[Home]-[以前のひとこと]-[2003年10月前半]

以前の「ひとこと」 : 2003年10月前半



10月1日(水) このかたちは何でしょう?(その1)

 月もかわったので、今日からはまた新しいトピックスにしようと思います。 今日は凸多面体を1つご紹介します。これはどんなかたちでしょうか?

図 1 図 2 図 3

 いつものように、一般的な方向から見たところと、ある特別な方向から見たところの写真を載せておきます。 これは帯で編む手法で作った模型で、面は全て四辺形です。 実はこのかたちは帯で編む多面体を検討していた1年半ほど前に図面だけ作ってあったものを、1年ほど前に作ったものです。 写真を撮ったのは数ヶ月前で、すでに紙が若干黄ばんできています。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 昨日は一日更新をお休みしてしまいました。すみません。というわけでこれは10月2日に書いています。



10月2日(木) このかたちは何でしょう?(その2)

 昨日の模型の写真だけですとわかりにくいので、もうちょっとヒントになる図を載せましょう。

図 1 図 2

 図1はこの多面体の骨格モデルのCG、図2はこの多面体の平面グラフです。 さてこれは何でしょう? といってもこれだけではなんだかわからないと思います。 ヒントということで、面のかたちと数を小さくて少し薄い文字で書いておきます。

正方形6枚、凧型24枚

 このかたちについての解説は、明日(以降)に書きたいと思います。この模型からはじまる話については「とっておき」の話題のつもりだったのですが、さてそれがうまくお伝えできるかどうか・・・

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 いつもご紹介しているH.Hamanaka very private pageの更新が数日前からまた再開されていて、とても楽しみです。 サーバのハードディスクを交換されたそうなのですが、それ以前に「表紙の写真のみ」ということで一時的に掲載されていた写真について、今日はちゃんと解説が載っていて、楽しみに読ませていただきました。(過去のページ67:正十二面体のねじり編み。)

 Today's Informationというページで、ときどき「あそびをせんとや」の模型やパズルについて書いていただいているのですが、先月までの日々雑感のページ(大量です)の一番最後の9月末のあたりで、ペグ・ソリティアの最小手数トライアルをして下さっています。ありがとうございます。

 こちらも以前ご紹介した色々いろというページのコンテンツがまた増えています。切頂8面体色々では、切隅八面体(と表記させていただきます)による吉本キューブ風の構造や、空間充填の様子などが載っています。凹型菱形12面体編みでは、以前「あそびをせんとや」でご紹介した、菱形12枚による、体積のない構造を帯で編む手法で作っておられて、とても面白かったです。 私はいつもスクリプトはoffがデフォルトで、それだと不便なページのみ on にしているので気が付かなかったのですが、他の方に伺うと、この色々いろさんのサイトは、スクリプトをonにしてアクセスすると、いろいろなダイアログが開いてしまうようなサーバをご利用されているようで、見るのがちょっと大変と伺っています。 (2003.10.03 追記:10月3日現在、このようなダイアログ--Popup--が出てこなくなっているようです。)

(ちなみに私は以前は画像も off、フォントや色や背景なども全部切って、ほとんどテキストだけという状況でWebの閲覧をしていました。通信速度が遅かった時代に身に付いた習慣です。最近はさすがに表示の条件は緩めていますが、スクリプト等は自衛の意味もあって、面倒でもいちいちダイアログを開かせて[on][off]を選択しています。)

 おまけのひとことが長くなってしまいました。



10月3日(金) このかたちは何でしょう?(その3)

 一昨日・昨日と、とある凸多面体のモデルをご紹介しました。今日はこの多面体がどんなかたちなのか説明してみようと思います。 この形は正方形が6枚と、凧型が24枚から成っている立体です。この組成を見ると、立方体(正方形6枚)と凧型二十四面体を思い浮かべるのが自然かと思います。 そこで、凧型の部分に色をつけてみましょう。

図 1 図 2

 凧型を3枚、短いほうの辺を互いにつないで、ちょっと膨らんだ三角形のような形になっているというふうに見ると、その膨らんだ三角形は8枚あります。これをあたかも正八面体のように組み合わせたのが、普通の凧型二十四面体です(図3,4)。

図 3 図 4

 この膨らんだ三角形(上の図4で同じ色をつけた部分)を、ちょうど凧型の長いほうの辺の分だけ(つまり膨らんだ三角形の辺の半分まで)ねじってずらすようにすると、図2のようになります。これが図1の立体だったのです。



 もう1つの説明として、こんな説明の仕方もあります。凧型の2つの対角線のうち、鏡像対称ではないほうの対角線(凧型を2つの二等辺三角形に分けるほうの対角線)を引きます。そして、凧型が3つ集まった頂点の三角錐を、その対角線からすぱっと切り落としてみましょう。そうするとどんな形ができるでしょうか?

