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以前の「ひとこと」 : 2009年6月後半



6月16日(火) 厚みのある正多角形を組み合わせた構造の設計(その2)

 先週ご紹介したこのかたち

再掲図

 のパーツの設計についてご紹介します。これは、正六角形を4つ、組み合わせたかたちです。計算でパーツの形状を求めてゆくのは大変なので、CGを使って交わりの形状を直接描画してもらって決めてゆく方法を使いました。

図 1 図 2 図 3

 図1が4つの厚みのある正六角形が交差した図です。このうち、青・赤・緑の3つのパーツを取り除くと、残りは図2のようなかたちになります。これを見ながら、図3のようなパーツを考えました。図3は、3つのパーツが互いに押し合って厚みのある六角形を1つ構成する様子を示したものです。

図 4 図 5

 本日の冒頭の「再掲図」のモデルは、図4のパーツを12個組み合わせて作ったものです。図4のパーツは、図3の1つの平面図に相当する部分を3つ、小さな長方形パーツでつないだもので、小さな長方形の部分が、このパーツの「厚み」に相当する部分になります。この構成ならば、それぞれのパーツは一応「筒型」といえないことともありません。

 ただしこの方法だと厚み方向に関しては「すかすか」なので、再掲図にあるように隙間の目立つモデルになってしまいました。そこで、厚み方向をふさぐようなパーツを設計してみたのが図5です。

 でも、この方法だとなんだか「のりしろ」を貼るペーパーモデルのようになってしまって、日ごろ心がけているポリシーとちょっとかけ離れてしまったので、このパーツは設計をするに留めて、実際に作ってみてはいません。なんとなくユニット折り紙の方でしたらすでに作っているような気もします。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 昔からの知り合いで、つい3ヶ月ほど前までは毎月定期的にミーティングをしていた方が亡くなったという知らせがあって、大変驚いています。まだ50歳になったばかりの方でした。






6月17日(水) 三本組木の菱形化(その1)

 今年の3月19日のひとことで、以下のような写真をご紹介しました。このとき、(つづく)と書いておきながら、その後の話がほったらかしになっていました。今日からこのあたりの話をきちんとご紹介したいと思います。

再掲図

 紙の筒で3本組木の構造を作るものを、ずっと以前にご紹介したことがあります。図1のようなパーツを3つ用意します。

図 1

 これを、図2のように、両端の面を重ねて四角柱のかたちになるように丸めて、

図 2

 これを3本、図3のように組むことで、3本組木の構造をつくることができます。

図 3

 3本目を入れるときには平らにつぶして差し込んで、中で広げます。両端が空いている紙の筒の構造なので組むことができます。

 さて、これを先日の写真のもののように菱形六面体をベースとしたかたちに変えたいのです。パーツはどうしたらいいでしょうか?

図 4

 たとえば、図4のようにすればいいでしょうか?

(つづく)

<おまけのひとこと>
 すみません、ちょっとわざとらしいですね。
 今日はgifアニメーションで紙の筒を丸めるところや、パーツの組み合わさり方を見ていただこうとおもって図を用意してみました。






6月18日(木) 三本組木の菱形化(その2)

 今年の3月19日のひとことにご紹介した、菱形六面体を上下左右前後に延長した十字型の三本組木の設計についての話の2回目です。

再掲図

 正方形を基本とした筒の場合に対して、菱形の場合は図1のようにおおざっぱに言って2種類の設計が考えられます。(昨日の図4は折線で追ってゆくとらせんのようにずれてしまって、平行六面体の筒状のかたちになりません。)

正方形を基本としたパーツの設計

図 1:菱形を基本としたパーツの設計(2種類)

 まず、この図1の左右のかたちがどういう関係になっているかわかりますか? 何が同じで何が違うのでしょうか?

 図1の2つの設計図を実際に印刷して切り抜いてみました(図2)。

図 2

 これを折り曲げて、四角い筒状のかたちにしてみます(図3)。図3の写真を撮るときに、図2の平面図の左右のどちらが図3の左右のどちらに対応しているか、考えずに位置を決めて適当に撮りました。まず、図2の左右と図3の左右は同じでしょうか、それとも入れ替わっているでしょうか?

