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以前の「ひとこと」 : 2019年7月前半



7月1日(月) 貝形六角多面体(hexaclam)の模型を設計する

 先日ご紹介した二枚貝多面体の実物の模型を作ってみようと思いました。同じものをいくつか作ってブロックのようにつないでみるとすれば、六角形の二枚貝多面体が面白そうです。「六角二枚貝」という言い方がちょっと違和感があったので貝形六角多面体と呼んでみました。これもいまひとつです。

図 1

 組み合わせることを考えて、平面図(上面図)が正六角形になること、側面が正方形になることを条件にかたちを決めました。三面図は図2のようになります。

図 2

 このかたちは7つの面があります。二等辺三角形が2面、等脚台形が2面、平行六角形が2面、そして正方形が1面です。それぞれのかたちは図3のようになりました。

図 3

 六角形の面、一見すると正六角形に見えますが違います。裏返して重ねてみると、このくらいのずれがあります(図4)。

図 4

 のりしろを含めてこんな展開図を設計してみました(図5)。

図 5

 最初に図5の左右、正方形の面の縁を六角形の面と貼り合わせて、後は等脚台形、三角形を順に貼ってゆく手順です。図5の展開図をA4の用紙に3つ配置して、印刷して模型を作ってみました。

(つづく)



 先月中旬の週末に娘が帰省してきていました。そのときに「父の日」と言って、岩波文庫のデザインのノートをプレゼントしてもらいました(図6)。

図 6

 こういうのは使うのがもったいないなと思って結局使わずじまいになってしまうことが多かったので、どんどん使うことにしました。最初のページに、貝形六角多面体の設計メモを描いてみました。

図 7

 詳しくは説明しませんが、平面図の正六角形の一辺の長さを1としています。そうするとまず、正方形の一辺の長さが1になります。(六角形の面は水平ではないので、一辺の長さが1の正六角形を使ってしまうと、平面図が正六角形になりません。) また、10個ある全ての頂点の座標が決まるので、あとは三平方の定理を駆使してそれぞれの面の形が決まるように寸法を計算してゆきます。√13とか√17といった無理数が出てきましたが、これはExcelに数値計算してもらいました。

 私はまだ、こういうメモは手描きのほうが圧倒的に効率がいいです。

<おまけのひとこと>
 このサイトの表紙の一番下に載せている「あそびをせんとや」についてというページに、リスーピアワークショップのときの写真を載せてみました。






7月2日(火) 貝形六角多面体(hexaclam)を連結したCD

 昨日設計してみたhexaclam(貝形六角多面体:この呼び方もいまひとつです…)、CGでいろいろな連結のしかたを試してみました。

貝形六角多面体

 まずは六角形の面を合わせてみました。斜六角柱になります(図1、図2)。

図 1 図 2

 これ(貝形六角多面体2個による斜六角柱)は空間を充填しますね。いい感じです。

 次に、6ユニットを円環状に繋いでみました。図3は二等辺三角形どうしをつないで作った、外側が厚くて内側の厚みがゼロのもの、図4は等脚台形の面をつないで、内側が厚いものです。

図 3 図 4

 図3のものと図4のものは、交互に重ねてゆくことができそうです。

 六角形の面をこんな風につなぐこともできます(図5)。今回の設計では、一番高さがある面を正方形になるように決めたので、きれいに整数個で閉じたかたちにはならいかなと思います。

図 5

 このかたち、一瞬だけ「巻貝っぽいな」と感じましたが、寸法が変化しないので螺旋にはなりません。

 こんなふうに一直線に並べてゆくこともできます(図6)。

図 6

 二等辺三角形の面どうし、等脚台形の面どうしを交互に繋いでゆくとこうなります。

 いろいろなかたちが作れそうで楽しいです。

(つづく)



 食品スーパーで、「信州 鬼無里 きなさと読みます 野沢菜 油炒め」という瓶詰が賞味期限が近くて安く売られていたのを見つけて買ってみました。

図 7

 昔、自宅では野沢菜漬け(「お葉漬」と呼んでいました)を漬けていました。冬を迎えるころに漬けて翌年の春くらいまで食べるのですが、浅漬かりからだんだんしっかり漬かっていって、数か月単位で味が変わってゆくのです。最後の頃になって深く漬かりすぎのものを、細かく切って油で炒めて「おはづけチャーハン」にして食べたりしていました。