図 1 図 5

 切り落とされた部分は正三角形になります。数は8個です。もともとの凧型は二等辺三角形になって、これは24個あります。つまり、切り落としてできる形は正方形6個に三角形が32個で、これは捩れ立方体の構造そのものです。

 つまり、この立体は、捩れ立方体の正方形に接している三角形の面を延長して凧型にすることによっても作ることができるのです。(この場合は図のものとは凧型の形状が少々異なりますが。)

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 このかたちは、私が考案したものではありません。ただ、日本語名がわからないのです。

 このかたちについて、昨日ご紹介した色々いろのmotoroさんから、情報源も含めてずばり正解をメールでいただきました。ありがとうございました。なお、情報源のページには、今日のような解説はありませんが、この多面体の系列について説明されています。

 ちなみに昨日、このmotoroさんのページを「スクリプトonだといろいろなダイアログが開いてしまう」とご紹介しましたが、ご本人のmotoroさんの環境(Macを使っていらっしゃるそうです)ではそのような現象が出ていなかったので知りませんでした、とのことです。そこでさきほどさっそくスクリプトonでアクセスしてみたのですけれども、コマーシャルメッセージの現れ方が変わっていて、おそらくほとんど邪魔になりません。 昨日の私の書き方で、色々いろを敬遠されてしまった方がいらしたら大変申し訳ありません。むしろ、以前ご紹介したときに「最後まで見られなかった」とおっしゃっていた方は、またぜひご覧いただけたらと思います。

 このページをご覧になって、motoroさんが展開図から作られたものを、すでに「編む」手法で作っておられたという中川さん(吉本キューブを編むの作者の方)が、茉莉花の部屋のBBS3に写真を投稿されています。さすが。ご自身も書かれていますが、六角形の面の処理がたいへん巧みですね。

 そういえば、同じBBS3にあった雲の写真、私は最初イギリスの地図に見えました。でもよく見るとかなり違うんですけれども。



10月4日(土) Propellorized Polyhedra

 10月1日からご紹介している多面体ですが、これは多面体のウェブサイトとしてはたいへん著名なサイトを公開されているGeorge.W.Hart氏の考案された、多面体のプロペラ(Popellor)処理という変形を正方形に施したものでした。 詳細はこちらにくわしく説明されています。英語ですが、図だけ見ていても、だいたいイメージはつかめると思います。

図 1 図 2

 上記のページをご覧いただくと、Fig3に立方体の展開図で、各辺を3等分した点が打たれており、Fig4ではそれを順に結んで、各面に一回り小さな正方形を作っています。これを立体的に描いたのが図1です。立方体の各面の正方形を、頂点が各稜の3分の1のところに来るように回転・縮小してゆきます。小さくなった正方形を赤で描いてあります。図2は、もともとの立方体の8つの頂点の位置に黄色い球を置いてみたものです。

 図1,図2のかたちをそのまま膨らませてゆくと・・・

図 3 図 4

 この図3、図4のようになります。これが昨日まで説明してきた多面体そのものです。Hart氏の呼称によると、propello-cubeということになります。

propello-cube

 さて、このpropello-というのを日本語でなんと呼びましょうか? (ちなみにHart氏はpropellerではなくpropellor であると説明しています。) 捩れ凧型立方体? 回転立方体? プロペロ立方体(プロペラ立方体)? 小捩れ立方体? うーむ・・・。 どなたかすでに日本語訳をあてている例をご存知でしたら、ぜひ教えてください。 とりあえず呼び名がないと不便なので、仮名称としてp-立方体と呼んでおくことにします。

 また、このプロペロ操作(プロペラ操作、というべきでしょうか。これも以下p-操作と呼ぶことにします)というのはトポロジカルな定義なので、その操作の結果、稜の長さや角度をどのように決めるかというところで自由度があります。Hart氏のページには、Inscribed,Circumcribed,Midscribedという3通りが提示されています。これなども、日本語名をどうやってつけたらいいんでしょうか? 有機化合物の例にならって、慣用名のない部分は全部カタカナで表記、という考え方もあるかなあ。

 明日以降は、このp-操作を施した多面体の模型を2つ3つご紹介してゆこうと思います。いずれもあまり見かけない、おもしろい形だと思っています。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 ようやく週末を迎えてほっとしています。