図 3

 この2つのかたちは同じでしょうか、違うでしょうか?

 図3の右側のパーツ3本で三本組木の形に組めるでしょうか? 左側のパーツ3本では組めるでしょうか? 左右のパーツを1本と2本、もしくは2本と1本ではどうでしょうか?

(つづく)

<おまけのひとこと>
 今日の問題、図3の写真を眺めるだけで「組める・組めない」が正しく判断できる方がいらしたら尊敬します。
 ヒントとしては、2009年3月11日のひとことを読んでいただけるとわかるかもしれません。明日(以降)解説を書きたいと思います。






6月19日(金) 三本組木の菱形化(その3)

 昨日、これらのパーツを筒状にしたものから、斜めの三本組木が組めるでしょうか、という話をしました。今日はその解説を書きたいと思います。

再掲図1:菱形を基本としたパーツの設計

再掲図 2

 2009年3月11日のひとことで、2つの菱形を連結したものをパーツとして菱形六面体を組む話をご紹介しましたが、この三本組木も同じ原理なのです。

再掲図 3

 この三本組木の構造は、再掲図3のように、鉄アレイのように真ん中がくびれたパーツを3つ、上下・左右・前後の3方向に組み合わせます。中心部分の立方体に注目してみると、パーツの細い部分は図1の太線の部分の位置になっていることがわかります。

図 1

 つまり、立方体の稜のうち、互いに「ねじれ」の位置になるような3つの位置です。

 では、菱形六面体の場合はどうでしょうか(図2)。

図 2

 菱形六面体の場合、稜には2種類あります。図3をご覧ください。菱形六面体のそれぞれの稜に注目し、その稜の両側の面の菱形を平面の展開図のように広げてみることを考えます。そうすると、図3の下のように、稜をはさんで菱形の鋭角と鈍角が向かい合っているかたち(I型)と、稜をはさんで菱形の鋭角同士、鈍角同士が向かい合っているかたち(V型)があることがわかります。

図 3

 I型の稜を青く、V型の稜を赤く塗り分けてみると、図3上のようになります。鋭角菱形六面体の場合、青い稜は二面角が鈍角で赤い稜が鋭角、逆に鈍角菱形六面体の場合は青い稜が二面角が鋭角で赤い稜が鈍角になりますが、赤と青の「つながり具合」はどちらの菱形六面体でも同じになります。

 では、これらの菱形六面体について、先ほどの立方体の図1と同じように「上下・左右・前後」の稜を、互いにねじれの位置になるように選んでみましょう(図4)。

図 4

 図3を見て考えていただくとわかるのですが、このような位置関係にしようとすると、3つとも青い稜、つまりI型パーツ3つ(I3型:略してI型とします)か、もしくは赤い稜2本と青い稜1本(V2I型:これもV型とします)しかできません。

 本日の再掲図2の写真のパーツ、よく見ていただくと、左がV型のパーツで、右がI型のパーツです。(再掲図1の設計図では実は左右が逆です。)実は、私は最初、左のV型のパーツを3つ作ってしまって、「あれ、組めない」と悩んだのでした。

<おまけのひとこと>
 今週でようやく仕事のほうは一山越えたと思っていたのですが(事実、一山越えることができたのですが)、その後もどうやら楽ではなさそうだとわかりました。とりあえず今日だけはちょっと楽です。
 臓器移植法の改正が進んでいるのですね。切実な立場の方の気持ち、これはその立場になってみないと本当にはわからないのかもしれませんけれども、臓器移植というのは医療なんだろうか、という疑問はずっと感じています。






6月20日(土) Mathematical Recreations and Essays

 先日、久しぶりに神保町に行ったときに、明倫館書店Mathematical Recreations and Essays(W.W.Rouse Ball and H.S.M.Coxeter)という本を買いました。1,200円でした。新品でも1,500円程度で買えるようですが、店頭で出会ったのが嬉しくて買ってしまいました。

