以前の「ひとこと」 : 2022年7月後半
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7月16日(土) 結び目のCG、あやとり、他
7月後半の三連休です。今日は比較的涼しいです。
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結び目の表示ソフトを探していたら、Vectorに 結び目の作成と表示 というソフトが公開されていたのです。試してみたら面白かったのでご紹介します。
このソフトウェアは、画面上をクリックしてゆくと、そこに高さのある点を置くことができます。点の高さは円の大きさで表され、円が大きいほど高さが高い(手前にある)ことを示します。マウスホイールを回転させるととで、点の高さを変えることができます。こんな風に点を適当に7つ、置いてみました。
図 1 メニューから「計算開始」を選んで、計算を中断しながらキャプチャしてみました。こんな風に徐々に滑らかになってゆきます。
→ → 図 2a 図 2b 図 2c こんな感じになりました。3次元モデルをマウスで回転や移動、拡大縮小ができます。楽しいです。
図 3 メニューの「設定」で計算精度を上げるとかたちの変化が遅くなります。計算を中断しながら様子を見るときは精度の数字を大きくするのがお勧めです。
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さらに素晴らしいのが、このソフトは点の情報を保存したり読み込んだりできるのです。この「読み込み」機能が楽しいのです。
たとえば、2年ほど前にIntrinsically knotted graph (本質的に結び目のあるグラフ) という話をご紹介したことがありましたが、そのときにこんな図を載せていました。
これは格子点に点があるので、結び目描画ソフトの入力を簡単に作ることができます。テキストは x,y,z 座標をスペースで区切って1行に1点を書けば良いようです。x,y,zの値の範囲は±0.5 くらいにしておくのがよさそうです。上の図から、こんなテキストを用意しました。
-0.2 -0.2 -0.2 0 0.2 0.2 0 0 -0.2 0.2 -0.2 0.2 -0.2 0 0 0.2 0 -0.2 -0.2 -0.2 0これを読み込ませるとこうなりました。
図 4 さっそく計算してみます。
→ → → → 図 5a 図 5b 図 5c 図 5d 図 5e 最後の図を拡大して向きも変えてみました。
図 6 これは楽しいです。過去に線分をつないで表現した結び目をいろいろデータ化して計算させてみたくなりました。
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7月も後半になりましたし、ここ1か月ほど気に入ってずっと飾っているあやとり作品をご紹介します。
1か月前にご紹介したこれにもちょっと似ている気もします。
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hh220616-1a ○
もう1つ軽いトピックを。先日宿泊したタワーホテルの中の構造が面白かったので写真を撮ってみました。(すみません田舎者でこういう建物に慣れていないので面白いのです。) 下の写真1はスイングパノラマで撮ったものです。クリックするとかなり大きな写真になります。
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写真 1 タワーの中央部の吹き抜けの繰り返し構造が面白かったので、手すりからカメラを持った手を伸ばして写真を撮ってみました。もちろん危ないことはしていません。カメラのストラップを手首に掛けて、万一手がすべってもカメラを落とすことはないようにしました。高所から何か落とすというのはたとえ過失であっても罪が重い行為です。1フロアごとにネットも張られていましたが…
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写真 2 あんまりきょろきょろしたり写真を撮ったりすると不審者のように見えるかなと思ったので(きっと監視カメラとかがあるでしょう)、短時間でさっさと済ませました。
<おまけのひとこと>
三連休です。でも今日は業界団体の方との簡単なリモート会議を予定しています。なかなか都合が合わないので、やむを得ずこんな日時になりました。私は今日はひとりでお留守番なので何時でもOKなのですが。
7月17日(日) 結び目のCG(その2)、あやとり、列車遅延
結び目のCGの話とメールで教えていただいたあやとりの話、あとは列車遅延のときの話を書いておこうと思います。
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昨日、3次元座標で点を指定して、その点を結ぶ線分で「結び目」を定義して、それを球面調和関数で滑らかにするというソフトウェアをご紹介しました。このソフトウェアを作られたのは森川浩さんで、数理科学美術館(森川浩、工学社:2005) という本に掲載されているものなのでした。この本、私は持っていました。
座標を指定して線分で順につないで結び目を作る、というのは過去にも何度かやっています。8の字結び目を線分で表す というのをご紹介したことがありました。
8の字結び目 点の範囲が±0.5になるように調整して、こんな点列データを作りました。
-0.05 -0.25 -0.15 0.05 -0.15 -0.25 0.15 -0.05 -0.15 -0.05 0.15 0.05 -0.15 0.25 -0.05 -0.25 0.15 -0.15 -0.15 0.05 -0.25 0.05 -0.15 -0.05 -0.05 -0.25 0.05 -0.15 -0.15 0.15 -0.25 -0.05 0.05 -0.05 0.15 -0.15 0.05 0.25 -0.05 0.15 0.15 0.05 0.05 0.05 0.15 -0.15 -0.15 -0.05これを読み込むと、こんな風にモデルが表示されます。
図 1 [設定] で計算精度を上げて(そうしないとあっという間に変化してしまうのです)、計算を開始するとこんな表示になりました。
図 2 手作業で計算開始・計算中断を繰り返しながら画面をキャプチャして、かんたんなアニメーションにしてみました。
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図 3 計算途中で止めたモデルを回転したり拡大縮小したりしていろいろな方向から眺めてみました。こんな向きが美しいと思いました。
図 2 これは楽しいです。まだまだ遊べそうです。
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あやとり協会の吉田さんから、こんなパターンあやとり作品の写真を送っていただきました。ありがとうございます。中央部分の斜めの格子パターンが特に美しいです。
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JY220711 ほかにもいくつか別の作品の写真もいただいているのですが、特にこれが気に入ったので自分でも取ってみました。少しだけアレンジしてみました。(アレンジしたので hh220717-x という通し番号にさせていただきました。)
少し丁寧に説明してみました。最後の手順7. は吉田さんのjy220711ではやっていないのですね。このあやとりの左右にできる六芒星
のところ(わかりますか?)がきれいだなと思いました。
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もう少し吉田さんのオリジナルに近づけてみました。
吉田さんは最近「四隅の小さな輪の処理」の活用をいろいろ研究して下さっているそうです。とてもありがたいですし嬉しいです。ありがとうございます。
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先週の出張で列車が遅延したときの経緯を、自分の記録のために書いておこうと思います。(特に読んでいただく必要はないです。)
