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   3月(サンゲンアジャホ 青年さ〜ら 湖沼国境) 4月 第三のイタリア 七つの海

2003年2月12日 ブルネイダルサラーム国

 連日、更新です。論述添削サボってすみません。やってるんですが、その合間の休憩ということで、大目にみてください。今日は、メガスルドイ(目が鋭い)くんからの疑問です。

疑問:「ブルネイ=ダルサラーム」の「ダルサラーム」は「コンゴ民主」の「民主」くらい書かないといけないものですか?

さ〜らまんのお答え:

 「書け」という指定がなければ、書いたらいけないくらいです。ワタクシが採点官なら、「ブルネイ=ダルサラーム」なんて書いてこられたら、即刻バツにしますね。「生意気だ!」って。

 ついでに言うと、「マケドニア旧ユーゴスラビア共和国」とか、「ベネズエラ=ボリバル共和国」については、後半の「旧ユーゴスラビア」だの「ボリバル」を、絶対に書いてはいけません(きっぱり!)。 ワタクシが採点官なら、「マケドニア旧ユーゴスラビア共和国」とか「ベネズエラ=ボリバル共和国」なんて書いてきたヤツは即刻0点! どころか、マイナス10点を計上しますね。

 そんなことを書くヤツはあぶないヤツに決まっているから合格させるわけにはいかない!と動物的本能で思うからであります。合格させるかどうかの基準は、正解を答えられるかどうかも大事なのだが、4年間、同じ大学の仲間として受け入れていい人間かどうかってぇーのも大事だからね。意味不明のへたくそな文章を書くヤツとか、中身は無内容で刺激的でもないくせにわっけわからん漢字熟語を多用して採点官をケムにまこうとしているような文章を書くヤツなんかも、入学されたら困るから、即刻マイナス100点! 

なお、コンゴ民主の民主とドミニカ共和国の共和国は絶対に書かないといけません。理由はわかりますね。

と、答えてからのひとりごと:

 「生意気だ!」なんて主観で採点してもろたら困りますな。


2003年2月11日 コンゴ盆地とアマゾン盆地の降水量の違い 副題−亜熱帯高圧帯の影響で形成される砂漠−

 たまっている論述添削をほっぽりだして、罪悪感にひたりながら、ひさびさの更新です。今日は、地理のすけ地理太郎くんからいただいた疑問です。

疑問:
 気候について高等学校の地理の範囲を超えているような(と僕は思うんですが)難しいことを問う大学の問題とその解答例を見たら、こんなのがありました。解答例に書いてある「寒流のベンゲラ海流上の低温少雨な南西季節風が低日季に」というところですが、ベンゲラ海流の流れる南大西洋東部海域では、低日季に季節風が、アフリカ大陸に向かって吹いているということでしょうか? 地図帳で調べたんですが、納得がいきません。

問題

 アマゾン川の年間総流出量は、他の河川と比べて圧倒的に多い。これはアマゾン川の流域面積が世界最大で、アマゾン川に次ぐ流域面積を誇るコンゴ川と比較しても1.9倍の広さであることに加え、ほぼ赤道直下を流れるアマゾン川流域は、赤道直下を流れるコンゴ川に比べて年降水量が1000mm程度多い地域が広がっていることによる。アマゾン川流域の降水量が多くなる理由を、コンゴ川流域の降水量がやや少なくなる理由にも触れて、下の語句をすべて使用して、4行以内で述べよ。

  語句: 海流  大陸東岸  低温

解答例らしい:

アマゾン川は大陸東岸へ流下し、暖流の南赤道海流上の高温多湿な空気を、年間を通じて北東貿易風が供給するため降水量が多くなる。コンゴ川は大陸西岸へ流下し、寒流のベンゲラ海流上の低温少湿な空気を南西季節風が低日季にもたらすため降水量が少なくなる。

さ〜らまんのお答え

 ワタクシ、さ〜らまんは地理に弱く、気候にも弱いので、この手の面倒くさい疑問には、原理原則からしかお答えできない。以下です。

解答例にあるような難しい説明をした答案を作らなくていいのです。
ワタクシが採点官で、そんな答案を書く受験生がいたら、内容があっていようが間違っていようが、「生意気だ!」と即刻0点にしますね。

