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3月31日 河岸段丘と自然堤防(2)

 じらしすぎたら、じらす方の気力が失せてしまいました。ほったらかし状態にしてすみませんでした。いまも気力に乏しいので、疑問・発見掲示板より転載してお茶をにごします。

自然堤防

非常に平らな平野を川が流れているようなところで、大雨などで川が増水して氾濫することがあ
りますね。氾濫すると、あふれでた泥水の中の土砂が、川の両側に堆積します。このようにして
土砂が堆積した部分は、雨が止んで氾濫がおさまり、水がひくと、ごくわずかな高まりとなって
残ります。

これが自然堤防です。ごくわずかだが、まわりより高いから、次の大雨で川が氾濫したとき、水
につかりにくく、したがって、洪水の被害を受けにくいところになるので、集落が立地しやすい
のだけれど、大大大洪水になれば、自然堤防といえども水につかってしまうかもしれないという
程度の高さしかないのが普通です。トップページ2にある「自然堤防」という文字をクリックする
小貝川の自然堤防の写真が出てきますが、その写真を見てもどれが自然堤防かわからないと思
います。高いといってもしれているから、いい写真をとるのが難しいんです。空中写真なら、集
落があるところが自然堤防で水田になっているところが後背湿地だ、などとと区別できるんです
けどね。

河岸段丘

段丘の段は階段の段、丘は周囲に比べて高いが、山と呼ぶほど高くないところ。丘というとまる
っちい高まりを連想するが、そうではないですよ!段になっている丘ですよ!すなわち、階段の
ように段々になっているわけで、急な崖があって、その上が比較的平らになっているような高ま
りですよ!ということでしょうかねえ。

さて、河岸段丘の場合は、大大大大洪水になっても、水をかぶるようなことは普通はありません。
そんなちゃちな高さではないんです。台地の一種ですから。

成因については、http://www.torikyo.pref.tottori.jp/tottorisizenn/kagan.htmの模式図を見て下さい。

 地歴科では、地理に限らずどの科目でも同じでしょうが、各科目特有の用語と固有名詞が出てきて、それを覚えるのはたいへんです。地理特有の用語としては地形名などがあり、地理の固有名詞にあたるものは地名でしょうか? 

 このうち地名は、丸暗記が必要です。地理は、なぜ?がわかると面白くなって理解も深まるので、「丸暗記はだめですよ!理屈を重視して勉強しましょう!」という教師・講師が多く、私もその仲間ですが、地名については、理屈にこだわると、泥沼にはまります。

 地名の由来(なぜどうしてそういう地名になったか)を調べるのは確かにおもしろいことです。けれど、地名の由来というのは諸説あり、「これだ!」と決められないことが多いから、決めつけをして知ったかぶりをすると、とんだ恥をかきます。最近話題の恥ずかし本、『地名の世界地図』がいい例でしょう。まっ、俗説も暗記の役には立つので、覚えるためには悪いことではありません。でも、俗説を利用して覚えようとするのは、地理の勉強ではなくて、覚えるための手段あるいは方便にすぎませんから、ジオゴロフィーと同じようなレベルの邪道であります。

 なお、ありがたいことに、センター試験の地理では、地名はほとんど出ません。丸暗記を毛嫌いしているからでしょうね。

 一方、用語の場合は、そこに意味があるから、用語を丸暗記するよりも、用語を構成している文字の意味を考えると、なあんだ!そういうことか!とたちどころに納得できる場合がけっこうあり、特に地形用語にはその手のものが多いですね。

 たとえば、「自然堤防」という地形用語を分解してみると、「自然」と「堤防」になりますが、「自然堤防」を知らなくても「堤防」を知らない人はいません。川の両側などにつくられている細長い盛土で、両側が土手などになっているやつを思い浮かべるでしょう。

 「自然」の方は、反対語の「人工」から考えるとわかりやすいです。普通、「堤防」というと人工的につくられたものを思い浮かべるが、そうではなくて、自然にできたという意味です。自然にできたものなので、自然堤防の断面は、普通の堤防のように幾何学的な形はしていません。川から緩やかに高くなって、反対側も緩やかに低くなっていきます。