7月12日(火) は10時から16時半くらいまで大阪で打ち合わせがありました。前日の11日(月)に移動して前泊しました。12日の朝はすごい雨で、折り畳み傘をさしていたのですが、ホテルから地下鉄の駅の入り口までほんの2分ほど歩いただけで膝から下がびしょぬれになりました。でも午後にはいったん雨も上がって、気分よく帰れそうでした。
新大阪発17:33の新幹線を予約していました。17:15くらいに御堂筋線で新大阪に着きました。せっかく大阪まで来たので、妻が好きな蓬莱の豚まん(チルド)をお土産に買おうと思いました。乗り換え時間は20分弱くらいあるので、なんとかなるかなと思いました。御堂筋線の改札を出てJR新大阪駅に向かう途中の2Fの蓬莱でお土産を買おうと思ったら、シャッターが降りていて「新幹線構内の蓬莱をご利用ください」という張り紙がありました。
急いで新幹線改札を通ってお店の前に行ったら長い行列ができていて、ちょうど「待ち時間20分」という立札のところまで人が並んでいました。一瞬、並んでみようかどうしようかと思ったのですが、発車時刻まで15分弱、万一乗り遅れると次の中央西線の特急「しなの」に乗り遅れてしまうので、諦めることにしました。絶対「あたり」だとわかっているお土産が買えなくてとてもがっかりしました。迷ったのですが、手ぶらで帰るよりは…と思って「生八つ橋」を買って新幹線に乗りました。
名古屋までは順調でした。(隣席は同じく新大阪から乗車された方で、おそらく同世代と思われる女性だったのですが、席について「大阪で買ったたこ焼きを食べたいのですがよろしいでしょうか?」と聞いて下さったので、「もちろんどうぞ」と御返事しました。) 名古屋駅で500mlのビールを2缶と、200円くらいのちょっとしたカワキモノのおつまみを買って、発車時刻 18:40 の10分前くらいに座席に座って、あと3時間くらいで帰宅できるはずだと思ってビールを飲み始めました。発車した直後あたりで、車内放送で、18時半ころに中央西線の木曽谷の上松町付近で大雨による運転見合わせになっていること、この先どうなるかわからない、というアナウンスが流れました。困ったなと思いましたがとりあえずそのまま乗車を続けることにしました。
途中、中津川までは定刻(到着が19時半くらい)で運転されたのですが、そこで運転見合わせということになりました。車掌さんが一人一人に行き先を尋ねて回りました。 20時半くらいだったか、「運転見合わせ区間で土砂の流出が発見された」というアナウンスが流れ、「復旧には非常に時間がかかる」ということでした。中津川が始発の名古屋行き普通列車が1時間に1本くらいあります。その普通列車の発車時刻が近づくたびに、車内放送で「名古屋方面に戻られる方は○○番線の普通列車をご利用ください、まもなく発車致します」というアナウンスが流れ、そのたびごとに何名かの方々が意を決したように列車を降りてゆかれました。私は「どうしようかなあ」と思ったのですが、最悪車中泊も覚悟して、この際、最後まで粘ってみようかなと思いました。中津川駅の売店で飲み物と食料を調達してきました。
この時点で一応中津川駅周辺のホテルも探してみたのですが、いずれも満室とのことでした。車内放送では「運転再開したとしても、この先どこまで行けるかわからない、途中で運休になるかもしれない」という説明が流れていました。通りがかった車掌さんに「中津川周辺は宿が取れないようですし、この先はさらに宿泊施設を探すのが難しそうですが、かりに運転休止となった場合、明日まで車内に留まらせていただくことは可能でしょうか?」と尋ねたら、「それも考慮します。また、代行バスの手配ということも含めて現在検討中です。」とのことでした。
21時過ぎ、もうだいぶ人も減ったころに「運転再開は23:30ころになる見込みです。状況によっては時間は前後します。」というアナウンスが流れました。この時点で、私が載っていた車両には私を含め3名しか残っていませんでした。
さらに1時間ほどたって、22時半くらいに「もうすぐ発車します。先行する特急が上松町に停車中で、そこで先行する特急に乗り換えていただきます。」ということでした。さらに待って、22:52にようやく中津川駅を発車しました。発車した時点で「この列車は終点の長野駅まで運転する見込みです」とのことで、先行する特急は、私の乗車している特急を待たずに先に進むことになったようでした。
土砂の流出があった区間は徐行運転するでしょうし、塩尻駅から本来乗車する予定だった接続列車はもう無いはずです。塩尻到着が24時半くらいと見込んで、塩尻駅周辺でホテルを探してみました。トンネルが多い区間が過ぎた24時前くらいに何軒か電話してみたのですが、塩尻周辺では見つけられませんでした。1駅乗り越すことにして、松本駅周辺で探したところ、以前一度利用したことのあるカプセルホテルがチェックインが26時までということでした。電話したら快く予約できました。大雨による列車遅延なので、松本に到着できるか確証が無い、という事情を話して、「当日の予約なのにやむを得ずキャンセルになってしまう可能性もゼロではないです」と伝えると「そういう事情なのでもし到着できなければキャンセル料は頂きませんが、26時より前にご連絡だけはいただけますか」とのことでした。ありがたいことです。
結局、松本に着いたのは256分遅れの25:01でした。4時間以上の遅延なので特急料金は窓口で払い戻していただきました。(新幹線乗り継ぎ割引だったので、1,360円でした。)持っていた特急券は名古屋→塩尻だったので、塩尻から松本の区間の特急料金の処理はどうなるのかな、と思っていたのですが、車内でも車掌さんが「名古屋→塩尻と名古屋→松本は特急料金は同じですし、こういう場合なので請求しないはずです」と説明下さった通り、請求はありませんでした。
午前1時半過ぎにカプセルホテルにチェックインし、荷物を整理してロッカーにしまってシャワーを浴びて、ようやく眠りについたのは3時前くらいでした。2時間ほど仮眠して、朝6時過ぎの普通列車で帰宅しました。JRの乗務員さんや駅の窓口の駅員さん、ホテルのフロントの方、皆さん親切で助かりました。何と言っても悪天候の中、保線工事をして現場を復旧し、当日の運転再開をしていただいた方々には本当に感謝です。生活インフラを維持する、というのはとても大切な仕事だなあと改めて思いました。
何よりも良かったのは、蓬莱でお土産を買えなかったのは結果的に大正解だった、ということです。何が幸いするかわかりません。
<おまけのひとこと>
やや不謹慎ですが、今まで遭遇したことのない出来事だったので、ちょっと楽しかったです。終わりよければ…です。
7月18日(月) 結び目のCG(その3)、あやとり
結び目のCGの話とあやとりの話です。三連休最終日、今日も午後の更新ですみません。
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3次元座標の点列を入力するとその点を繋いだ「結び目」を生成し、球面調和関数を計算してくれるソフトで遊んでいます。ずっと前に 2005年3月に、こんな2つの結び目をご紹介して、「どちらが自明な結び目でしょうか?」という問いかけをしたことがありました。
A. B. このうち、自明なほうの結び目の頂点データを作ってCGにしてみました。
→ → → 図 1a 図 1b 図 1c 図 1d アプリケーションの動作を録画してみました。YouTube で unknot No.1 という名称で公開してみました。最後、ちゃんと結び目がほどけて小さな円(トーラス)になります。よろしければご確認ください。
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昨日の8の字結び目も、計算をしたり計算を中断して視点をいろいろ変えてみたりしたところを録画してみました。
こんな風に楽しめるのです。お勧めです。
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すみません、今日のあやとりは取り方を記録するのを忘れて、再現できなくなってしまいました。
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hh220718-1 6月10日にご紹介したあやとり「ナウルの太陽」の90°回転からの発展 から何かやって、最後はタイガーショベルノーズキャットフィッシュの終了処理、ということはわかるのですが…