 いつも見せていただいている blog パズルとおもちゃ ちょっといいものでも、07年7月30日に紹介されていました。私が買ったのも第13版でした。こちらのblogでも、「インチキ証明はいろいろあって面白い」とコメントされていましたけれども、私も同感です。

 ひとつだけ紹介させていただきます。

直角と鈍角は等しい!?
MATHEMATICAL RECREATIONS AND ESSAYS
(Rouse Ball and Coxeter)
Dover 0-486-25357-0
Thirteenth Edition
p.77

 ABCDは長方形です。長方形の外側に、AE=ABとなる点Eを取ります。BCの中点をHとし、そこから垂線をひきます。CEの中点をKとし、同じく垂線をひきます。CBとCEは平行ではありませんから、H、Kからの垂線は交わるはずです。その交点をOとします。

 △ODC と △OAEに注目します。

 △OADは二等辺三角形です。よってOD = OA です。

 △OECは二等辺三角形です。よってOC = OE です。

 定義より、AB=AE=BC (長方形なので)、よって AE=DCです。

 以上より△ODC と △OAEは三辺相等となり、合同です。よって角ODC=角OAEです。△OADは二等辺三角形ですから、角ODA=角OADです。以上より 角ADC(直角)=角DAE(鈍角)が示されました。

 もちろん直角と鈍角が等しいなんていうことはありえません。では今までの議論のどこが間違っているのでしょうか?

<おまけのひとこと>
 この手の問題をご存知な方ならすぐにわかると思います。ヒントも書きません。

 昨年、リスーピアのワークショップに参加してくださった方が、かりふらわの日記というblogで紹介していただいていることを知りました。ありがとうございました。






6月21日(日) ゾムツールで菱形多面体を作ってみる

 最近、菱形多面体に興味があるのですが、ふと手持ちのゾムツールで菱形多面体系のモデルを作ってみたくなりました。

 残念ながら私が持っているのは「ウィルスプロジェクトキット」という、ノード(ボール)36個、ストラット(棒)が青の短・中・長それぞれ36本というものだけです。これだと、正十二面体とか正二十面体はきれいに正確なものが作れますが、菱形多面体はうまく作れません。また、ものによっては本数も足りません。

 とりあえず、黄金菱形十二面体風のモデル(図1)と、菱形二十面体風のモデル(図2)を作ってみました。

図 1 図 2

 ゾムツールも「はまる」と次々と欲しくなりそうですが、出来上がったものが大きいので、我が家ではずっと飾っておけないと思います。やっぱり紙模型のほうがいいかなと思いました。



 先日、有栖川宮記念公園というところをちょっと散歩してきました。

有栖川公園

<おまけのひとこと>
 昨日は職場のメンバーの結婚披露宴があって参加してきました。よい披露宴だったと思います。おめでとうございます。






6月22日(月) 正方形直交モデル(六枚板状組木)と六員環モデルの相貫体

 先々週くらいにご紹介していた、正方形が3枚直交しているような形になる、紙の筒による板状組木のような構造からの派生モデルをひとつご紹介します。

六員環モデル 正方形直交モデル

 2008年2月16日に、上の左の図のような形をご紹介していました。これを、正方形直交モデルと組み合わせてみたら面白いかなと思って作ってみました。2004年4月14日の12本かご型組木と組み合わせてもよかったのですが、

12本かご型組木

 6本のほうが変化が出て面白いかなと思ったのです。

図 1 図 2 図 3

 本物を手にとって見ると、わりと「面白い」のですが、写真だとよくわからないでしょうか。このモデルは、作ったことで満足しました。でも、「すごく好き」というわけでもないかなと思っています。

 これはちょっと組むのに苦労しました。分解・再組み立てには耐えられないモデルだと思います。

 (パズルデザイナーとして活躍されているKohfuhさんから頂いた情報のうち一部を6月9日のひとことに追記しました。ありがとうございました。)

<おまけのひとこと>
 この模型を作ったのは、もうずいぶん前になります。ここ1〜2年は更新が途絶えがちだったものですから、作っただけでこのサイトで公開していないものがだいぶ増えてしまって、どれが未紹介なのかだんだんわからなくなってきてしまっています。