 購入した瓶詰の野沢菜油炒めは、そんななつかしい味がしました。ご飯にのせて食べたりしていたのですが、昨夜、妻に頼んでチャーハンにしてもらいました。「ああ、この味だったなあ」と美味しくいただきました。いわゆる「思い出補正」がかかっているのだろうと思いますが、子供の頃に食べた時よりもずっとおいしく感じました。忘れていたいろいろなことを思い出しました。古くなった食材の使いまわし料理ということで、当時は必ずしもご馳走でも好物でもなくて、密かに「普通のチャーハンのほうが良かったな…」なんて思ったりしていたのですが、普通のチャーハンならどこでも食べられますけれども、野沢菜チャーハンはなかなか食べられない珍しくてなつかしい食べ物になりました。

 検索してみるとこちらに情報がありました。また見かけたら買おうかなと思いました。

<おまけのひとこと>
 今日7月2日は亡父の命日です。父は料理が上手でした。「おはづけチャーハン」も父に作ってもらったこともあったような憶えもあります。






7月3日(水) 貝形六角多面体(hexaclam)の模型(その1):斜六角柱

 今週からご紹介しているhexaclam(貝形六角多面体)の模型を3個、作ってみました。まずはばらばらに置いてみました(図1)。

図 1

 一番安定な姿勢である六角形の面を下にしたものが2つと、次に安定な姿勢である正方形の面を下にしたものです。

 2つを六角形の面で合わせて、斜六角柱を作って横向きに立ててみました(図2)。

図 2

 斜六角柱を床に置いて、上に乗せたパーツが滑り落ちてこないように正方形の面を合わせて3つ目をストッパーとして置いてみました(図3)。

図 3

 さらに、斜六角柱を正方形の面で立てて、3つ目のパーツを正方形の面を合わせて置いてみました。正方形なので90度回転させることができます(図4)。

図 4

 これは不安定です。3つ目のパーツを載せたほうは、二枚貝のジョイントに相当する稜(Edge)だけが床に接している状態です。

 たった3パーツでも、いろいろな積み方ができて楽しいです。

(つづく)



 昨日は出張でした。帰りの東京駅で少し時間があったので、駅の中を少しうろうろしました。こんな短いエスカレータがあってちょっと面白かったです(図5)。

図 5

 これは16時半くらいに撮った写真です。夕方の通勤時間帯の前で、東京駅としては比較的人が少ない時間帯でしたが、それでも人がいなくなるのを数分間待って写真を撮りました。

 さらに、人の流れが途絶えた時に慌てて撮った一枚です(図6)。隣の階段が8段ですから、エスカレータも8段くらいかな、と思います。

図 6

 いくら急いでいたからと言って、酷いフレーミングの写真です…。せめて下りエスカレータの両脇の手すりは全部入った構図にしたかったのですが、人の多い駅の中で「あとずさり」するのは大変迷惑で危険な行為です。それどころかエスカレータ付近で立ち止まること自体が迷惑です。きょろきょろと後ろを振り返って人がいないことを確認して、1枚シャッターを切るのが精いっぱいでした。

<おまけのひとこと>
 今度宿泊で出張の機会があったら、早朝に駅の中の写真を撮りに行くのも面白いかな、と思いました。






7月4日(木) 貝形六角多面体(hexaclam)の模型(その2)

 hexaclam(貝形六角多面体)の模型3個を積み木のように組み合わせて遊んでみています。

図 1 図 2

 3個しかないですけれども、こうやってずっと並べてゆくと正六角柱になります。この置き方もシンプルで良い感じです。

 次に、二枚貝の蝶番に相当する稜を合わせるように六角形の面を合わせてみました(図3)。

図 3

 カッティングマットの上に載せて写真を撮っているのですが、図3はパーツが左に倒れないように、カッティングマットをやや右に傾けています。

 これ(の一部)を横倒しにしたかたちです。



 3つを縦に積み上げてみました(図4)。

図 4

 紙模型で軽いので、位置がずれてしまいがちですが、でも安定して姿勢を保っています。

 これはCGにもしてみました(図5)。

図 5

 もう少し遊んでみます。

(つづく)



