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以前の「ひとこと」 : 2004年2月前半



2月1日(日) orthoオペレータ(その1)

 アルキメデスの準正多面体の双対の中に、凧型二十四面体と凧型六十面体という多面体があります。02年4月16日02年4月21日のひとことで、この2つの多面体を帯で編む話を掲載しました。

 この凧型二十四面体は、稜の構造を見ていると、立方体と正八面体を重ね合わせたように見えます。

凧型二十四面体

 同様に、凧型六十面体は正十二面体と正二十面体を重ね合わせたように見えます。何が言いたいかおわかりいただけますでしょうか。

凧型六十面体

 このように、立方体と正八面体、正十二面体と正二十面体という互いに双対の関係にある多面体から、これらの凧型多面体が導かれます。では、自己双対である正四面体に対して、同じように2つを重ね合わせた四辺形多面体を作ったとしたら、それはどんな多面体になるでしょうか?

正四面体

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 一日更新をお休みしました。すみません。
 今日は図がたくさんになってしまいました。



2月2日(月) orthoオペレータ(その2)

 昨日の話の続きです。立方体の各面の正方形の中心と各稜の中点を結ぶと、正方形は4分割されます。立方体は6面ありますから、4×6で24面になり、これが凧型二十四面体になります。正八面体から出発しても事情は一緒で、各面の3角形が3つの四辺形に分割され、それが8面ありますから3×8でやっぱり同じ凧型二十四面体になるのです。凧型六十面体に関しても、このあたりの理屈は一緒です。

 これと同じことを正四面体に対して行ってみましょう。

面の中心と
稜の中点を結ぶ
図1 図2

 図1の正四面体の、各面の中心と稜の中点を結ぶと、図2のようになります。もともとの頂点は4つ、面の中心に付け加えられた頂点は4つ、そして稜の中点に設けられた頂点が6つです。新しい面の数は12になります。

図3 図4 図5

 もともとの正四面体の頂点4つを固定したまま、新しく付け加えられた頂点を膨らませてゆくと、ご覧の通り菱形十二面体になります。というわけで、昨日の問いの答えは正十二面体ということになります。 図1から図5の画像をお手元に保存していただいて、スライドショーのように切り替えて表示していただくと、この「膨らませる」様子がよくわかると思います。( gifアニメーションも作ってみたのですが、サイズが大きくなるので載せるのをやめました。)

 逆に、菱形十二面体を見て、元となった二重の正四面体の稜や頂点がどこだったのかを考えてみると、図6、図7のようになります。

図6 図7

 図6で赤で描いた稜と赤丸をつけた頂点が、図1、図2で表したもともとの正四面体に由来する部分で、図7で水色に塗った部分、これは図6で赤く塗らなかった部分そのものなのですが、ここは逆にもう1つの正四面体に由来する稜と頂点になります。

 このように、各面の中心と各稜の中心に頂点を加えて、各面のN角形をN個の四辺形に分割するような多面体の操作をortho操作と呼ぶそうです。ここで見たように、ortho操作は双対多面体に対して行っても同じ結果になります。 これも、帯で編める多面体を作る方法として検討してみたものです。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
このところずっと忙しい日が続いていて、メールをいただいても何週間もお返事がかけないでいたりします。本当に申し訳ありません。次の週末くらいには少し時間がとれそうです。
 今住んでいる市の防災行政無線放送の内容を、申し込むと電子メールで無料で配信してくれるサービスがあると知って、喜んで登録しました。携帯電話にも配信可能だそうです。メールを受信できる環境にある人にとっては大変ありがたいサービスです。コスト面でもメリットが大きいと思います。ただ、そういった環境を持たない人のことも考えないといけないと思います。



2月3日(火) orthoオペレータ(その3)

 多面体に対する “ortho操作” という拡張法についてお話しています。 ある多面体にこの操作を施すと、その多面体自身とその双対多面体との“あいのこ”のような四辺形多面体ができます。昨日は、正四面体を ortho拡張すると菱形十二面体になるということをご覧いただきました。では、この菱形十二面体をさらに ortho拡張するとどうなるでしょうか?

