり、名君の誉れ高かった前侯爵フランツ・ヨーゼフ二世さまには、私、さ〜ら侯爵夫人はたいそうかわいがられましたの。夢の中の出来事にすぎないんですけど。おほほ。

 リヒテンシュタインのEEA正式加盟が遅れたのは、加盟の是非を問うた国民投票の結果がスイスとリヒテンシュタインで違ったためですのよ。

 ハンス・アーダム二世さまは、加盟に積極的だったのですが、慎重派の国会議員の意見を入れて、スイスの国民投票が終わってから国民投票を行ったんです。国民投票は、スイスで加盟が否決されたことがわかった後で行われましたが、にもかかわらず、加盟賛成派が多いという結果になって、めでたく正式加盟となったわけですの。

 国民投票は、スイスより少し後といっても同じ1992年に行われたのに、加盟が1995年になったわけですが、それは、スイスが加盟しないで、リヒテンシュタインが加盟するとなると、何と言っても、スイスとリヒテンシュタインは関係が深い国でしょ、ですから、いろいろなことを調整したり、また、そのための国民投票も必要だったりで、クリアしなければならないことが、それはもうたくさんたくさんございましたの。それで、加盟が遅れました。その辺の事情については、日本リヒテンシュタイン協会の植田さまが詳しく説明されていますから。引用させていただきます。

 ・・・リヒテンシュタインが「EEA」に加盟して、スイスが加盟しないとなると、さまざまな問題が生じることになる。・・関税の話を例にとると、スイスとリヒテンシュタインの間ではノー・チェックなので、「EEA」のものがリヒテンシュタインを経由してスイスへ入り、逆にスイスのものがリヒテンシュタインを経由して「EEA」諸国へ流れ込むことが予想された。一例を挙げると、化粧品などもその一つで、「EEA」諸国では認められている成分で、スイスでは禁止となっているものがあり、・・・。
 1994年はスイスとの関税同盟70周年を迎えたリヒテンシュタインだったが、・・・リヒテンシュタインの「EEA」加盟を前提としたスイスとの関税協定の改訂を行い、両国間で合意に至った後、それを「EEA」に提示、承認を得たうえで、リヒテンシュタインでの国民投票にかけて、その関税同盟が合意を得て、「EEA」に正式加盟ということになる運びとなり、その国民投票は95年4月、ついに賛成を決定したのである。

 世界の王国、公国、侯国のお話なら、私、さ〜ら侯爵夫人にお任せ下さいな。殿方好みの難しいお話は存じ上げませんが、裏のお話なら、社交界でいろいろ情報を入手できますのよ。

 それでは、ごめんあそばせ。おほほほほ・・・。