 7月2日の東京出張の帰りは珍しい東京駅始発の中央線特急に乗ったのですが、発車時刻直前まで列車は入線してこないため、駅の中を歩き回ったりしていたのです。昨日はそのときに見た短いエスカレータの写真を撮ったりしたのですが、こんな写真も撮りました。

図 6

 駅構内に置かれている椅子としてはデザイン性の高いものだなと思うのです。この椅子が5〜6脚並べられていました。調べてみると、これはチェア ワン(Chair One)という作品のようです。以前にもどこかで見たことがあったような気もします。多面体好きには心惹かれるデザインです。まあでも自分で買って自宅に置きたいか、というと、ちょっと違う気がします。

<おまけのひとこと>
 強い雨が降っています。






7月5日(金) 貝形六角多面体(hexaclam)の模型(その3)

 hexaclam(貝形六角多面体)の模型3個のご紹介の最終回です。3つをアーチのように積んでみました。

図 1

 パーツ同士、および床に接している面のかたちがわかるように、同じ位置関係になっているCGも作ってみました。

図 2 図 3

 図1〜図3は、二等辺三角形の面どうしが接しているパターンです。

 次に、台形どうしが接しているパターンです。

図 4

 アーチの内側は正方形3枚のトンネルになっています。

図 5 図 6

 もう少し対称性が低いパターンです(図7)。

図 7

 これもなかなか面白いです。

図 8 図 9

 とりあえずいろいろ試してみて、いったん満足しました。



 昨日も湯島(東京)に出張でした。お昼はちょっと歩いて「三四郎麺」というのを食べてきました。

 つゆのないあんかけ麺に玉子がトッピングされていて、美味しかったです。ただ、蒸し暑くて汗がたくさん出ました。

<おまけのひとこと>
 打合せは10時からでした。御茶ノ水に9時半過ぎに着いて、いつもならそこから歩くのですが、雨が降っていたので千代田線で一区間(新御茶ノ水→湯島)地下鉄に乗ってしまいました。新御茶ノ水駅の長いエスカレータを下ってホームに入ると、ちょうど列車がホームに到着したので先頭の車両に乗りました。湯島駅では最後尾側の出口から出たかったので、10両編成分の長さのホームの先頭から最後尾まで歩きました。最後尾まで行き着く前に次の列車が到着しました。この列車の運行密度の高さはすごいですね。






7月6日(土) 全ての面が偶数角形の多面体(その1)

 先週の出張の時、H.S.M.CoxeterのRegular Polytopes(図1)を持参して移動中に読んでいたのですが、

図 1

 その中の最初のほうに、「全ての面が偶数角形(四角形、六角形、八角形…)の多面体の頂点を、互いに隣接しない(稜でつながっていない)2つのグループに分けられる」という話が出てきます。最もシンプルな例として立方体が挙げられています(図2、図3)。

図 2 図 3

 このように、立方体の8つの頂点を2つのグループに分けることできます。これは奇数角形の面があったら成立しません。なぜならば、奇数角形の面の頂点に赤・青・赤…と交互に順にマークしてゆくと、かならず同じ色がどこかで隣接せざるを得ないからです。

 赤どうし、青どうしを繋ぐと、それぞれ正四面体になっています(図4、図5)。

図 4 図 5

 菱形十二面体の例も出てきました。今回は頂点の色分けだけ載せます。

図 6 図 7

 菱形十二面体は頂点は14個あります。1つおきに赤と青のマークをしてゆくと、7個ずつではなく、6個と8個のグループに分かれます。菱形の鋭角が4つ集まった次数4の頂点(赤)が6つ、菱形の鈍角が3つ集まった次数3の頂点(青)が8つです。赤を結ぶと正八面体、青を結ぶと立方体になっています。

 同様に、図示しませんが、菱形三十面体の頂点は次数3の頂点20個と次数5の頂点12個に分けられて、それぞれを結ぶと正十二面体と正二十面体になります。



 さて、全ての面が偶数角形の多面体というと、有名なものではほかにはどんなものがあるでしょうか? まず思いついたのが切隅八面体(Truncated Octahedron)でした。

図 8

 この頂点(24個あります)を同様に互いに隣接しない2グループに分けて、それぞれを結ぶとどんな多面体になっているでしょうか?