次のように考えてください。

 ・ 大西洋の西部海域は暖流が流れており、水温が高いから、大気への水蒸気の供給量が多い。
 ・ アマゾン盆地へは、この海域から大量の水分を含んだ風が吹き込むから、この盆地はたいへんに雨が多い。


であるからして、
 ◎大西洋の東側海域は寒流が流れており、海水は低温であるから、水蒸気の供給量は少ない。
 ◎コンゴ盆地へは、この低温な海上からそれほど水分を含んでいない風がより暖かな低緯度側に吹き込んで湿度が低くなるから、この盆地の雨はそれほど多くない。

こういうことです。

 海からの風の名称が貿易風か季節風かはどうでもいいことです。このような理解をもとに指定語句を使いながら字数内で答案を作成してください。他の要因もありますが、指定語句を見る限り、これで説明すればいいのです。

ところで、
一般に、亜熱帯高圧帯の中心は海洋上にあり、そこから風が吹き出しますよね。

絵を描いてみましょう。

 縦長の楕円でいいから適当なかたちに大陸を2つ描き、そのまんなかに赤道を引きます。
 海洋上の北半球側と南半球側にそれぞれ亜熱帯高気圧を丸く描く。
 
 そして、それぞれの高気圧の中心から吹き出す風を、コリオリの力に注意して矢印で描いて見てください。


自分が描いた図で、低緯度地方についてだけを見ると、

亜熱帯高圧帯の西側、すなわち大陸東岸へ吹き込む風は、低緯度かつ暖流の流れる暖かい海域から大陸東岸の方へ向かって吹いているでしょう。
逆に、
亜熱帯高圧帯の東側、すなわち大陸西岸へ吹き込む風は、高緯度かつ寒流の流れる冷たい海域から大陸西岸に向かいます。

一般論としてまとめますと、

■暖かい海から吹く風は水蒸気を多く含んでいる。
 湿度の高い空気が、気温の低い高緯度側に移動し冷却されると、(冷たい大気は飽和水蒸気量が少ないから)湿度はますます高くなり、水分は水蒸気でいられなくなって水滴となる。すなわち雲ができて雨が降る。
◆逆に、冷たい海から吹く風は水蒸気をあまり含んでいないから、そいつが温度の高い方へ吹くと雨にならない。
 もっと言えば、湿度が高かろうが低かろうが、低温の空気が、気温の高い低緯度側に移動して暖められると、(暖かい大気は飽和水蒸気量が多いから)湿度はますます低くなって、雲はできないから雨が降るはずがないのだ。

これらは、世界のどこでも通用する話であり、たとえば、
◆は、「亜熱帯高圧帯の影響で雨が降らない」というのと同じ意味です。
■は、北西季節風が暖流の対馬海流が流れる日本海を通過する際に水蒸気の供給を受けることにもあてはまります。


注意
 海岸砂漠の成因を答えるときは、◆のように書いてはいけません。◆は「亜熱帯高圧帯の影響で雨が降らない」という意味で、これは回帰線付近に形成される亜熱帯砂漠の成因です。海岸砂漠の場合は、出題者が求める正解は、◆よりも、寒流の影響による大気安定ですから、そちらを書いてください。

海岸砂漠の成因を問われたら、次のように答えます。

「亜熱帯高圧帯の影響に加え、沖合を流れる寒流の影響で気温の逆転が生じ大気が安定して降雨がみられないため。」

海岸砂漠の成因を書くときは、「亜熱帯高圧帯の影響に加え」を抜かして、寒流の影響だけ書けばたいていの場合は正解です。亜熱帯高圧帯の影響だけでは点になりませんので、その点、ご注意下さい。

このように返答したら、また疑問が来ました。

疑問:ちなみに海流名は書かなくて、寒流って書けば大丈夫ですか?