 菱形十二面体は立方八面体の双対ですから、立方八面体と菱形十二面体を重ね合わせたようなかたちになるはずです。面の種類は、立方八面体の正方形由来の面と、正三角形由来の面の2種類になるはずです。このかたち、模型にして手にとって眺めてみたくて、帯で編む手法で設計して作ってみました。

図1 図2 図3

 図1が、元になる立方八面体の正方形が4分割された4つの面を見たところ、図2が正三角形が3分割された面を見たところです。図3は菱形十二面体の菱形が4分割された面を見ています。今日のところは説明のための図は載せないので、この写真を見て、立方八面体や菱形十二面体がイメージできるか、やってみてください。写真だとどうしても多面体の高々半分しか見ることが出来ないので大変だとは思いますが。

 2種類の面はいずれも凧型なので、左右対称です。ということは対称軸で分けられた三角形1つのかたちが決まれば、凧型のかたちが決定します。この多面体の稜の長さは3種類だけです。面倒なのでこの3種類の稜の長さとその間の角度を数値計算してしまって、そこから凧型のかたちを決めて、それに基づいてこの模型を作るためのパーツである帯の設計をしました。

 この模型、仮に通常のペーパーモデルのようにのりしろつきの展開図から組もうとすると、おそらく組み立ての際の誤差が累積して、かたちを整えるのがとても大変だろうなと想像します。帯で編む手法だからこそ、一切接着しないため、最後にかたちを整えることができて、比較的きれいに仕上がると思っています。 なお、型紙が欲しい方はご連絡くだされば pdf ファイルを差し上げます。

 以前何度かご紹介した、プロペラ立方体(03年10月1日から数日間、03年11月29日など)の系列と比べてみても面白いです。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 実は今年にはいって初めてペーパーモデルを掲載しました。 実はこの模型は一応「とっておき」の話題なのですが、その説明のために2日間かけて図を20枚近く使って下準備をしたのでした。明日からはこのシリーズのもっと複雑な多面体のCGを載せたいと思っています。
 先日家族で車で外出したときに、このあいだもちょっと書いた「あたまとり」という言葉遊び、つまり前の人の言った言葉の先頭の文字で終わる言葉を言うというしりとりの反対の遊び、をやってみました。しりとりのように順番を決めると、特に子供たちがなかなか次の言葉を思いつけなかったりするので、とにかく誰でも次に思いついた言葉を言ってよいというルールにしてみました。また、文字数が少ないと簡単になってしまうので、「ひらがな3文字以上」という条件をつけました。さらに、たくさん言えた人が勝ちというルールを一応付け加えてみました。(が、実際には誰がいくつ言えたかは数えませんでした。)
 大人は一応手加減して、思いついてもすぐには言わないようにしていたのですが、しりとりでは簡単すぎるような年齢になっても、なかなか楽しめたようです。



2月4日(水) orthoオペレータ(その4)

 多面体に対する “ortho操作” という拡張法についてのお話の4回目です。 昨日は、帯で編むタイプの手法で、この“ortho菱形十二面体”=“ortho立方八面体”を作ったものをご紹介しました。今日はまずこの多面体の構造をCGでご覧いただいて、立方八面体と菱形十二面体の二種類の頂点・稜が重なっている様子を塗り分けてみたものをご紹介します。

図1 図2 図3

 図1が、元になるorhto立方八面体です。(orthoは“オルト”と発音します。有機化学などでも出てくる用語ですね。) 図2と図3が、この多面体からそれぞれ立方八面体と菱形十二面体の構造を読み取ったものです。これは、2種類の凧型がそれぞれ24枚ずつで構成される48面体です。

