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以前の「ひとこと」 : 2019年8月前半



8月1日(木) 全ての面が偶数角形の多面体(その3):斜方切頂立方八面体の頂点を1つおきに結ぶ

 先月、飛び飛びにですけれども「全ての面が偶数角形の多面体」その1(7月6日)その2(7月16日)で、頂点を赤と青で交互にマークすることができることをご紹介して、それらを結んだ多面体について調べてみました。

 その次の多面体は何かなあと言えば、それは斜方切頂立方八面体(大菱形立方八面体)です。まずはこの多面体のCGを作ってみることにしました。

図 1 図 2

 正確な頂点の座標を知りたくて、以下のように計算しました。

 この立体は、立方体の8つの頂点と12の稜を削り落としたかたちをしています。もとになる立方体の面に由来する正八角形が6面、頂点に由来する正六角形が8面、稜に由来する正方形が12面あります。頂点の正確な座標を計算するのに立方体を素直に削ってゆくのは面倒だったので、上の図にあるように基本となる立方体(±1,±1,±1)に対して12枚の正方形の面が接しているとします。もとになる立方体とこの立体の頂点との距離をpとすると、頂点の座標はpで簡単に表すことができます。計算してみるとこんな結果になりました。

 頂点の正確な座標が求まったので、これに基づいて図1、図2のCGを描いてみました。さて、この図2の青だけ、もしくは赤だけの頂点からできる立体はどんなかたちでしょうか?

(つづく)



 今住んでいる自宅に住んで二十余年ほどになります。昨日、お隣の家の方から「太陽光発電パネルを屋根に設置します」というご挨拶があったそうです。(私は不在でした。) 両隣の家への説明と署名が必要とのことで、うちからすると2軒隣の家の話なども出たそうです。工事をされるお隣も、さらにその向こうのお宅も、最近ご主人を見かけないなあと思っていたら、お二人ともご病気で入院をされたり療養をされたりしているとのことで、びっくりしました。

 でも改めて考えてみると、私よりおそらく少し上の世代の方なので、もう還暦を過ぎて引退される年代なのだと思います。だとすれば、必ずしも息災でいられるとは限らないのだな、と改めて思い至りました。こちらの厚労省の平成29年簡易生命表の概況という資料をみると、この年の65歳の男性の生存率は89.4パーセントということなので、10人にひとりは亡くなっているということですね。

<おまけのひとこと>
 8月になりました。暑い日が続いています。






8月2日(金) 全ての面が偶数角形の多面体(その4):斜方切頂立方八面体の頂点を1つおきに結ぶ

 昨日のこのかたち(再掲図)の青い頂点を結んでみました(図1)。

再掲図 図 1

 うーむ、なんだかよくわかりませんね。外側の枠を外して、新たに作った多面体の骨格だけにしてみました(図2)。これでもよくわからないので、面を張ってみました(図3)。

図 2 図 3

 やっと感じがつかめました。これはよく知っている多面体と同じ骨格です。色遣いが微妙で申し訳ありませんが、緑の面が正方形、青の面が正三角形、赤の面が二等辺三角形です。

(つづく)



 先日出張で訪問したビルの入り口のドアの左右に、こんな鉢植えがありました(図4)。

図 4

 この植木鉢、多面体っぽくて好きです。

図 5

 たぶん床に接している面は正六角形で、その周りを小さな五角形6枚(これはほとんど見えていません)、その上に六角形6枚、さらにその上に五角形6枚、最後に植木鉢の土の入っている大きな正六角形、という二十面体なのかなあと思って眺めました。

 こちらのオフィスには2月に初めて伺ってから、3〜4回は訪問しました。今週で最終成果報告と成果物受領まで漕ぎつけたので、少なくとも当面の間は再訪する機会はなさそうです。