さ〜らまんのお答え:
 大丈夫です。というより、少なくとも南米側は南北両半球にいろいろあるから、書く方がどうかしている。南米側で書かないでアフリカ側に書いたら、片手落ち(差別語)だ。

と、答えてからのひとりごと:

 「海からの風の名称が貿易風か季節風かはどうでもいいことです。」と答えたが、これは地理をやっている人間にあるまじき発言だな。地理は理科じゃないんだから、寒流か暖流かなんてことよりも、固有の海流名をもっと大事にしなくちゃいけない。反省。

 海流名を書かないで減点されるかもしれないが、まっ、いいや。「どうでもいいことです。」と答えたあとで、おめおめと「書いといたほうが無難ですよ。」なんて未練がましく言えるわけないじゃないか! 受験は勢いだ。疑問に対する返答でだって、勢いってぇ〜のが大事なのだ。


2003年1月20日 スノーウィーマウンテンズ計画の「ズ」ってな〜に?

 今日は、E&E(日々精進)くんからの疑問です。

日々精進くん:
 スノーウィーマウンテンズ計画の「ズ」って何ですか?

さ〜らまん:
 ???。そんなの、マウンテンの複数形で、山地とか山脈という意味に決まってますけど。。。

日々精進くん:
 ということは、スノーウィー山地ってのがあるんですか?

さ〜らまん:
 たじたじ(知らん)。

日々時精進くん:そういう地名がないなら、雪の山々って意味ですかねえ。

さ〜らまん:
 そんなことはないでしょう。スノーウィー川という川があるわけですから。

日々精進くん:
 そんな名前の川があるんですか?

さ〜らまん:
 えっ?(そんなことも入らないのか!) スノーウィーマウンテンズ計画というのは、スノーウィー川流域を中心とする開発計画のことで、導水トンネルの建設はその一環というか目玉です。グレートディヴァイディング山脈の東側を南に流れているスノーウィー川の上流にダムを作って川の水を貯め、その水を、山地の地下に建設したトンネルで、西側の乾燥地域を流れるマーレー川やその支流に流し込んだんですよ。
 グレートディヴァイディング山脈の一部をなすオーストラリアアルプス山脈に、オーストラリア大陸最高峰のコジャスコ山という山があって、スノーウィー川の水源はその辺りなんです。そして、導水トンネルは、コジャスコ山辺りの山々の下に掘られているんです。

日々精進くん:
 あっ、そうだったんですか。ということは、「スノーウィーマウンテンズ」の「スノーウィー」は川の名前ですね。でも、「マウンテンズ」は、山々の下をトンネルでということだから、「山々」とか「山また山」というような意味じゃないんですか?

さ〜らまん:
 それはおもしろい。山また山のマウンテンズですか。スノーウィー川の水を山また山の下をトンネルで導いたから、スノーウィーマウンテンズ計画というのだってことですね。しかし。。。

 というような会話があって、これはこれで計画の概要を理解し覚えやすくていいんですが、なんぼなんでも、「スノーウィー川+山また山=スノーウィーマウンテンズ」では、ジオゴロとしてはいいかもしれないが、うそっぽすぎる。それに、スノーウィーマウンテンズ計画というのは、TVA方式の河川総合開発計画だから、すなわち、多目的ダムを建設しているはずだから、すなわち、目的がたくさんあるはずだから、すなわち、トンネルを掘って導水しただけじゃなく、電源開発とか他にもいろいろやっているはずだから、「スノーウィー川の水を山々の下のトンネルで導いた計画」という意味でありっこない。でも、わたくし、さ〜らまんは、「スノーウィー山地というのがあるのです!」と自信をもって言えなかったので、「しかし。。。」の後を続けることができませんでした。

 で、調べてみましたら、Snowy Mountains Area とか、Snowy Mountains region とか呼ばれる地域があって、そこは、スキーなども楽しめる観光地でもあるみたいですね。そして、そこの開発計画だから、スノーウィーマウンテンズ計画で、英語名は、The Snowy Mountains Scheme というらしい。「スノーウィー山地」でいいと思うが、山地の地名というより地域名みたいだから、無理やり訳すなら「スノーウィー川流域付近の山地地域」とでも訳せばいいのかもしれない。正確なことを知っている人は教えてください。以下に、有用サイトをあげておきます。