 さて、同様に二十面十二面体と菱形三十面体に対してortho操作を施すと、やはり同じ多面体になります。その様子をご覧下さい。

菱形三十面体 二十面十二面体

図4

 一応見る方向はそろえてあるつもりです。このかたちもやっぱり凧型は2種類です。今度はそれぞれの凧型が60枚ずつの120面体です。 この多面体も大変美しいと思うのですが、いかがでしょうか。 最近、こういった面の数が多くて球により近い多面体が、以前よりも好きになっています。 (多面体マニアの度合いがちょっと進んだのかもしれません。)

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 最近は忙しくて長時間職場にいるのですが、昨日はお昼の消火栓訓練を忘れてすっぽかしてしまったり、会議の延期の連絡を一人に連絡し忘れて、大変迷惑をかけてしまったり、散々でした。 しかも消火栓のほうは前日の一昨日の段階では私以外のメンバーはみんな忘れていて、一昨日と昨日の朝に私が世話を焼いていたにもかかわらず、でした。 ちょっと余裕がなくてまずいなと反省しています。
 H.Hamanaka very private pageの表紙の、4つのトゲがあるようなおもしろいかたちの解説が、過去の表紙87に出ていて、とても興味深く見せていただきました。



2月5日(木) orthoオペレータ(その5)

 昨日CGでご紹介した、“オルト二十面十二面体”(凧型百二十面体)を、帯で編む手法で作ってみました。この多面体は、小さな凧型60枚と大きな凧型60枚からできています。 私がこの手法で作った凸多面体としては、120面というのはこれまでご紹介した中で一番面数が多いものだと思います。

図1 図2 図3

 図1は次数3の頂点、つまり凧型が3つ集まっている頂点の方向から見たところ、図2は次数5の頂点から見たところ、そして図3は次数4の頂点から見たところです。それぞれ三角形、五角形、菱形のかたちが見えるかと思います。

 一昨日ご紹介した、“オルト立方八面体”(凧型四十八面体)と並べて写真を撮ってみました。

図4

 四十八面体のほうは帯8本で編みます。A4の用紙1枚でパーツが取れます。百二十面体のほうは12本です。A4の用紙を2枚使います。いずれも、大変気に入っている模型です。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 昨日の夜帰宅して9時半くらいに自分のページにアクセスしてみたら、カウンタが88889でした。惜しいところで88888を見損ねました(笑)。
 



2月6日(金) orthoオペレータ(その6)

 しつこく “orthoオペレータ” シリーズです。今日は「ねじれている」ものをご紹介します。まずは捩れ立方体とその双対である五角二十四面体のオルト操作です。

捩れ立方体 五角二十四面体

図 1

 CGの向きはそろえてあるはずなので、どのように重なっているかおわかりになるかと思います。さて、これを帯で編む手法で作るとすると、帯はどんな風にこの多面体を巡るでしょうか? (図1で、目で追ってみることができます。)

 続いて捩れ十二面体とその双対である五角六十面体に対するオルト操作です。

捩れ十二面体 五角六十面体

図 6

 これも、帯で編むとしたらどうなるか、考えてみると楽しいです。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 昨夜帰宅して30分位したら、ヒーターの灯油タンク(90リットル)が空になってしまいました。1ヶ月ちょっとで使い切ってしまった計算です。 そろそろなくなるのを見越して一昨日に配送を頼んでもらってあったのですが、一日遅れてしまったようです。仕方なくメインのボイラー用のタンクから10リットルほど移しました。外はマイナス7度くらいで、灯油缶に灯油がたまってゆくのを待つ時間がつらいです。
 今朝、もしかしたら雪かきがあるかもと思って4時半くらいに目が覚めたときに外を見たら、満月がたいへんきれいでした。心配した雪はうっすら積もっているくらいでした。結局そのまま起き出していろいろやっていたのですが、今度は補助暖房の燃料が切れました。昨夜に続いて今朝もマイナス10度くらいの中、給油のために外に出ました。
 H.Hamanaka very private pageの表紙に、トゲのある立体シリーズの3作目の写真が載っています。2作目、おそらく正六角形だろうなと思っていたのですが、それを書く前に答が出ていました。今日の3作目、同じ理屈で行くとすると、5回回転対称で、5つの頂点を展開図の中心に折り曲げると正五角形になるかたち、と予想されます。ということは・・・
 でも、1つも自分では試してもみていないので、実際にどの程度の「誤差」があるのか、よくわかりません。



