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2003年9月20日 snailの謎−エジプトの住血吸虫病の宿主−
『ジオゴロ』という言葉は、『ジオグラフィー』と『語呂合わせ』という2つの単語の頭をくっつけた合成語で、『地理の語呂合わせ』という意味なんだが、それは表向きの意味だ。
ワタクシは、受験地理などという、ただでさえ王道地理からはずれた邪道の世界に身をおいているのに、そのうえに、ジオゴロなどという言葉を作ってそれにうつつを抜かしているのであるから、全国の地理を愛する人々から、『地理界のゴロツキ』とか『受験地理界のゴロツキ』と思われているのだろうな。だから、『ジオゴロ』の真の意味は、『地理のゴロツキ』なんだろうな。
「地理を愛する人から見れば、おいらは札付きのゴロツキさ。」などと常日頃思っている。
若者たちには、ワタクシのようなゴロツキなってほしくはないのであるが、『ジオゴロ地理B』を手に入れた人の中に、まれに、将来、札付きのゴロツキになりそうな人がいて、心配だ。しかし、そんな心配をさせてくれる若者たちも、ときに、けっこうまともな疑問を発してくれるから、「ああ、私の心配は杞憂であった。」とほっとする。今日の疑問は、将来、札付きのゴロツキになるやもしれぬとワタクシが内心で心配してた若者から頂戴したまともな疑問です。心配は杞憂でしたな。
今日の副題は、試験に出る病(3)。
疑問1 ナイルデルタの風土病を媒介するのは、貝じゃなくて「カタツムリ」だと聞いたことがあります。畑でカタツムリが大繁殖した結果だと。アスワンハイダムができるまでは、洪水でそのカタツムリが流されたから被害は小さかったが、洪水がなくなったので、増えたんですよね。 お答え ??? 畑のカタツムリですか? カタツムリの形をした巻き貝で、水の中に住む貝だと思っていたのですが。。。 |
と、答えながら、あれ? 似たような疑問を最近、別の場所でもらったぞ、と思った。次のような疑問です。
疑問2 ナイルデルタでは、カタツムリを食べる習慣があるから、風土病があって、むかしに比べてカタツムリが増えたから、感染者が増加した、って話を聞いたことがありますが。 お答え ??? フランスのエスカルゴみないなもんですか。食べるんでしょうかねえ? ??? そうかもしれませんねえ。。。 |
と、まあ、似たような疑問を、立て続けに、いただいたものですから、これは何か、同じ情報源があるのではないか?と思って、疑問1をくれた人によくよく伺ってみたところ、どこかの大学の英語の入試問題に、ナイルデルタの風土病の拡大とアスワンハイダムの関係に関する文章が出ていて、それを最近読んだらしい。そして、その英文の中で住血吸虫の中間宿主を示すらしい単語に注がついていて、そこに、「カタツムリ」と書いてあったのだそうです。
あとでわかったのですが、その単語は、たぶん「snail」です。さ〜らまんは英語に弱いから、その場では、カタツムリと聞いて「snail」という英単語が思いつきませんでした。
で、「巻き貝」なら「貝」なんだから「shell」だろ! 「snail」なら「カタツムリ」に決まってるじゃん! と思うのは、英語と日本語の単語が1:1対応しているとついつい思いたくなる素人の浅はかさでありまして、貝は貝でも、巻き貝は「shell」じゃないみたいですね。そして、「shell」は主に二枚貝(サザエもshellらしいけど)。タニシはsnail。
英語では、カタツムリも巻き貝も「snail」。見たとこ同じだし、調べたら、両方とも腹足綱(*)の動物らしいから、まあいいんですが、それにしても、陸上のカタツムリと水生の巻き貝ではだいぶイメージが違う。
*腹足綱(ふくそくこう) Gastropoda:n.腹足綱の動物 〔各種の巻貝、ウミウシ、カタツムリ、ナメクジなど〕
で、ナイルデルタの住血吸虫病をもたらすGastropodaですが、これは、畑のカタツムリではなくて、水生の巻き貝です。
住血吸虫の主な種類は、たとえばここやここよると、日本住血吸虫、マンソン住血吸虫、ビルハルツ住血吸虫、メコン住血吸虫の4つです(*)。それらの分布はここを見てください。そして、エジプトのは、このうちのビルハルツ住血吸虫で、中間宿主となる巻き貝は、ビルハルツ住血吸虫がBulinus、マンソン住血吸虫がヒラマキガイ(Biomphalaria sp )らしい。このページに、ヒラマキガイ(snails of the genus Biomphalaria)とBulinusなどの巻き貝のきれいな写真があって、Bulinusの方はタニシみたいだが、ヒラマキガイの方はカタツムリとそっくりだ。こちらの写真では、Bulinusも水草にくっついている写真はカタツムリそっくりだ。カタツムリは巻き貝の仲間で、陸上の巻き貝と考えればよくて、同じ仲間だから、似ているのは当たり前かもしれない。沖縄あたりのカタツムリやナメクジには住血吸虫を宿しているものがいるらしい。