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「ナウルの太陽」の90度回転の5本指拡張 ○
農民作家の山下惣一氏が亡くなられたそうです。山下氏の本は、1991年の「いま、米について。」 が強烈に印象深かったです。 最近の記事だと、提言:大地に生きる 高まる「小農」の存在感 (農民作家 山下惣一)(農業協同組合新聞:2020年1月9日) が素晴らしかったです。山下氏が「玉砕農業」と名付けておられる農業の近代化・工業化の行く末の話、ロシアの「ダーチャ」という別荘の話(都市住民のほとんどが平均200坪の土地付き別荘を持っていて、週末はそこでジャガイモや野菜を生産しており、自分が食べる分には困らない仕組みになっていること)など、ロシアへの経済制裁の効果についての様々な記事では目にしたことがなかったようなことが書かれていたり、非常に興味深い内容です。ぜひご一読を。
<おまけのひとこと>
結び目のCGのデータづくりに労力を注いでいます。楽しいです。
7月19日(火) 自明な結び目のCG、あやとり
自明な結び目のCGの話とあやとりの話です。
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昨日に続いて自明な結び目をCGにしてみました。2005年5月にご紹介した紙の結び目(その2) です。
⇒ これを3次元座標の点を結んだモデルとして記述してみました。定義ファイル(テキストファイル)を一応公開しておきます。unknot02.txt です。一応昨日の定義ファイルも同じフォルダに置きました。(unknot01.txt)ご覧いただくとわかりますが、1行あたり x,y,z の3つの数値があって、zは高さです。基本は高さゼロで線分を結んでいって、交差部分で少し高くして乗り越える、という作り方をしています。
→ 図 1a 図 1b 上左(図1a)が読み込んだ直後です。水道管の直線パーツと直角パーツで組んだようなかたちです。少し計算を進めると上右のように自然な曲線に近づきます。
→ 図 1c 図 1d 計算を勧めると上左(図1c)のようになりました。このあたりで視点を変えました。(初期状態でこの視点にすると交差の上下がわかりにくいのです。)真ん中の小さな輪、これが解けるのかなと思うのですが、最後まで計算するとするっとほどけます。
(つづく) ○
今日のあやとりです。
手順4. までは、5本指の構えから内側3本指で「ガイアナの星」を取る手順の途中までと一緒です。
「5本指の構え」→内側3本指で「ガイアナの星」→親指・小指を外側に1回転ひねって「タイガーショベルノーズキャットフィッシュの終了処理」 は気に入っているあやとり作品で、よく作っています。
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hh210519-1a hh210519-1b 今日のものはそのアレンジの1つです。
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連休前に、会社の社内SNSの雑談コーナーに、カプセルトイのT4ファージ:マスコット&ボールチェーン が紹介されていました。職場とは別の事業所に派遣応援中の私と同い年の職場の方が、応援先の事業所の最寄りのコンビニのカプセルトイマシンで見つけていくつか買ってみたそうです。バクテリオファージの模型、いいなあと思いました。(下の画像は公式サイトの画像を縮小して載せています。)
雑談コーナーに「いいなあ、私も買いに行こうかな」と返信を投稿しておいたら、「金曜日19時半の段階で、残り2つでした」というチャットが来ました。うーん、どうしようかと思いました。そのコンビニは自宅から車で20分くらい、田舎なら「ご近所」の距離ではありますが、行って売り切れだったら無駄足だしなあ…などと思ったり、天気が悪かったりしてなかなか腰が上がりませんでした。
3連休3日目の昨日のお昼前に、別の用事で出かけたついでにちょっと遠回りして件のコンビニに行ってみることにしました。ありました。ケースをのぞいてみると、2個残っています。この2日半では1つも売れなかったみたいです。さっそく1つやってみました。ハンドルを回転して1つ出てきたとたんに「売り切れ」の札がコイン投入口の前に出てきました。最近のカプセルトイマシンは残量を検出して、「お金を入れたのに品物が出てこない」というトラブルを回避するような設計になっているのですね。
で、出てきたのはこれでした。
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実はこのときまで、このシリーズはバクテリオファージ単体の模型の色違いだけなのだと誤解していたのです。よもやこのような、大腸菌を攻撃している情景模型もあるのだとは想定していませんでした。せっかく行って売り切れだったら残念だなと思っていたのですが、300円払って期待とは違ったものを入手した、というのは完全に想定外でした。
まあでもこれも楽しみのひとつだなあと思います。話のタネにはなりましたし。この情景模型(ジオラマ)も別に悪いというわけではありません。細胞に着陸したファージから遺伝子が細胞内に注入されている様子が模型化されています。良くできていると思います。
ちなみにちょっと検索していたら、生物学概論 I (物部キャンパス)2008/10/14 の質問への回答 というページがありました。面白いです。
<おまけのひとこと>
今日は社員証の写真撮影があります。ある意味そのためだけに出社するようなものです。
7月20日(水) 自明な結び目のCG(その3)、あやとり
自明な結び目のCGの話とあやとりの話です。
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昨日に続いて自明な結び目をCGにしてみました。2005年5月にご紹介した紙の結び目(その3) : Goeritzの結び目 です。
Goeritzの結び目 これも定義ファイル(テキストファイル)を公開しておきます。unknot03.txt です。需要はないかな…
この定義ファイルを読み込んで、CGを計算してみました。
→ → 図 1a 図 1b 図 1c 最後のほうになるとこんな風にかたまってきます。この後しばらく計算すると絡みは無くなって小さなトーラス(自明な結び目)になります。
図 2 このくらいの状態でこの向きにしてみると、なんだかあやとり作品のようにも見えます。
図 3 「Goeritzの結び目」という創作あやとりを作ったら、ごく一部の人には受けるかもしれないな、と思いました。
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今日のあやとりです。今日も「5本指の構え」→内側3本指で「ガイアナの星」→親指・小指を外側に1回転ひねって「タイガーショベルノーズキャットフィッシュの終了処理」のアレンジです。
ぱっと見で「ケルトのタペストリー」に似ている気がします。
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2週間ほど前、お刺身を買った時に「つま」が残ったので、以前からやってみたかった「大根もち」を作ってみました。
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お刺身の下に敷かれていた大根の千切りをさっと洗って少しだけ包丁でざく切りにして、適当に片栗粉を混ぜて塩を少し混ぜて、フライパンに油を敷いて焼きます。(実際にはほとんどの工程を妻がやってくれました。)想像以上に美味しくて気に入りました。またやりたいと思いました。
<おまけのひとこと>
今日は重たい会議が多くて大変です。
7月21日(木) あやとりの結び目のCG、あやとり
あやとりのCGの話と創作あやとりの話です。
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昨日のGoeritzの結び目を滑らかなCGにしてみたものを見て、「あやとり作品のようだ」と思ったのです。あやとりは1本の紐の輪で、数学的には「自明な結び目」です。これをCGにするのは大変そうですが、面白そうです。最初にやってみたのは先日 「Qの構え」と呼ぶことにしたこのかたちです。
こんな風に点を配置して結びます。