2月7日(土) ヒヤシンスの水栽培

 今日はちょっといつもの更新はお休みです。 今年もヒヤシンスの水栽培をしています。 そろそろつぼみがふくらんできました。

 写真の右の球根、ちょっと変です。 実は昨年の秋にこの球根を買ったときに、粘着テープで球根の種類についてのラベルが貼られていたのですが、それを剥ぐときに2箇所ほど球根の横の部分を傷つけてしまいました。そうしたらその2箇所からも芽が出てきてしまったのです。

 脇の一箇所が一番成長が早く、本来の芽の位置はまだつぼみは固いです。でも本来の位置のもののほうがさすがに大きいようです。脇のもう一箇所は花芽はみあたりません。不思議です。

 <おまけのひとこと>
 先日、「この週末は少し時間が取れそう」と書いたのですが、2月16日(月)に予定していたイベントが一週間早まるという連絡を昨日(!)もらって、この週末は仕事になってしまいました。 今朝は地区の役員の配り物の用事があって、それを済ませた後、これから仕事に行きます。
 ときどき見せていただいているGonshan のボビンレースの表紙の菱形十二面体の画像がきれいです。「あそびをせんとや」の菱形十二面体を見て、と書いてくださってありがとうございました。



2月8日(日) orthoオペレータ(その7)

 プラトンの5つの正多面体からアルキメデスの準正多面体を導く方法はいくつかあります。稜の中点を結んだ線に沿って頂点を切り落としたり(ambo操作)、稜の位置に正方形がくるように各面の位置を「広げ」たり(expand操作)、面を回転させながら拡張して、間を正三角形で補間したり(snub操作)、と様々です。(これらの操作については、以前にもご紹介しましたけれどもConway Notation for Polyhedraというページに詳しく載っています。このページはたいへんお勧めです。)

 これらの操作の多くは、双対多面体に対して行っても結果は同じになります。そういった操作の場合は、5つのプラトン多面体に対して操作を行っても、その結果が5種類別々の多面体になることはありません。正四面体からの結果、立方体と正八面体からの結果、正十二面体と正二十面体からの結果、の3種類が出てくるだけです。(しかも、正四面体からの結果は、他の正多面体や準正多面体になってしまいます。)ところが、もともとの稜の中間部分を残して頂点だけを切り落とすtruncate操作による切隅多面体(切頂多面体)だけは、5つそれぞれが違った準正多面体になるのです。

 今日は、この5つの切隅多面体にオルト操作を施した多面体のCGをご覧いただくことにしました。操作前と操作後で、同じ視点から見ているものです。比べてみてください。

切隅四面体 オルト切隅四面体
切隅六面体 オルト切隅六面体
切隅八面体 オルト切隅八面体
切隅十二面体 オルト切隅十二面体
切隅二十面体 オルト切隅二十面体

 いかがでしょうか。面のかたちはいずれも2種類、そのうちの片方は凧型ではなくなってしまいました。いずれも四辺形なので、設計すれば帯で編むことができますが、「これはぜひ作ってみたい」という魅力を感じるものではないかな、と思っています。(あえて言えば、切隅八面体のオルト体はちょっと作ってみたいかな…。)

