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令和7月7月13日 | 長 新太(絵本作家) |
このあいだ顔の左半分が激しく痛むので、病院でレントゲンを撮った。 四、五日して行ってみると医者が、わたしのレントゲン写真を持って、「なにが、おかしいの?」と言う。 医者が手にした写真 (つまり、わたしのガイコツ)を見ると笑っているではないか。 顔を押し付けたとき、わたしは何を考えていたのだろう。ーー以上のような話をしたら、ある女性が。 「そんなバカなことがありますか!笑顔というものは、筋肉なんかの動きで表情となるもので、骨格そのものまで笑ったりはしませんよ。笑うガイコツなんてあるものか!」と大マジメの顔で言った。 確かにそうかもしれないけれど、わたしのガイコツは笑っていたんだもの、しょうがない。 話はちょっと変わるけど、わたしは子どもの本の絵を描いているが、ほとんどがナンセンスなもので、超現実的なものである。 子どもは喜ぶが、大人は「ナンナノヨ」と言う。ことに母親は、「こんなことが、あるものか」と、大マジメな顔で言う。 「このごろ不条理な話の絵があり、子どもはよろこぶ。しかし、わたしにはサッパリわかりません。なぜでしょうか?」 という母親の質問に、ある評論家が、「それは、あなたがバカだからです」と答えていたのを読んで大いにおどろいた。 とても私はそこまで言えない。 |
令和7月7月6日 | 加門七海 |
占いは面白い。当たるも八卦、当たらぬも八卦というものの、悩みのあるときなどは、つい聞いてみたくなるものだ。 「私の理想の人生は、果報を寝て待つタナボタ人生なのですが、なかなか、うまくいかなくて」 「うーん、残念ながら、あなたにはタナボタ運はないですね」聞いて、ショックを受ける場合もある。 しかし、運命は変えられないけど、運勢は変えられますから。 どこの国でもそうだけど、占い師は手腕次第で高額所得者になれる仕事だ。 噂によると、台湾のこの占い師。実はすごい金持ちなのだが、泥棒避けに貧乏なふりとか。 だが、現れた羅先生は服装の貧乏臭さのみならず、水玉のパンツまで腰から見えている。 「ふり」というより個人の資質が現れている気がするのは私だけか。 |
令和7月6月29日 | 加門七海 |
この世に戻ってきましょうぞ --恐山 梅雨時というせいもあり、空はどんより曇っている。私達はタクシーで山道を登って行った。 両側に迫る雑木林に点々と、石のお地蔵さんが並んでいる、途中に「冷水」がある。 原生林から滾々と湧き出してくる水は霊地に入るための清めの清水。 「一口飲めば寿命が一年延びる、二口飲めば二年、三口飲めば、死ぬまで生きる」当地ではそう言うらしい。 私はしっかり三口飲んでしまった。これで死ぬまで生きられる。・・うーん、何だか悔しい気がする。 宇曽利湖が見えてきたところで、私はまた車を停めた。降りたのは、赤く小さな太鼓橋。 この橋は善人しか渡れないと言われるが、それよりも「三途の川」に架かる橋として有名だ。 この橋を渡らなければ「あの世」に行けない。恐山はただの硫黄を噴き出す景勝地となるだけである。 橋を渡れば、私はもう死者。 「帰りも必ず、この橋を渡ってくださいね」すでに幽霊気分の私に、運転手さんが真剣な顔で言い諭す。 はい、必ずや、この世に戻ってきましょうぞ・・。 突然、芝居がかった様子で、私は静かに頷いた。 |
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