<おまけのひとこと>
 7月下旬は忙しくて、出退勤記録を見ると、出勤日8日のあいだに時間外勤務が32時間になっていました。これはまずいと思って、昨日は幸い午前中に打合せの予定がなかったのでいつもより4時間くらい遅い11時に出社しました。朝、時間ができたので、先週末に台風が来る前に庭仕事をしたときの草や木の枝がそのままになっていたのを、朝4時半から3時間くらいかけて片付けました。今日はその疲れが出てきています。






8月3日(土) 全ての面が偶数角形の多面体(その5):斜方切頂立方八面体から捩れ立方体(Snub Cube)

 斜方切頂立方八面体の頂点を1つおきに結んで作った凸多面体は、捩れ立方体(Snub Cube)と同じ骨格構造をしていました。過去に捩れ立方体について何を書いていたかなと思ってgoogleのサイト検索をしてみました。

 ジオシェイプスで作ったり、

 ビーズで作ったり(2002年5月16日のひとこと)、

 紙製の多面体の面モデルで作ったり(2002年8月29日のひとこと)、

 してきました。(改めて、ずいぶん前に作ったのだな、と思いました。)



 元の斜方切頂立方八面体のバージョン(図1)と、全ての稜の長さが同じになるように調節したバージョン(図2)を見比べてみてください。

図 1 図 2

 図を見比べて、一瞬「あれ、間違えて同じ図を貼ったかな」と思いましたが、水色の骨格の六角形と八角形の面のかたちを見れば、違いは一目瞭然だと思います。

 これはこんな風に計算しました。

 途中の計算は省略して、各座標を一昨日と同様に1つのパラメータpで表しておくと、距離の計算からpを決めることができます。

(つづく)



 本日8月3日分の更新は、8月4日(日)の朝に書いています。3日(土)は朝から庭の園芸ごみの片づけをしていました。45リットル入りのポリ袋に6つ分になりました(図4)。なんとなく5つに見えますが、階段の1つの段に1つずつあって、その先の庭の土の上にも1つあるので6つです。(手前から3つ目がちょうど死角になって隠れている。)

図 4

 これを市の清掃センターに持ち込みました(無料)。近所のゴミステーションに出すには曜日が限られていて、それまで保管しておくと不衛生なので、袋に詰めたらさっさと出してきたいのです。

図 5

 計量すると20kgありました。これで庭が少しすっきりしました。

<おまけのひとこと>
 朝から庭仕事をしていて更新ができず、週末の2日分をまとめて書いています。






8月4日(日) 全ての面が偶数角形の多面体(その6):立方八面体から斜方立方八面体へ

 斜方切頂立方八面体の頂点を1つおきに結んで作った凸多面体の話、今回でいったん最終回にしたいと思います。昨日、パラメータpの値を調整することでかたちが変わることをご紹介しましたが、もっと広い範囲で変えてみたらどうなるでしょうか?

 最初に、パラメータpをゼロにすると図1のように立方八面体になります。パラメータの値を少しずつ大きくしていくと(図2)、細長い二等辺三角形が生まれてきて、今回得られたかたちに到達します(図3)。

図 1 図 2 図 3

 さらに、p=(√5-√2)/3 になると捩れ立方体になり(図4)、p=√2−1 になると黄色の三角形は直角二等辺三角形になり、かつ2つの面が同一平面上になって緑の正方形と合同な正方形になります(図5)。

図 4 図 5

 立方八面体(図1)から捩れ立方体(図4)を経由して斜方立方八面体(図5)に至る変形の経路になっているのが面白いです。



 これらは、もともと斜方切頂立方八面体の頂点を1つおきに結んだかたちでした。この変形で、もともとの骨格がどのように変化しているのか、gifアニメーションにしてみました。

図 6

 あまりわかりやすいアニメーションではなくてすみません。

<おまけのひとこと>
 図2の、立方八面体をちょっとねじり始めたかたち、なかなか気に入りました。これの模型を作ってみようかな…






8月5日(月) 全ての辺の長さが同じで交差のない平面上の正則グラフ(その1)