 <おまけのひとこと>
 最近は、本業のほうで扱うデータ量が多くて、仕事を家に持ち帰ることができなくなってしまいました。
 仕事で使っているPCに180GBのディスクを増設したのですが、まず、Win2000 で認識させてみたら128GBしか見えません。調べてみるとサービスパックを当てて(これは当ててありました)、レジストリにエントリを追加しないとだめとのことでした。指示通り設定をしたら、ちゃんと全部見えるようになりました。でもさすがにこのサイズだとフォーマットも大変でした。
 さらに、昨日一日で、もうこのディスクが実験データでいっぱいになりそうです。 本当ならデータのバックアップをとりたいところです。でも、ネットワーク越しにバックアップしようとしても、ネットワークが100Mbpsなので、実効で最高でも10Mbyte/sec 程度でしょう。しかもHDDの書き込み速度もありますし、ということはネットワークでデータを転送しようとすると、少なくとも5時間以上かかるということで、ちょっとやり方を考えないといけないな、と思いました。
 ハードディスクを2台直接繋いでバックアップする専用の装置も一応買ってはあるのですが、これだと部分的なバックアップができないですし、なかなか難しいです。



2月9日(月) コンウェイの多面体操作の表記(その1)

 昨日ご紹介した、Conway Notation for Polyhedraというページ、ここに、例えばプラトンの多面体に対して様々な操作を施して複雑な多面体を生成する話が載っています。ここに出てくる操作(オペレータ)は、それぞれアルファベット1文字で表記されているのですが、その種類が以下の13種類あります。

d,t,k,a,j,e,s,g,b,o,m,r,p.

 Conway の表記法では、5つのプラトン多面体はその頭文字を大文字で表記してT,C,O,D,Iで表して、それに上記の操作を加えてゆくたびに、関数のように操作を表す文字を左に付け加えてゆきます。 それぞれの操作がどういう意味なのかを全部きちんと説明するのはちょっと大変なので、とりあえず今日のところは、「T,C,O,D,I が最後に来る」(最後が数字で終わるAn,Pn,Ynなどもあるのですが)というルールと、「その前には d,t,k,a,j,e,s,g,b,o,m,r,p によって構成される任意の長さの文字列が来る」ということだけを前提として話をします。

 さて、上記のオペレータ文字の一覧を眺めていると、アルファベットのちょうど半分を使っているのですが、これで何か文字列として意味のあるものができるのではないか、と思いました。 最初に作ってみたのが、「あそびをせんとや」にちなんで“asobI”多面体です。

asobI 多面体

 これは、正二十面体(I:icosahedron)に、順に b(bevel),o(ortho),s(snub),a(ambo) の操作を施して出来る多面体で、面数3602、稜の数3200、頂点数3600の多面体です。

 私はこれを見たときに、クレーターのある衛星か何かのように見えたのですが、家族に見せたらメロンのようだと言われました。

 もう1つ、毎日見せていただいているパズル工房「葉樹林」や、茉莉花の部屋などで時々お名前をお見かけするOtoto氏、このお名前も多面体にできることに気が付いて、CGにしてみました。

ototO 多面体

 こちらは正八面体(O)にt操作、o操作、t操作、o操作と施したもので、面数864、稜数1728、頂点数866となっています。

 ペンネームやお名前など、惜しいところでオペレータに出てこない文字を含む方が多くて残念です。母音のi,uがオペレータに存在しないのと、個人的には h がないのが致命的です(笑)。

 明日、明後日と、ときどきメールでコメント等を下さる消失点よりの STMileさんにちなんだ stmオペレータによる多面体と、Today's Information!の kts さんにちなんだ ktsオペレータによる多面体をご紹介したいと思います。 もし他にも「Conway表記法の条件を満たす、こんな文字列を多面体にしてほしい」というリクエストがありましたら、メールをいただけたらCG化できるかもしれません。興味のある方はご連絡下さい。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 といいつつ、忙しくてなかなかメールも書けないでいます。Webの更新は時間がかからないのですが、メールとなるとついいろいろ考えてしまって…



