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2000年11月の疑問

★ 疑問、議論、および回答への不満は右まで→ 掲示板


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   3月(サンゲンアジャホ 青年さ〜ら 湖沼国境) 4月 第三のイタリア 七つの海

11月30日 ヒースランドとムーアランド

 疑問発見掲示板であっくんさんがご提出された疑問です。「謎」というのがいいですねえ。これからは、このコーナーの名称を「今日の疑問」ではなく、「今日の謎」にしようかな。

ひとつ謎があります。
 学校ではイギリスの氷食による荒地を「ヒースランド」と教えられたのですが、予備校ではデンマークの氷食による荒地が「ヒースランド」でイギリスのは「ムーアランド」と教えられました。
一体どっちが正しいんでしょうか??

お答え これまた、さ〜らが熟睡してお答えをサボっている間に、かれーらいすさんにお答えを頂戴しました。引用します。

 どちらもあるといったらご不満でしょうか。

 まず、ヒースは、ハイデと同じ意味のつつじ科の低潅木のことで、氷食地域のような不毛の地域でも育つ植物です。そうした植物が生えている地域を、デンマークやイギリスの北部では言語の共通性からヒースランドと言い、言語の異なるドイツではハイデと言います。

 ムーアランドは私の記憶ではイングランド中部の湿地の多い地方で、偏西風が卓越するために年中湿潤でしかも低温のため植物の分解が進まず泥炭化した地域のことです。そこが、氷食の結果そうなったのか、現在の気候条件からそのような状態になったのか、恐らく両方の要素が関連しているのでしょう。湖水地方(ランカシャー地方より北部)でそう呼ばれる地域が多いようです。

ですから、まず、氷食地域はヒースランドで良いのではないでしょうか。

 これまた、謎は解決です。かれーらいすさんは遠慮がちにお答え下さいましたが、まったく正しいご説明なので、上記引用では、少し変えて、一部、断定口調にさせていただきました。さ〜らは何も付け加えることがないので、苦肉の策として、次のような試験対策を開陳させていただきました。

 ムーアランドは出題頻度がきわめて低く、氷食の荒れ地にみられる植生名称としてドイツのハイデに対応するのはヒースランドだから、こちらの方が断然多く問われます。ムーアランドを知らなくても合格できるが、ヒースランドという語を知らないようでは合格が危ぶまれる、というぐらい、両者の出題頻度には雲泥の差がございます。

 ムーアランドのムーアは、それだけで荒れ地という意味で、泥炭化しつつあるような土地は農耕には適さないから荒れ地になっているわけで、イギリスでは、そのようなところをムーアランドと呼んでいるわけです。

 一方、ヒースランドは、冷涼で湿気が多い荒れ地にしか生えないヒースと呼ばれる草のような小さい木が生えているところです。ドイツのハイデも、同様に、ヒースが生えている荒れ地です。

 荒れ地がムーアランドで、そこにが生えていればヒースランドということになりますが、ムーアランドにはヒースが生えているところが多いから、混乱しますね。イギリスで、ムーランドと呼ばれるところは、イングランド北西部の湖水地方や南西部あたりに多いようで、ヒースランドと呼ばれるところはスコットランドに多いようではありますが、「ヒースの生えるムーア」とか、「ヒースランドになっているムーア」などという言い方もされます。そこで、混乱しない方法を編み出しました。試験に出るヒースランドだけ覚えて、試験に出ないムーアランドを忘れてしまえばいいのです。