 辺と頂点から成る「グラフ」について研究する「グラフ理論」という数学の分野があります。グラフのの頂点の数をそのグラフの位数(order)と言います。また、1つの頂点に集まっている辺の数を、その頂点の次数(degree)と言います。全ての頂点の次数が同じグラフを正則グラフ(regular graph)と言います。

 …などと、世の中にいくらでも存在するグラフ理論の入門編のようなことをここで書いてもしょうがないので、具体例からお話しましょう。マッチ棒を並べて「グラフ」を作ることを考えます。理想的なマッチ棒で、全ての辺の長さは同じで、平面上にあるものとします。この条件で、全ての頂点に集まるマッチ棒の数が同じになるようにしたいのです。

 一番簡単な、「全ての頂点に集まる辺の数が1のグラフ(1-正則グラフ)」は図1左のようにマッチ棒1本だけのグラフです。特に面白いことはありません。次に簡単な2-正則グラフはマッチ棒3本でできる正三角形です(図2右)。

図 1

 さらに正則グラフの次数を増やしてみましょう。図2左は3-正則なマッチ棒グラフ(辺の交差あり)、図2右は4-正則なマッチ棒グラフ(辺の交差あり)です。

図 2

 図2の2つのグラフをどうやって作ったかというと、1つ前のグラフをマッチ棒1本分の長さだけ平行移動したものを繋いで作っています。図の青い辺が新たに追加した辺になっています。残念ながら自己交差ができてしまっています。

 自己交差のない、全ての辺の長さが等しい正則グラフというと、平面上に無くても良いのであれば正多面体がまさにそういう構造になっています。

正四面体(3-正則) 正八面体(4-正則)

 では、平面上で辺の交差のない、全ての頂点の次数が3の等長グラフは作れるでしょうか。次数が4のものはどうでしょうか?

 ちなみに、平面上で辺の交差のない、全ての辺の長さが同じグラフを「マッチ棒グラフ」(Matchstick Graph)と呼ぶようです。(正則グラフである必要はありません。) 図2のものは辺の交差があるのでマッチ棒グラフではありません。図1はマッチ棒グラフです。

 言葉が長くなるので、今日の問いかけは「3-正則なマッチ棒グラフは作れるか」「4-正則なマッチ棒グラフは作れるか」と言い換えておきます。

(つづく)



 後部にこんなイラストが描かれたバスを見かけました。(一応ナンバープレートは消しておきます。)

図 3

 人の顔の部分をアップにしてみます。

図 4 図 5

 昔のアイスクリームの広告に、こんな感じのイラストが使われていなかったっけ? と思ってちょっと検索してみました。ソフトクリーム総合メーカー 日世NISSEIのイメージキャラクターのニックン&セイチャンが、自分が連想したイラストだなと思いました。

図 6

 でも実際に見ると全然違いますね…

<おまけのひとこと>
 土曜日にちょっと出かけたときに、妻とソフトクリームを食べたのです。ソフトクリームを食べたのはとても久しぶりだったのですが、とても美味しかったのです。






8月6日(火) 全ての辺の長さが同じで交差のない平面上の正則グラフ(その2)

 昨日は、平面上で辺の交差のない、全ての辺の長さが同じグラフを「マッチ棒グラフ」(Matchstick Graph)と呼ぶことをご紹介して、全ての頂点に集まるマッチ棒の数が3になっている(3-正則な)状態と、同じく4になっている(4-正則な)状態が作れるでしょうか、という問いかけで終わっていました。

