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今日の疑問

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6月17日 大阪のヒートアイランド現象

 帝国書院『資料地理の研究』でヒートアイランドの図中に大阪がないのはどうしてですか? 単にデータがないだけなのか、それともそれほど暑くならないのですか?

お答え 継続的なデータがないためです。

 問題の図は、帝国書院『地理の研究』11訂版の85ページにあります。横軸に日本の各都市の人口(1990年)、縦軸に年平均気温の気温差(1961〜90年の平均値と1931〜60年の平均値との差)を、xyグラフで示した図です。これを見ると、気温上昇幅は人口が多いほど大きくなる傾向があり、東京の0.9℃上昇が最大で、人口第2位の横浜、第4位の名古屋など、グラフに掲載されている百万都市は神戸を除きすべて0.6前後以上気温が上がっている。

 ところが、グラフには、百万都市のうち、人口第2位の大阪、他に、川崎、広島、北九州の、計4都市がない。どうしてだ?って思うのは当然でしょう。それにしても、大阪が掲載されていないことに、よくぞ、気がついたものですね。グラフをぼんやり見ているだけでは気づかないことなので、たいしたもんだ!と感心しました。

 でも、よくよく考えてみたら、そんなに感心するほどのことでもありませんでした。こういうグラフを見ると、自分が住んでいる町のことは気になるから捜すのは当然でしょう。今回の疑問は切れ味最高(本人は謙遜して否定しているが、そういうことにしておきましょう)の若者Mクンから頂戴したものだが、彼は大阪に住んでいるから、切れ味最高でなくても気づくことですよね。

 この疑問はさ〜らの手に余るので、知り合いの気候の専門家にお伺いしたところ、本日、次のような丁重なるお手紙を頂戴しました。

さて、お問い合わせの件ですが、結論から申しますと、「観測場所(大阪管区気象台)を移転させたため、統計をとる際に最初から外した」ということです。ヒートアイランドなどを観測する際、場所を移しますと、それだけで0.数度(れいてんすうど)の変化が出てきてしまい、たとえば「100年間に0.6℃上昇」という議論をする上で厳密さを欠くからです。・・・決して大阪のヒートアイランドがない訳ではありません。(出典の)「異常気象レポート'94」のコピーを前後のページを含め同封しましたのでご参考までに。

 感激ですね。「もつべき友は専門家」、という新しい格言を作ってしまいました。

 大阪管区気象台の移転の歴史を下に示します。これは大阪管区気象台のHPから引用したもので、我々の気象庁ともあろうお方がさ〜らごときに勝手に引用されても文句をいうわけはないから安心して引用できます。

大阪管区気象の前身である「大阪測候所」が大阪市北区堂島で観測を開始したのは明治15年、当時は国ではなく大阪府の機関でした。その後、大火事での測候所庁舎消失(明治42年)や大阪市東成区勝山への移転(昭和8年)などを経て、昭和14年、現在と同じ「大阪管区気象台」となりました。
 昭和43年には大阪市東区法円坂(大阪合同庁舎第2号館)へ移転、現在の大阪市中央区大手町(大阪合同庁舎第4号館)に移転したのは平成5年です。

 なお、神戸の件ですが、いただいた『異常気象レポート'94』のコピーによると、「神戸は0.3℃と比較的上昇幅が小さくなっている。神戸以外にも、室蘭や宇和島でも、人口の割には気温差が小さくなっている。これらの3観測地点は、ともに市街地の中心になく丘の上にあるため都市化の影響が小さかったものと考えられる。」のだそうです。

 これを書きながら、「待てよ? 『異常気象レポート'94』か、どこかで聞いたことがあるぞ。」「あっ、そうだ! 持っていたんだ!」ということに気づきました。そして捜したところ、やはり、ありました。だめですねえ。死蔵していたんです。でも、嬉しいじゃありませんか。Mクンの疑問のおかげで、さ〜らにとっては宝の持ち腐れだったこの本が、死蔵の暗闇からよみがえったんです。「もつべきものは若き友」という新しい格言2まで作ってしまいました。


5月24日 溺れ谷で有名なチェサピーク湾続報

 再び、受験と無関係なお話。

 チェサピーク湾で思い出したが、相互リンクを張らしていただいているスルッとKANTOさんの「まち・むら・そしてたびのページ」の「うみのむこうの掲示板」の過去ログに、チェサピーク湾の話が載っています。勝手に引用します。

スルッとKANTOさん:
 地図で見る限り、チェサピーク湾は大きいですね。大きいというより、長い、というか。瀬戸内海に匹敵しそうですね。ところで、チェサピーク湾とデラウェア湾に挟まれたエリアは半島状になってますが、何半島というのでしょう?