図 1 少し計算を進めると、いい感じに滑らかになりました。
図 2 他のあやとりでもやってみたくなりました。
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今週ご紹介している一連のあやとりと類似の創作あやとりです。
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hh220721-1
- 5本指の構え
- 人差し指の輪を中指の輪の下から上へつまみ出し、
手前へ半回転ひねって人差し指に掛け直す- 薬指の輪を中指の輪の下から上へつまみ出し、
向こうへ半回転ひねって薬指に掛け直す- 中指の輪を外す
- 親指・小指を外側へ1回転ひねる
- タイガーショベルノーズキャットフィッシュの終了処理
糸を強く張ると中央の円形の部分の左右がまっすぐになって印象が変わります。
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図書館で 地図帳の深読み(今尾恵介、帝国書院:2019)という本を借りてきて読みました。
これ、とてもいいです。まえがきの「地図帳はおもしろい」の中にこんな一節があります。
各地で出会う地図とは直接関係のない業界の人たちが、「地図といえば、中学校の頃に地図帳で地名当てクイズをやりました」という経験を、まるでお約束であるかのように披露してくれる この遊び、小学校高学年のときに社会科の授業の冒頭にやるのが楽しみでした。私は誰かとこんな話をしたことがなかったので、多くの人がこの遊びの経験があるということをこの本を読んで知って驚きました。
この遊びというかゲームは「地図当て」と呼ばれており、まず全員が地図帳の同じ見開きページを開きます。この見開きの中にある地名が出題され、それがどこにあるのか、どの都道府県にある地名なのかを最初に答えた人が勝ち、というルールでした。目を凝らしてじっくり地図の中の地名を探す、という良い訓練になっていたと思いますし、面白い言葉になっている地名とか、難読地名とかをこの遊びの中で覚えていった気がします。
この「地図帳の深読み」で語られる深読みの話題は多岐にわたり、どこを読んでも面白いです。お勧めです。続編も出版されているようで、読んでみたくなりました。
<おまけのひとこと>
地図は本当に面白いですね。
7月22日(金) あやとりのCG(ナウルの太陽、ガイアナの星)、創作あやとり
あやとりのCGの話と創作あやとりの話です。
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あやとりのCGを作るのが楽しくて、簡単なものから少しずつ作ってみています。よく似た2つのあやとり、「ナウルの太陽」と「ガイアナの星」のCGを作ってみました。
図 1 : ナウルの太陽 図 2 : ガイアナの星 これをどのように設計しているかというと、下のように点と直線であやとりのパターンの射影図を作ります。頂点のx,y座標を決めます。
図 3 :「ナウルの太陽」のCGの設計図 このあやとりの場合、上下左右に対称なので第一象限の座標値だけ入れています。外周の線の高さ(z値)をゼロとして、それより上(手前)ならプラス、下(向こう)ならマイナスにします。頂点のところで高さが変わる場合、x,y座標は同じでzだけが異なる短い垂直な線で結んで高さを変えます。パターンによっては直線の途中で高さを変えるための中継点を設ける必要がある場合もあります。
上記の設計図から直線で結んだ「ナウルの太陽」の演算開始直後のCGです。
図 4 : 「ナウルの太陽」のCG 射影図を描いて、頂点座標を決めて、定義ファイルを作って、CGを計算します。けっこう時間がかかりますが楽しいです。
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以前にもご紹介している気がするあやとりです。
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hh220722-1
- 5本指の構え
- ビヤトエイディオウィナゴの処理
(人差し指と薬指を外して3本指の状態まで)- 全ての指の輪を向こうへ1回転ひねる
- 小さいアムワンギヨの終了処理
わりときれいに取れたかなと思います。
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100円ショップのダイソーでこんな知恵の輪があったので買ってみました。
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難易度は[初級][中級][上級]のうちの[上級]だったのですが、意外と簡単でした。
<おまけのひとこと>
今、疲れているときに出る、視野の中にフリッカーのようなちらつきが見える状態になっていてちょっと不便です。極力目を休めるようにしようと思います。休ませるべきなのは目だけではない気もします。
7月23日(土) 図形の問題、創作あやとり、車窓写真
すみません週末なので午後の更新です。
○
こんな図形の問題を見かけました。
小さな円の半径が2のとき大きな円の半径は? 合同な小さな円が2つ接しています。それに対して合同な大きな4つの円が図のように接しています。小さな円の半径が2のとき、大きな円の半径を求めなさい、という問題です。
これと似た話を以前ご紹介したことがありましたが、細かい計算についてはコメントしてませんでした。
(つづく) ○
気に入ってよく取っているあやとりに「四隅の小さな輪の処理」を加えたものです。
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- 5本指の構え
- 内側3本指で「ガイアナの星」
- 中指を外す
- 四隅の小さな輪の処理(2つ隣)
- 親指・小指を外側へ1回転ひねる
- タイガーショベルノーズキャットフィッシュの終了処理
あやとり協会の吉田さんが、昨日のあやとりを「ビヤトエイディオウィナゴの処理」のかわりに「四隅の小さな輪の処理」にしたものの写真を送って下さいました。ありがとうございます。この2つは糸の交差の上下が違うところがありますが、射影図としては同じになるのでほぼ同じ印象の作品になります。でも吉田さんは「四隅の小さな輪の処理のほうがかたちがきれいに決まるような気がする」とおっしゃっています。確かにそうかもしれません。装飾の仕方によっては「ビヤトエイディオウィナゴ」のほうがきれいになる場合もあると思います。(主観です。)
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今日の午前中は、10日前に足止めをくった中央西線に再び乗車していました。今回は定刻通りでした。午前中の列車だったので、木曽福島の近くの景勝地の「寝覚ノ床」付近で車内でアナウンスがありました。これを聞くのは久しぶりです。たまたま窓側の席だったので写真を撮ってみました。
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拡大→ ![]()
右は、同じ写真の中央部分を切り出して拡大した(というか左を縮小した)ものです。いいタイミングでシャッターを切ることができました。
<おまけのひとこと>
朝ごはんをたくさん食べてきたのでお昼はパスです。
7月24日(日) 図形の問題(その2)、あやとりのCG、あやとり手法「テレビ展開」
今日は主にあやとりの話です。
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昨日、こんな図形の問題をご紹介しました。
小さな円の半径が2のとき大きな円の半径は? 以前、「二種類の大きさの円による平面の敷き詰め」という論文をご紹介したことがありましたが(5年くらい前だったと思います)、これはそのパターンの1つです。
図 1 一応解説の図を作りました。こちらです。(別窓で開きます。)ご覧になりたい方はどうぞ。
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あやとりの結び目のCG、せっかくなので立体的なあやとり作品に挑戦してみたいと思ったのです。最初に結論を述べますが、今日は失敗談です。