 まず、3-正則なマッチ棒グラフは図1のように比較的簡単に求まります。

図 1

 ご覧のように頂点の数が8、辺の数が12になっています。

 次に、4-正則なマッチ棒グラフですが、これはかなり規模が大きくなります。実はこの問題について知ったのも、芦ヶ原伸之さんの『究極のパズル』でした。

 この図はちょうど1年ほど前、2018年8月11日のひとことで、全然違う話題でご紹介したときの画像です。

 この本の72ページに、上記の問題の答として寄せられたパターンの図が掲載されていたのです。そのページの写真を載せておきます。

図 2

 なぜ急にこの話を始めたかというと、最近arXiv.orgに発表されていた論文で、この問題に関するものを見かけたのがきっかけです。

(つづく)



 昨日帰宅して夕食を食べている時、妻から「馬が角砂糖を喜んで食べる、というのを何から知ったか覚えている?」と尋ねられました。妻自身はルーシー・M・ボストンの「グリーン・ノウ」のシリーズで知ったというのですが、はて私は何だろう? 「ドリトル先生」のシリーズかな、と思って考えてみたのですが、印象に残っているのは三原順の「はみだしっ子」というマンガの7巻あたりの、サーニンが競走馬のエルバージュに出会う話(Part.12 裏切者)の中に出てきたトピックでした。

 大変強いエルバージュという馬が八百長に利用されるのですが、そのときにバルビツール系の薬物を染み込ませた角砂糖を馬に食べさせようとするシーンがでてきて、それを馬ではなく人間が食べてしまう、という話がとても印象に残っています。(バルビツール系の筋弛緩薬という言葉もこのマンガで覚えました。)

 「はみだしっ子」はとても好きなマンガでした。久しぶりにまた読んでみたくなりました。

<おまけのひとこと>
 昨日は帰宅時間が遅くなって、いつもならもう寝ている時間になってしまいました。おかげで今朝は簡単な更新です。






8月7日(水) 「捩れ立方体もどき」の展開図

 昨日のマッチ棒グラフの続きを書こうと思っていたのですが、朝3時くらいからPCのOSのアップデートをつい始めてしまったら、進捗率27パーセントの表示で1時間以上進まなくなって、意を決して再起動したのです。そうしたら「設定を元に戻しています…」という表示で、また数十分待たされて冷や汗をかきました。ようやく環境が元に戻ったのが朝5時過ぎで、それからあわてて更新しているため、今日は簡単な内容です。



 先日のこのかたちの模型を作ってみることにしました。

再掲図

 細長い鋭角二等辺三角形ですが、なんとなく頂角を16°にして設計してみました。こんな展開図にしました(図1)。

図 1

 のりしろも付けてみました。ただし、鋭角二等辺三角形の底辺どうしの部分は短いため、のりしろは省略しました。

 用紙から展開図を切り取ったときのシルエット、写真を撮り忘れたのですがなかなかかっこいいかたちでした。こんな感じです。

図 2

 正方形の部分に白い点線が残ってしまいましたが、それはそれでまあいいかと思って掲載することにしました。

(つづく)



 日本図学会の機関誌「図学研究」の通巻142号(2014年3月)に、こんなパズルが紹介されていました。齋藤綾「幾何学パズル」という論文です。

図 3

 面白そうです。

<おまけのひとこと>
 地下室から「はみだしっ子」1〜13巻を出してきました。1巻は1976年の出版です。出しただけでまだ読んでいません。






8月8日(木) 「捩れ立方体もどき」のペーパーモデルの作成

 昨日の展開図を切り出して組み立ててみました。本日はその写真のみの更新です。

 この立体には正方形の面(緑)、正三角形の面(水色)、鋭角二等辺三角形の面(黄色)の3種類の面があります。図1〜図3は、それぞれの面が床に接するように置いてみた写真です。

図 1 図 2 図 3

 「のりしろ」を接着するタイプのペーパーモデルなので、重心の位置は立体の中心からずれていると思います。そのせいで、鋭角二等辺三角形の面に関しては、全ての面で図3の姿勢で安定するわけではなく、その面を底にして立てようとしても転がってしまう面もありました。正方形や正三角形の面は十分に大きいため、どの面を選んで底にしてもちゃんと安定します。