爺さら:
 小学館の『世界大地図館』によると、「デルマーバ半島」というのだそうです。三省堂の『コンサイス外国地名辞典』を調べたところ、「デラウェア・メリーランド・バージニア州にまたがる半島」、「地名は半島にまたがる3州の合成名」、とありました。合成地名とは愉快です。

 チェサピーク湾っていうと、溺れ谷の例として以外では、湾奥の町ボルティモアやその近くの臨海型製鉄所のあるスパローズポイントが関連事項として試験に出ます。昔は、牡蠣の養殖で有名だったからそれも出たが、今はどうなんでしょうか?

 ところで、「爺さら」って誰でしょうか? 何を隠そう! 私さ〜らの昔の自称です。そのころ、さ〜らは、「今日の発見」コーナーで合成地名にこだわっていました。当時は老けていたが、デービスの地形輪廻のモデルよろしく、回春して若返って、今や、「爺」がとれて「さ〜ら」になったのです。当時は、「G−SALAND」のことを、一人こころのなかで、「爺さんランド」と呼んでいました。こう書くと、拙オナページのことを「爺さんランド」って呼び始める人がいそうな悪い予感がしますが。。。


5月23日 溺れ谷

高校のとき地理を選択して,地形なんかにすごく興味もちました。当時いろいろ参考書を見て調べたけど,どうも納得のいく説明が得られなかったんです。
次の海岸地形の特徴・要因と違いは何でしょうか? 「リアス式海岸,ダルマチア式海岸,溺れ谷」です。
リアスはまあ分かりますが,後の二つは当時でも載ってる参考書はほとんどなかったんです。ダルマチアは授業中ちょろっと先生が言ってた記憶があります。溺れ谷はチェサピーク湾に見られる地形で特徴は今ひとつ理解できてません。

お答え あっぷあっぷの溺れ谷

 かつさんの疑問を掲示板から転載しました。前回このコーナーで披露した受験生の疑問はマニアックで受験には不要な疑問でしたが、お馴染み、地理好き社会人(だと思う)のかつさんの疑問は、受験生が弱いと思われるような部分に焦点をあてたものばかりなので、受験生の役に立ちます。ありがたいですね。

 いずれも沈水により形成されたという点で、成因は同じですが、「リアス式海岸」と「ダルマチア式海岸」は、海岸線の形に着目してつけられた名称で、「溺れ谷」は成因面に着目した名称でしょう。

 山地や台地が海岸に迫っているとき、地盤が隆起したり、あるいは、海面が上昇したりすると、山地や台地の中の谷は低いのでその部分は海底に沈んで(「沈水」って言います)入り江になり、山地の尾根の部分や台地の台地面は高いので岬などになって陸地として残ります。こうしてできた入り江は、もともとは陸上の谷だったところが海底になってしまったわけですが、これを「溺れ谷」といいます。谷が海の中にあっぷあっぷと溺れてしまったと考えてそんな名称をつけたのだと思います。

 海岸線に対して直角の谷がいくつも連続しているような山地が沈水すると、海岸線に直角の入り江が連続することになり、結果として鋸の歯のようなギザギザの海岸線が形成されますが、これをリアス式海岸といいます。

 これに対して、山地の谷が海岸線に対して平行になっている場合は、沈水してできた入り江も海岸線に平行するようなかたちになります。これをダルマチア式海岸と呼びます。地図帳で、クロアチアのダルマチア地方の海岸線を見ると、そのような形になっています。ダルマチア式海岸という地形名は、この地名に由来します。