 導水トンネルや建設作業風景→SAN JOSE STATE UNIVERSITY ECONOMICS DEPARTMENT

 導水トンネルの断面図入り解説→Australian Academy of  Technological Sciences and Engineering のサイト内

 写真はここにも→Snowy Hydro Com.さまのサイト

   これらの記念コインをほしい人は→ここ か ここ


12月20日 スウェーデン・フィンランドの木材輸入の怪

 今日は、らせる君からの疑問です。らせる君は、ラッセル車のように難関に挑む人なのでしょうが、だから、らせる君なのではありません。

 らせる君は、統計集の細かい部分を見るのが趣味で、当然、統計集のミスもいっぱい発見しているのですが、それだけでなく、統計を見ていろいろ不思議なことを発見しては、なぜですか?と問いを発してくれます。ところが、その疑問たるや、大半は、ワタクシさ〜まんにはわからぬことばかりなので、彼の疑問に対して、さ〜らまんは答えに窮し、困ってしまうのです。困らせるから、らせる君です。

らせる君:木材の輸入のTOP10にスウェーデン・フィンランドが入っているのはどういうコトでしょうか?

 帝国書院の『地理データファイル』によると、木材の輸出入上位国には、同じ国がいくつか輸出でも輸入でも登場しています。

木材の輸出入 (原木・製材・ 薪材) 1999年
輸出国 輸入国









10
カナダ
ロシア
アメリカ合衆国
スウェーデン
マレーシア
フィンランド
ニュージーランド
ラトビア
オーストリア
ドイツ
5,266万立米
3,544
1,854
1,244
1,004
 907
 
737
 737
 660
 656
アメリカ合衆国
中国
日本
イタリア
スペイン
スウェーデン
フィンランド

ドイツ
カナダ
オーストリア
5,342万立米
3,088
2,599
1,323
1,109
1,094
1,073

 897
 886
 852

 このうち、アメリカ合衆国やカナダは国土が広いうえ、経済的にも密接な関係にあるから、互いに輸出入しあっている分がある、ということでカタがつきますが、らせる君が問題にしているスウェーデンとフィンランドについては、なるほど、???です。

 これを見ると、スウェーデンやフィンランドは、両国とも輸出と輸入が同じくらいで、フィンランドに至っては、輸入の方が多い。この表を見る限り、スウェーデンとフィンランドは世界的な木材の輸出国であるという常套句はウソということになってしまいます。

 で、この統計をよくよく見ますれば、原木と製材と薪材の合計じゃ、あ〜りませんか。この2国は薪材の輸出入は少ないだろうから、原木と製材の合計と考えてもいいでしょうね。

な〜んだ、それなら、困らせられることはないですね。で、両国の木材貿易の内訳(農林水産省の海外林産統計:元ネタはFAO)を調べました。

  フィンランド(1999年)千立米   スウェーデン(1999年)千立米
 品目名 輸入  品目名 輸入
 用材丸太  10,160,000  758,000  用材丸太  10,280,000  1,315,000
 製材 289,000  8,292,000  製材 278,000  11,082,000
 製材(針葉樹) 221,000 8,269,000  製材(針葉樹) 138,000 11,060,000
 製材(広葉樹) 68,000 23,000 製材(広葉樹) 140,000 22,000
 単板(ベニヤ板) 9,000 80,000  単板(ベニヤ板) 34,000 15,000
 合板 23,000 939,000  合板 152,000 65,000

 この表からわかるように、両国は、丸太(原木)輸入・製材輸出国なんです。

で、いつから、こういうふうになったかというと、帝国書院の統計を見ると、1982年の両国の木材輸入の欄には「−」が書いてあるから、その頃は、国内の原木を製材に加工しそれを輸出していたのでしょう。とすると、何ゆえに丸太を輸入するようになったか? そして、それは主にどこから輸入しているのか?という疑問が出てまいります。