 正方形の面と正三角形の面を真正面から見てみました(図4、図5)。また、鋭角二等辺三角形の短い底辺の稜を真正面から見てみました(図6)。

図 4 図 5 図 6

 実物の模型があると、いろいろな見方ができたり、気づきがあったりして面白いです。



 机の上に置いて、文鎮(ペーパーウェイト)として使っている木製の一輪挿しの立方八面体と並べてみました(図7)。

図 7

 いい感じです。

<おまけのひとこと>
 まだ公式ページにはアナウンスされていませんが、今年もリスーピアでワークショップをやらせていただくことになりました。9月21日(土)、9月22日(日)の午前・午後の1時間ずつの計4回が計画されています。今回は「世界地図」をテーマにした内容を準備しています。 おそらく1か月前、お盆休み後くらいに公式な案内が出ると思います。よろしければぜひご参加ください。

 上記の教材のデータを7月に送付してあったのですが、うまくデータ処理ができないので形式を変更して欲しいという連絡が昨夜あって、今朝は3時くらいからその作業をしていました。そろそろ5時を過ぎる時刻です。

 浅間山が噴火した、というニュースが流れていました。ちょっと心配です。






8月9日(金) 全ての辺の長さが同じで交差のない平面上の正則グラフ(その3)

 2日ほど別の話題をはさみましたが、4-正則マッチ棒グラフの話の続きです。「芦ヶ原伸之の『究極のパズル』」でも図がありましたが、現在知られている最もマッチ棒の本数が少ない4-正則グラフ(全ての頂点に4つずつマッチ棒が集まっている、交差のないかたち)は“The Harborth graph”と呼ばれているそうです。図はRegular Matchstick Graphs with Integral Edges(Alewyn Burger, Heiko Harborth, Meinhard Moeller)からの引用です。

The Harborth graph

 なお、一連のグラフは辺(マッチ棒)の数ではなく、頂点の数で議論されています。n-正則なグラフの場合、辺の数は頂点のちょうど2倍になっているので、この104本のグラフの頂点数は52です。これよりも頂点数が少ない4-正則マッチ棒グラフは知られておらず、また52頂点が最小であることも証明はされていないのだそうです。

 こちらのOn the existence of 4-regular matchstick graphs(Mike Winkler, Peter Dinkelacker, Stefan Vogel : 2017)から、4-正則マッチ棒グラフの4つの例の図を引用します。

図 2 図 3

 52頂点(104本)と54頂点(108本)です。上下、左右に鏡像対称で、点対称でもある、よく似たかたちです。菱形っぽいかたちです。

図 4 図 5

 頂点数57(114本)と頂点数60(120本)です。57のほうは3回回転対称で、正三角形っぽいかたちです。60のほうは12回回転対称で、とても美しいかたちだと思います。12なので時計の文字盤みたいですね。

 6月にarXivに公開された論文は、頂点数が51の4-正則マッチ棒グラフを探してみた話だったのです。(見つかったわけではないです。)

(つづく)



 「芦ヶ原伸之の『究極のパズル』」には、The Harborth graphそのものである104本の解が掲載されていて、京都大学の矢部寛教授(当時)が発見されたと紹介されていました。この問題が雑誌「Quark」で出題されたのが1987年2月のようなので、残念ながらThe Harborth graphが発見された1985年よりも2年遅れての発見だったようです。

 どうもこの問題は、有名な数学者であるポール・エルデシュに端を発する問いのようです。関係する文献を調べてみたいなあと思っています。

<おまけのひとこと>
 昨日8月8日は誕生日でした。母からはメールでメッセージを、子供たちからはLINEでメッセージを貰いました。妻が獺祭スパークリングを買っておいてくれました。ありがたいです。