 そして、その高さはごくわずかです。洪水で川が氾濫して川から運ばれた土砂が堆積してできたものだからです。大洪水といっても水位が10mも上がることはめったにないから、自然堤防の高さは微々たるものです。自然堤防の高さを実感するには、傾斜がゆるやかすぎて、徒歩では昇っているのか下っているのか実感できないからダメな場合も多いです。自転車に乗るといいでしょう。自転車なら、緩傾斜でも登りはペダルをこぐ必要があり、下りはこがなくても自然に進むから、自然堤防のような微高地の上り下りを実感できます。

 さて、「堤防」の上に立って両側を見ると、そこは、川の水面よりも高いし、川の反対側の市街地や水田などになっている平地(ここを後背湿地といいます)よりも高いですね。そして、川の高さと反対側の後背湿地の高さはほとんど同じです。この点は、自然堤防も同じです。

 もう一つ問題となっている「河岸段丘」はどうでしょう? 「段丘」の「段」は、上で書いたように、「階段」の「段」です。「河岸」というのは「川の岸にある」というような意味でしょうから、「川の岸にある階段のような地形」ということになります。

 そこで、階段を一段昇って、そこに立ち、自分が立っているところを河岸段丘の段丘面と考え、階段の下を川の流れている平地と考えてみましょう。自分が立っている段とその下との間には急な部分があります。この急な部分は、河岸段丘でいえば、段丘崖に当たります。また、自分が立っている段から見て上の方は、当たり前ですが、自分が今いるところより高いですね。この点は、河岸段丘も階段と同じです。河岸段丘は河川中流部の山と山に囲まれた谷にできることが多いのだが、河岸段丘の段丘面から見て、川側が低く、川と反対の山側は高いんです。その点でも、川と反対側が低い自然堤防とは違いますね。

 ただ、階段は、11段とか20段とか、何段もあるのが普通ですが、河岸段丘の場合は、段が一つしかない場合もあります。段が一つということは、段丘崖が一つということで、段丘崖が一つであろうが二つであろうが、はたまた数段であろうが、どれも河岸段丘です。

 こんな具合に、用語、特に地形用語は、覚える前に、文字をよく見て、意味を考えることをお奨めします。漢字の用語だけじゃないですよ。たとえば、上でちょっと出てきた「後背湿地」という用語ですが、これを英語では「バックマーシュ」と言いまして、まれに試験に出ることがあります。「後背」は「バック」の、「湿地」は「マーシュ」の訳だろうと想像がつきますね。「バックマーシュ」という用語をそのまま丸暗記しようとすればたいへんですが、「バック」と「マーシュ」に分ければ簡単に覚えることができます。「バック」を「後背」と訳すのは難しいって? そんなことはないでしょう。「後背位で」のことを「バックで」とよく言うじゃありませんか! 「マーシュ」が難しいって? そんなもの、英和辞典をちょっと調べりゃしまいです。スペルを適当に考えて辞書をくれば、「marsh」という単語がみつかり、「低湿地」と書いてあります。ついでに、「marshy」を調べると「沼沢性の」とか「じくじくした」と書いてあります。「バックがじくじく」となるからといって、中年オヤジ的に変なことを想像してはダメですよ。川の方から見て、「自然堤防の背後にある低湿地」という意味です。

 以上でこの話題はおしまいにします。実は成因違いについてはほとんど説明していません。そのためには、「自然堤防は沖積平野にみられる地形で、河岸段丘は洪積台地の一種である 。」などという話をし、この「沖積平野」と「洪積台地」の比較をする必要があるのだが、HPの更新は「1日2時間以内」という自身に課している掟を破るわけにもいきませんので、あしからず。


3月19日 河岸段丘と自然堤防(その1)

 旅に出ている間に、疑問・発見掲示板で、初登場のななこさまから、疑問を頂戴しました。

こんにちは。はじめまして。

いきなり質問ですが、河岸段丘と自然堤防ってどういう違いがあるんですか?