 このp-多面体のシリーズですが、模型をいくつか作ってみて、「面白い」と思っていたのですが、これの解説を書くのが大変そうで、ずっと保留にしてきていました。 昨日の説明でとどめておこうとも思ったのですが、それだと他のp-多面体の説明がしにくいので、今朝、上記のCGを作りました。 そのほかいろいろ用事をしていたら、更新が遅くなってしまいました。



10月5日(日) Binary Stars 連星

 以前、ISFA:International String Figure Association(国際あやとり協会)の日本語のページの管理者の方からメールをいただいて嬉しいという話を書いたことがありました(6月25日)。 このときの内容について、ISFA日本語ページの独自の内容の1つであるあやとりトピックスで、1つの独立した記事として掲載していただけることになりました。トピックス 077です。この「あそびをせんとや」で以前書いた内容(02年2月4日)に関して解説を書いていただきました。 「あそびをせんとや」についても大変好意的にご紹介くださって感激しています。ありがとうございました。 お読みいただけたらと思います。

 この、ISFA日本語ページを管理しておられるShishido氏の作品の1つとして、“Binary Stars 連星”(1984年)という創作あやとりがあるそうです。こちらにとり方が載っているということも教えていただいたので、さっそく作ってみました。

Binary Stars - by Yukio Shishido(1984)

 余計な線のない、わかりやすい、たいへん美しいあやとりだと思います。 ぜひお試し下さい。

 <おまけのひとこと>
 Escher for Realというページをみつけました。 続きのBeyond Escher for Realと合わせて、お勧めのページです。



10月6日(月) p-八面体(propello-octahedron)

 さて、再びp-多面体の話に戻ります。「p-多面体って何?」という方は、一昨日のひとことをご覧下さい。

 今日は、正八面体に対してp-操作を施したものを、ビーズで作ってみたものをご紹介します。本来はこのかたちは稜の長さが一定ではないので、この模型では四辺形の面が平面にのっていません。

図 1 図 2 図 3

 図1は一般的な視点から見たところ、図2は1つの三角形の面から見たところのつもり、図3は4回回転対称軸方向から見たところ、です。 ちょっとフォーカスが甘くて、見にくい写真になってしまいました。

 1辺の長さが1の正方形を4個集めて田んぼの田の字を作って、それを6組集めて1辺の長さ2の立方体を作っておいて、それを長さ1だけずらして捩ったようなかたちです(わかりにくいたとえですみません)。 ねじったことで、8つの頂点のところには1辺1の長さの正三角形の穴が空きます。それが赤いビーズで示した8つの三角形です。図3は、田んぼの田の字の中心を見ているところです。

 このp-八面体も、平面グラフにしてみました。下の図4です。

図 4

 この p-操作は捩れ系ですから、左手系と右手系があります。また、一昨日のp-立方体と今日のp-八面体は互いに双対の関係になります。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 H.Hamanaka very private pageの表紙に、菱形90面体が載っています。解説は過去の表紙その69その70に詳しいです。 非常に美しい、面白い立体だと思います。
 インストール日記も(失礼ながら)楽しく読ませていただきました。



10月7日(火) p-二十面体(propello-icosahedron)

 昨日は、ライスビーズで作ったp-八面体をご紹介しました。(p-多面体については、10月4日のひとこと参照して下さい。) これを作ったら、次はp-十二面体かp-二十面体を作ってみたくなります。 以前、捩れ十二面体をライスビーズで作ったとき、この五角形の部分が陥没して、どうしてもかたちがきれいに整いませんでした。 今回はその反省を生かし、p-十二面体を作るリスクは冒さず、p-二十面体を作ることにしました。

 まず、手持ちのビーズが足りるかどうかが問題です。 p-八面体と同様、かたちが理解しやすいように、三角形の部分とそれ以外との2色で作ることにしました。 三角形は20個あるのでビーズは60個、それ以外のビーズは90個必要です。手持ちのライスビーズの中では数が一番多かった黄色と二番目に多かった水色を使えばなんとか足りそうだったので、その組み合わせで作ることにしました。

図 1 図 2 図 3

 図1が一般的な視点から見たところ、図2が三角形の面、つまり3回回転対称軸方向から見たところ、そして図3が5つの凧型のしっぽが集まる次数5の頂点、5回回転対称軸方向から見たところです。 この模型も、次数5の頂点が本来よりずっと平らになってしまって、手で持った感触はちょっと角を落とした正十二面体のようです。