8月10日(土) 4-正則なマッチ棒グラフの近似解

 このところご紹介している、4-正則マッチ棒グラフの話を書こうと思ったのは、Approximate Solutions of 4-regular Matchstick Graphs with 51 -- 62 Vertices(Mike Winkler:2019)という論文を見たのがきっかけでした。 繰り返しの説明になりますが、「4-正則」というのは、すべての頂点に集まるマッチ棒の数が4であることを言っていて、「マッチ棒グラフ」というのは、全ての辺の長さが同じで、辺の交差は許さない平面上のグラフであることを示しています。

 論文のタイトル「位数51〜62の4-正則マッチ棒グラフの近似解」が示すように、現在知られている最小な位数(頂点の数)52の“The Harborth graph”よりも小さい位数51の4-正則マッチ棒グラフを探索した論文です。最初のページに誇らかに描かれているのが位数51の4-正則な疑似マッチ棒グラフです(図1)。

図 1

 赤い3本の辺が、残念ながら長さが1ではない辺です。左から 約0.9635537983258…、約1.0034217884787…、約0.9930150272216… だと書かれています。

 以下、上記の論文からの図の引用です。いずれも正確な解ではなく、長さが1ではない辺(赤い辺)を含みます。詳しくは論文をみてください。

図 2 図 3

 図2は位数53、左右対称なかたちです。図3は位数54、点対称なかたちです。

図 4 図 5

 図4は位数56、一見4回回転対称に見えますが、点対称だそうです。図5は位数57、3回回転対称です。

 こうやって図だけ見ているだけでも楽しいです。この論文についてご紹介したくて、その背景を3回にわたって説明してきたのでした。

<おまけのひとこと>
 8月11日(日)の朝に、8/10、8/11の2日分の更新をしています。






8月11日(日) “Naked Geometry”(Mike Naylor)

 先月開催された“Bridges”の論文集のpdfが公開されていたので、少しずつ楽しみに観始めています。その中からたどっていって、こんなページに行き着きました。

図 1

 Naked Geometry (Bridges 2009:Mike Naylor et al.)というページです。こんな風に人間の身体を使って、多面体の骨格構造や対称構造を作るという試みです。とても楽しそうです。逆さになっているお二人は大変そうですが… (「早く写真撮って!」「もうやめていい?」という声が聞こえてきそうな感じです。)

 あと30歳くらい若ければ自分でもやってみたいかな、と思いました。この写真そのものも10年前のようですが。

<おまけのひとこと>
 すみません、時間がなくて簡単な更新です。






8月12日(月) 神之峰城再訪(その1):文永寺から歩いてみる

 すみません、お盆休みはずっと更新をお休みしてしまいました。「時間があっていつでもできる」と思うと全然やらない、というのは私の昔からの悪い癖です。いろいろやりたいこと、やらなければいけないことをやっていたら、このページの更新がついおろそかになってしまいました。 8月12日〜8月15日の4日分を使って、ちょうど1年前に訪問した長野県飯田市の「神之峰城」の再訪記を書いておきたいと思います。いつもとは違うジャンルの話題で、興味がない方はごめんなさい。



 昨年の8月15日に、神之峰城を訪ねてという記事を書きました。その時の地図を再掲しておきます。神之峰城というのはこのあたりにあって、

再掲図 1

 中央高速道の飯田ICから、JR飯田線と天竜川を越えて東に車で30分程度です(図2)。

再掲図 2

 今年も8月10日(土)に帰省してきた息子と二人で行くことにしました。昼間は暑いのでできるだけ早く家を出よう、ということで、8月11日(日)の朝5時半に出発して、飯田ICには6時50分ころ、文永寺には7時15分ころに到着しました。とりあえず500mlの水のペットボトルを1本ずつ持参していたのですが、息子が「今年は文永寺から歩いてみたい」というのです。