(つづく)

<おまけのひとこと>
 昨日7月5日(金)は会社の健康診断でした。千数百人の勤務者がいる事業所で、2週間ほどかけて実施されます。いつも、朝いちばん(7時半開始)の時刻に予約をしています。昨日も自宅は5時半過ぎに出て、職場には6時半くらいに着いて、問診票を書いたり準備をして会場に行きました。期待通りほとんど待たずに全ての測定や検査をしてもらうことができました。






7月7日(日) JOVOブロックでカライドサイクルを作ってみた

 今日は単発の話題です。ふと思い立って、カライドサイクルを作ってみようと思いました。「しごと・あそびごと・ひとりごと」のカライドサイクルという記事で、これらの基本であるIso Axisの話から始まっていくつかの形状のものやその組み合わせが紹介されていて、おすすめです。いずれは作ってみたいと思いつつなかなか機会がありませんでした。

 ちょっと検索してみると、作り方の動画や作品の画像がたくさん出てきます。私は最初にA4サイズのレポート用紙を縦長に3等分くらいに切って、それをさらに縦長に折って、それっぽい展開図を折り紙の手法で作って試作してみたのですが、出来栄えがあまりよくなかったので、いっそ多面体ブロックで作ってみようかと思いました。

 多面体ブロックでは2つの正四面体の稜を接続することはできないですし、ジョイントとしての可動範囲にも制限があります。なのでジョイント部分は別の材料で挟み込むようにして作ることにしました。

 完成した写真です(図1、図2)。

図 1 図 2

 ジョイントは、いつも紙模型を作っている用紙の切れ端で幅1cmくらいの帯を作って、その両端を折り曲げてホッチキス止めしてみました(図3)。

図 3

 これを6つ作って組み合わせます。

図 4

 ジョイント部分の「あそび」を大きくしすぎているため、連結されているはずの稜がずれているのが残念です。透明な粘着テープとかで作れば丈夫で簡単でしょうけれども、後で分解したときに粘着剤が残ったりするのが嫌だったのでこういうジョイントにしました。作っていて楽しかったです。



 先日の東京出張のときに湯島から本郷のあたりを歩いたのですが、歩道のタイリングがこんなパターンでした。

図 5

 このパターンを言葉で説明できますか? もしくは、部品である2種類のパーツがたくさんあったら、この写真を見ずに(お手本なしで)このパターンを再現できますか?

(つづく)

<おまけのひとこと>
 我が家の庭の白樫の木の枝とバラの株の枝が隣家の庭にはみ出しています。今日はその剪定をしようと思っていたのですが、朝から雨でした。剪定前と剪定後の写真を撮って、今日の更新のネタにしようと思っていたのですが当てが外れました。






7月8日(月) 石畳のパターン(その1)

 昨日の最後に掲載しておいたパターンを図にしてみました(図1)。

図 1

 これがどんなパターンかというと、









































一応、ちょっと間をあけますね









































 こんな風に見ると、このパターンの構造がよく理解できます。

図 1(再) 図 2 図 3

 過去にも何度かご紹介してきた「檜垣」のパターンです。

 gifアニメーションにもしてみました(図4)。

図 4

 改めて歩道の画像を見てみましょう。

再掲図

 いかがでしょうか。



 このような2種類の長方形によるタイリングパターンというのがよく用いられるのだろうか? と思って、googleの画像検索をしてみました。パターンとして同じになっているものは出てこなかったのですが、モノトーンのタイリングのパターンがたくさんでてきました。

 その中で、こんなパターンに興味を惹かれました。図5は、こちらのfrench pattern Travertine(08-21-2006)にあった画像です。

図 5

 また、こちらのWhite Marble Mosaicというページにはこんな商品画像(図6:縮小して一部を表示させていただいています)がありました。

図 6

 いずれも、1x1、1x2、2x2、3x2の4種類のタイルを組み合わせています。

図 7

 この、図5と図6のパターンの特徴は何でしょうか。一番大きな特徴は「4つのパーツの頂点が集まる場所が無いこと」だと思います。タイルの目地の部分を道だと考えると、全ての交差点は必ずT字路になっていて、十字路は存在しません。「檜垣」も同様な特徴を持っています。(いわゆる「レンガ積み」も十字路ができないように積みますが、水平方向には分断線があります。) 十字路が存在しないというのは、誤差が出にくいとか、強度が高いといった実用上の特徴もありそうです。

 他には何か特徴があるでしょうか。これらはランダムなパターンでしょうか、それとも他にも特徴があるでしょうか?