 ところがところが、人は受験地理のみに生きるものにあらず、でありまして、受験国語も必要だし、ときには文学も読み、映画や演劇も鑑賞します。そして、その世界には、ヒースの生えるムーアを舞台にして捨て子のヒースフリックとキャサリンの悲恋を描いた『嵐が丘』という愛憎物語など、ムーアランドを舞台とする小説が山のようにあります。その辺りに造形の深い方々にとっては、「ヒースランド」という語よりも、植物の総称としての「ヒース(ヘザーと発音することが多いらしい)」と、荒れ地の「ムーア」「ムーアランド」の方が馴染みある語でしょうね。もしそうなら、この場合、受験地理で大事な用語が文学生活ではそれほど重要ではないことになります。そして、世の中には、地理マニアよりも文学青少年の方が数が多い。地理派は世の中のマイノリティで、文学派はマジョリティです。あっくんさんが出会った予備校の先生は、有為の青少年が受験地理の狭い枠に閉じこもることを恐れ、マジョリティの世界で生きろ!と言いたかったのかもしれませんね。


11月29日 ブラジルの針葉樹林

 疑問発見掲示板で、初登場!井川さんがご提出された疑問で、私も統計を見るたびに気になっていたもので、「謎」ですね。

 林業について見ていたとき、ブラジルの針葉樹林率20%というのが気になりました。インドネシア0.3、ナイジェリアは−となっています。国土が南北に広いせい(高緯度地帯にも国土がある)かな? とは思いましたが、いまいち納得がいきません。

お答え さ〜らが熟睡してお答えをサボっている間に、かれーらいすさんにお答えを頂戴しました。

 ブラジルの針葉樹林率が熱帯に位置する国なのに高いのは、パラナ州あたりから南部にかけての温帯気候に変わる地域で、通称パラナ松といわれる針葉樹林があるからだそうです。かなり前の西南学院の問題に出ていたことがあって、ここまで出題するんだ!と思ったことかありました。ですから、井川さんの推理は正しいのです。東京近辺の方は、新宿御苑の中にある植物園(温室なので、熱帯の植物もあります)に、パラナ松(ブラジル)というのがありますので、確かめてみるのも良いですよ。

 これで、謎は完全解決なのだ。さ〜らは何も付け加えることがないので、苦肉の策として、「今日の疑問」4/6の記事を作るときにみつけた在日ブラジル大使館作成の教育番組的HPにあった植生分布図とパラナ松の写真のページを紹介しました。

 以上は、マニアの疑問です。時期が時期なのでマニアばかり相手にしてはいられません。以下、受験生のために、サービスなのかはた迷惑なのか、言わずもがなの蛇足解説を付け足しておきます。

 入試では、次のような木材伐採高の統計表(年次は1998年)を使って国名を判断させる問題がよく出ます。ア〜ケに該当する国は、日本、中国、インド、インドネシア、マレーシア、ナイジェリア、アメリカ合衆国、ブラジルです。できますか?

  伐採高(千立米) 用 材(千立米) 薪炭材(千立米) 針葉樹(千立米) 針葉樹の割合
490618 420458 133036 477921 63.6 %
299490 25256 274334 11031 3.7 %
291865 100918 190947 142023 48.7 %
197816 83764 114052 44458 22.5 %
193218 36195 157023 206 0.1 %
191178 187859 5319 161056 84.2 %
98518 9418 89096    
29297 21735 7562 207 0.7 %
20093 19316 777 15214 75.7 %

 伐採高に占める針葉樹の割合の大小から、0〜20%台が熱帯の国、40〜60%台が温帯付近の国、80〜90%台が冷帯の国のように考えて、各国の位置を推測していきます。イ・エ・オ・キが熱帯の国、ア・ウが温帯付近の国、キが冷帯の国です。

 ケ国は日本です。日本は主に温帯の国だが、人工林にはスギなどの針葉樹が植林されており、その伐採量が多いので、針葉樹の割合がけっこう高いですね。人工林の多いヨーロッパにも、温帯の国なのに針葉樹割合が比較的高い国があります。

熱帯の国 インド・ブラジル・インドネシア・ナイジェリア・マレーシアなど
温帯の国 アメリカ合衆国・中国など
冷帯の国 カナダ・スウェーデン・フィンランドなど

 ついでに、用材と薪炭材を比べて、用材の方が多ければ先進国、薪炭材の方が多ければ発展途上国と考えます。ク国がマレーシアです。ア・カ・クが先進国で、他は途上国です。ク国は唯一の例外、マレーシアで、この国は、主に日本への輸出用木材が多いので、発展途上国に分類されるにもかかわらず、用材が多くなっています。

