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以前の「ひとこと」 : 2019年3月後半



3月16日(土) 大村版「ロックする五角錐」:なぜロックしないか

 先日、「ロックする五角錐」を作りたくて四角錐と同様に頂角を三等分したらうまくいかなかった、という話をご紹介したら、Kさんから「片側を折らなければ摩擦と弾力でロックします」という、いかにも折り紙らしいテクニックを伝授いただいた、という話を書きました。

 昨夜、いつも情報を下さる尾道市の大村さんから、「なぜロックしないか」「どうしたらロックするようになるか」という考察と分析をされたレポートをいただきました。感激です。ありがとうございます。

図 1:大村さんのレポートの一部(縮小画像版)

 いただいた考察について、簡単にご紹介させていただきます。



 内側に折り込まれる部分を、大村さんに倣って「フラップ」と呼びます。まず簡単のため、四角錐・五角錐ではなく四角柱・五角柱だと考えると、正方形から始めると内側のフラップは干渉していますが(図2左)、正五角形から始めるとフラップは離れてしまっています(図2右)。

図 2

 これがロックしない理屈なのですね。では、どうすればロックするようになるのでしょうか。

図 3:大村さんのレポートより

 いただいたレポートでは、図3のようにフラップの長さをいろいろ変えてみたとして、フラップの長さAPが最長になるようにすればロックするのではないか、というアイディアで、実際に設計をされた経緯が書かれていました。

 角柱の場合と違って、角錐の場合は斜辺を軸にフラップが回転するので、計算が厄介です。底面の五角形の1辺を1、五角錐の高さをhとして(図4)、

図 4:大村さんのレポートより

 底辺が正五角形であること、底辺の中心と頂点を結ぶ線(O'O)が垂直であること、角P'BPと角BAPが等しいこと、を条件に、Pの位置を1つのパラメータで表して、フラップの頂角θ(図5の青い○)と五角錐の側面の二等辺三角形の頂角β(図5の赤い点)をパラメータで記述します。

図 5

 展開図から β+2θ=108°なので、その条件のもとにフラップの頂角θを最大化する、という方針で数値計算をされたそうです。

 (2019年3月18日追記:公開当初、βとθが混乱していました。統一して修正しました。失礼致しました。)

(つづく)

<おまけのひとこと>
 3月17日(日)に、3/16、3/17の2日分の更新をしています。 大村さんからいただいた情報が面白すぎて、どこまでどう書かせていただこうかなあと考えながら、追加の基本的な図を自分でも描いてみたりして、ご紹介するのにいつもより時間がかかってしまいました。






3月17日(日) 大村版「ロックする五角錐」:設計データと試作

 尾道市の大村さんにいただいた「ロックする五角錐」のレポートと試作のご紹介の2回目です。昨日の方針で計算をされた結果、得られたのは以下のような展開図だったそうです。

図 1:大村版「ロックする五角錐」展開図

 ロックしてくれなかった3等分(各々36°)の展開図と比べて、側面の頂角が約2°細くなって、フラップの頂角がそれぞれ約1°ずつ増えている感じです。大村さんもコメントされていましたけれども、単独でみても「三等分版とロック版の見分けがつかない」そうです。

 五角錐の内部で、フラップは図2のような位置になっているそうです。フラップは底面には接しないそうです。

図 2:大村版「ロックする五角錐」投影図



 大村さんからは、実際に試作された模型の写真もいただきました。横から見たところ(図3)と上から見下ろしたところ(図4)だそうです。

図 3:三等分版とロック版(大村さん作・撮影)

図 4:三等分版とロック版(大村さん作・撮影)

 すばらしいです。ありがとうございます。



 Kさんの「片側を折らない」という手法は、摩擦と弾力を利用した解で、美しいと思いました。大村さんの「フラップの頂角を最大化することで自動的にロックする」という手法は、全く別のアプローチで、これもたいへん美しい設計だと思いました。

 このような考察をお寄せいただいて、たいへん嬉しいです。本当にありがとうございました。

<おまけのひとこと>
 私が自分で大村さんと同様な考察ができたかというと、怪しいなあと思いました。折り紙の技術・経験と、数学の能力とスキル、数値計算の知識や技術を兼ね備えた大村さんならではのレポートだと思います。ありがとうございました。