立体的なあやとり作品はたくさんありますが、シシドユキオさんのPolyhedron IIIa というあやとりがなんとなくCGとは相性が良いのではないかと思ったのです。以前ご紹介したのとは別の、六面体の骨格がもう少しわかりやすい写真を引っ張り出してきました。
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“Polyhedron IIIa”
Shisihdo, Y (1989)この写真を見ながら3次元空間で頂点と直線のモデルを考えようと思いました。直交座標系の図が欲しくなったので、鉛筆で描いてみました。
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図 2 こういう図を描くのは、普通のPCはもちろん、タブレット端末でも私はまだうまくできません。この図を見ながら頂点の座標を拾ってゆきました。ちょっと計算を進めたところです。
図 3 ところが、計算を進めていったらこんな結果になってしまいました。
図 4a 図 4b これ、自明な結び目ではなく、三葉結び目でした。最初に手描きで描いた図が間違っていたのでした。うーむ・・・
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先月、さいとうたま氏のあやとりの本からテレビというあやとり作品をご紹介しました。このあやとりの最後の操作が面白かったので、これを勝手に「テレビ展開」と呼ばせていただいて、少し実験してみています。
この「テレビ展開」を使った創作あやとりを明日以降いくつかご紹介します。
<おまけのひとこと>
平面的なあやとり作品のCGをご紹介する前に立体的なあやとり作品のCGの話を書いてしまいました。
7月25日(月) 数字の組み合わせ問題(その1)、あやとり、他
数字の問題とあやとりの話です。
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今日はグラフの頂点に数字を配置する問題のご紹介です。ここでいう「グラフ」とはグラフ理論のグラフで、いくつかの頂点を線(辺)で結んだもののことです。
グラフの頂点に数字(整数)を入れ、頂点を結ぶ辺には辺の両端の数字の差を割り当てることにします。例えば下の図1では3頂点のグラフ(グラフの位数が3である、と言います)に {0,1,3} の数字を入れています。これは辺の数が3(グラフのサイズが3である、と言います)のグラフで、位数3の完全グラフ(全ての2頂点を結ぶ辺が存在するグラフを完全グラフと言い、位数3の完全グラフはK3と表示します)です。この辺にルール通りに頂点の差を記入すると{1,2,3}になっています。
図 1 辺の値は「差」なので、全ての頂点に同じ数を足しても結果は同じになります。そこで、頂点のうち一番小さな数はゼロということに決めておくことにします。ちなみに頂点の数字は {0,2,3} でも辺の値は {1,2,3} になります。
では、4頂点の完全グラフ K4 で、辺の値が {1,2,3,4,5,6} になるように頂点の値を決められるでしょうか?
図 2 さらに、頂点の数が5になったらどうでしょう?
図 3 この問題、7/22(金)〜7/23(土) に鉄道で移動中に考えていた問題です。最初は頭の中だけで考えていたのですが、手帳を取り出してメモをしながら考えました。
(つづく) ○
昨日の「テレビ展開」というあやとり手順を試してみています。今日はシンプルなかたちです。
このかたちを作って下さいと言われたら、やや「あやとり手法」っぽくないのですがこんな風に作れます。
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始めの構えから親指・小指どうしを結ぶ糸を巻き付けて「川」をつくる ![]()
右親指と右小指に輪をつくる ![]()
右親指と右小指を結ぶ内側の糸を半回転ひねって左親指と左小指にかける 上の2つめの手順の図を見ると、左手側でも同じことがやりたくなります。
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hh220725-2 ちょっとシンプルすぎるかな。
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少し古い本ですが、昨日、F.クリックの「生命 〜この宇宙なるもの〜」(中村桂子訳:思索社(1982))を読みました。非常に面白い本でした。
生命とは何か、生命はどのように「生まれた」のかを科学の思考法で丁寧に議論しています。現在、地球に生命が存在しているのは事実ですが、それは宇宙全体のなかでどのくらい珍しいことなのか、それともありふれたことなのかを可能な限り定量的に議論をしようとしています。この議論には証拠が足りないので、どうしても推測値がたくさんでてくるのですが、クリックはもともと物理学者なので、真摯かつ謙虚に論理を積み重ねていっており、説得力がある議論が構築されています。
この本で語られているのは、「地球の生命の源は地球以外の宇宙から意図的にもたらされた、という仮説は現時点では科学的に否定することはできない」ということです。その説を声高に主張しているわけではありません。地球の誕生から現在に至る40億年くらいの出来事を現在知られている限りの情報に基づいて考察し、その環境下で生命が誕生することができたのはなぜかを現在の科学ではきちんと示せていないことを語り、それがゆえに「地球の歴史の中で生命が誕生した」ということが事実だとして、それがどのくらい稀有なことなのか、我々はまだ示すことができないということが述べられます。
とすると、地球よりももっと生命の誕生の条件が良い環境というのが宇宙の中に存在した可能性は否定できず(それがどんな条件なのかすら我々にはまだわからないのですが)、そういった「より良い条件」の下で発生した生命が地球にもたらされた、という可能性は現時点では否定できないことが語られています。
下手なSF小説などよりよっぽど面白い議論が展開されています。こういった20世紀の偉人の本、クリック以外にもたくさんありますが、改めて読み直してみたくなりました。今なら若いころに読んだときよりも多少は知識も増えているでしょうから(もう減り始めているかもしれませんけれども)、以前よりももっと面白く読めるのではないかなと思いました。
<おまけのひとこと>
ちなみにクリックの本は book-off で220円で買いました。申し訳ない気分です。
7月26日(火) 数字の組み合わせ問題(その2)、あやとり
数字の問題の話のつづきとあやとりの話です。この直後に、昨日の問題の答を書いています。
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頂点と辺で構成されるグラフの頂点に数字を配置し、辺には両端の頂点の数字の差を当てはめたとき、辺の値が1,2,3,… となるグラフについて考えています。例えば3頂点(位数3のグラフ)だったらこんな解がありました。
4頂点(位数4)の場合、最大で6本の辺が考えられます(位数4の完全グラフ:K4です)。この場合、辺の値が 1,2,3,4,5,6 になる解があります。
図 1 では、位数5だったらどうなるかというと、辺の本数は最大で10です。でも残念ながら辺に 1,2,3,…,9,10 の値を割り当てられる頂点の数字の集合は存在しません。辺を1本消して、1,2,3,…,9 が1度ずつ現れる位数5、サイズ9のグラフは作ることができました。
図 2 「辺の値が 1,2,3,…,9,10 になる位数5の完全グラフK5の頂点の数字の組は存在しない」と言い切れるのは、この問題の別表現で証明されているためです。
○
今回、この問題を考え始めたのは、Ed Pegg Jr. 氏の Facebook にこんなグラフが載っているのを見かけたのがきっかけでした。(図は自分で作り直しています。)
The 63 pairs of vertices not connected have differences from 1 to 63. (Ed Pegg Jr.) このグラフには14の頂点があります。このグラフの辺で結ばれていない2頂点の差を調べると、1,2,3,4,…,62,63 が1度ずつ現れるのです。抜けもダブりもありません。これが本当か、調べてみるだけでも面白かったのです。皆さんならどうやって調べますか?