 頻出の簡単統計問題なので、答えは書きません。


11月8日 発展途上国で都市人口率の高い国

前回の記事の隠れG-SALANDERさんから頂戴したもう一つの疑問。

都市人口率って、基本的に先進国で高いと言うけれど、だいたい問題になるのって、都市への人口流入で都市人口率が上昇している発展途上国じゃありませんか?? 途上国で都市人口率が高い国で具体的にチェックするのはどこ?

 実はこれ、疑問ではなくて、「教えろ!」という要求だね。本当なら、こういうちゃっかりした虫のいい要求に答えるのは教育的ではない。自分で調べたり過去問題に当たって、チェックすべき国を探す方が、自分のためになるのだ。

 職業柄、各国の社会・経済の停滞・発展に関する本を読むことが多いが、最近つくづく思うのは、「情けはひとのためならず」をもじって「過保護はひとのためならず」とか「過保護は国のためならず」ということだ。

 このところキルギスの国名のことが気になっているので、その関係の本はないかなと、今日は、久々に本屋で時間をつぶした。キルギス関係の本はみつからなかったが、カザフスタン関係の本があったので、つい、衝動買いをして、特急「あずさ」の中で斜め読みしてきた。カザフスタン共和国大統領ヌルスルタン・ナザルバーエフ著(下斗米伸夫監訳)『我々の家ユーラシア−21世紀を眼前にして』という本だ。その中にも、「過保護は国のためならず」ってことを確認させるような一節があった。引用する。

 旧ソ連の技術発展の停滞に関して、「我々は皆なぜか1973年のエネルギー、石油危機を本当に忘れてしまった。・・・石油価格がほとんど毎週のように激しく値上がりした時のことである。こうした状況のもとで、大体70年代半ばには世界のすべての技術先進国は省エネ、省資源技術発展に向けて積極的に方向転換した。

 この時、ソ連では新しい油田、特にシベリアでの集中的採掘が始められた。・・・おかげで、この頃何十億ものオイルダラーを稼いだ。・・・西側との軍事政策的、軍事技術的競争は、当時のソ連の厖大なエネルギー力により決定づけられていたのである。しかし、この力は、・・・技術革新のためにではなく、軍産複合体の需要のため、また石炭、金属産業、農業といった赤字部門に対する補助金支出のために費やされたのである。石油ガス以外で利益を上げた企業はわずかであった。さらに、エネルギーが十分確保されていたので、一連の省エネ技術を発展させる必要性がなくなった。少なくとも、経済の民生部門では、技術発展に対する国内的な動機が少しもあらわれることはなかったのである。

 そのころ日本では、石油危機と公害問題という危機があって、たとえば自動車における技術革新が急速に進むなど、危機があらたな技術革新を生み、それが経済を回復させていた。ソ連では、油田開発ができたために、オイルダラーが湯水のように入ってきて、技術革新を怠り、もうからない赤字部門に補助金をやって保護し、その結果が、のちの経済の停滞を招き、国家が老いて、指導者も老人ばかり、とうとう死に至る病を得てしまったのだ。オイルダラーが「老いるダラー」になっちゃったんだね。

 というわけで、真に教育者たらんとする人ならば、上記のような虫のいい要求には答えないのであるが、残念ながら、さ〜らは教育者ではないのだ。過保護によってひとがダメになろうが、そんなことは知ったことではない。「弘法、質問を選ばず」をモットーとする疑問オタクなのだ。だから、過保護にどんどん答えてやる。そのうえ、始末に負えないことに、ネット上で責任がないから、答えが間違っていようがいまいがおかまいなしで、答えたいように答えるのだ。以上、前口上が長くなりました。