河岸段丘は、川の両岸にできた階段状の段丘っていう説明が問題集にあったんですけど。

自然堤防のことはどこにも。

できれば、それぞれどういうふうにしてできたのかも教えてほしいです。

 「いきなり質問ですが」ってのがいいですね。

 「こんにちは。はじめまして。そのうち質問しますからよろしく。」と予告されると、「さ〜て、何が来るかな? 来るなら来て見ろ!」なんてかまえてしまうし、「来るかな? 来るかな?」と楽しみにしていた質問がいつまでたっても来ないときにゃあ、麻雀で、イーシャンテンまで行ったのにいつまでたっても欲しい牌が来ないときのように、いらいらします。私さ〜らは、一昨日、十何年ぶりかで麻雀をしました。麻雀といえば、いまの青少年が貴重な時間をネットや携帯メールでのおしゃべりで失っているように、青年さ〜らは、青春の貴重な時間のかなりの部分を麻雀で失いましたねえ。 それはさておき、

 「質問は、予告しないで、いきなりすべし。」 これが質問の正しい作法なのだ。

 ところで、ななこさんは、自然堤防とか河岸段丘を見たり、あるいは、その上を歩いたりしたことがありますか? 地形は文字面だけで理解しても意味がありません。幸い、これらの地形は、日本国内の各地にあり、ななこさまの家から日帰りできる場所にも必ずあると思いますから、実際に行ってみませんか? どこへ行ったらいいかは、住んでいる場所にもよりますので、ここではアドバイスできませんが。

 そして、行くときは、その場所の地形図を購入し、それを携帯しましょう。行く前に、色鉛筆で、水田、畑・果樹園、集落、森林など、異なる土地利用ごとに別の色で塗り分け、それを持っていくとなおいっそういいでしょう。

 そういうわけで、現物を思い浮かべながら理解しないと話にならないが、今日すぐに、というわけにはいかないので、とりあえず、写真や地形図を見ておきましょう。でも、今日すぐに、というわけにはいかないでしょうから、とりあえず、教科書や地図帳の写真などを見ておきましょう。でもそれでよしとしないで下さい。3月中は少し暇だから是非とも地形図をを持って旅に出ましょう。そのような旅は、地理マニアの間で、『エクスカーション』とか『巡検』と言います。Walking with a map!

 自然堤防と河岸段丘の違いがわからん? そんなに似ているかなあ? この二つの地形は全然違う形をしているから、マニアの立場で言わせてもらうと、違いがわからん方が不思議なのだ。

 ところが、これと同じような疑問は、しょっちゅう戴きますね。ということは、違いがわかるマニア人間の方が異常で、わからない人の方がノーマル人間かもしれません。ノーマル人間は、なぜ違いがわからないのでしょうか?

 ななこさんは、ものの本で次のような説明を見たのではありませんか?

河岸段丘:河川の両岸にできた階段状の段丘。
自然堤防:河川の両岸にできた堤防状の微高地。

これだけ見れば、「なんか似ているなあ」と思うのが普通ですよね。だから、違いがわからん! ということになりますよね。階段状の段丘と堤防状の微高地という部分が違いますが、階段は高いところへ昇るためのもので、堤防も高いところだから、似ている感じがしますねえ。

共通点(1) ともに河川に沿う地域でみられる地形である。

共通点(2) ともに河川より高い地形である。

 以上は、すべて前置きで、違いを瞬時に理解しようとする人は読む必要はまったくありません。前置きが長くなりました。いきなりお答えするのも芸がないと思ったからです。「お答えは、いきなりしないで、じらすべし。」これがお答えの正しい作法なのだ、な〜んちゃってね。


3月9日 浜松の楽器

 iメール疑問第5弾。富士の煙突に嫉妬したおなじみK村ノッポくんからの疑問です。ノッポくん、地理の試験の成績は芳しくないくせに、地理好きなようですね。

いま、浜松です。

すごい! ピアノの広告ばっかり!!

浜松って、楽器の町でしたっけ。それとバイクですか?