図 4

 せっかくなので、これもCGにしてみました。ついでに、とても小さなgifアニメーションにもしてみました。こちらです。ファイルサイズは50kbyte、画像の大きさははわずか64x48ピクセルです。 最初はこのページに直接載せようと思って小さく小さく作ってみたのですが、トップページにいきなり50kbyteの画像を置くと迷惑かもしれないと思ったのでリンクだけにしました。 よろしかったらご覧下さい。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 寒いですね。 職場がまだ暖房が入らないため、昨日はとても寒かったです。
 子供たちが風邪をひいてしまいました。

 ときどきご紹介しているToday's Information!さんの日々雑感の10月6日に、IQlight のペーパーモデルが掲載されていました。 そうそう、この造形もお勧めです。このIQlightに関連して、また書きたい話もあったのですが、そういえばすっかり忘れていました。 おかげさまで思い出すことができました。 今のp-多面体の話題の次の次の次くらいに書こうかな、と思っています。
 過去にも、「これはとても面白いシリーズになりそうだ!」と一人で興奮して、とっておきの話題のつもりで大事にストックしておいたのが、そのままなんとなく出しそびれて死蔵される、というパターンが何回かありました。もう2年も寝かせている話題もあります。 このページに書く内容というのは、シリーズものを書いているときには、「あと何日はこれとこれとこれで行こう」と思っていて(ちなみに今のp-多面体のシリーズはあと2回は続きます)、そこから先はぼんやりとしか考えていません。



10月8日(水) p-四面体(propello-tetrahedron)

 10月1日からシリーズでご紹介しているp-多面体ですが、最初はp-立方体を帯で編む手法で作ったペーパーモデルをご紹介し、一昨日・昨日はビーズによるp-八面体、p-二十面体をご紹介しました。今日は再びペーパーモデルに戻ります。まずはいつもの通り、写真をご覧いただきましょう。

図 1 図 2

 これは、p-四面体です。このp-多面体というのは、3種類のタイプが存在します。

Inscribed. 中心から各頂点までの距離が同じ。球に内接する。
Circumscribed. 中心から各面までの距離が同じ。球に外接する。
Midscribed. 中心から各稜までの距離が同じ。

 写真は、inscribed propello-tetrahedron、内接型p-四面体です。どちらも3回回転対称軸方向から見たところです。図1と図2はちょうと同じ軸の逆側(前と後ろ)から見ていることになります。一般的な方向から見た写真も撮ってみたのですが、わかりにくいと思われたので載せるのをやめました。

 このかたちは、先日もご紹介したGeorge W.Hart氏の、Sculpture Based on Propellorized Polyhedraというページの Fig.7 および Fig.8 に描かれている多面体です。 他の2タイプのp-四面体についても、図が載っていますので比べてみてください。 このかたちを簡単に説明すると、正十二面体の20個の頂点のうち、適切な4点を選ぶと正四面体になるのですが、その4点をそれぞれ頂点とした三角錐を切り取ったかたちです。

 今日の写真の模型をどうやって作ったかということを簡単に書いておきます。 まず、これは三角形と等脚台形からなる多面体ですから、面の連なった帯で編む手法では作れません。そこで、斜めに編む手法で作ることにしました。パーツとして必要になるのは、図3のような多角形です。

図 3

 正五角形と、その対角線を1辺の長さとした正三角形を考えます。等脚台形のほうは、正五角形の対角線によって形作られる2種類の二等辺三角形の組み合わせになります。

図 4

 パーツは、図4のようなものが6本必要です。 G.W.Hart氏のページには3種類のp-四面体の説明があります。今日ご紹介したものは正十二面体の4箇所を切り取ったかたちでしたが、逆に正二十面体の4つの面に平べったい三角錐を貼り付けて作る方法も紹介されています(外接型p-四面体ができる)。

 立方体に「捩れ操作」を施すと捩れ立方体になります。捩れ立方体のうち、立方体の頂点由来の8つの正三角形のところに、背の低い三角錐を貼り付けると、p-立方体になりました。(10月3日のひとことの図5参照。) 正四面体に「捩れ操作」を施したのが正二十面体ですから、その4面に三角錐を貼るとp-四面体になる、というのは、立方体から捩れ立方体経由でp-立方体が出来るのと全く同じ原理です。 一昨日のp-八面体も、捩れ立方体の6つの正方形の面に、背の低い四角錐を貼り付けたものですし、昨日のp-二十面体も、捩れ十二面体の12の五角形の面に五角錐を貼り付けたものだと考えることができます。