*ここによると、住血吸虫の分化は、中間宿主の巻き貝の分化によって起こり、巻き貝の分化は、ゴンドワナ大陸の分裂により、アフリカとインドが分かれたためだという壮大な説があるらしい。愉快なり。
というわけで、結論のお答え
ナイルデルタのsnailを、「カタツムリ」と訳して間違いというわけではないのですが、、わたくしのような日本の農民が連想する畑のカタツムリではありません。この場合、「snail」の訳は、「カタツムリ」では誤解を招くのでよろしくない。「巻き貝」がよろしい。「水生のカタツムリ」なら誤解を招かないから、まあいいでしょう。 で、たぶん、食べないと思いますが、それについては知りません。その英文に「食べた」と書いてあるなら食べたのでしょう。(*後日談:その英文を見せてもらいましたら食べたとは書いてありませんでした。また、薬が発明されて、住血吸虫病が減りつつあると書いてありました。) |
*関連記事 アスワンハイダムの暗部について(1999年12月17日) 試験に出る病(2000年2月25日、27日)
*もっと勉強したい人はここ。ちょっと関係ないが、ここ(pdf)。
*今日の得た教訓
カタツムリとナメクジにさわるのは、日本でも、あまりよくないでしょう。生で食べては、もちろん、いけません。
ナイル川で沐浴をしてはいけません。
ある御ジンから頂戴した疑問で、残暑厳しいのに、なぜか、アイスランドです。
疑問 アイスランドとノルウェーの主要輸出品にアルミニウムが登場しますが、
1.ボーキサイトは輸入しているのですか?
2.ノルウェーの電力確保手段は水力であることはわかるが、
アイスランドで電力はどーやって得ているのですか?
おこたえ
1.について
両国ともボーキサイトはとれませんから輸入しています。
2.について
高緯度で大西洋中央海嶺の上に位置する島国アイスランドは「火山と温泉と氷河の国」なり。
ん?普通は「氷と火山の国」というのかな?まあ、そんな感じの国。
発電構成に占める割合は、水力が圧倒的で、残り1割が地熱。
(データブックオブザワールドの各国要覧で調べてください。)
高緯度の山がちな島国で、河川の水量が多く、河川勾配も大きいから、水力発電に向いています(*)。
河川の水量が多いのは、偏西風帯に位置する島国で降水量が多いうえ(大半は雪だが、雪は融ける)、山岳氷河がある。氷河は末端で融けて水になり河川に注ぐ。そこにダムを作ればいい。(右図のように)
*水力発電では、水が落下する力を利用してタービンをまわして発電するので、水量が多く落差が大きいと発電量が多くなる。
人口が30万人もおらず消費量がわずかですから、それだけでも十分ありあまっています。
そのありあまった電力(*)をアルミニウム精錬にまわします。
*電力はまことに便利なエネルギーであるが、貯蔵できない、長距離輸送ができない、という弱点があり、使わなければ無駄だし遠方の国に輸出もできない。
なお、地熱(*)利用だが、発電では1割程度にすぎないけれど、暖房など空調の75%が地熱・温水利用なので、エネルギー全体で地熱の割合は約50%を占める→ここ見てください。
*中央海嶺はプレートのひろがる境界だから、火山が多い。
関連記事→アイスランドの謎
→地熱発電は地球にやさしいか
2003年8月27日 サンフランシスコの最暖月2
ひさびさに、阿呆の頑張りをしてしまいました。熱帯夜がないので、熱に浮かされてやったわけではありません。世界に向かって宣言した約束だからやりました。というか、今年の東日本は、霧のサンフランシスコに似ているような似ていないような、梅雨と秋雨の8月だったから、なんとなくやる気が出ました。
下図は、リンク先(図をクリック!)からパクりました。 |
霧のサンフランシスコ2003年8月13日 |
霧のサンフランシスコの続きです。
ピンポンさんご提出の「サンフランシスコの最暖月はなぜ9月?」という疑問を、「サンフランシスコの8月は、9月よりなぜ気温が低いのか?」と読み替えれば、そのお答えは、「霧のサンフランシスコでは、8月に霧がよく湧いて、それがために8月は気温があまり上がらないのであります。」で十分であります。