(つづく) ○
昨日の「テレビ展開」というあやとり手順を使ったシンプルなあやとりに、少し変化を加えてみました。
手順の2. と 3. を追加しました。今までご紹介してきたものとはちょっと雰囲気が違います。なかなか面白いです。
<おまけのひとこと>
先月、タングルの情報をいただいたCMYキューブの宮崎さんから、昨日のクリックの「生命」の話にメールでコメントをいただきました。小惑星探査機が持ち帰ったサンプルの中からアミノ酸が見つかったという話(生命の起源は宇宙から?仮説を後押し リュウグウの砂からアミノ酸)を思い出しました、という内容でした。嬉しいです。ありがとうございます。
7月27日(水) 数字の組み合わせ問題(その3)、あやとり
数字の問題の話のつづきとあやとりの話です。
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昨日、こんな図をご紹介しました。
The 63 pairs of vertices not connected have differences from 1 to 63. (Ed Pegg Jr.) これは、このグラフの辺で結ばれていない2頂点の数字の差を調べると、1,2,3,4,…,62,63 が1度ずつ現れるというものでした。全ての頂点の数字の差を一覧表にしてみました。グラフの辺で結ばれているマスは黒く塗りつぶしています。
絶対値を取っているので対称行列になっています。対角線から右上の三角行列の中の白いマスに、1,2,3,4,…,62,63 があることを確かめてみて下さい。近い数字が近くにかたまっているところが多いです。なぜでしょう? (順にみていった時、最初25が見つからなくて焦りました。)
上の図のグラフは位数(=頂点の数)が14です。全ての頂点の次数(その頂点から出ている辺の数)は4ですから、このグラフのサイズ(辺の数)は14×4÷2=28です。一方、位数14の完全グラフK14のサイズは 14×13÷2=91 です。従って、このグラフの2頂点の間に辺が無いものの組み合わせの数は 91 - 28 = 63 です。なるほど、と思いました。
このグラフが何がすごいのか、何が面白いのか、どう一般化できるのかを考えていくうちに、昨日までにご紹介したシンプルな問題になったのでした。
(つづく) ○
「テレビ展開」というあやとり手順を試す中で「これは面白い」と思ったのが今日ご紹介するあやとりです。一昨日、昨日のあやとりとよく似た手順です。昨日までの記述を少しまとめて手順の記載をシンプルにしました。
斜めに交差する3本ずつの平行線が美しいと思います。もう少し短い糸でも取ってみました。(相対的に紐の太さが太く感じられます。)
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hh220727-1b どちらがお好みでしょうか。
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先週の出張に、脳はなぜ「心」を作ったのか ─「私」の謎を解く受動意識仮説(前野 隆司、ちくま文庫:2010)、とその続編「錯覚する脳」を持って行って久しぶりに読み返してみました。オリジナルの論文は、日本ロボット学会誌のロボットの心の作り方 ―受動意識仮説に基づく基本概念の提案―(前野隆司、日本ロボット学会誌 23巻(2005)1号,pp.51-62) で読むことができます。(日本ロボット学会誌のバックナンバーは、1年以上前のものは無料で公開されています。)
改めていろいろ調べてみると、「受動意識仮説」に近い概念は他にもいろいろ語られているようです。松岡正剛の千夜千冊 というすばらしいサイトがありますが、その中に、意識は傍観者である 脳の知られざる営み(デイヴィッド・イーグルマン、早川書房:2012) とか、心の社会(マーヴィン・ミンスキー、産業図書:1990) というページがあって、とても充実した内容です。
「心の社会」は持っていたはず、と思って本棚を探したのですが見当たりませんでした。イーグルマンの「意識は傍観者である」は知りませんでした。これも読んでみたい本です。ミンスキーの「心の社会」、改めて読み直したいなと思いました。
<おまけのひとこと>
意識や心の問題にについて語ろうとすると時間がかかります。言いたいこと(書きたいこと)はあるのですが、今日は本の紹介に留めることにしました。
7月28日(木) 数字の組み合わせ問題と目盛りの消えた定規の問題、あやとり
数字の問題の話の最終回です。それとあやとりの話です。
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今週は、頂点を線(辺)で結んだ「グラフ」の頂点に数字を入れて、それぞれの辺にその両端の頂点の数字の差を当てはめたとき、辺に現れる数字が 1,2,3,… のように1から順番に全ての数字が現れるようにしたい、というパズルというか問題をご紹介してきました。すでにお気付きの方もいらっしゃるかと思いますが、実はこれは「目盛りの消えた定規の問題」という問題の別表現だったのでした。
一番シンプルなこのグラフの場合、対応する定規は図1のようになります。
{0,1,3} のグラフ 図 1:長さ3の定規 0と3が定規の両端、1が唯一の目盛りで、これで1,2,3が測れます。(両端を含めて目盛りの位置は3か所、と数えます。)
長さが6、内側の目盛りが2つのときは 1,2,3,4,5,6 が測れます。
{0,1,4,6} のグラフ 図 2:長さ6の定規 目盛りが3つ(両端を含めて5つ)の場合は、1,2,3,4,…,9までしか測れません。この例の場合、3 が2か所に現れてしまっています。
{0,2,5,8,9} のグラフ 図 3:長さ9の定規 この目盛りの位置、右から読むか左から読むかで二通りの表現ができます。グラフで表示すると下のようになります。この2つは同じ図3の定規のグラフ表現になっています。
そもそも、今回の考察のきっかけになったのがこのグラフでした。
The 63 pairs of vertices not connected have differences from 1 to 63. (Ed Pegg Jr.) このグラフの頂点に現れる最大の数字が63です。両端の0と63をのぞいた12の数値を長さ63の定規の目盛りとして刻んでみると、こんな図ができました。
図 4:1,2,3,4,…,62,63 が測れる定規 この定規で1から63までの全ての長さが測れるはずです。実用性は全くありませんが。この定規の上の数字の分布を見ていると、なかなか面白いです。
なお、この「目盛りの消えた定規の問題」とよく似た概念がゴロム定規(linkはwikipedia)です。ゴロム定規のほうは、2つの目盛りの間の距離が全て異なる、というのが定義ですので、上の図3や図4のように同じ値が出てくるものはゴロム定規ではありません。全ての長さが測れるゴロム定規を「完全ゴロム定規」と言いますが、目盛りの数が両端を含めて5つ以上の場合、完全ゴロム定規が存在しないことが証明されているそうです。なので図3のようなグラフで、1,2,3,…,10 になるものは存在しない、と明言できたのでした。
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伝承あやとり作品に「たくさんの星」という美しいあやとりがあります。このあやとりの変形はいろいろと伝承されているのですが、自分でも少し装飾を加えてみました。まずは簡単に、中央の交差を絡みに変えてみました。
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sf220728-1 hh220728-1 「たくさんの星」