 <おまけのひとこと>
 図が大きくなってしまいました。といって、相似比2分の1に縮めてみたら小さすぎたので、そのまま載せておきます。

 茉莉花の部屋のBBS3で、このp-多面体についても話題にしていただいています。ユニット折り紙風のp-多面体の写真も掲載していただいていて、嬉しくなりました。



10月9日(木) p-菱形十二面体のCG

 p-多面体という多面体の一群を10月1日からシリーズでご紹介しています。 詳しくは昨日までのひとことをご覧いただきたいのですが、このp-多面体というのは、もともとの多面体の面を若干回転させつつ中心から遠ざけ、もともとの頂点の部分には、その頂点の次数(=頂点に集まる稜の数)と同じ数の四辺形を補うという操作によって作られる多面体です。 (私のページでは、この操作をp-操作と呼ぶことにしています。)

 このp-操作によって新たに増える面は全て四辺形でから、もともとの多面体の面が全て四辺形であれば、このp-操作の結果できる新しいp-多面体もまた、全ての面が四辺形になるということです。

 四辺形になぜこだわるかというと、全ての面が四辺形であれば、例えば昨年の4月14日のひとことあたりで書いているように、面が連なった帯で編む手法によってその多面体の模型を作ることができる(可能性が高い)のです。10月1日にご紹介したp-立方体もそうですし、ちょくちょくご紹介している濱中さんのページ菱形九十面体もやはり同じ手法で編まれています。(そういえば濱中さんのページは10000hit到達されていました。おめでとうございます。現在の表紙の、エッシャーのタイリングのような画像はとても美しいです。)

 というわけで今日は、帯で編む多面体としては、立方体(平行六面体)についでシンプルな存在である菱形十二面体、これにp-操作を施した多面体について検討してみました。まずはCGをご覧いただきましょう。

図 1 図 2

 図1が、p-菱形十二面体です。何がなにやらよくわからないと思うので、図2のように、もともとの菱形十二面体の面に色をつけてみました。(手前の6面分だけです。) このかたちは、面の数が60面あります。内訳は、もともとの菱形十二面体の面に由来する12面、次数4の頂点6個に由来する4×6=24面、次数3の頂点8個に由来する3×8=24面、あわせて12+24+24=60というわけです。 この操作の結果、もともとの面のかたちは正方形になりました。

 さて、このかたちを「帯で編む」としたら、どんな帯が何本必要でしょうか? こういうのは平面グラフで考えたほうがわかりやすいので、さっそく平面グラフにしてみました。

図 3 図 4

 図3は、この60面体の平面グラフです。最外周は、もともとの菱形十二面体の面に由来する面としました。 図4は、適当な面から出発して、帯を辿ってみた図です。赤い面は帯が1回だけ通る面、黄色い面はそこで帯が交差している面です。

 ご覧のように、この帯は3箇所で自己交差しています。自己交差の場所は、3箇所とももともとの菱形十二面体に由来する面です。ということはこの p-菱形十二面体を帯で編むためには、4本の帯が必要で、それがそれぞれ三葉結び目になっているのです。

 ・・・三葉結び目4つを編む、というと、思い出されるのが9月12日にも書いた、捩れ立方体を斜めに編む話です。これまた濱中さんのページの過去の表紙68に作られているものです。

 この自己交差がいかにも厄介そうなので、p-菱形十二面体のパーツを作るのは保留にしています。



 昨日ご紹介した p-四面体のCGも作ってみたので載せておきます。ただし、昨日のものは内接型p-四面体でしたが、これは中間型(稜接型)p-四面体です。

図 5 図 6

 昨日の図1、図2に対応する図で、つまり見ている方向が逆なのですが、稜モデルだと違いがよくわからないですね。

 <おまけのひとこと>
 だいぶマニアックな内容になってきてしまいました。 実は、アイディアはあるのですけれどもパーツの設計(計算)が面倒でほうってあるものがたくさんあって、そのうち時間ができたら作りたいと思っているのですが、忙しくて・・・。 その点 CG はコンピュータの中だけの話なので楽です。

 濱中さんのページに、PC-8801mkII の話が出ていましたけれども、実家には同じ機種が稼動状態で設置されています。もうながいこと電源を入れていないと思いますが。



10月10日(金) ビーズ多面体によるアクセサリ

 今日10月10日は結婚記念日なので、昨年妻にプレゼントしたビーズ多面体の写真を載せることにしました。多面体作りに慣れておくと、一応こういうものも作れるということで・・・