 以上のリアス式海岸にしろダルマチア式海岸にしろ、入り江は連続しており、たいへんに複雑な海岸線をもつ地形です。そして、入り江の一つ一つは成因から言えば「溺れ谷」です。全体を見れば「溺れ谷」の連続したものということになります。

 チェサピーク湾の場合は、入り江が一つしかないので、リアス式ともダルマチア式とも言えず、「溺れ谷」というしかないので、そう呼んでいるのです。

 台地が沈水する場合、台地を刻んでいる谷が溺れますが、尾根と谷の連続する山地が沈水する場合と異なり、溺れ谷はそんなに連続しません。そのような台地を有湾台地と呼びます。この呼称は、成因ではなく、形に着目した命名だと言ってよいでしょう。三浦半島が有名ですが、チェサピーク湾付近も有湾台地の例でしょう。

 以上は、河川によって侵食された谷が沈水したものですが、フィヨルドのように、氷河の侵食により形成されたU字谷に海水が侵入する場合だって、そこの入り江の一つ一つは溺れ谷です。

 地形の分野は受験生も苦手です。その理由の一つは、地形の名称が、成因に着目したものと、形態に着目したものとが混在しているからだと思います。この混在は、地形学が、恐らく、形態への着目から始まったので、そのときにつけられた名称が、のちに成因の研究が進んでいってからも残り続けていることに由来するのじゃないかしらん。多くの場合は、「形を見れば成因がわかる」と言えるように、形への着目が成因の解明に役立っており、形と成因の間にずれはないのだが、中には、ずれが見られることもあるのでやっかいです。

 受験用の解説書では、往々にして、形態面から命名した地形名と成因面から命名した地形名を同列に並べて説明することもあるので、私を含め素人は、混乱します。そして、ときには、「なんといういい加減な説明だ! これじゃ、わかるわけないじゃん!」と腹を立てたりもします。理解が浅いだけだから腹を立てても仕方ないんですが。


5月14日 地形図の鉄道軌道幅

 縮尺2万5千分の1の地形図「神戸主部」を見ていて気がついたのですが、JR以外の私鉄に付してある「阪急神戸線」や「阪神電鉄本線」という注記の後ろに、(1.44)という数字が書いてありました。この数字は何ですか。地形図の右にある地図記号の凡例一覧にも、それに関する説明がありません。

お答え 鉄っちゃんにとっては常識でしょうが、まともな人間には何のことやらわかりませんよね。鉄道軌道幅のようです。

 今日は、入試で地形図が出ることはまずありえないといわれている某国立大学を志望するT君の疑問です。マニアですねぇ。確かに、地形図掲載の凡例には、図式(地図記号や注記)の意味のうち、細かいものは載っておらず、T君ご提出の疑問もその一つです。そうした細かなことまでを知りたい人は、本屋などで解説本を購入して調べるとよいでしょう。さ〜ら手持ちのなかでは、大森八四郎『地形図の本−地図の基礎から利用まで』(国際地学協会、1991)が、安くてお手頃(税込み1000円)なのでおすすめです。そこから引用します。

「鉄道の軌道幅」とは、2条のレール間の幅のことで、1.07m(図式上では標準軌道と呼んでいる)
以外のものについて、その鉄道名の末尾にメートル以下2位までの数字をカッコ書きで示される。

 世の中には鉄っちゃんと呼ばれる鉄道マニアが、地図マニアに勝るとも劣らずごまんといて、その道は、「鉄道道」と呼んでもいいくらいに奥が深いと聞いています。ネット上にも、そうした人々が開設しているHPが多いと思います。したがって、鉄道軌道幅(ゲージ)の解説については、その道の方に譲りますが、少しだけふれますと、世界にはさまざまな鉄道ゲージが存在し、一つの国の中にも複数のゲージが存在するのが普通のようです。一つの国の鉄道網の過半数を占めるゲージを標準ゲージと呼ぶことにすると、欧米および中国・韓国では1435mmが標準で、日本では1067mmが標準です。

 よって、地形図の数字の(1.44)というのは、1435mm=1.435mを小数第2位まで示したものです。2万5千分の1地形図だけでなく、5万分の1地形図でも同様です。