お答え

そのとおり。

浜松は、楽器と輸送用機械と繊維とうなぎの町。

全国シェアで、ピアノは100%、管楽器は90%、バイク55%です。

うなぎは最近落ち込んでいますが。

コメント

 どうやら、さ〜らは、新幹線車中の暇つぶしのいいダシに使われているようです。

 だいたい、さ〜らは地理に弱いので、どこどこはなになにの生産で有名! とか、あそこの地場産業は何それ などという話題には、およそついていけないのだ。

 でも調度暇だったから、すばやく浜松市のwebサイトで全国シェアを調べ、あたかも大昔から知っていたかのように、すずしい顔をして偉そうに返事してやったさ。


3月8日 富士の煙突

 iメール疑問第4弾。K村ノッポくんからの疑問です。

こんばんは。

残念ながら質問メールじゃないです。いま、富士です。

すごい! 煙突ばっかり!!

あの煙突、何の煙突ですか? 製紙工場ですか?

なんであんなに煙出るんですか?

めっちゃたくさんある。

お答え

そのとおり。製紙工場の煙突です。

煙がいっぱい出ているのは、チップやなんやらに水と化学薬品を入れてぐつぐつ煮るからです。

コメント

 やっぱ、ノッポの人は、自分より背の高いものを見ると腹が立って、気になるんでしょうね。

 リサイクルして古紙を使おうが何しようが、製紙というのは、製品処理用に大量の水と大量の燃料を使います。温暖化を防ぐためにパルプ用の木材を伐採しなくたって、紙をつくるときに大量の化石燃料を使うんですから、製紙工業というのも、紙を大量に使う我々も罪つくりでんなあ。このメールを頂戴し、製紙については、原料のことばかりでなく、燃料のことも考えないといけないと思った次第です。コメントにはなっていませんが。


3月7日 風上・風下

 iメール疑問第3弾。マクマホンラインでお馴染みの若ぎみクンからの疑問です。

ニュージーランドの西側で雨が多い理由を問われたら、

「偏西風に対し、山脈の風上側斜面に位置するため、・・・」と書かなきゃだめじゃないんですか?

いま問題集をやっていたら、そこの解答に、「偏西風の風上にあたり、・・・」

と書いてありましたが。

「山脈の」をつけないで書く場合は、

「偏西風の風下にあたり、・・・」と書くべきじゃないんですか?

お答え

変な気がするかもしれませんが、地形性降雨の説明では、「風上」というと、普通は「山地の風上側斜面」を指します。

確かに、「風上に」だけでは、ちょっといい加減ですが、そのような言い方をすることも多いのです。

気になる人(私もその仲間ですが)は、「山地の・・・」と言ったり、「・・・側斜面」と言うが、字数に制約がある場合、単に「風上」と書いても、それで減点されることはまずありません。

むしろ、「風下」と書くと、雨が少ない側の斜面を指すと受け取られて減点されます。

専門家におもねって彼らの言い方にあわせるしかありま温泉。

 若ぎみクンが、「『山脈の』をつけないで書く場合は、『偏西風の風下にあたり、・・」と書くべきじゃないか?」と主張したことに対して、地理マニアなら、「このニイちゃん、何を言っているのかいな? ???」と思うのではないでしょうか? これはもう、マニアにとっては、「何じゃこれ疑問」とでも呼ぶべき意味不明の主張ですよね。実は私も、つい何年か前までは、その一人でありました。

 ところが、今の私は、このiメール疑問を見た瞬間、彼がなぜそう言うのかわかってしまっていたのであります。

 というのも、それまでに、何人もの若い人たちが、「偏西風の風下にあたり、雨が多い。」と書いているのを見てきたからです。これを見て、最初は、「こいつ、何にもわかっていないな! 受験生の風上にもおけないヤツめ!」とつぶやいて、ピシッと×をつけ、「バカも〜ん!」と書くか、機嫌がよければ「テキストの○ページの○行目を見よ!」と書いたり、もっと機嫌がよいときは、ご丁寧にも、ふんふんと鼻歌を歌いながら山の絵を描き風を矢印で書いてうだうだと説明を書き添えるかしたものです。

 そして、「なんでこないなこと書くんやろ?」とか、「どういでこーゆーこと書くずら?」とかつぶやきながら、「あぁ〜! 情けない! 『風下側が多雨』などと書くということは おいらの説明が何の役にもたっていないわけだ。いや、それ以前の問題じゃ!」と脱力していくのであります。それでも、「さっ、次、いくか。」と気をとりなおし、添削を続けていると、何と! またいるではありませんか! 「風下なので多雨」と書くヤツが!

