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 多面体の新しい拡張法 ─プロペラ操作─

 プラトンの5つの正多面体というのは互いに密接な関係があって、どの2つをとってもうまく内接・外接させることができたり、適当にどこかを切り落としたりすることによって、別の正多面体を作ることができたりします。さらに、面と面の間に別の面を補ったり、頂点や稜を切り落としたりすることによって、アルキメデスの準正多面体や、さらに様々な多面体をつくることができます。 今回ご紹介するのは、そういった、ある多面体に対する操作の1つである、プロペラ操作と呼ばれる拡張法です。これは、多面体の研究者として著名なGeorge.W.Hart氏の提唱した方法で、 こちらに詳しく説明されています。今回のこのコラムでは、このプロペラ操作(以下 p-操作と呼びます)を、特に四辺形だけの多面体に施してみた例をご紹介しようと思います。

 まず最初に、p-操作というものを簡単にご説明しておきます。下の図1は、立方体の展開図です。6つの正方形の面のそれぞれには、各稜を3等分した点を結んだ、一回り小さな正方形が描かれています。この結果、もともとのそれぞれの正方形の面は、5つの新しい面になります。

図 1

 図1の立方体の展開図を組み立てて見ましょう。新しく加えた一回り小さな正方形の稜を赤で表すことにすると、この立体は下の図2のようになります。このままだと、単に立方体の面に正方形を描いただけのものですから、この赤い正方形を、多面体の中心から離してみましょう。すると図3のようになります。

ふくらます
図 2 図 3

 この図3の立体が、propello-cubeと呼ばれるものです。日本語名は定訳がないと思いますが、とりあえずp-立方体と呼んでおくことにします。

 さて、このp-操作ですが、多面体の各稜を3等分して、各面を回転縮小した稜を新たに付け加えるというわけですから、立方体に限らず任意の凸多面体に適用することができます。 今回のこのコラムでは、その中でも特に、四辺形のみによって作られる多面体に注目して、そのp-操作の結果作られる多面体を眺めて見たいと思います。 なぜ四辺形にこだわるかというと、四辺形のみによって作られる立体というのは、面の多角形の連なる帯によって編むことができる(可能性が高い)からです。

 備考:このあそびをせんとやの、2002年4月14日から何日か、また2003年10月1日から何日か、この「帯で編む四辺形多面体」をいくつか掲載しています。

 まずは一通り、絵をご覧いただきましょう。基本となる立体は、立方体、菱形十二面体、菱形三十面体、そして菱形九十面体です。今回は凧型二十四面体や凧型六十面体のp-操作についての図は作ってありません。これらの基本形に対して、p-操作を1回および2回施した立体の図CGを作ってみました。

立方体
面の数: 6
稜の数:12
頂点数: 8
p-操作
p-立方体
面の数:30
稜の数:60
頂点数:32
p-操作
pp-立方体
面の数:150
稜の数:300
頂点数:152



菱形十二面体
面の数:12
稜の数:24
頂点数:14
p-操作
p-菱形十二面体
面の数: 60
稜の数:120
頂点数: 62
p-操作
pp-菱形十二面体
面の数:300
稜の数:600
頂点数:302



菱形三十面体
面の数:30
稜の数:60
頂点数:32
p-操作
p-菱形三十面体
面の数:150
稜の数:300
頂点数:152
p-操作
pp-菱形三十面体
面の数:450
稜の数:900
頂点数:452



菱形九十面体(?)
面の数: 90
稜の数:180
頂点数: 92
p-操作
p-菱形九十面体
面の数:450
稜の数:900
頂点数:452
p-操作
pp-菱形九十面体
面の数:2250
稜の数:4500
頂点数:2252

 いかがでしょうか。p-操作では、もともとの多面体の面の多角形はそのまま残り、新たに四辺形が各面の頂点の数だけ増えます。そのため、元になる多面体が四辺形のみで構成されている場合、p-操作を何度施しても、全ての面は四辺形なのです。 四辺形多面体の場合、p-操作を施すたびに面の数は5倍に増えていきます。そして四辺形多面体の場合、稜の数は必ず面の数の2倍です。頂点の数はオイラーの多面体公式から、必ず面の数+2になります。

 例えば、p-立方体と菱形三十面体は、面・稜・頂点の数が同じで、すべての面が四辺形です。また、今回は掲載していませんが凧型六十面体とp-菱形十二面体は、やはり面・稜・頂点の数が同じで全ての面が四辺形です。

 今回CGとして掲載した12種類の多面体のうち、立方体('02/04/17)、菱形十二面体('02/04/14)、菱形三十面体('02/04/13)、そしてp-立方体('03/10/01)は、帯で編む手法で公開しています。 また、p-菱形十二面体の検討を、'03/10/09 に行っています。 菱形九十面体については、兵庫教育大学の数学の先生の濱中さんが、過去の表紙70のページで、同じ手法で作っておられます。 CGも面白いのですけれども、やはり本物はすばらしいです。とはいえ、面の数が何百、何千にもなると、模型作りとしては手が出せません。




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2003.10.10 hhase