 そこで、いろいろ調べましたところ、日刊木材新聞社のニュースに、以下の記事がありました。

 欧州最大の製材会社ストラ・エンソ・ティンバ−社はこのほど、ロシアで2つの大型製材工場を建設すると発表した。近年、欧州企業のロシア、バルト諸国への工場設備投資が活発で、当該諸国の豊富な森林資源、低廉な労働コストに着目し、北欧勢を軸に有力社の進出が相次いでいる。特にフィンランド勢は自国内の慢性的な原木高製品安が製材部門収益を悪化させており、その点からも国外投資に活路を見出そうとしている。(14年8月6日付)
 フィンランドの複合林産大手UPMキュンメネ社の木材製品子会社UPMキュンメネ・ウッド・プロダクツ社はこのほど、ロシアのZAOノヴゴロドレスプロムとの合弁で、ロシア西北部20万立方bのWウッド大型製材工場を建設する。UPM社ではフィンランド国内での製材事業収益確保が難しくなり、収益性向上のため、ロシアでの合弁事業を決定したと述べている。(14年5月31日付)

 にゃるほど。国内産原木の値段が高くなったうえ、製材に加工する際の労賃も高いので、最近は、ロシアなど労賃の安い国に進出して製材工場を建て始めているようだ。このことから類推するに、国内産の原木の値が高いので、ロシアやラトビアあたりの安い原木が入手が容易になると、勢い、輸入が増えたのでありましょう。

 また、森林NGOの緑友会事務局の藤井さんというお方が次のようなことをおっしゃっています

ロシアの輸出の半分を占めるフィンランド・スウェーデンは、原木を輸入して製材を輸出していますので、製材貿易量の増加がこれらの国の国内原木だけでまかなわれなければロシアへ影響してロシアのこれらの国への原木輸出が増加してくる可能性もあるような気がしますし、長期的には日本のカラマツ製材・SPF製材輸入関税撤廃の影響での日本向け製材品輸出の増加や、中国への輸出増やも有り得るかも知れないと思うのですが。国内体制の不備や資源枯渇等から、ロシアは急には増大は起こらないという意見もありますが、このあたりもはっきりしない部分があります。

 なるほど、やっぱり、ですね。

で、藤井さまのご発言の中に、ロシアの原木輸出の半分がフィンランド・スウェーデンとありますので、またまた農林水産省の統計でロシアの木材貿易についても調べて見ますと、

 ロシア(1999年) 千立米
品目名  輸入  輸
用材丸太  153,000  27,600,000
製材 11,000  6,428,000
 製材(針葉樹) 4,000  6,125,000
 製材(広葉樹) 7,000  303,000
単板(ベニヤ板) 7,300  13,000
合板 2,700  913,000

 ロシアの丸太輸出量の半分は、27,600,000×1/2=13,800,000です。これがすべてフィンランドとスウェーデンへ輸出されるなら、両国の丸太輸入量の合計、10,160,000+10,280,000=20,440,000の7割近くはロシアからということになります。

というわけで、数字と引用をいっぱい羅列したので、あぁ、疲れた。ここらで一発、違う話をしておわりにします。

フィンランドといえば、北欧の中で唯一、EUの通貨統合に最初から積極的だった国ですが、それはなぜかというと、明治大学に在籍していたとおぼしき清水祐一郎さんの卒業論文とおぼしき論文(単一通貨「ユーロ」導入が与える欧州・日本への影響)によると(大学生さまが論文を公開してくれているおかげでいろいろ勉強になってありがたいことだなあ。でも、おぼしき、という言葉をくり返したように、清水さんがどんな人かは全く知らない。面識のない人を、何の断りもなしに、こんな形でおおっぴらに紹介していいのだろうか? まっ、ネットで公開されているってことは、OKってことだと決めて、紹介します。以下、茶色い字は清水さんの論文に書いてあったことです)、情報通信分野のノキアなど、国際競争力のある大手企業があって、通貨統合参加のメリットが大きいかららしいです。そして、木材加工業など伝統的な産業は通貨統合にはあまり積極的ではなかったようです。製材の多くはEU市場向けだと思うのに、なぜだろうか?というと、清水さんによると、伝統的な産業の主な取引先はロシアやスウェーデンだから、通貨統合に参加するメリットがあまりないからだそうです。輸出はともかく、輸入においては、木材産業は、なるほど、ロシアなどユーロ圏以外との関係が強い。また、日刊木材新聞社のニュースによると、輸出においても、木材産業の目は、EUだけでなく世界に向いていて、日本も製材の輸出攻勢にあっているようです。