 写真1の左側が正二十面体の骨格モデル、右側が正八面体の骨格モデルになります。いずれもスワロフスキービーズのソロバン型というんでしょうか、反角柱の双対のような形状のビーズを使っています。正二十面体のほうはペンダントトップに、正八面体のほうはリングに仕立ててあります。 特に新規性のないオーソドックスなデザインです。

写真 1

 どちらも、ソロバンビーズを小さな金属ビーズではさんだものを単位として組んであります。そのため、それぞれの多面体の頂点部分には金属ビーズが集まるかたちになります。図2の正二十面体のほうは5個が集まる頂点が12箇所、図3の正八面体のほうは4個が集まる頂点が6箇所あります。

写真 2 写真 3

 こういうのは下手に色をたくさん使うよりも単色のほうがきれいかと思って、シンプルに作りました。それにしてもビーズの写真を撮るのはとても難しいですね。いつもよりもたくさん撮ったのに、使える写真が少なくて大変でした。

 <おまけのひとこと>
 p-多面体のCGが増えてきたので、この3連休に久々に「あそびのコラム」を更新しようと思っています。



10月11日(土) 

 10月にはいってずっとご紹介してきた、p-多面体について、あそびのコラム32として書いてみました。 ファイルサイズ10kbyte弱のCG(コンピュータグラフィックス)画像が十数枚ある、ちょっと重いページです。 ここ「表紙のひとこと」で何日かかけてご紹介しようかとも思ったのですが、せっかくなので独立したページにまとめてみました。 気に入っているCGなのでご覧いただけたらと思います。

 <おまけのひとこと>
 3連休ですが、持ち帰りの仕事がたくさんあって忙しいです。(まあ半分は趣味の勉強なのですが)



10月12日(日) p-多面体と「立方体を斜めに細かく編む」

 昨日、帯で編める可能性のあるp-多面体についてあそびのコラム32に書きましたが、実際に作るかどうかはともかくとして、それぞれの多面体は、いったい何本の帯で編めるのでしょうか。とりあえずpp-立方体について調べてみました。

 図1は、pp-立方体です(あそびのコラム32参照)。面のつながり具合が知りたいので、例によって平面グラフにします(図2)。かなり大きな図になってしまいましたが、これ以上縮小すると、中央の部分がつぶれてしまうので仕方がないのです。この図を利用して、どのように面が繋がっているのか調べてみました。

図1 : pp-立方体

図2 : 平面グラフ

 図3が、適当な面からはじめて、面を辿っていった図になります。赤い色をつけたところは1回だけ帯が通過した面、黄色い色をつけたところは、帯が自己交差した面になります。このpp-立方体を帯で編もうとすると、1本の帯は、なんと16回も自己交差するということになります。

図3 : 帯で編む場合の1本の帯

図4 : 次数3の頂点を囲む面

 このpp-多面体は、ほとんどの頂点は次数が4になっていて(=稜が4本集まっている)、もち焼き網のようにタテヨコの格子状になっているように見えます。調べてみると、もともとの立方体の8つの頂点に由来する8点だけが次数が3で、あとの144個の頂点は全て次数が4になっていることがわかります。 図4で青い色をつけた部分が、その8つの次数3の頂点に集まる面です。

 図3の帯を見ると、この次数3の頂点8つを全て1回ずつ通過していることがわかります。次数3のの頂点ですから、局所的に見ると帯が3本で構成されますから、このpp-立方体は帯が3本で編めることになるのではないか、と予想されます。

 別な方法で検証してみると、帯で編む多面体は各面は必ず2回ずつ帯が通過するので、全ての帯の面の数の総和は、多面体の面の数(この場合は150面)の2倍である300面になります。図3の1本の帯がいくつの面で構成されるかを調べてみると、重なった面を2と数えて、ちょうど100面になりました。このことから考えても、このpp-多面体を仮に編むとしたら、やっぱり3本で編めそうです。

 この構造を見ていると、H.Hamanaka very private page“立方体を斜めに細かく編む”を思い出します。 この、濱中さんの「立方体を斜めに編む」との関連について、時間がなくてまだちゃんと検討していないのですが・・・



 このページのトップのカウンタが、そろそろ65536になりそうです。この数字は計算機をいじっている人ですとなじみがあると思うのですが、2の16乗、つまり、2の(2の(2の2乗)乗)乗、です。 (((2の2乗)の2乗)の2乗)ではありません。

 これは、16ビットで区別できる整数の個数を表していて、例えばC言語の16bit整数ならば、通常符号なしならば0〜65535、符号つきならば-32768〜32767、を表現することが出来ます。 今朝、カウンタが65500を越えたようですので、おそらく今日中にはこの 65536 を越える、つまり16bitでは表現できない数値になりそうです。