6月23日(火) 三枚の正方形を組む:立体版(その1)

 このところ、厚みのある1対2の長方形パーツを2つ並べて正方形にしたものを3組直交させて作るモデル(六枚板状組木による正方形直交モデル)をご紹介していますが、これをパーツ3つにしてみたら…と思っていました。

 いつもとても楽しみに拝見している、濱中さんの低次元日記というblogがあります。ここの2006年の6月に、3枚の正方形という記事があって、3つの正方形に合同な切り込みを入れて、それを直交させて組むことができる様子が紹介されています。自前で図を描いてみました(図1)。

図 1:濱中さんデザインの合同な正方形3枚を組むカード

 この図1のかたちに厚みを持たせて、それを組んでみることにしました。 ちなみに、低次元日記の次の記事3枚の正方形(その2)では、3枚とも合同という条件を保ったまま別の切り込みの入れ方が提案されています。すばらしいです。が、こちらは組みにくそうなので見送りました。

図 2

 パーツ1つは図2のように設計しました。いつものようにパーツが筒状になるようにします。また1つの面をオーバーラップすることで、接着等せずに安定させることにします。本当は面積の小さい、厚み方向の面を二重化したいところなのですが、そうするとその面を押さえてくれるパーツがないので開いてきてしまうのです。そこで広い側の面を二重化することになります。これを図3のように筒状に折ります。

図 3

 これを3つ、図4のように組みます。パーツの組み方がわかるように、1枚ずつ、2枚ずつの向きや位置関係がわかるアニメーションにしてみました。

図 4

 これを実際に作ったものの写真は明日ご紹介します。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 パズルデザイナーのKohfuhさんからいただいた情報の中に、故・室井忠夫さんが「3 Piece Cross」という正方形が3枚直交している組木を発表されているという話がありました。ただし、パーツの形状は3枚とも同じというわけではないそうです。この作品は、『「手づくり木工事典」特別編集 作って遊ぼうクラフトパズル』(室井忠夫/婦人生活社)という書籍に掲載されているのだそうですが、現在はこの本は絶版のようだとのことです。情報ありがとうございました。






6月24日(水) 三枚の正方形を組む:立体版(その2)

 昨日の、濱中さんのblogの63枚の正方形という記事のパーツに厚みを持たせたものを紙の筒として設計したもの(再掲図)を実際に作ってみました。

再掲図

 写真をご紹介します。

図 1 図 2 図 3

 図1は一般的な視点方向から見たところ、図2が3回回転対称軸方向から見たところです。図3は1つのパーツの「筒」をのぞいてみたところです。図3の置き方をしたときに、真上の照明によってできる影が六角の星型になっていることにご注目ください。これは図2の方向から見たときのシルエットになっています。

 このかたちは意外と組みやすく、また分解してもそれほどパーツに負担がかかりません。ただ、隙間がちょっと多い印象です。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 なんだか蒸し暑い日が続いています。






6月25日(木) 三枚の正方形を組む:立体版(その3)

 濱中さんのblogの63枚の正方形という記事のパーツに厚みを持たせたものを作る話を紹介しています。次に、筒にふたをして、強度を持たせてみようと思いました。

図 1

 図1の左側が昨日写真をご紹介したもののパーツです。筒の上下をふさぐパーツを、右側のように追加してみました。この上下の部分を先に折り込んでから、筒を巻くようにします。これも接着等はしません。

 実際にこのパーツを3つ組んだものの写真をご紹介します。

図 2 図 3 図 4

 図2は一般的な視点方向から見たところ、図3が3回回転対称軸方向から見たところで、昨日のものと同じように撮っています。ただ、大きさは昨日のものよりかなり小さいです。

 筒をふさいだことによって組み立ては難しくなりましたが、期待通り丈夫になりました。ただ、接着していないので若干紙が反ってきてしまうところが残念です。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 Great paper artwork by Simon Schubertというページを知りました。白い紙に折り筋をつけることで絵を描くという手法の作品が48枚紹介されているページです。これはすごいですね。本物を見てみたいです。