 で、清水さまの論文によると、ノキアなど競争力のある大手企業はヘルシンキなど南部に集中し、木材産業は北部に立地しているようです。

 昨年、秋人さんが朋友掲示板で、秋田でワールドゲームズが開催されると教えてくれましたが、なんと、今日の疑問は、このワールドゲームズと関係があるのです。秋田魁新報ワールドゲームズニュースによると、ワールドゲームズ2001@秋田の前は、ワールドゲームズ@ラハティでありまして、このラハティという町には、上記、日刊木材新聞社の記事に出てきたUPMグループ傘下の合板工場「シャーマンウッド」があるのだそうです。この工場の製品のごくごく一部は日本へも輸出されていて、日本など極東へ輸出する際の輸送路はシベリア鉄道と船便らしい。日本に来るときもシベリア鉄道を使うのかな?

 それはさておき、ラハティという町を調べますと、あれ?ヘルシンキのすぐ北にあるじゃん。あっ、そうか、人口の大半は南に集中しているから、ヘルシンキなどフィンランド湾に面している海岸部分が南部で、ちょいと内陸に入ればもうそこは北部ということなのかもしれませんね。

以上、本日は、最後の方、とりとめのないお話になっちゃいました。オチがありませんが、オチがないのは縁起がいいということで、許してください。


12月13日 ツバル水没のホントの理由

疑問 「ツバルとかが海面上昇で水没しそうだって言うのはウソで、地盤沈下がホントの理由」ってのはホントですか?

お答え

 サンゴ礁の成因を考えれば島の沈降は起こっていますが、これまた、サンゴ礁の成因を考えれば、島の沈降よりもサンゴ礁の発達のスピードが速いのだから、地盤沈下によってツバルが水没するという説はにわかには信じられませんが、ひょっとしたら局地的な地盤沈下があるのかもしれないと思いまして調べたところ、それはないらしいです。裏の裏まで考えるなら、もし局地的な地盤沈下があって、それがツバル水没の原因なら、地球温暖化研究のための銭をもらう障害になるから、ないことにしているのかもしれませんが、そんな裏の裏を考える人はよほどのへそ曲がりと言われそうなので、ワタクシも時流に乗って考えないことにします。


11月17日 バノーニ計画のバノーニって何?

疑問   バノーニ計画って何? バノーニって何?

お答え  イタリアの経済発展10ヵ年計画(1955〜1964)の別称で、バノーニは計画策定当時の財務大臣のお名前です。

これだけだと、ちょいと芸がないけど、いいネタも思いつかない。
ならば仕方ない。バノーニ計画の目玉は、経済への国家の介入(混合経済)と南部開発なので、イタリアの南部開発&国家持株会社に関する勉強メモノートを、ペタコと貼り付けておきます。


イタリア南部工業開発の歴史

★農地改革が中心の農業振興策(戦後〜1957年)
  戦後 「新南部主義」と呼ばれる理論のもとに積極的な開発政策を展開。
      cf.1880年代の「南部主義」(メリディオナリズモ)
       「南部主義」:南部が北部に収奪されているから地方自治を拡大しなければならない。

 1946 各種の調査活動を行う半官半民の南部工業開発協会を設立。
 1950 南部開発公庫を創設。
  1957年までは、土地改革を主体とする農業改革が中心の農業振興政策。

★工業化政策による大規模な南部開発(19571970年代)
 1957 南部開発公庫が工業化への支援融資を開始。(1958?)
       国家持株会社に対し、新規設備投資の60%、全投資の40%を南部で実現することを義務
     づける法律が立法化される。