(つづく)

<おまけのひとこと>
 全ての面が偶数角形の多面体の頂点を1つおきに選んで新しい多面体を作る話の続きを書こうと思ったのですが、このタイリングの話が面白くて、そちらを先にご紹介することにしたのでした。






7月9日(火) 石畳のパターン(その2)

 昨日、1x1、1x2、2x2、3x2の4種類のタイルを使った、ランダムに見えるパターンを2種類ご紹介しました。

再掲図 1 再掲図 2

 このそれぞれの画像をお手本にしてパターンを自分で描いてみたのですが、そうしたら2つのことに気が付きました。これらはいずれも周期性がある、ということと、そもそもこの2つのパターンは同じだ、ということです。びっくりしました。

 このように、6x6単位が繰り返されているのです(図1)。

図 1

 1x1が4つ、1x2が2つ、2x2が4つ、3x2が2つです。

 ブラウザの背景に画像を並べる機能を使って、このパターンを広げてみました。モノトーンで目地が黒の画像と、青系で目地が白の画像を用意してみました。下のそれぞれの画像をクリックしていただくと、別ウィンドウでタイリングパターンが開きます。

 いかがでしょうか。こうしてみると明らかな周期性が見えると思います。広がったタイリングパターンを眺めていたら、またいくつか気付いたことがありました。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 妻が歯と歯茎の調子が悪くて困っているというので心配しています。






7月10日(水) 石畳のパターン(その3)

 1x1、1x2、2x2、3x2の4種類のタイルを使って、タイル4枚が1つの頂点に集まることのない、言い換えると目地に十字路が存在しないパターンについて調べています。昨日はwebブラウザの背景のタイリング機能を使って、タテヨコの周期が6のパターンをご覧いただきました。一部分を切り取ってみます(図1)。

図 1

 周期が6なので、上下・左右に6単位移動したところには同じタイルが存在します。2x2のタイルの6単位の格子に注目してみると、面白いことに気が付きました(図2)。

図 2

 このパターンの周期の単位には4つの2x2タイルが含まれていますが、そのそれぞれが作る格子の内側に注目すると、輪郭が同じで中のタイルの位置関係が異なるパターンになっているのです。その部分だけを取り出してみました(図3)。

図 3

 それぞれのパターンの4辺に、“A”“B”というマークを付けました。Aは辺の中央だけで分割されているもの、Bは辺の中央は連続しているもの、です。Aどうし、Bどうしを向かい合わせると十字路ができてしまうのですが(正確にはBどうしを接続しても十字路ができない組み合わせも存在します)、AとBを向かい合わせている限り、十字路は生じません。

 ということは、図4のような6x6の格子を考えて、その頂点に2x2タイルを配置して、残った隙間の部分を図3のタイルセットを使って向きに注意しながらランダムに埋めてゆけば、十字路が存在しないランダムなタイリングパターンが作れる、ということになります。

図 4

 まずは手作業で試してみました(図5)。

図 5

 うーむ、「まあまあ」かなあ…。 どこが6x6の単位格子の正方形になっているかわかりますか? 乱数表を使ったりとか乱数生成とかをしないでいい加減に適当にやったら、局所的に似たようなパターンが生じてしまいました。まあそれも確率的には生ずるものですけれども。

 この図を見ていたら、もっときちんとした精度の図をCGで作ってみたくなりました。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 ここ数日、バッハのパルティータ第4番ニ長調BWV828のグールドの演奏を好んで聴いています。このCDは学生時代に買ったもので、おそらく少なくとも100回以上は聴いています。1963年の録音で、パルティータ全6曲のうち最後に録音されたそうです。パルティータは1番、4番、5番が長調、2番、3番、6番が短調で、昔は短調の曲のほうが圧倒的に好きだったのですが、久々に4番を聴いて「ああ、こんなにいい曲だったんだ」と感激しました。