6月26日(金) 三枚の菱形を組む:立体版(その1)

 昨日までご紹介してきた、正方形を三枚組むかたちを菱形にしてみました。まずは写真をご覧いただくことにします。

図 1

 図1、右側のちょっと小さいものがが昨日写真でご紹介した「筒の底面をふさいた三枚の正方形組」です。左側が菱形を3枚組んだものです。この角度からの写真だと、菱形っぽく見えないかもしれません。そこで左側の菱形モデルのほうを回転させた写真を何枚か撮ってみました。

図 2

 菱形の鈍角3つが集まっている方向から見たものです。この視点だとますます菱形には見えません。そこで左のモデルのみ、鉛直軸まわりに時計回りに90度回転させてみます(図3)。

図 3

 いかがでしょうか、俄然菱形っぽく見えるようになったと思いませんか。さらに90度回転させてみましょう。

図 4

 いかがでしょうか。こうして回転させてみると、左右のモデルのかたちの違いがはっきりすると思います。単純なかたちですが、とても面白いです。

図 5

 3つのパーツの頂点1つずつが接地するように、3点で立ててみました。パーツの菱形の形状がわかると思います。

 さて、この菱形三枚組のパーツ、どんなかたちだと思いますか?

(つづく)

<おまけのひとこと>
 自分の話が伝わらないのは話す側ではなく聞く側に問題があるという考え方の人とのコミュニケーションで苦労しています。伝わらなくて損をするのは話す側だと思うのですが、そこで伝わらないからと言って感情的になって攻撃的になられても…(すみませんちょっと愚痴でした)






6月27日(土) ルート2が有理数ではないことの証明

 先日、『数のエッセイ』(一松信 ちくま学芸文庫)を買いました。非常に面白い内容が盛りだくさんで、とても密度の濃い本です。大変お勧めです。

 このたくさんの話題の中から1つ、ルート2が有理数ではないことの証明についてという、わずか3ページ足らずのコラムの中の話題を紹介します。ちょっと数学をやった人ならばご存知の内容だと思いますが…

 有理数というのは、2つの整数の比で表すことができる数(分数で表すことができる数)です。ですから仮にルート2が有理数だとしたら、下図のように分数に等しいということになります。

 ルート2が有理数ではないことを証明するためには、上の式から始めて矛盾が導ければ「有理数ではない」ということが言えます。そこで、いろいろな矛盾の導き方があるのですが、おそらく多くの方は、以下のような示し方をご存知なのではないでしょうか。


 まず、上記の分数は既約分数とします。つまり、mとnは共通な素因数を持たず、これ以上約分できないとします。の分数の式を変形して、次の式にします。

 さて、この式の左辺に2があるので、右辺の n2 は偶数です。2乗して偶数になるのは元の数が偶数のときなので、n は偶数です。そこで、次のように変数を置き換えます。

 これを元の式に入れて整理すると

 こうなります。すると今度は同様な議論により、左辺のm が偶数ということになります。そもそも最初の式で既約分数と定義していたので、どちらも偶数だとしたら矛盾です。


 「数のエッセイ」では、この方法を有名なやり方として最初に簡単に説明した後で、別の方法をいくつか紹介しています。この方法は私は多分中学の数学の教科書で知ったと思います。最初に身に付けた方法は強力で、私も最初にこの説明が思い浮かびました。ちょっと調べてみると、アリストテレスもこの説明をしているそうです。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 週末なので、菱形三枚組の話は一旦中断して、別の話題にしました。

 27日(土)は、小学生の息子の陸上競技の記録会がありました。1,000mを走って3分40秒だったそうです。先月の記録会のときより9秒短縮したそうです。






6月28日(日) ルート2が有理数ではないことの証明(その2)

 ルート2が有理数ではないことの証明の話のつづきです。(実は2日分まとめて更新しています。)

 ルート2を有理数と置いて、両辺を2乗して分母を払った式にします。ここで矛盾が示せればOKです。 『数のエッセイ』(一松信 ちくま学芸文庫)では、「最も本質をよくえぐりだした『エレガントな証明』」として、次のような説明をしています。