お答え 発展途上国で都市人口率が高い国としてチェックすべきは、頻出の新大陸の国とNIEs、そして、試験にはあまり出ないが、産油国でしょうね。 

 まずは新大陸など白人入植地の途上国。メキシコ・ブラジルも含め、新大陸は比較的高い。例外もあるが、白人人口比率とけっこう相関関係があります。新大陸では、なお、発展途上国ではないが、オーストラリア・ニュージーランドの都市人口率が先進国の中でひときわ高いことも重要です。

  都市人口割合
(%)
白人人口割合
(%)
  1960年 1996年 推計
オーストラリア   81  85  98
ニュージーランド  76  86  90
ウルグアイ     80  91  90
アルゼンチン    74  88  97
ボリビア       39  61  13
南アフリカ共和国  47  50  11

 上の、表を見ればわかるように、白人人口比率の高いオーストラリア、ニュージーランド、ウルグアイ、アルゼンチンの4国の都市人口率が高いのに対して、インディオ人口が過半のボリビアや少数の白人が多数の黒人を支配してきた南アフリカ共和国の都市人口率はそれほど高くありません。

 表中で、白人人口比率の高い4つの国、オーストラリア、ニュージーランド、ウルグアイ、アルゼンチンは、早い時期から、上の表でいうと、1960年の段階でも都市人口率がきわめて高かった国です。ちなみに、日本は、1960年63%、1996年78%です。「南半球の白人国は都市人口率が高い」と覚えておきましょう。

 次に、変化では、急速に上昇しているNIEsなどをチェックします。そして、ここでも、新大陸のメキシコ・ブラジルは、もともと高めで、旧大陸の韓国はもとは低かったが上昇して先進国並みになっている、という点が大事です。次の表に、これらの国の都市人口率の変化を示します。なお、シンガポールはNIEsですが、都市国家なので100%です。

  1960年 1980年 1996年
メキシコ 51 66 74
ブラジル 45 66 79
韓国   28 57 83

 新大陸の国は、もともと高めだったので、NIEsでなくても、けっこう高くなっています。南アメリカのNEIs以外の発展途上国で、最近、都市人口率が先進国並みに高い国を示します。

  1960年 1980年 1996年
ベネズエラ 61 79 86
チリ     68 81 84
コロンビア 48 64 73
ペルー   46 65 71

 アジアの準NIEsのマレーシア・タイも書いておきます。タイが準NIEsで、GNP/人が高くなっている割に低い(後に示した表のインドより低い)ので注意します。インドとタイの区別は都市人口率では無理ですから、国名を判断させる問題では、ほかにヒントがあるはずです。

  1960年 1980年 1996年
マレーシア 27 42 54
タイ     13 17 20

他の国は、経済水準との正の相関や、農民人口比率との負の相関で判断して下さい。そして、試験にはあまり出ませんが、産油国は高めなので注意しておきます。

  1960年 1980年 1996年 GNP/人
(1998年)
第1次産業人
口比率 (年)
エチオピア    6 11 16  100 88 (95)
インド      18 23 27  440 61 (91)
インドネシア  15 22 36  640 45 (98)
イラン      34 50 60 1650 25 (86)
サウジアラビア 30 66 84 6910 不明

11月5日 安定陸塊の鉄山

 このところ、受験生は模試受験シーズンで多忙。地理の勉強まで手が回らなかったようで、しばらく疑問がとだえていたが、本日、ひさびさに、隠れG-SALANDERの一人から、複数の疑問をしたためたメールが舞い込んだ。そのうちの一つを紹介します。

1.ロシアの東部(レナ川東部)って古期でしょ。ってことは石炭の埋蔵じゃないかな。でも帝国の地図帳P48を見ると、スタノヴォイあたりで鉄が多い?
どういうこと??

2.ところでなんで安定陸塊=鉄鉱石、古期造山帯=石炭の式が成立する の?