 学生の頃は奨学金とアルバイトで学費・生活費を賄っていたのですが、当時はCDの出始めで、1枚3,000円を超えるようなものもたくさんありました。CDはいつも、買おうかどうしようか悩んで悩んで買っていました。買うと嬉しくて何度も何度も聴きました。

 貧しいよりも豊かなほうが良いに決まっていますが、容易に手に入らないからこそ想いが強くなる、大事にする、ということはあるよなあと思います。






7月11日(木) 石畳のパターンのCGの準備

 このところ思いがけずご紹介しているタイルのパターン、気に入ったのでCGを作ってみることにしました。今日は画像の枚数が多い更新です。(それぞれのファイルサイズは小さいです。)

 

 せっかくCGにするので、いろいろなパラメータを変えられるようにしようと思いました。まずはタイルを配置する基本の格子の寸法を1として、目地の分と面取りの分を変えられるようにします。

図 1

 単位格子からタイルまでの隙間を「ギャップ」(gap)、面取りの幅を「チャンファ」(chamfer)と呼ぶことにします。チャンファというのは聴き慣れない単語だと思いますが、例えば円柱状のピンを挿入するときに入りやすいように先を少し細くするように加工した状態のことをチャンファと呼ぶようです。

図 2

 今回は平面で面取りするのではなく、稜は円柱状に、頂点は球面状になるように加工することにします。 目地の幅と面取りの幅をそれぞれ2水準振ってみました(図3〜図6)。

図 3:gap 0.04, chamfer 0.12 図 4:gap 0.04, chamfer 0.18
図 5:gap 0.08, chamfer 0.12 図 6:gap 0.08, chamfer 0.18

 数字を1箇所書き換えるだけでこういった図をどんどん描画できるのがCGのすばらしいところだと思います。30年前の8bitや16bitのパソコンだったらこの絵を1枚描画するのに何分、いや何時間かかったかなあと思うと、計算機の進化は本当にありがたいです。



 さて、昨日は「外周のかたちが同じで中身が異なる6×6単位のユニットをランダムに選択し、うまく隣接させてゆけば全体として規則性がみえないパターンを作れる」という話をしましたが、そのユニットになるものを整理してみました(図7〜図12)。

図 7 図 8 図 9
図 10 図 11 図 12

 今度は背景(目地)を白にして、形状の異なるタイルの色を変えてみました。赤・青・黄・緑で少し彩度を落として若干パステル調にしてみました。上下に並んだ2つの図、例えば図7と図10は鏡像対称です。対称軸は左上から右下の45度の線になります。図8と図11、図9と図12も同様です。

 いずれも上辺と左辺が中央だけで分割されていて、右辺と下辺は中央はつながっているパターンです。6つのユニットを表示していますが、これらから任意に2つを選んで(向きを回転させずに)上下左右に並べても十字路はできません。ということは回転とか辺のパターンを考えなくても、この6種類からランダムに1つずつ選んで並べてゆくだけで、全体としてランダムに見えるパターンが生成できるはずです。

 (6×6ごとに正方形が出てくるのは残念ですが…)

 これをCG化してみることにします。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 CGなので、石やガラスといった素材のテクスチャのCGを作るという方向も当然考えられるのですが、その前にまず基本的なかたちの検討をしました。

 昨夜は帰宅が遅くなって、珍しくいつもより2時間くらい遅い夜11時過ぎに寝たのですが、夜中に足がつって痛くて目が覚めて、そのまま起きています。それから数時間経つのですが、まだ足(ふくらはぎ)が痛くて普通に歩けません。まあ左足なので車の運転には支障はありませんが…。「足がつる」というのは初めてではないのですが、こんなに時間が経過しても痛みが残っているのは初めてです。困ったものです。