       鉄鋼コンビナート、石油化学コンビナートの建設計画。
 1960年代初め ENIによるジェラの石油化学コンビナート、フィンシーデルに
     よるタラントの最新鋭大製鉄所(
1964年稼働)が建設される。

◎北部にとって南部開発が必要とされた理由
  統合ヨーロッパの強力な一員となるため、国内市場の拡大が必要。南部の貧困状態を解決が課題。
◎約40年間にわたって南部開発を行うことが出来た要因
  南部になされた公共投資の大部分が北部の民間部門によって吸収されていた。

1980年代(特にその後半)の状況変化
 1.1970年代以後、南部に進出した国家資本参加資本の業績が悪化。
 2.EUの経済統合の深化に伴い、南部投資の波及効果の国外流出が見られ始める。
   →1980年代後半から「北部主義」の台頭
 3.EUの通貨同盟参加の条件である財政赤字縮小の必要。
 ◎上記に対する反論
 2について 南部開発は一定の役割を果たしてきた。
 3について 財政赤字の原因は年金、福祉政策であり、地域政策ではない。

★南部工業開発の評価
 ◎ 格差は縮小しなかった(拡大もしなかったが)。
    南部でも、都市周辺や平野部では経済が活況を呈するようになった。
    30年間で、南部の総生産に対する工業の貢献度がわずかに増大:16%→18%
         
南部の就業人口に占める工業の比率は約5%減少!
 ◎ その理由
    国家持株会社参加の大企業による投資で、資本集約的な装置産業で、雇用創出効果があまりなかった。
    雇用を創出したのは南部大都市周辺の軽工業と、一部の自動車組み立て工業のみ。
 ◎ 北部への波及効果
    装置産業の設備・機械は民間部門を主体とする北部へ。
 ◎ 南部の後進性
    採算性の悪い国営企業を主体とする資本集約的な重化学工業と、消費財工業が主体。

★イタリアの国家持株会社
 1933 IRI(産業復興公社)の設立。(大恐慌に対処するため)
 1953 ENI(炭化水素公社)設立。
    創設には、エンリーコ・マッティとE.ヴァノーニがイニシアティブ。
 1954 IRI(産業復興公社)の再定義。
 1955    経済発展10ヵ年計画「ヴァノーニ計画」の発表(〜1964
      ヴァノーニは当時の財務大臣。
      理論的立役者は、IRIの調査部長パスクアーレ・サラチェーノ。
     当時のIRIの基本路線
       @機械・金属工業の振興
       A南イタリアの工業化(例:タラントの製鉄所などの新プラント)。
       B重要事業・新規事業の統制(例:電話網や高速道路=アウトストラーダの建設。

 1956 国家持株省の設置
 1957 IRI系企業の工業連盟から分離。
 1962 ENEL(電力公社)の設立。
 1965 経済発展5ヵ年計画「ピエラッチーニ計画」の閣議承認。
     国民経済的計画と公企業の経営計画の一致を強化する方針。
     まもなく経済危機の時代に入ったため、実効性を持たずに終わる。
     以後、包括的計画は作成されなかった。

 1980
年代 民営化の開始。
 1990年代 民営化の加速。


11月9日 宗教別人口構成

 秋以降、若者掲示板『疑問・発見掲示板』で、たくやんさんが難問をいっぱい提出してくれ、うれしい悲鳴をあげている。本日は、そのひとつ、エチオピアの宗教人口の構成について、検討させていただきます。検討、と書いたのは、恐らく、答えが出ないだろうと、予想されるからです。

たくやんさん
 エチオピアの宗教人口の構成が『地理データファイル』(帝国書院)では、キリスト教コプト派が40%、イスラム教が45%になっているのに対し、『データブック・オブ・ザ・ワールド』(二宮書店)では、キリスト教コプト派が55%でイスラム教が35%になっています。どちらが正しいのでしょうか? 編集の年が違ってもこんなに違う事はないと思うのですが。