2月10日(火) コンウェイの多面体操作の表記(その2):stmオペレータ

 Conway Notation for Polyhedraというページに出ている、多面体を変形するルールをアルファベットで表記したものを使って遊んでみた話をしています。今日は、stmという文字列によって正多面体がどのように変形されるかを作ったCG画像を載せたいと思います。 まずは一通り画像をご覧下さい。

stm-正四面体
面326・稜540・頂点216

stm-立方体
面650・稜1080・頂点432

stm-正十二面体
面1622・稜2700・頂点1080

 stm-多面体は、もともとの多面体に m操作、t操作、s操作を施して作ります。 m操作をすると三角形がたくさんできます。t操作によってその三角形が六角形になります。最後にs操作によって、間に三角形の連なる帯が入ります。そのため、このstm操作による多面体というのは、基本的には六角形の周りを、鉄骨のような三角形の連続する帯が取り巻いているというかたちになります。アルキメデスの平面充填形で、このような構造のものがありますね(下図)。

平面充填形

 これらのstm-多面体には、ところどころに元の多面体の構造に由来する六角形ではない面がでてきますが、その面のおかげでこれらの多面体は「丸くなる」ことができるといってもよいでしょう。

 ちなみに、m操作というのが双対多面体に対して行っても同じ結果になるため、stm-正八面体は stm-立方体と同じですし、 stm-正二十面体は stm-正十二面体と同じです。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 他人様のペンネームの文字列を勝手に使わせてもらって、その文字列から多面体を作って遊んでしまっていますが、この遊びがどういう遊びなのか説明するのはとても大変です。こんな話を続けて面白がってくださる方がどのくらいいらっしゃるのか不安も感じますが、私自身はこのアイディアはとても面白いと思ったものですから、あと2日ほどは続けようかと思っています。(このネタだと更新が簡単なのです。すみません、このところ忙しくて…)

 余談ですが(失礼)、今日のstmという文字列の由来であるSTMileさんの消失点よりというページのshort story、おもしろいです。

 今朝このページを開いてみたら、カウンタが9万を越えていました。いつもご覧いただいてありがとうございます。最近は特に忙しくて、せっかくメールをいただいてもお返事がすぐに書けないで、本当に失礼しております。すみません。

 今日は子供が学校のスキー教室に行きます。怪我のないよう、無事に楽しんできて欲しいと思っています。



2月11日(水) コンウェイの多面体操作の表記(その3):ktsオペレータ

 Conway Notation for Polyhedraというページに出ている、多面体を変形するルールをアルファベットで表記したものを使って遊んでみた話の3回目です。今日は、ktsという文字列によって正多面体がどのように変形されるかをご覧いただこうと思います。

 最初に、kts-正四面体です。これはまず、正四面体に s(snub)操作をします。立方体や正八面体にsnub(捩れ)操作をすると捩れ立方体が、正十二面体や正二十面体に捩れ操作をすると捩れ十二面体ができるのですが、正四面体に捩れ操作をすると、実は正二十面体になるのです。 これは02年8月23日のひとことで、図をつけて説明してあるのでご覧下さい。 この、8月23日に書いている角柱的拡張というのがConwayの表記では e(expand)操作になり、反角柱的拡張のほうが s(snub)操作になります。

kts-正四面体
面180・稜270・頂点92

 つまり、kts-正四面体 というのは、kt-正二十面体と同じです。次にt(truncate)操作、頂点を落とす操作をするのですが、これを正二十面体に施すと、切隅二十面体、いわゆるサッカーボールになります。最後にk(kis)操作、これは各面の中心に新しく頂点を作って、各面のN角形をN個の三角形に分割する操作になりますので、結局全ての面が三角形になります。 というわけで、kts-正四面体は、k-切隅二十面体のことでした。つまりサッカーボールの正五角形を5つの三角形に、正六角形を6つの三角形に分割して膨らませたようなかたちになります。上の図で、サッカーボールの稜を読み取ることはできますか?