- 人差し指の構え
- 左右の人差し指の輪を交換する
- 「たくさんの星」
これは多くのあやとりに適用できるテクニックです。
<おまけのひとこと>
先週末の出張の帰りの列車の中で、グラフの問題が目盛りの消えた定規の問題と同じものだと気が付いて嬉しくなったのです。面白い、と思っていただけたら嬉しいです。
7月29日(金) ぴかるーん、あやとり
画像加工ソフトの話とあやとりの話です。今日は時間がないので簡単に。
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先日の結び目のCG(これもまだ未紹介のストックがあります)のソフトを公開していただいている森川浩さんのソフトで、ぴかるーんというのがあって面白かったのです。こちらに解説記事(解説記事の日付が25年くらい前です!) がありました。
→ 処理前 処理後 様々な使い方できるソフトで面白いです。最近はソフトウェアの公開というと、Githubでオープンソースとして公開するとか、Android端末向けにアプリとして公開するとかが主流で、昔からのPC向けのフリーソフトというのはもはやマイナーなのだと思います。
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あやとり「たくさんの星」のちょっとした変形です。
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hh220729-1 hh220729-2
- 人差し指の構え
- 親指・小指を外側へ1回転ひねる
- 「たくさんの星」
- 人差し指の構え
- 全ての指を外側へ1回転ひねる
- 「たくさんの星」
うーむ、いまひとつかな。
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昨日は会社に出社したのですが、帰りが大雨で大変でした。会社の駐車場を出て、最初の信号機を曲がって高速道路の入り口の交差点に近づくと、その信号機は動いておらず、土砂降りの雨の中、お巡りさんが交通整理をしていました。
高速道路は制限速度が50km/hになっていたのですが、ワイパーを最速にしても視界の確保が難しいくらい強い雨で、気を遣う運転で疲れました。普段は走行車線を走っている大型の長距離トラックが、追い越し車線側を通常の制限速度(80km/hとか100km/hとか)で走行していて、追い越されるときに路面に溜まった水が飛んできて視界がさらに悪化して怖かったです。長距離トラックは慣れているのでしょうし、何より遅延が許されないのだろうなと気の毒にも思いましたが、事故がないといいなと思います。
高速道路を降りて一般道で自宅に戻る途中、左折する交差点でちょうど交差点に進入したあたりで雷光と落雷の音があったとたんに信号機が消えてしまってびっくりしました。そのままその交差点を過ぎて、次の信号も消えていたら嫌だなと思ったのですが、その後の信号機はちゃんと動いてくれていました。ひどい雨でした。
<おまけのひとこと>
来週は今週よりも出社回数が少なくて済むといいなあと思っています。
7月30日(土) 人間の視覚情報処理に関する研究
20年ほど前の脳研究の論文のご紹介です。日曜日の午前中に2日分まとめて更新しています。
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先日、脳はなぜ「心」を作ったのか ─「私」の謎を解く受動意識仮説(前野 隆司、ちくま文庫:2010)、という本を読み返したということを書きましたが、この本で紹介されていた研究の元論文を見ることができたので、その簡単なご紹介をします。カリフォルニア工科大学の下條信輔先生の1999年のご研究のManifestation of scotomas created by transcranial magnetic stimulation of human visual cortex(人間の視覚野の磁気刺激によって引き起こされる暗点の症状:Nature Neuroscience, Vol.2, No.8, 1999) です。
この研究は、人間の脳の視覚情報処理の邪魔をしたときに、その人には何が見えるのか(どんな認知が生ずるか)を実験することで、脳の視覚情報処理の仕組みを調べようというものです。言ってみればむりやり錯視現象を起こすのです。以下、上記の論文から図を引用させていただきながら説明します。
まず、被験者の後頭部の脳の視覚野付近に磁気コイルを設置して、局所的に脳の情報処理を妨害する仕組みを準備します。(被験者をやるのはちょっと怖いですね。もちろん人を実験対象とする研究は、その安全性や倫理性を厳しくチェックするルールがあります。)
Fig.2a of the above paper(Shimojo et.al) 脳の視覚情報処理の仕組みは昔から研究が進んでいて、網膜像が脳の一次視覚野→二次視覚野→三次視覚野と順に送られて、それぞれの階層(視覚野)で局所的な情報処理が行われていると考えられています。この仕組みを人工的にまねたのがニューラルネットワークです。(かなり乱暴な説明です。)
脳の低次の視覚野では、情報はまだ網膜像と同じように二次元にマッピングされています。どういうことかというと、網膜の中央付近だったら一次視覚野のこのあたり、網膜の右下付近だったら一次視覚野のこのあたり、というように網膜像の位置関係が保存されているのです。磁気コイルで視覚野の一部分の活動を妨害すると、妨害された視野の領域が「見えなく」なるのだそうです。下の Fig.3 は、提示する刺激パターンによってマスクされる(見えなくなる)領域のかたちが縦長の楕円になったり横長の楕円になったりすること、またその理由についての考察が説明されています。
Fig.3 of the above paper(Shimojo et.al) 視覚野では「側抑制」という神経回路網の仕組みがあって、画像処理で言うとエッジ強調のような、色や明るさの変化を敏感に感じる構造になっています。(こんな機能が進化による選択によって作られたことに感動します。)その仕組みがあるため、縞模様を提示しると本来は磁気コイルで妨害される領域はほぼ円形になるはずが、縞模様の向きによって縦長の楕円になったり横長の楕円になったりすることが説明されています。
面白いのはここからです。下のFig.5 で、a,b,c の3つの実験の結果が示されています。いずれも横軸は時間です。実験a は、被験者に示す視覚刺激が「赤色」→「縞模様」→「赤色」、実験b は「赤色」→「縞模様」→「緑色」、実験c は「緑色」→「縞模様」→「赤色」です。問題は、磁気コイルで妨害されて縞模様が見えなくなった領域に見える色です。
Fig.5 of the above paper(Shimojo et.al) 素朴に考えると、縞模様が見えなくなった穴の部分は「何も見えない」か「それ以前に見えていた色が見える」気がします。ところが脳は、縞模様が見えなくなった部分を、時間的には後の刺激である色、実験bなら緑、実験cなら赤で補っているのです。驚くべき実験結果です。
脳の視覚情報処理の仕組みは、視野の中に見える様々な局所的な情報(手がかり)を統合して、最も「実際にありそうな姿」として認知のイメージを作り上げます。この実験は、時間的にずれた手がかりからも、脳がなんとか「ありそうな姿」を合成して作り上げているのがとても面白いのです。
実験b と実験c を行っているのは、提示する時間順序がこの現象を支配しているのか、それとも赤とか緑という色の認知のほうが支配的なのかを区別するために行われています。色の認知は四次視覚野で行われているそうなので、より高次の脳の部位でいろいろな視覚の時空間情報を統合するプロセスの中で何が起こっているのか、この実験から推測することができます。