図 1

 調べてみると標高差も300m以上で距離も5km以上あります。現地や途中の寺社にも寄りながら行くとすると徒歩だと半日コース、明らかに装備が不足しています。途中で飲み物の補給ができないようだったら車に戻ろうと決めて、7時20分くらいに歩き始めました。途中、お店があるとは考えにくいので、自販機だけが頼りです。

 途中は起伏も多く、果樹園や田んぼ、雑木林の合間に民家が点在する、くねくねと曲がった道を歩きました。車の通る大きな道を避けて、古い細い道を歩きました。ところどころ視界が広くなっているところがあって、飯田の谷を見渡すことができました(図2)。

図 2

 歩き始めて30分くらいのところに、道沿いに数軒の集落があって、おそらく昔はその集落の中心の「よろず屋」さんだったとおぼしき立派な家の前に自動販売機がありました。ありがたく2本、スポーツドリンクを買わせてもらいました。

図 3

 さらにもう30〜40分歩いて、ようやく目的地のふもと近くまで来ました(図4)。歩いた道はだいたいこんな感じでした。

図 4

 その後、昔の地図にはあった遺構などを探して図5の十字マークのあたりまで登ってみたのですが、頂上の神之峰城跡に続く道は見つけられず、いったん高速道路下のあたりまで引き返しました。5km以上歩いてきて、あと200メートルくらいというところでした。

図 5

 この時点で出発から2時間ちかく、気温もだいぶ上がってきていました。さらにもう1本ずつ、飲み物を自動販売機で調達していました。これから山のふもとをぐるっと回って頂上まで登って、同じ道を引き返すのは私は体力的に無理だなと思ったので、「もし頂上までがんばって登るなら、私はここから文永寺に引き返して、車で頂上まで迎えに行くけどどうする?」と息子に尋ねると、自分も一緒にいったん車に戻る、というので、二人で引き返すことにしました。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 昨日、8月11日(日)は、息子は朝4時50分くらいに起きてきたのですが、私がこのページの更新をしていて、家を出るのが遅くなってしまいました。せっかく早起きしてくれたのにごめん。






8月13日(火) 神之峰城再訪(その2):上久堅郷土歴史資料館

 昨日の続きです。結局車には10時20分くらいに戻って、そこから途中で小さな社とかに寄りながら、昨年同様神之峰城を車で目指しました。今年は息子の道案内で山をぐるっと周回する道を走りました。ほとんど誰も利用していない道のようで、枝が道にかぶさっていたり、路面に枯葉が積もっていたり、怖い道でした。

 昨年同様、上久堅郷土歴史資料館の前の空き地に車を停めました。今年は資料館に入ることができました。

図 1

 資料館は開館しているときでも無人です。高床式なので、入り口の小さな玄関からすぐにまっすぐ階段を上がって、展示フロアに入ります(図2)。室内や展示棚の照明は、見学者が自分で点けて自分で消してくださいと書かれています。

図 2

 昔の道具の展示に心を惹かれました。箱枕(図3)。

図 3

 昔も書きましたが、「箱枕」は祖母から教わったあやとりとして名前を覚えました。「さかずき」として有名なあやとりです。

箱枕

 五つ玉のそろばんと天秤ばかり。こんなそろばんを、商売をやっていた私の父は愛用していました。

図 4

 下駄スケート。さすがに私は経験がありませんが、私の父(昭和12年生まれ)は子供の頃はスケートといえば下駄スケートだったそうです。子供のころ、土蔵に入っていたのを見た覚えがありますが、もう処分してしまったと思います。

図 5

 この資料館は平成23年に竣工したとのことで、まだ新しいのです。新しく高速道路規格の道路を建設していたりして、なんというか地域として「がんばっているのだな」と感じました。

(つづく)



 あやとりと言えば、こんな箸置きをNetで見かけました(こちら)。

図 6

 糸でかたちを作って漆(うるし)で固めた作品だそうです。864円だそうですが、繊細な工芸作品で、この値段というのは作り手にとっては厳しいと思いますが、でも「箸置き」ですからあまり高いと売れないでしょうし、難しいですね。でも繊細で実用にするのは勇気が要りそうです。