 <おまけのひとこと>
 とりあえずこのp-多面体の話については今日で一旦やめて、明日からはまた別な話を書きたいと思います。

 昨日は家で仕事をしていたのですが、今ちょっと壁にぶつかっています。うーむ。



10月13日(月) Beads Creatures

 先日、Beads Creaturesというページの作者の方からメールをいただきました。このページは、ビーズを使って動物や鳥などの生き物を作っておられる作者の方が、その写真を公開されているページです。(正式公開は来月のご予定だそうですが、私のページで公開してもよい、とご快諾いただけたのでご紹介させていただきます。 丁寧に設計・デザインされた美しいページだと思います。) メールで教えていただいたところによると、生き物の頭部のようなまるい形状のものを作るときに、多面体骨格がよく用いられるそうです。代表的なものとして正十二面体、それよりもちょっと小さいものを作りたいときには菱形十二面体を使っておられるそうです。

 では、正十二面体よりも一回り大きなものを作りたいときにどうされているかというと、「五角形12枚と六角形4枚の球状のかたち」を使っておられるのだそうです。 メールの趣旨は、このような立体が通常どのように呼ばれているのかご存知ありませんか、というご質問でした。

 このメールをいただいて、非常に興味を惹かれました。5角形12枚というと、もちろん思いつくのは正十二面体です。これに4枚の六角形を加える・・・ 4枚ですから、正四面体の対称性でしょう。とりあえず六角形4枚というと、切隅四面体が思い浮かびます。この4枚の六角形の間に、12枚の五角形をうまく配置するとどうなるでしょうか。まず、「おそらくこんなかたちになるだろう」ということで、CG(コンピュータ・グラフィックス)を作ってみました。

図 1

図 2

 図1が作ってみたCGです。どこが六角形でどこが五角形か、それぞれ4枚と12枚になっているか、ご確認下さい。 図2は例によって平面グラフにしてみました。 このように、4つの六角形の周囲を五角形が取り巻いているかたちになります。 切隅二十面体(いわゆるサッカーボール)が、正五角形の周囲を正六角形が取り巻いていたのとはちょうど反対です。

 さて、このかたちは五角形と六角形で作れるのでしょうか? 残念ながら正五角形と正六角形ではこのような閉じたかたちになりません。 というわけで、「五角形12枚と六角形4枚の多面体」の一般名称は残念ながらないと思います。 (とりあえず仮に、二十面十二面体に習って“十二面四面体”とでも呼んでおきましょうか。) では、面のかたちをどのように調整したら、「きれいな」多面体になるでしょうか。 既存の正多面体や準正多面体との関係は、どのようになっているでしょうか。

 まず、五角形のほうだけを正五角形にしてみようということで、とりあえずジオシェイプスで模型を作ってみました。

図 3

図 4

 図3は一般的な視点から見たところ、図4は真上から見下ろしたところです。ジオシェイプスの五角形パーツには補強が入っているので、ちょっとわかりにくいかもしれません。 この模型は、五角形12枚のみで作ってあります。写真が小さくてわかりにくいですけれども、六角形の面が来るべき位置は、残念ながら平面になっていません。 

 この模型は、五角形が3つ集まっている部分を同じ色にして、それを4組組み合わせて作ってあります。正五角形3枚が1つの頂点に集まると、その外側に来るべき面の角度はちょうど正五角形だとぴったりなのです。(だから正十二面体が組めるのです。) ところがそこに正六角形を持ってこようとすると、角度が小さすぎて入らないのです。

 五角形の面を正五角形にしてしまうと、そもそも六角形の面が平面にならないということがわかりました。では今度は六角形の面を正六角形にしたとしたら、五角形の面はどのように調整したら「美しい」多面体になるでしょうか。


(つづく)


 <おまけのひとこと>
 この多面体について、なにか情報をお持ちの方がいらしたら教えてください。

 私は折り紙やあやとりでもそうなのですが、自分で作るとすると具象物よりも幾何学的・抽象的なパターンのほうが得意なのですが、美しい作品を観賞するのは好きです。Beads Creaturesさんのような作品、これはおそらくデザインするところが一番楽しいのでしょうね。

 今日の多面体、これは五角形と六角形なので、こういう炭素化合物があってもよさそうな気がします。



10月14日(火) 五角12面六角4面体

 昨日の、五角形12枚と六角形4枚から成る多面体の話の続きです。昨日は、五角形のほうを正五角形だとしたら、六角形の面の形状がどうなるかを考えてみました。この場合は六角形が平面になりませんでした。今日は、六角形の方を正六角形だとしたら、どうなるかを考えてみました。まずは図をご覧下さい。