お答え ウラルの鉄について疑問が出るならわかるけど、スタノヴォイの鉄について聞いてくるとはマニアもいいところですね。

 旧ソ連の鉄山は、ウクライナのクリヴォイログと、ウラルのマグニトゴルスクを覚えておけばよいが、このうち、ウラルは古期造山帯なのに鉄がとれて石炭は質の悪い褐炭だけ。周辺にはヴォルガ・ウラルとチュメニの油田もある。変ですねえ。

 まず、上記疑問中で、ちょっと気になったところは、「レナ川東部は古期」というところで、正確には、レナ川以東はほとんど新期です。シベリアの大地形は、ウラル付近が古期造山帯、西シベリア低地は構造平野(パリ盆地などと同様に古期造山帯に属す構造平野)、中央シベリア高原(エニセイ川とレナ川の間)が安定陸塊(旧アンガラランド)、ベルホヤンスキー山脈以東が新期造山帯、そして、南部のアルタイ、サヤン、ヤブロノイ、スタノボヴォイあたりが古期造山帯。スタノヴォイが古期というのは正しいです。

 古期のサヤン付近にはチェレンホボ炭田など(クズネツク炭田も近い)があって、これは原則通り。スタノボイ付近にも炭田(ネリュングラ)があり、近年採掘されて第2シベリア鉄道で輸送されている。これも原則どおり。

 そして、おたずねの鉄山ですが、私も今、地図帳で調べたら、おっしゃる通り、小さい記号だが鉄山もありますね。アンガラランドの周辺ということでカタがつくのかそうではないのか、ウラルのマグニトゴルスクとともにおおいなる疑問ですねえ。

 まず、こういうことは百科事典がてっとり早いから調べましょう。それを、ませた幼稚園児程度のおつむの持ち主にも理解できるように書き直してみます。用語は幼稚園児用に変えるわけにいかないから、これでも読みにくいんですけどね。

 鉄鉱床のでき方はいろいろで、成因により、正マグマ性鉱床、接触交代鉱床、堆積鉱床などに大別される。

  これらのうち、先カンブリア時代の古い岩層にある堆積鉱床とこれが変成したものは、赤鉄鉱(ときに磁鉄鉱)を主とした大規模なものが多く、オーストラリア西部、ブラジルや中国東北地域など、世界の各地に広く発達し、世界の鉄資源の約80%を占める。

  正マグマ性鉱床は先カンブリア時代の変成岩類を貫く火成岩体中またはその周辺に発達し、たとえばスウェーデンのキルナ鉱床のように大規模なものがある。

  接触交代鉱床は磁鉄鉱を主とし、ロシアのウラル地方や西シベリアに大規模なものが発達する。わが国では岩手県釜石鉱山の鉄・銅鉱床がこの例である。接触交代鉱床とは、貫入火成岩体の熱が原因で、火山性の熱水(これは、ちょっといい加減な言い方です)が冷えるときに、熱水の中に含まれていた鉄が鉱床になったもの。

 以上より、世界の鉄の80%以上は安定陸塊にあり、そのうち大部分は堆積鉱床であることがわかります。古期や新期にある鉄山は、火山性の熱水の中に含まれていた鉄が鉱床になったものが多いようです。そして、ウラルのマグニトゴルスク鉄山も、これに該当することがわかります。スタノヴォイの鉄については書いてないが、ウラルと同じじゃないでしょうかねえ。いつかわかる日がくるかもしれません。気をつけて、おいおい調べておきます。時間を下さい。2月の受験までに間にあわないかもしれませんが。

 次に、2番目の疑問ですが、これは、受験地理の親切な参考書に書いてあることなので、ざっと流して書いておきます。

安定陸塊=鉄鉱石

 地球ができた頃は、海水中には鉄が溶けていた。先カンブリア時代の途中で、光合成をする能力を持つバクテリアや藍藻が海中に誕生して、酸素を放出した。光合成によって酸素が海水中に放出されていったため、これが鉄と結びついて大量の酸化鉄が堆積した。