<おまけのひとこと>
 特別なお客様のときに使うのかなあ、でもそんなお客様はうちには来ないな、と思いました。






8月14日(水) 神之峰城再訪(その3):興禅寺、玉川寺

 神之峰城再訪の3回目です。11時くらいに郷土歴史資料館を出た後、息子の希望でこの地域を治めていた知久氏のゆかりのお寺を回ることにしました。

図 1

 まず興禅寺に行きました。立派な門構えで、大きな樹木があるお寺さんでした。お寺から神之峰城の峰がよく見えました。

図 2

 赤い「ほおずき」(鬼灯)がたくさんお供えされていました。(写真の色が悪いですが)

図 3

 お盆に「ほおずき」をお供えする、という風習は私の生まれ育った地域ではなかった気がします。

 途中、山の上ではない久堅神社に寄った後、玉川寺に行きました。ここも立派なお寺さんでした。

図 4

 立派な楼門(と言ってよいのでしょうか)があって、そこが鐘楼になっていました。調べてみると鐘楼門というのだそうですね。各地に立派な鐘楼門を持つお寺があるようです。

図 5

 階段があって、特に止められていなかったのでちょっとだけ上らせてもらいました。

 この地域にこんな立派なお寺さんがいくつもあって、昔は栄えていたのだということを実感します。今でもきれいに手入れされていて、きちんと整備されているのが素晴らしいです。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 実は「ほおずき」という言葉の平仮名での表記が自信がなかったのです。2文字目が「お」なのか「う」なのか、3文字目が「ず」なのか「づ」なのか、2×2で4通りの表記が考えられました。検索してみると「ほおずき」以外の表記をしているページもけっこうありました。






8月15日(木) 神之峰城再訪(その4):久堅神社

 神之峰城再訪記の4回目、最終回です。昨日写真を載せた興禅寺に行った後、玉川寺に行く前に通り道にあった久堅神社に寄りました(図1)。

図 1

 中に入ってみると、なんだか学校っぽい建物があるのです(図2)。境内というよりは敷地という感じです。

図 2

 小さなプールというか水浴び場といった設備もありました(図3)。

図 3

 建物はもちろん施錠されているのですが、ガラス窓から中の様子がわかります。ここは職員室、ここは教室、ここは調理室かな、といった感じで、おそらく分校だったのかなと想像しました。

 地図を見ると、近くに飯田市立上久堅小学校というのがあるようです。行ってみませんでしたが、検索すると学校のホームページがあって、ちゃんと管理・更新されているようでとても感心しました。2019年3月の卒業生は4名だったそうで、2019年4月の新年度の児童数は49名、と書かれています。これからの地方の厳しさを感じさせる数字ですが、ホームページの記事は明るく前向きで、心温まる気持ちになりました。



 今回は、卒論のテーマとして知久氏を選んだ息子の現地調査に便乗して、このあたりの散策をさせてもらいました。息子は日本史を専攻しているのですが、古代史と近世は学生に人気があるのだそうですが、中世はあまり人気がないのだそうです。でも息子は中世を専門とするゼミに加わって、知久氏と神之峰城について調べているのです。

 ほとんど観光地化されていないこの地域を今年は歩いてみて、とても面白かったのです。知久氏が治めていた当時のこと、私の両親や祖父母の時代のこの地域のこと、今住んでいる人たちの生活のことなど、ちょっと調べてみたりいろいろ想像してみたりして、とても楽しい経験でした。

<おまけのひとこと>
 歳をとると郷土史とかに興味が出てくると言いますが、実感としてよくわかりました。自分の専門とは全然違う世界で、それがとても新鮮で面白いです。よもや成人した息子とこんな「旅行」ができるとは想像もしていませんでした。






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