kts-立方体
面360・稜540・頂点182

kts-正十二面体
面900・稜1350・頂点452

 同様に、kts-立方体とkts-十二面体を作ってみました。最後に k-操作をしますので、いずれも三角形のみによって構成される立体になります。

 このように、あるジャンルで1文字1文字が何かを表現している場合、人の名前や何かの略語などをその表現で解釈してみるという遊びはそれほど珍しくないように思います。例えば、音の名前(ドレミファ)というのはA,B,C,D,E,F,G,Hで表されますが、ここに出てくるアルファベットだけでできる単語や名前を音にしてみる、というアイディアがあります。劇的で有名なのが、バッハ(BACH)の名前を構成するB-A-C-Hの音列、この半音階的な音の並びが、バッハ本人の最後の作品といわれる未完の曲の最後に、テーマとして登場するというような話があったり、後世の作曲家が何人もこのB-A-C-H音列をテーマとした曲を書いていたりします。また、シューマンの作品1であるアベッグ変奏曲、これも ABEGGという音の並びを利用した音楽です。 音名の場合、使える文字がアルファベットの最初の8文字しかありませんから、Conwayの多面体表記よりもさらに条件が厳しいですね。

 略語が全然違った意味になって面白いと思ったものというと、京都CommonLispのKClという略語(塩化カリウムという意味になる)、北大CommonLispのHCl(同じく塩酸という意味になる)なんていうのも初めてきいたときにはちょっと面白いと思ったものです。 ( Common Lisp というのは、計算機言語の中ではC言語などのような新興言語に比べてずっと歴史のある、興味深いものです。)

 <おまけのひとこと>
 今日のオペレータの文字列も他所様のペンネームからの借り物で、由来はToday's Information!さんです。 このページの日々のおすすめは、ひそかに楽しみにしています。2月6日の日々雑感の、石井桃子さんの記事は私も感心して読みました。

 昨日のスキー教室は無事帰ってきました。昨年はけが人が二人も出たときいていたので、ちょっと心配していたのですが、ほっとしました。なんでも昨年は、一人は救急車で搬送してもらったのだけれども、そのすぐあとにもう一人けが人が出て、車が手配できなくて先生の車で病院に行ったというような話をきいていたのです。先生も大変ですね。



2月12日(木) コンウェイの多面体操作の表記(その4):tareオペレータ

 Conway Notation for Polyhedraというページに出ている、多面体を変形するルールをアルファベットで表記したものを使って遊んでみた話の4回目です。今日は、tareという文字列によって正多面体がどのように変形されるかをご覧いただこうと思います。

tare-正四面体
面50・稜144・頂点96

tare-立方体
面98・稜288・頂点192

tare-正十二面体
面242・稜720・頂点480

 時間がないので詳しい説明はしませんが、これは expand によって正方形がたくさん補間されて、それが ambo によって頂点の次数が4の四辺形たくさんになり、最後に truncate されてその頂点が四角形、もとの四辺形が八角形になります。そういうわけでこの系列の多面体には、八角形と四角形のタイリング構造がたくさん出てきます。

平面充填形

 このほかに、“papa”“mama”“dog”“easter egg”なんていうオペレータはいかがですか? というメールをいただいています。ありがとうございます。 easteregg というのはちょっと長すぎて、手持ちのパソコンでは処理できませんでした。“egg”と“easter”と別々ならなんとかなるかな。

 <おまけのひとこと>
 今日の“tare”というのは、このページのリンク集にも掲載させていただいている、tareの網頁のtareさんのお名前から拝借した文字列です。実は多面体オペレータとしては、rには形を変えるという観点での意味はあまりありません。
 とある理由で「チューナー」を探しています。といっても、ラジオとかテレビの受信機ではありません。音を合わせる機械のほうです。



2月13日(金) 等面多面体の話

 昨日が発売日だった、日本評論社の『数学セミナー』2004年3月号に、「等面四面体から等面六面体へ」(村崎武明,pp.48-52)という記事が載っていました。

1. 正四面体以外に、4面が合同な三角形の四面体は存在するでしょうか。また、それを直角三角形や鈍角三角形でできるでしょうか。

2. 4面がいずれも直角三角形である四面体の例をあげてください。(合同でなくてもよいです)

3. 6面が合同な四辺形の多面体というと、平行六面体が考えられますが、そうでない例はあるでしょうか?