7月12日(金) 石畳のパターンのCGなど

 さて、昨日準備したユニットを使って、ランダムに見えるパターンのCGを作ってみました。昨日ご紹介したユニットよりも目地の幅を少し広げています。

図 1 図 2

 この2つのパターン、実は半分くらいは同じです。あまり良い例ではなかったかも…



 せっかくCGなので、平行投影ではなく透視投影にして、斜めから見てみることにしました。

図 3 図 4

 ちょっと不自然ですね。色遣いも良くないかな…



 というわけで、もう少しタイルっぽい色にしてみました(図5〜図7)。

図 5
図 6
図 7

 同系色で、サイズが小さいほうが濃い色になるようにしてみました。かなり雰囲気が出たように思います(自画自賛)。この図が描けたのでいったんここでこのパターンについては満足することにしました。



 床のタイリングパターンを検索していたら、RANDOM PATTERN IN PORCELAIN TILE(磁器タイルによるランダムパターン)というページがありました。「ランダム」とタイトルが付けられています。でも、このパターン、見覚えがあります。

図 8

 今回探索した周期パターンの一部分ですね。もちろん、図8の範囲で見れば「ランダム」と呼ぶことに全く異論はありません。

図 9

 図9の黄色い枠のあたりが、図8の床のパターンになっています。 このパターン、国も地域も異なるところで3か所で紹介されているのを見つけたことになりますが、どうやって広まったのか、偶然の一致とは思えないので、どこかに元ネタがあるのか、興味があります。

<おまけのひとこと>
 porcelain(磁器)とpottery(陶器)という英単語は知りませんでした。ceramic(セラミック:陶磁)という単語は有名ですが、これがporcelainとpotteryの上位概念なんでしょうか。でも、検索してみると磁器タイル(porcelain tile)とセラミックタイル(ceramic tile)を比較していたりして、必ずしもceramicのほうが広い概念というわけでもないみたいです。うーむ。






7月13日(土) 十字路のないタイルパターンの試み

 昨日までご紹介してきた、4種類のタイルによる一見ランダムに見える十字路のないタイルパターンが気に入ったのですが、2x2のタイルの比率が高いなあと思いました。基本パターンは6x6=36マスなのですが、1x1が4個(面積4)、1x2が2個(面積4)、2x2が4個(面積16)、2x3が2個(面積12)です。この比率を変えられないかなあと思って、こんな基本パターンを考えて並べてみました(図1、図2)。

図 1 図 2

 これなら、1x1が面積4、1x2が面積12、2x2が面積8、2x3が面積12で、少しバランスがいいかなあと思ったのです。でも並べてみて(図2)、失敗に気が付きました。十字路ができてしまっています。(わかりますか?)



 十字路の交差点を解消するため、基本パターンをこんな風に変更してみました(図3)。2x2と1x2のピースを取り除いて、かわりに2x3のピースにします。これで十字路はなくなりました(図4)。

図 3 図 4

 でも、2x3の存在感が増して、今度は基本パターン中の2x2が1つだけになってしまいました。



 そこでさらに、2個の1x2を1個の2x2に置き換えてみました(図5)。

図 5 図 6

 うーむ、悪くないと思います。このパターンを眺めていたら、また思い付いたことがありました。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 週末は別の話題にしようかなと思っていたのですが、現在進行形でタイルのCGにはまっているのです。ここで書いておかないと、次に話題として取り上げるときに背景説明が面倒なので、続けてご紹介してしまうことにしました。






7月14日(日) 十字路の無いタイリング:木の葉型の周期解

 昨日の最後にご紹介したこれらのパターン(ちょっと小さくしています)ですが、

 これらのパターンの中の、一番大きなタイルである2x3の配置に注目してみます(図1)。各タイルのこの中心を結ぶ線(赤)を引いてみると、これは平行六辺形のタイリングパターンになっています(図2)。

図 1 図 2

 なんとなく木の葉のタイリングを連想しました(図3)。

図 3

 この六角形のパターン(木の葉型)の内側は、18単位の面積を持つ点対称(2回回転対称)のかたちになっています(図4)。

図 4

 昨日までは「ランダムに見えるパターン」を追い求めていましたが、今日はこの点対称の対称性を保ったままで、かつ十字路の無いタイリングパターンを考えてみることにしました。(図4のように木の葉パターンの内側全部を1x1の単位タイルで埋めてしまうと、十字路だらけになってしまうのでダメです。)



 上記の条件(木の葉パターンの内側が点対称であり、かつ全ての交差点はT字路になっている)を満たすパターンを考えたのですが、見つけたなかで一番気に入ったのがこのパターンでした(図5)。