 鉄鉱石の多くは、大陸内の先カンブリア時代の地層から産する。大量の鉄が海の底に堆積してできた地層が、造陸運動によって陸地になったところに露出しているのである。このような地層として産する鉄鉱石は、しばしば非常に規則正しい縞模様を持つので、縞状鉄鉱層と呼ばれる。縞状鉄鉱層の堆積年代は35億年前から6億年前まで長期に及ぶが、そのピークは25億年前から20億年前ごろ。

 上記の成因による分類では、世界の80%を占める堆積鉱床がこれにあたる。残りの20%弱の例外もあるが、以上によって、安定陸塊=鉄鉱石といってよいのである。古生代以後は、海中の酸素は飽和状態だから、あらたに酸化して大規模な鉄鉱床を形成するほどの鉄は、もはや海中には溶けていないのだ。

 

古期造山帯=石炭

 3.6億年前(古生代石炭紀)にシダ植物類の大木が出現し、大地を覆い始めた。地殻活動の中でこれらの植物は地下に埋れ、地下の熱と圧力の作用を受けて化石化して、石炭となった。これが炭田。安定陸塊ができた当時は植物はあっても大木がなかった。新期造山帯の活動が活発になった中生代末以後は、大木はあるが、地下に埋もれてからの年数が短いので、まだ十分炭化しておらず、炭田はあっても質が悪い。

 だから、古期造山帯=石炭といってよいのである。

 以上です。今日は、仕事の途中に思いついて、これを書いたので、まだ3つほど仕事をしてから寝なければいけません。みなさん、お先にお休み下さい。


11月4日 所得と食料消費(2)

  10月9日に所得と食料消費の関係について書いたが、疑問を提出してくれたジンから鋭い指摘があった。記事中ので、所得が低い第Uグループの肉類消費が若干多い理由を、遊牧のせいにしたことに対してである。このジン曰く、表中の数値が、国ごとの平均値を単純に合計して国数で割った値なら、遊牧のせいにしてもいいが、全体の摂取量を人口で割った値ならば、遊牧をする国の人口なんぞたかがしれているから、Uグループの数値が高い理由にならないのではないか! 人口の多い国だけで考えてみるべきではないか。

 なるへそ。出典の表がどのような計算にもとづいて作成されたものかわからないので何とも言えないが、鋭い指摘だ。

 そこで、暇人さ〜らは、世界国勢図会にあたって調べてみました。人口100万人以上でGNP/人が1500ドル以下、食料供給熱量のデータのある国だけを示しました。下の表中、動物性食料の欄で、白い太字は所得の割に動物性食料をとる量が多めの国で、黒い太字は所得の割に少なめの国です。