 すべての正の整数は順序を問題にしなければただ一通りに素因数の積に表される。もし 2m2 = n2 ならば、2m2 は奇数個、n2 は偶数個の素因数の積で表されるから、分解の一意性に反する。

 昨日ご紹介した方法と比べてみると、シンプルで美しいと思います。今日の方法は既約分数という条件も不要ですし、学校でこちらも教えてくれたらよかったのにと思いました。

<おまけのひとこと>
 8月の最後の週末に、県内のペンションでコンサートに出演しないかというお誘いをいただきました。今、ある程度定期的に集まって練習ができるメンバーは私を含め3名しかいないのですが、そのうちのお一人はご都合が悪いということで、二人で1時間程度のプログラムを検討しました。二人ということになると鍵盤があったほうがいいだろうということで、主に私は鍵盤を担当させていただくことになりそうです。今回都合が付かなかったメンバーが格段に鍵盤が上手な方なので、最近私はあまり鍵盤の出番はないのですが、今回はたくさん弾かせていただけて、プレッシャーもありますが楽しみでもあります。ここ2ヶ月ほどぜんぜん楽器に触っていなかったので、なんとか時間を作って、せめて週に1回はまじめに練習しようと思います。






6月29日(月) 三枚の菱形を組む:立体版(その2)

 先週末にご紹介した、厚みのある三枚の菱形の筒を組むモデルのパーツの設計についてお話します。

再掲図1

 上の写真の左側が菱形モデルです。さて、このパーツはどんなかたちでしょうか。参考までに、正方形モデルのパーツは再掲図2のようなものでした。

再掲図2

 実は、このかたちを最初に菱形化したときに、図1の右上のオレンジ色のパーツを設計したのです。これを3枚印刷して切り出して折りたたんで、さて組もうと思っていろいろひねくり回したのですが、どうしても角度がきれいに合わない。

図 1

 あれー、これは何かおかしい、と思って、ペラの菱形を切り出して、オリジナルの濱中さんの低次元日記3枚の正方形と同じように切り込みを入れて、組んでみました。(切り込みの入れ方は、写真だとちょっとわかりにくいですが、図2の右下のパーツがそうです。)

図 2 図 3

 この図2,図3の3枚の菱形をよく見ていると、なるほど図1の右上のオレンジのパーツでは駄目で、図1の右下の水色のパーツのように設計しないと組めないということがわかりました。

 そうして作り直したのが、本日の冒頭に挙げた、再掲図1の左側の模型だったのでした。図1の2つの設計図、どこが違うかすぐにわかりましたか? また、図2や図3を見ていただいて、水色の設計にしないとだめだということがわかりますか?

 このように、正方格子を基本にして設計した立体モデルを菱形格子を基本とした斜めの構造に変形しようとすると、想像以上に設計や組み立てが難しくなります。そして出来上がりの印象が、またとても面白いです。実はそんなわけで、これまで、紙の筒を組む構造として、3次元直交座標系の形状をいろいろご紹介してきていますが、ここ数ヶ月はそれらをかたっぱしから「菱形化」してみています。やっている私は大変楽しいのですが、写真だとうまくその面白さが伝わらない気がしています。

<おまけのひとこと>
 さて今週も大変です。






6月30日(火) これは何でしょう?

 月末なので単発の話題をと思ったのですが、適切と思われるものがなくて、ついこんなものを作ってしまいました。

 5mm方眼の薄い用紙に鉛筆でざっと展開図を手描きして、のりしろは作らずにセロテープでぺたぺたと貼った「ラピッドプロトタイピング」です。

図 1 図 2

 うすい直方体の板に、コの字型の取っ手のようなものがついているかたちです。一番広い面には正方形の穴があいています。

図 3 図 4

 中がのぞけるように、最後の面だけはふたを閉じていません。今考えると、直方体の板の長辺の側を閉じないでおけばよかったと後悔しています。

 さてこれは何でしょう?

<おまけのひとこと>
 ご存知の方はすぐにわかりますよね(笑)。

 今日はまる一日研修です。






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