図 5

 内側は1x2しか使っておらず、十字路を作らないため「檜垣」のパターンになっています。今回の検討でこのパターンを見つけられて嬉しかったです。



 今回みつけたその他のパターンを、小さな画像で簡単にご紹介しておきます。

図 6 図 7

 図6は木の葉型の内側に2x2の正方形を4個詰め込んで、残った2単位の隙間を1x1の単位タイルで埋めたものです。このパターンは、いわゆる新聞のレイアウトの腹切りのように、タイルの境界線がまっすぐ水平に左右に繋がってしまっていて、この線で好きなように連続的に「ずらす」ことができます。こういう構造をみると、「結晶構造の劈開みたいだなあ」と思います。

 図7は、図6の正方形の内側の2つを残して、外側を1x2タイルに置き換えてみたものです。単純にやると十字路ができてしまうので、1x1タイルの位置を変えています。なんとなく、フィボナッチ数列の正方形のらせん配列を連想します(2006年5月16日のひとこと参照)。この「螺旋っぽい」感じ、なかなかいいです。 なお、これも「腹切り線」ができてしまっています。

図 8 図 9

 図8は、いわゆる「レンガ積み」のパターンをイメージしています。これも「腹切り線」ができてしまっています。

 図9は、図6の2x2正方形の外側の2つを残して、内側の2つのスペースを1x2と1x1で置き換えてみました。これは周期性を強く意識されられる気がします。木の葉の内側の中心に1x2が縦に配置されたことで、腹切り線は消滅しました。

 今回のタイリングの話、明日もう1日だけ書こうと思っています。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 こんな、単純な整数比のタイルセットを使うだけでもいろいろなパターンが作れます。対称性や周期性を変えたり、使う色のパターンをを変えたりすると印象が変わります。色遣いにしても、今回は同系色で、面積が小さいほど濃い色にしましたが、これを変えると印象がまた変わります。楽しいです。






7月15日(月) 周期的タイリングパターンの試み

 このところご紹介してきた、1x1,1x2,2x2,2x3の4種類のタイルを用いたタイリングパターンですが、最後にこんな周期パターンをご紹介して終わりにします。

図 1

 一番大きな2x3のタイルに注目すると、波打ったかたちになっているのがわかります。(昨日の「木の葉型」に似ています。)これ、どの部分が繰り返しの基本パターンになっているかわかりますか?



 昨日の「木の葉型の内側が檜垣」のパターン

再掲図

 の、枠組みを構成する2x3のタイルを2x2の正方形+1x2のレンガタイルと置き換えたらどうなるかなあと思ってやってみました。2x3のどちら側に1x2を配置するかによって8通り考えられますが、そのうちの2種類を作ってみました(図2、図3)。

図 2 図 3

 これも一見すると規則性がわかりにくいパターンのような気もします。なんだかいくらでも遊んでいられそうです。



 連休初日の14日の午前中に食料品などの買い物に出た時、ときどき行くパン屋さんに寄りました(図4)。

図 4

 最近タイリングにはまっている私は、道路から玄関までのタイルパターンに興味を持ちました(図5)。

図 5

 階段の根元あたりに注目してみました(図6)。

図 6

 本日の更新は「このパターン、不思議です」と書いて終わりにするつもりだったのです。でも、つい自分でパソコンの中でこのパターンの模写を始めてしまいました。まず、使っているタイルは何種類でしょう? 私は5種類かな、と思いました。そして、その5種類を使って、図6のパターンをお手本にして作り始めたのです(図7)。

図 7

 図6の写真の中央やや右寄りの部分に、上下にまっすぐ貫く目地の線があります。(正確には、一番手前のところで小さなタイルにぶつかってT字路になっています。) 図7ではこのすぐ左側の部分を3列くらい作っています。ここまで作ったところで、このパターンの構造が理解できました。「ああ、そういうことだったのか!」と気が付く瞬間がとても気持ちが良かったです。来週のどこかで解説しようかなあと思いました。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 タイリングの話は7月前半(つまり今日まで)で終わりにするつもりでした。でも、この「パン屋さんの石畳」のパターンを調べ始めたら、これについても語りたくなってしまいました。






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