  人口(万人) GNP/人
(ドル)
供給熱量
(kcal)
動物性食料
の割合(%)
動物性食料
(kcal)
4000万人
以上の国
エチオピア 5988 100 1805 5.8 105 ○  
コンゴ民主 4914 110 1701 2.8 48 ○  
ブルンジ 630 140 1578 2.7 43  
シラレオネ 457 140 2045 3.1 63  
ニジェール 1008 200 1966 5.6 110  
モザンビーク 1692 210 1911 2.8 54  
マラウイ 1035 210 2226 2.4 53  
ネパール 2184 210 2170 7.2 156  
タンザニア 3210 220 1999 6.7 134  
チャド 727 230 2171 5.3 115  
ブルキナファソ 1068 240 2149 4.9 105  
マリ 1069 250 2118 10.1 214  
カンボジア 1143 260 2078 8.4 175  
マダガスカル 1506 260 2001 9.9 198  
イエメン 1707 280 2087 6.9 144  
スーダン 2829 290 2444 19.6 479  
中央アフリカ 349 300 2056 9.1 187  
ナイジェリア 10641 300 2882 4.1 118 ○  
ウガンダ 2103 310 2216 6.3 140  
ラオス 516 320 2175 6.3 137  
トーゴ 440 330 2513 4.4 111  
ザンビア 878 330 1950 5.1 99  
ガンビア 123 340 2559 4.9 125  
バングラデシュ 12477 350 2050 3.4 70 ○  
ベトナム 7756 350 2422 10.4 252 ○  
ケニア 2901 350 1968 11.7 230  
ニカラグア 481 370 2208 7.7 170  
ベナン 604 380 2571 3.9 100  
モンゴル 240 380 2010 41.1 826  
ガーナ 1916 390 2684 3.2 86  
モーリタニア 253 410 2640 16.5 436  
インド 97093 440 2466 7.4 182 ○  
パキスタン 14817 470 2447 15.5 379 ○  
アゼルバイジャン 767 480 2191 15.8 346  
セネガル 904 520 2277 9.2 209  
ギニア 734 530 2315 3.2 74  
カメルーン 1431 610 2209 5.8 128  
ジンバブエ 1269 620 2045 3.1 63  
インドネシア 20442 640 2850 4.5 128 ○  
コートジボワール 1429 700 2695 3.7 100  
ホンジュラス 618 740 2343 14.9 349  
中国 125570 750 2972 18.3 544 ○  
スリランカ 1877 810 2314 6.5 150  
パプアニューギニア 460 890 2168 11.7 254  
ボリビア 795 1010 2214 18.7 414  
シリア 1560 1020 3378 12.4 419  
フィリピン 7516 1050 2288 15.3 350 ○  
ブルガリア 826 1220 2740 25.3 693  
モロッコ 1692 1240 3267 11.4 372  
エジプト 6598 1290 3282 7.0 230 ○  
カザフスタン 1632 1340 2517 22.2 559  
ルーマニア 2250 1360 3263 22.5 734  

上の表を見ると、所得の割に動物性食料をあまり摂らない国は、アフリカ中部の熱帯とモンスーンアジアの熱帯に多いですね。逆に、多くとる国は、マリ・スーダン・モンゴル・モーリタニアなどで、遊牧が行われている国が多い。特にモンゴルが光っていますね。

 遊牧の国の人口がそんなに多くないのも確かです。所得と動物性食料の間に相関関係がない場合、その理由として、遊牧以外に何があるかを調べるために、人口の多い国だけをピックアップしてみました。

  人口(万人) GNP/人 供給熱量
(kcal)
動物性食料
の割合(%)
動物性食料
(kcal)
動物性食料
の少ない順
エチオピア 5988 100 1805 5.8 105 3   
コンゴ民主 4914 110 1701 2.8 48 1   
ナイジェリア 10641 300 2882 4.1 118 4   
バングラデシュ 12477 350 2050 3.4 70 2   
ベトナム 7756 350 2422 10.4 252 8   
インド 97093 440 2466 7.4 182 6   
パキスタン 14817 470 2447 15.5 379 10   
インドネシア 20442 640 2850 4.5 128 5   
中国 125570 750 2972 18.3 544 11   
フィリピン 7516 1050 2288 15.3 350 9   
エジプト 6598 1290 3282 7.0 230 7   

という表を作ったところで、打ち止めにします。表作りで疲れてしまったのだ。

 考えてみれば、前回の記事にあげた出典の表がどういう作業を経て作られたものかわからないまま、こんな作業をしても仕方がない。ああ、貴重な時間をつぶして私は何をやっているのだろう。2時間もかかってしまった。

 私は、ときどき一念発起して、無駄な作業に精力をつぎこみ、むなしい思いをします。今に始まったことではないので、慣れっこです。むなしいときは寝るに限る。それでは、お先にやすませていただきます。今日は、庭の柿をもぎました。渋柿なので、さわして食べます。その仕込みもしました。だから、本当は、充実した一日だったんです。夜の2時間はなかったことにして、寝ます。おやすみなさい。