 それで、わかってしまったのです。地形性降雨の原理がわかっていないのではなくて、彼らの言う「風上」・「風下」と、私を含めてマニアが想定している「風上」・「風下」とが違う場所を指しているのだ、ということが。

 彼らは、「『風上』というのは『風が吹き出す方』だから海側を指す。『風下』というのは『風が海の方から吹いてきて向かっていく方』だから、海から吹いてきた風がぶちあたる山地斜面を指す。」と理解していたのであります。

 そのことに気づいたとき、私は脳天をぶち抜かれる思いがしましたね。北西季節風を例にとれば、彼らに言わせると、シベリアや日本海が風上で、陸地の日本海側が風下、なんです。

 じゃあ、太平洋側は風下の風下だから「風下下」かいな? うぷぷ。ようやく、笑みがこぼれました。

 若ぎみクンの「何じゃこれ疑問」も、同じなのであります。

 なるへそ、ですねえ。マニアはわかっているから、ついつい、「卓越風の風上なので」みたいな書き方をしますが、いけませんね。この「風上」・「風下」ってのは、山地を基準にして言っているわけだから、本来は「山地の・・・」とか、「・・・(側)斜面」とか書くべきでしょうね。

 いま、教科書や気候関係の本を見たら、ちゃんとそう書いてあるものが多かった。「専門家におもねって彼らの言い方にあわせるしかありま温泉。」とお答えしたのは筆がすべったと解釈し、専門家のみなさん、許して下さい。悪いのは、受験地理慣れしたマニアだけだったのであります。

 似たようなものに、「西岸・東岸」があります。普通は大陸の西岸と東岸を指しますが、海洋から見れば、西岸は「大陸東岸」で東岸は「大陸西岸」になりますから。言葉ッてのは難しい。でも、おもしろいもんだ。


3月6日 高燥地って?

 iメール疑問第2弾。EUジオゴロ新案「ベランダの古井戸にリスがいるでと群がる社員・・・」でお馴染みになりつつある妙齢の才媛さんが後輩から受けた疑問だそうです。

 いま「妙齢の才媛」と書いてから、ふと、ついこの間Saland掲示板で私が「さよならが祝辞」と書いたら、エ☆スケ氏が「私の場合は、『また遊ぼうぜ』が祝辞だ。」と言っていたのを思い出した。相手が野郎の場合はそれでもいいが、妙齢の才媛の場合、「また遊ぼうぜ」なんて言ったらエラいことになる。とりわけ夜の帝王の異名をもつエ☆スケ氏が、「師弟関係ではなく、互いに兄にもなり弟にもなりって関係がよか」なんて言えば、あらぬ嫌疑をかけられ、「兄妹、姉弟の関係になって、何して遊ぶんじゃい!」と糾弾されること必定なり。それはさておき、本題です。

高燥地って標高が高くて乾燥、ですよね?

乾燥力が高い、じゃないですよね?

お答え

そのとおり。高燥地って、土地が高くて湿気がないところ、です。

乾燥力が高い、じゃあないです。

なお、「標高が高くて」ってのは、ちと難あり。

高いのは絶対的な「標高」ではなくて「比高」ですね。「周囲に比べて高い」ってこと。

 この疑問を聞いて、地理に慣れ親しんだ人(以下、地理マニアと呼ぶ)ならば、「え〜っ!!! 乾燥力が高い??? 何ばかなこと言ってるんだい!」と思うだろう。そして、「『高燥』なんて、地理用語じゃなくて日常会話で使う普通の言葉だろ!」と言い、「そんなことも知らんの?」と若い受験生を罵倒し、その後、このことを仲間内の老人たちとの茶飲み話のネタにして、「近頃の若いもんは常識がないんですわ。」などと報告するわけだ。