 というような話題が出ている、とても面白い内容でした。興味のある方は図書館等でご覧下さい。

 <おまけのひとこと>
 安野光雅についてちょっと探し物をしていたら、言語学のお散歩というサイトの花より団子〜職業としての声楽家というページに行き着いて、とても面白く読んでしまいました。



2月14日(土) Packing

 ある決められたかたち・大きさの入れ物の中に、同じ大きさのものをいくつ詰め込むことができるか、というタイプの問題があります。パズルの問題でも見かけますし、数学の問題としても、結晶やアモルファスの研究対象としても、面白い話題がたくさんあります。 今日は2月14日だからでしょうか、読売新聞のサイトに、詰めるには「球より楕円」、米グループがチョコで実験という記事が載っていました。一部引用させていただきます。

 同じ容器に無秩序に物を詰め込む場合、球よりも碁石のような楕円(だえん)体の方がたくさん入る――こんな事実を、米プリンストン大の研究グループが楕円体のチョコレート菓子「M&M」を使った実験で発見、13日付の米科学誌サイエンスに発表した。

 ちょっと調べてみると、Princeton UniversityのPaul Chaikinという方の“How Ellipsoids Pack.”という論文のようです。こちらのページに概要が載っています(英語です)。 また、pdfファイル形式のスライドがこちらにありました。17枚目のスライドに、“m&m”がぎっしり詰まった透明な球体の写真がありました。

 論文にあたっていないのでなんともいえないのですが、ランダム・自己組織的に詰め込むときには楕円体のほうが有利というのは、なんとなく当たり前のような気もします。 まあそれを実験的に検証したということころに価値があるわけですが。 スライドを見ると、実験に使った材料の寸法の統計データなども出ているので、詰め込む材料の正確な形状に関する検討はされているのでしょうけれども、ちょっと「この実験は本当に大丈夫?」という心細さを感じました。(元論文にもあたらずに失礼なことを書いてますね。) 実験としてはとても面白いと思うのですけれども。

 ところで、“m&m”といえば、大西科学さんの手のひらの奇跡を思い出します。これは形ではなく色に注目した確率の話なのですが、とてもお勧めです。

 <おまけのひとこと>
 音あわせのために、とりあえず音叉を買おうかと思って街の楽器屋さんに問い合わせたら、「お取り寄せになります」と言われてしまいました。
 昨日の「4面全てが直角三角形の四面体」の話ですが、たとえば立方体のねじれの位置関係にある任意の2本の稜の両端の4点を結ぶと、条件を満たします。(もちろん直方体でもいいです)
 今月前半は画像が多かったので、テキストだけの日をちょっと続けてみています。



2月15日(日) チューナー

 このあいだ、<おまけのひとこと>にちょっと書いておいた、音合わせのための電子チューナーを昨日買いました。KORG の OT-12 という製品です。こちらとかこちら(の下のほう)とかに製品のスペックが紹介されています。

 これを何に使っているかというと、写真のように、古楽の鍵盤楽器の調律です。思いがけず、こういう楽器をちょっとだけさわらせてもらえる機会ができたものですから、喜んでチューナーを買ってしまったのです。 写真の楽器はスピネット(Spinet)といって、小型のチェンバロ(ハープシコード)です。鍵盤は1段で、それぞれの鍵には弦が1本だけ張られています。そのおかげで、調律は比較的短時間で済みます。

 調律や音律というのは、数学やパズルのような観点で、非常に面白い世界です。余力があったらご紹介したいのですが・・・

(つづく)かな?

 <おまけのひとこと>
 昨日はとても風が強くて、でも気温の高い一日でした。屋根の北側の雪がだいぶ落ちました。今年は15cm以上雪が積もって、地域の雪かきに出たのは1月のはじめのわずか1回だけだったのですが、なにせ寒いものですからその雪は根雪となってずっと残っているのです。今朝は新しく雪がうっすらと積もっています。



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