「霧はなぜ8月によく湧くのか?」と問われれば、次のようにお答えできます。
カリフォルニアの沖は、寒流が流れているため霧が発生しやすい。海洋の湿った空気が寒流の冷たい水(ペルー海流と同じように、湧昇流により下層の冷たい水が表層に上がってくるのであります)によって冷やされ、霧が発生するのです。カリフォルニア沖の太平洋上では、8月に限らず霧が発生しやすいのです。
8月は、内陸のセントラルバレーが高温になる一方、寒流が流れる太平洋上はそれほど高温になりません。セントラルバレーでは気温の上昇によって大気が膨張し、空気の密度が低くなります。すなわち、内陸部に低圧部が形成されるわけです。太平洋上は気温が上昇しませんから、大気はそれほど膨張せず、空気の密度が濃いので、高圧部です。高圧部と低圧部があれば、大気が高圧部から低圧部に移動して、風が発生します。
すなわち、夏はセントラルバレーが熱せられ気圧が低くなるので、海上にできている霧が、そこにひきずりこまれます。そして、その通り道にサンフランシスコがあるので、8月のサンフランシスコは霧に覆われるときが多いのです。
霧に覆われれば、日照にめぐまれませんから、気温があまり上がりません。ふと考えると、これは、東北地方の太平洋側で、初夏にオホーツク海気団から「やませ」が吹き込んで大量の霧が発生すると、気温が上がらず、冷害になるようなもんであります。
そして、9月になって、内陸部で気温が下がり低圧部がなくなると、風が吹き込まなくなり霧は晴れて気温が上がる、という仕掛けです。
これで、もう十分! と言いたいところなのでありますが、実は、ピンポンさんの疑問にはまだ十分に答えておりません。
霧のために8月は低温というところまではいいのですが、最暖月はなぜ9月であって、7月ではないのか?という最初の疑問にはまだ答えていないのであります。
霧がない場合の本来の(というのも変な言い方だが便宜的に言うとして)、本来の月平均気温が、8月、9月、7月の順で高いのであれば、霧が出れば、なるほど最暖月は9月になる。ところが、本来が7月、8月、6月(または9月)の順に暖かいなら、霧が出ようが出まいが、最暖月は7月である。また、本来が8月、7月、9月(あるいは6月)の順に暖かい場合でも、霧が出れば、際暖月は7月になるはずだ。
というわけで、霧の有無に関係なく、7月より8月や9月の方が暖かい理由を言わないことには、きちんとしたお答えとは言えない。
そこで、そもそも、霧のサンフランシスコ以外で、すなわち、霧の出ない町で、7月より9月あるいは8月の方が暖かいところがあるのかどうかを調べてみました。それが、下の図です。
米国太平洋岸3州で最暖月が8月または9月の地点 (●と●は7月が最暖月で、それ以外の地点が該当する) |
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右図の見方 月平均気温の上位3ヶ月の順番で色分けしてあります。 ● 最暖月が7月で、 月平均気温が、7月、8月、6月の順に高い地点 北半球の中・高緯度の大部分の地点。 ● 最暖月が7月で、 月平均気温が、7月、8月、9月の順に高い地点 セントラルバレーの一部(サクラメントなど)に分布。 ● 最暖月が8月で、 月平均気温が、8月、7月、6月の順に高い地点 太平洋岸の北部(タコマなど)に分布。 ● 最暖月が8月で、 月平均気温が、8月、7月、9月の順に高い地点 太平洋岸の大部分の地点はこれに該当。 ● 最暖月が8月で、 月平均気温が、8月、9月、7月の順に高い地点 太平洋岸の南部(ロサンゼルス、サンディエゴなど) に分布。 ◎ 最暖月が9月で、 月平均気温が、9月、8月、7月の順に高い地点 サンフランシスコ付近のみ。 上記の分類は私が勝手にやりました。 気象データは、以下からとりました。 NOAA-CIRES Climate Diagnostics Center (ベースマップはhttp://fermi.jhuapl.edu/states/) Golden Gate Weather Services 右図から、 最暖月は、太平洋側と内陸側で異なり、 また、同じ太平洋側でも、 北部と南部とで異なる ことが、読み取れます。 さてこうなると、 カナダ側やメキシコ側も調べなければいけません。 また、 世界の他の地域についても調べなけれなりません。 |
たいへんなことになりました。
さてさて、続きは、いつになるのやら。
来年の熱帯夜まで待て!