日本の標準ゲージが狭いのは、明治政府が最初に建設した鉄道以来のことです。和久田康雄氏によると、大隈重信の回顧談に、イギリス人技術者が、「ゲージはどうするか?」と聞かれて、「元来が貧乏な国であるから軌道は狭い方が宜しかろう」と狭軌にしたと述べているらしい(雑誌『地理』1996年11月号)。当時、イギリスは、植民地各地で複数のゲージの鉄道建設を計画しており、オーストラリアの一部とニュージーランド、南アフリカで、日本と同じ1067ミリを建設している。

 日本では、JR在来線のほとんどが1067mm、新幹線および関西の私鉄の多くが原則1435mmです。関東の私鉄には1067ミリが多いが、1372ミリのものや1435ミリに改軌されたものもありさまざまなようです。T君の疑問は、「神戸主部」の地形図を見ていて生じたもので、関西だからこそ出てきた疑問です。他の地方の地図を見ていれば、1067ミリの鉄道ゲージが多いから、この疑問は生じにくかったでしょうね。

 鉄道マニアが「鉄道道」にいそしむように、地図マニアのT君は、これからも「地図道」を極めていくことでしょう。道を極めつつある彼から、今後、どんな疑問が出るか、ちょっとこわいですね。


5月6日 グレートバリアリーフ(大堡礁)

堡礁ってのは、島のまわりの海岸から少し離れたところにできるやつですよね。オーストラリア北東部のグレートバリアリーフ(大堡礁)は、地図帳で見ると、サンゴ礁の島が点々としているだけのように見えます。これのどこが堡礁なんですか? どうみても、それぞれの小さい島のまわりに堡礁が形成されているようには見えませんが。

お答え 模式図にだまされることなかれ。

 堡礁とは、海岸から離れた沖合に形成されるサンゴ礁のことです。参考書などの模式図には、サンゴ礁の「裾礁」と「堡礁」が、島を中心にしてそのまわりに描かれていますが、形成される場所は、別に、島のまわりでなくてもいいのです。島ではなく、大陸の海岸に沿って形成されているものも、裾礁あるいは堡礁と呼びます。グレートバリアリーフ(大堡礁)の場合は、オーストラリア大陸の海岸から離れたところに、大小700のサンゴ礁の島が散在しており、いずれも、オーストラリア大陸の海岸から離れた沖合にあるので、それらを総称して、「堡礁」と呼んでいいんです。グレートバリアリーフ(大堡礁)は、南緯10〜24度の間、長さ約2000kmにも及ぶ世界最大のサンゴ礁です。北部から南部に向かってしだいに海岸から遠ざかり、幅も広くなるようです。

 おまけ解説。裾礁(きょしょう)の裾は「すそ」とも読むように、陸地のすそにぴったりくっついているものです。「着物の裾」の裾という字なので「ころもへん」です。間違って「しめすへん」を書かないようにしましょう。また、堡礁(ほしょう)の堡は「とりで」という意味で、陸地を守るような場所にできています。「堡」は普段あまり使わない漢字なので、英語のバリア(barrier)の方がわかりやすいですね。「バリアリーフ」という言い方も覚えておきましょう。環礁の「環」の意味は読んで字のごとしです。英語ではリングリーフということもありますが、試験では「アトール」という言い方が出ます。マニアックな問題を出す大学を受ける人は「アトール」という言い方も覚えておきましょう。以上の「裾礁、堡礁、環礁」を覚えるために、ある若者は、これらを略して、「裾堡環」→「きょほーかん」→「巨峰缶」→「ぶどうの巨峰の缶詰」と連想して、なんとか覚えた、と聞いたことがあります。ゴロはいいが、サンゴ礁とどう結び付くかがよくわかりません。ジオゴロとしては苦しいですね。それに、「巨峰の缶詰」なんてものは、見たことも聞いたこともありません。そういえば、サンゴ礁も、日本では沖縄あたりに行かないとなかなか見ることができませんから、めずらしいものつながりということで共通すると考えれば、なんとか連想できるかもしれませんね。