図 1

図 2

図 3

 図1が、昨日もご紹介したこの多面体の骨格図です。 このかたちの面のいくつかに、適当に対角線を入れてみます(図2)。そして、その対角線だけを取り出してみると(図3)、これは実は立方八面体なのだということに気が付きます。このことから五角形のかたちを決めてやることができます。

 立方八面体の8つの正三角形のうち、1つおきに4つを選んで、その面を六角形に延長します。すると、6つの正方形の上には、頂角が120度の二等辺三角形が2つずつ張り出してくることになります。正方形の上に張り出したこの二等辺三角形の頂点同士を結んでやると、6つの正方形の面の上には、「寄棟」の屋根がかかります。この屋根の等脚台形の部分こそが、求める五角形の下側ということになります。あとはこの台形の面を延長すれば、元になった立方八面体のうちの残った4枚の正三角形の上に、平たい三角錐ができます。

 このように、正方形の上に寄棟の屋根がかかるというと、思い出されるのが正十二面体に内接する立方体です。 立方体の6つの正方形の上に、適切に屋根をかけてやると、正十二面体ができるのです(図4)。 この、五角形12枚&六角形4枚の多面体は、立方八面体の上に適切に屋根をかけてやって、三角形のうちの4つをちょっと持ち上げてやると作ることが出来ます。

図 4

図 5

 やっぱりこの立体と正十二面体はよく似ているということがわかりました。

 <おまけのひとこと>
 連休中、仕事でコンピュータに向かう時間が長かったのですが、気分転換にいくつもCGを作りました。今日は表紙のひとことの画像のサイズの総和が少々大きめです。すみません。

 明日からはもう少し軽い更新になると思います。



10月15日(水) 五角形と六角形による多面体

 一昨日から、五角形12枚と六角形4枚による多面体をご紹介してきました。昨日は、立方体から正十二面体が構成できるのと似た方法で、立方八面体からこの多面体を構成する例をご紹介しました。今日はまた別の見方でこの立体について考えてみます。

 一昨日のジオシェイプスによるこの多面体の模型を見ていると、六角形が正四面体の面に相当し、五角形2枚が正四面体の稜に相当しているということに気が付きました(図1⇒図2)。

図 1 図 2

 今年の5月6日のひとことで、星型ビーズ2つを稜として正四面体を組んだものをご紹介しましたが、これがまさに「正四面体の稜が2つの五角形になっている」という例になっていました。当時はこれが「五角形12枚と六角形4枚の多面体」になっていることには思い至りませんでした。

 ということは、同様に他の多面体も稜を2つの五角形に置き換える操作ができるはずです。多面体の拡張方法として、もともとの面の辺数が2倍になり、新たに稜の数の2倍の五角形が加わるという計算になります。立方体に適用すれば、五角形が24枚と八角形6枚の多面体になるでしょうし、正八面体に適用すれば五角形24枚と六角形8枚の多面体になるはずです。 正二十面体に適用すれば、五角形60枚と六角形20枚の多面体になるでしょう。

 さっそく試してみたくなって、とりあえず正八面体に上記の操作を適用した、五角形24枚と六角形8枚の多面体のCGを作ってみました。下の図3,図4をご覧下さい。

図 3 図 4

 ちょっと構造がわかりにくいと思うので、対称性の高い視点から見た図を載せておきます。こうやってみると、この模型も六角形がいい加減だということがわかってしまいますね。

図 5 図 6

 この図を見ていて思い出されるのは、捩れ立方体の双対である五角二十四面体です。五角二十四面体の面を、次数4の頂点に集まる4枚ずつのグループにすると6グループできます。これらを捩れの位置に配置したものが五角二十四面体だったのですが、1つの4つ組を十字架型だと見ると、十字架の端どうしをつないでいくと図5,6のような構造になります。

 この手法で拡張した多面体というのは、もとの面由来の面は必ず6角形以上の偶数角形になりますし、増えた面は全て五角形になります。

 <おまけのひとこと>
 これらの五角形と六角形のモデルたちをビーズで作ってみたいと思っているのですが、時間がなくて・・・

 濱中裕明研究室のページの、講演原稿のページにある「黄金比にまつわる話」、とてもお勧めです。



[←2003年9月後半]  [↑表紙へ]  [2003年10月後半→]

[Home]-[以前のひとこと]-[2003年10月前半]
mailto:hhase@po10.lcv.ne.jp
2001-2003 hhase