 しかしながら、「高燥地」という言葉が地理以外の場で使われることはそれほど多いわけではない。地理マニアの間で常識的にしばしば使う言い回しが世間一般で流通していると思ったら大間違いで、むしろ、流通していないことの方が多い。むしろ、地理マニアこそ常識からかけ離れた存在だと思っておいた方がよく、その自覚が世間の地理マニア以外の人々と会話するときに必要な心得でしょう。たとえば、地理マニアがよく使う「山がち」なんて言葉も普通はあまり使われない。

 それにしても、「山また山で山ばっかし」を「山がち」というなら、海ばっかなら「海がち」、一面平らなら「平野がち」、川が多けりゃ「川がち」となるはずなのに、そうは言わず、なぜ山の場合だけ「山がち」って言うんでしょうね。

 それはさておき、マニアの立場から言わせてもらうと、「高燥=乾燥力が高い」にはびっくりしました。「高気圧=気圧が高い」からの類推でしょうかねえ。バカにするより、その想像力or創造力に関心しなければなりませんね。

 ついでに、マニアの立場から、もう一言二言。

 若い人たちの中に、「自然堤防は乾燥地なので」と書く人がいるが、これは、「高燥地なので」と書いてほしいですね。乾燥地と言うと、地理マニアは乾燥気候を連想します。乾燥気候ってのは一言で言えば蒸発量>降水量ですが、自然堤防はそういう理由で乾いているわけではなく、周囲より高いうえ砂地なので、低くて泥質の後背湿地に比べ、水はけがよく湿気がないわけですから。

 また、「自然堤防は乏水地なので集落が立地し」と書く人がいるが、これも気にくわないね。「乏水地」ってのは「飲料水が得にくく農業などにおいても水利条件に恵まれない土地」という意味で、マイナスイメージで使う言葉だ。自然堤防に集落が立地するのは、「水がなくて困るようなところ」だからではなくて、「洪水の被害を受けにくいから」というプラスの理由によるから、マイナスイメージをもつ修飾語は使ってほしくないのだ。ただし、同じ自然堤防でも、土地利用について説明する場合はマイナスイメージの修飾語を使ってもよい。畑や果樹園が多く水田になっていないのは、水利条件に恵まれないからだ。

 地理マニアに限らず、マニアというものは、かように言葉遣いにうるさいのだ。受験において、若い人たちは、地理だけでなくさまざまな分野のマニアとつきあわなければならないから、たいへんである。


2月28日 マクマホンライン

 携帯メールのおかげで、いろんな人と気軽にやりとりできる時代になった。この2ヶ月ほどの間に携帯メールで頂戴した疑問を公開させていただく。携帯なので、十分なお答えとは言えないが、臨場感を大事にして、あまり手を加えないことにし、必要ならコメントを加えることにする。

 本日は、「世が世なら、そして、わたしが野武士か坊主で、彼が日吉丸か牛若丸なら、わたしは彼の子分になっているだろうな」、と思わせる不思議な風格を備えた若者(「若ぎみクンと呼ぶことにしましょうかねえ)から頂戴した疑問です。

インドと中国の国境問題(マクマホンライン)の地域に両国がこだわる理由はあるんですか?

地下資源があるとか・・・

お答え

めんつ!なり。

世の中にはカネよりも怖いものがあり、それはプライド。そして、一で譲歩したらなし崩し的に他でも譲歩しなければならぬのではないかという恐怖心。

中国は原則を重んじる国なので、第二次世界大戦前に中国抜きでイギリスとチベットが決めた国境を、認めるわけにはいかないのであります。

コメント

 「第二次世界大戦前に中国抜きでイギリスとチベットが決めた」というのはちょっといい加減な表現ですが、シムラ条約のことです。世界史のことはいざ知らず、マクマホンラインについて地理で問われることと言えば、その名称と、マクマホンさんがイギリス人であることぐらいで、さらに深く突っ込んだ問題は出ませんので、コメントは差し控えさせてただきます。

 なお、「カネ儲けよりも、めんつやプライドの維持が、人間の行動の重要な動機である」というのは、男性にのみ当てはまるようです。男性は女性と違って脳陵が狭いから仕方がないのであります。