こうした、後から提示した刺激(この場合は最後に提示する色)が前の刺激(この場合は縞模様)の認知に影響する、というのは純粋な物理現象だとすると因果律に反するように見え、直観に反するので非常に奇妙に思えます。視覚や聴覚の心理実験では「マスキング現象」と言って、2つの刺激を提示したときに片方しか認知できない(一方がもう一方の認知を妨害する)という現象を活用することがよくあります。
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先日の「目盛りの消えた定規の問題」の話、
1,2,3,4,…,62,63 が測れる定規 少し検索してみると、プログラムを書いて探索している、ソースコードを公開して下さっているページがありました。目盛りの消えた定規、パズル「目盛りの消えた定規」について です。2つ目のページには「その2」という続きの話があって、演算を高速化するアルゴリズムについて語られています。パズルを計算機で解くアルゴリズムに興味がある方には面白いと思います。
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7月30日(土)は10時から車の12カ月点検があってディーラーに持ってゆきました。1時間半程度かかるということだったので、炎天下、徒歩で近所のお店を少し回ってみました。いつも愛用している市販の皮膚の塗り薬が終わってしまいそうだったのでまとめ買いしました。(なぜかイオンの薬局コーナーでしか見たことが無くて、いつもそこで買っています。)リサイクルショップものぞいてみて、新しめの23インチのディスプレイが1万円弱くらいだったり、サイレントヴァイオリンのセット(ただし内蔵アンプが呼称している)が2,900円だったり、心を惹かれました。サイレントヴァイオリン、練習用に良さそうです。でも買いませんでした。
<おまけのひとこと>
午前中に出かけたため、更新が間に合いませんでした。お昼はついお酒を飲んでしまって、結局土曜日に更新するのは断念しました。すみません。
7月31日(日) ペンシルパズル「ろーま」、あやとり「五輪のマーク」
月末なので軽い話題です。
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いつものようにhttps://arxiv.org/を眺めていたら、All Paths Lead to Rome(全ての道はローマに通ず:Kevin Goergen, Henning Fernau, Esther Oest, Petra Wolf,2022) という論文がありました。なんだろう、面白そうだなと思って見てみたら、ペンシルパズルのNP完全性を議論する論文でした。
この論文で紹介されているペンシルパズルを知らなかったので少し調べてみると、「ろーま」という名前でパズル通信「ニコリ」に掲載されたパズルのようでした。私は何で知らないんだろう? と思って少し調べてみると、「ろーま」という名前でニコリ131号で紹介されたパズルのようです。私はニコリのバックナンバーは何冊も抜けがあって、調べてみると131号はたまたま持っていませんでした。
こちらの連続発破保管庫 ろーま編 というページに問題が3問紹介されています。「ぱずぷれ」というページで実際に遊んでみることもできるようになっています。ありがたいです。とりあえず No.00 (4x4) の易しい問題を例題に使わせていただいて、ルールを説明します。
ペンシルパズル「ろーま」 【ルール】
- 全ての空きマスに上下左右のいずれかの矢印を書き入れます
- 任意のマスから矢印に従って隣のマスに移動してゆくと、必ず黒丸●のマスに到達するようにします
- 太い枠で囲まれた一つながりのマス(ブロック)の中には同じ向きの矢印を書いてはいけません
黒丸●がゴールで、ここが “ローマ” です。「全ての道はローマに通ず」です。この例題では全てのブロックは3マスですが、ブロックのサイズは1から4のいずれかです。例題を少しだけ解説します。
説明図 図のAのマスの上と左は外周ですから、Aに入る矢印は右→か下↓のいずれかです。下↓にしてしまうと、その下のマスとAのマスを行ったり来たりする周期解になってしまって黒丸(ローマ)に行かれません。従ってAに入るのは右→ということになります。
同様にBのマスは、上と右は外周ですから、入る可能性があるのは左←か下↓ということになります。でも、同じブロックの中に下↓はありますから、残りは左←しかありません。Bは左←が入ります。以下同様に、四隅は簡単に定まります。
途中図 シンプルですがちょっと面白いパズルだなあと思いました。
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昨日は飛ばしてしまいましたが、あやとりの話です。今日は他の方が創作されたあやとりを取ってみました。五輪のマークです。佐藤哲生氏の作品だそうです。
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sf220731-1:五輪のマーク(佐藤哲生) 上記のリンク先のあやとり協会の「あやとりトピックス」にも書かれていますが、中央の輪は上の水平な糸に絡んでいません。そのため、しばらく飾っておいたら中央の輪が下がってしまいました。
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飾る場所が少ないので、押し入れの扉のところに掛けてあるのです。そのため、扉の開け閉めのたびに振動が伝わってかたちが崩れてしまったのだと思います。
オリジナルの取り方を説明したBulletin of the ISFA Volume 7, 2000の図を見ると、なんと中央の輪は水平な糸に絡んでいます。あれっ? と思って説明を読むと、あやとりひもを輪にするときの結び目が中央の輪に来るようにして取って、最後にその結び目をいったん解いて水平な糸に絡ませて結び直す、という荒業が紹介されていました。
現代あやとり黎明期のあやとり研究は本当に素晴らしくて、複数の輪を使ったあやとりとかも研究されています。こういった「最後に結び直す」というテクニックも、「邪道」という考え方もあるとは思いますが私は「有り」だと思います。
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昨日は昼間から赤ワインを飲んだのです。赤ワインを飲むと、有名な七言絶句 涼州の詩:王翰 を思い出します。高校のころ、漢詩をいくつか暗唱しました。(私は理系でしたが、大学の入学試験の二次試験でも古文漢文もありました。)明治生まれの祖母は女子師範学校を出た国語の先生だったのですが、幼少時、真冬の夕方の物干し台で父親の前に兄弟で並び、その場で習う漢詩の暗唱ができるまで家に入れなかったそうです。考えてみると父親(私の曾祖父)は最後の子ができるまで一緒に外にいるわけで、昔の信州の冬はさぞかし寒かったのだろうな、大変だったろうなと思います。(この話、以前も書いた気がします。)決して厳しいだけの父親だったわけではなく、冬の朝とかに起きると「おめざ」と言ってみかんとかをくれたそうです。
若いころに詩や短歌を暗記するということをやっておいて良かったなと今にして思います。私はごくごく有名なものしか知りませんが、でも啄木や牧水や茂吉で好きな歌はいくつもあります。
<おまけのひとこと>
すみません、更新を2日分溜めた挙句、さらに遅い時間になってしまいました。明日からはいつものペースに戻します(戻したい)。