 どちらが正しいかと問われても、それぞれの統計集がもとにしたデータの出典が違うのだろうし、出典によって数値が違うのは、調査の方法が違うからでしょう。エチオピアのように統計が整備されていない国の場合は、推計によるのでしょうが、その推計の方法が違うからで、それぞれの方法が理にかなった方法なら、どちらも正しいとしか答えようがないのでしょう。「真実は1つのはずだ!」とおっしゃるかもしれませんが、そーでもないと思います。日本人にはよくあるのですが、たとえば、私の宗教は?と問われると、仏教と答えるときもあれば、神道とこたえなきゃいけないのかな?って思うときもあれば、無神論というべきか?それだと、神を信じない危ない人間と思われてまずいこともあるから、テングリ教とでも答えておこうかと思うときもある。

 それにしても、宗教人口構成の統計は、統計集によりまちまちですね。ちょいと、書き出してみましょう。

帝国書院 二宮書店 古今書院 CIA fact 
エチオピア エチオピア正教40 イスラム45 キリスト教コプト派55 イスラム35 エチオピア正教40 イスラム45 エチオピア正教35-40 イスラム40-50
カメルーン 伝統宗教25 イスラム23 キリスト53 伝統宗教50 イスラム20 キリスト30 伝統宗教45 イスラム20 キリスト35 伝統宗教40 イスラム20 キリスト40
中央アフリカ キリスト50 伝統宗教24  伝統宗教60 キリスト35 イスラム5 伝統宗教60 キリスト35 イスラム5 伝統宗教35 キリスト50 イスラム15
ルワンダ カトリック48 イスラム1 伝統宗教50 キリスト55 イスラム1 伝統宗教44 カトリック48 イスラム1 伝統宗教50 キリスト98.6(カトリック56.5) イスラム4.6 伝統宗教0.1

とやりだしたが、疲れたのでやめた。以下、掲示板でのお答えを転写しておきます。

CIAのワールドファクトブックによると、
Muslim 45%-50%, Ethiopian Orthodox 35%-40%, animist 12%, other 3%-8%
よって、イスラム教のほうが多い。

ところが、エチオピア議会のWebサイトによると、
Ethiopia is a land of enormous ethnic diversity, with people of Semitic, Cushitic, Nilotic and Omotic stock. There are more than 80 ethnic groups and as many language. In terms of religion, Christians and Muslims make up approximately 80% of the population each (Christians being slightly more preponderant), the remaining 20% animists and others. Under the new constitution, religious rights, and the cultural and political rights of all ethnic groups are guaranteed.
と、ありまして、キリスト教の方がちょいとだけ多い。

ついでに、
そのサイトにある地域別統計(1994年センサス。州により1996、1997)によると、
 州      人口  エチオピア正教 イスラム 
Tigray     3,136,267  95.5%   4.1%
Oromia    18,732,525  41.3%  44.3%
Southern…  10,377,028
Addis Ababa  2,112,737   82 %  12.7%
Afar      1,106,383   3.9%  96 %
Somalia    3,439,860   0.9%  98.7%
Gambella     181,862  24.1%   5.1%
Amhara    13,834,297  81.5%   18.1%
Benishangul…  460,459 
Harari      131,139  38.2%  60.3%
Dire Dawa    151,864  34.5%  63.2%

総人口              53,664,421人(A)
うち、宗教構成のわかる州の人口計 42,826,934人(B)
   宗教構成のわからない州人口 10,837,487人(C=A−B)
       エチオピア正教会  23,949,046人(O)
       イスラム教     15,870,893人(M)
以上より計算しますと、
    エチオピア正教会 55.9%(O/B) 44.6(O/A)
    イスラム教    37.1%(O/B) 29.6(O/A)
Cの内訳を考慮に入れてみます。北西部のBenishangul…州をすべてイスラム教徒にし、南部州にはシダモ族など多民族が居住しているがこれらをすべて伝統宗教にして、総人口で割ると、
    エチオピア正教会 44.6%
    イスラム教    30.4%
となり、どーやっても、キリスト教のほうが多い。

というわけで、CIAによるとイスラム教が多めで、エチオピア議会によるとエチオピア正教会(コプト派に由来するキリスト教)が多め、ということになります。

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