2003年8月15日 サンフランシスコの最暖月
昨日から雨。梅雨に逆戻り、というか、逆戻りなら夏がまたやってくるのだが、時期的に考えればもはやそれはなく、早くも秋雨の到来!なのかもしれない。今年の夏は、関東甲信越の場合、長めにみつもっても13日間(8月1日〜13日。だが、この間に季節外れの大型台風が来ているからそれを除けば、1日〜4日までと10〜12日の計1週間あったかなかったかような。台風がきたとき、「三日天下の夏はいずこへ」って思ったが、ほんとにどっかへ行ってしまったようだ。これから低地では残暑というか暑い日もあるだろうけれど、わが住む高原の村は、例年、盆をすぎれば秋だから、夏はもう終わりと考えたほうがいいのかもしれない。
今日は雨で気温があがりません。寒がり屋のうちの父は、夕飯時にストーブを焚いてしまいました。
で、熱帯夜が来ないのをいいことに、「サンフランシスコの最暖月はなぜ9月か?」というピンポンさんからいただいていた疑問にお答えしないことにしようと決め込んでおりました。が、ひょっとして、今年は、サンフランシスコのように、7月・8月より9月の平均気温が高くなるかもしれない、と考えているうちに、むらむらと回答意欲が沸いてまいりまして、仕事を犠牲にしてのひさびさの更新です。
まずは、疑問から。
日本の夏 投稿者:ピンポン 投稿日: 4月24日(木)16時07分51秒 え〜、ここんとこ、このBBCを独占しちゃっているようで気がひけるんですが、新しい質問です。 |
梅雨のせいでしょう。 投稿者:さ〜らまん 投稿日: 4月24日(木)23時56分25秒 おっ、来た来た!! ピンポンさん、ひさびさの疑問ですね。そして、お得意の難問。待ってましたぁ〜! |
日本はよいとして‥‥ 投稿者:ピンポン 投稿日: 4月25日(金)18時19分16秒 さっそくのお答え、ありがとうございます! |
そりゃますます好都合 投稿者:さ〜らまん 投稿日: 4月25日(金)21時52分25秒 なにっ、サンフランシスコは9月ですと!! |
サンフランシスコ以外の都市 投稿者:ピンポン 投稿日: 4月26日(土)11時17分22秒 ↓気候・緯度が近い他の都市と比較してみました。 |
すばらしいです! が、、、 投稿者:さ〜らまん 投稿日: 4月26日(土)12時43分02秒 ピンポンさん、すばらしいです! |
待ちます、待ちます。 投稿者:ピンポン 投稿日: 4月26日(土)16時39分28秒 今年に限って、熱帯夜が楽しみです。わくわく。 |
さて、お答えですが、実は、きわめて簡単だったのであります。まずは、この曲をお聞きください→♪♪。
曲名は「霧のサンフランシスコ」です。こんな有名な事実を忘れていました。
そして、このページを読んでください→ここ(ちょっと音がしますがびっくりしないでください)。
さらに詳しい説明は、同じサイト内のこのページを読んでください→ここ(ページの中やや下にある「SEASONAL INFLUENCESのとこに書いてある文章、すなわち、The
daily and weekly cycles are complicated by the seasonal cycle, which begins
with the first tentative wreaths of fog along the coastal hills in early
spring, reaches a foggy maximum in late July and early August and tapers
off in September and October, the warmest months of the year in San Francisco.In
the fall, when the sunlight weakens and the valley heat diminishes, the
ocean winds die down and the fog comes in lower and more slowly. This is
often the optimum time of year for some of the special effects. Drivers
on the Golden Gate Bridge can sometimes look down on top of a white vapory
tide, which may continue eastward and billow up over Alcatraz and Angel
Island, creating fog domes.という文章だけでもいいです)。
これらから、8月の気温が上がらない理由がわかると思いますから、本日はここまで。気が向いたら続きを書きます。
おすすめ記事 | 2003年(ベネズエラのBW 2000年1月(各都道府県の都市システム EEAとリヒテンシュタイン) 1999年12月(大晦日12/26) |
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