3月18日(月) 大村版「ロックする五角錐」レポート公開

 一昨日・昨日と、尾道市の大村さんにいただいた「ロックする五角錐」のレポートの概要と写真をご紹介しました。このレポートを私が一人で見るだけなのはあまりにもったいないので、大村さんにお願いをして、公開をさせていただくことにしました。御快諾ありがとうございました。

正五角形から作る「ロックする五角錐」について

 大変面白いです。ご一読ください。



 カラー版 重ね地図で愉しむ 江戸東京「高低差」の秘密 (宝島社新書:竹内 正浩) という本を買ってきました。

図 1

 東京は坂が多く、「山の手」というのはその名の通り本当に起伏が多い地形だなあと思います。これは先日、出張で湯島に行ったとき、打合せが終わった後で御茶ノ水駅に向かって歩いている途中で撮った写真です(図2)。

図 2

 湯島のあたりも坂や階段が多くて、歩いていて楽しいです。先日の出張は10時に打合せの約束だったので、余裕をみて新宿に9:12到着予定の特急で行ったのです。これなら御茶ノ水には9時半には到着するので、少しは散歩できるかなと思っていました。ところが例によって中央線が遅れて、結局ぎりぎりになってしまいました。

<おまけのひとこと>
 今日は時間がなくて簡単な更新です。






3月19日(火) 『四次元の幾何学』他

 昨日は出張で東京に行きました。3月16日のダイヤ改正で特急「あずさ」が全席指定席になったのに伴って「あずさ回数券」が廃止となり、出張のJR券は「えきねっと」で事前に自己手配、後日精算に変わりました。以前の回数券では当日に1回だけ乗車する列車の変更ができましたが、「えきねっと」での手配だと、列車の変更はできません(乗車券のみ有効で、特急券から買い直し)。乗り遅れると嫌なので、余裕をもって帰りの指定を予約した結果、新宿駅で1時間半ほど時間ができてしまいました。以前なら1時間前の列車に変更してさっさと帰ったところでしたが、それができないので、久しぶりに東口の紀伊國屋書店に行きました。8階のDisc UnionでCDを、4階の理工学フロアで数学の本を買ってきました。



 数学の棚では、『四次元の幾何学―回転,積分,微分―』(島田義弘 著:2017年,プレアデス出版)という本を見つけて、喜んで買ってきました。

図 1

 著者の方の紹介がこちら、出版社の紹介がこちらの少し下のほうにあります。

 数学が専門の方向けではなく、数学が好きな高校生くらいが読むととても面白いのではないか、という内容です。この本を買おうと思ったのは、第2章 パラメータ表示と方程式が特に面白かったためです。第2章の各セクションはこんな感じです。

2.1 2〜4次元中の点
2.2 平面上の直線
2.3 平面中の平面
2.4 空間中の直線
2.5 空間中の平面
2.6 空間中の空間
2.7 四次元の外積
2.8 四次元空間中の直線
2.9 四次元空間中の平面
2.10 四次元空間中の立体
2.11 四次元中の超球殻

 わかりやすく整理されていて、とても面白いのです。もちろん、この本の面白さはここから先なのですが。良い本に巡り合えて幸せです。価格も良心的だと思います。

 ちなみに、この本を出しているプレアデス出版というのは勤務先のすぐ近くなのだということを知って驚いています。



 今回のJRのダイヤ改正で、車内販売が見直されているようです。駅構内やホームなどの買い物が便利になったため、車内販売の売り上げはピーク時からかなり減っているのだそうです。私は朝の特急で熱いコーヒーを買うのが好きで、わりとよく利用しています。今回も買いました。

図 2

 朝、駅から少し離れた無料の駐車場から歩く習慣なのですが、昨日はマイナス6度、3月中旬としては寒い朝でした。列車の中で熱いコーヒーを飲みながら本を読むのが楽しいです。

<おまけのひとこと>
 特急に乗車する場合は、駐車場を一日500円で利用できる「パーク&ライド」が使えて、会社の出張旅費精算で支払ってもらえるのですが、なんとなく遠い駐車場から歩いています。






3月20日(水) 『金星は地球に一番近い惑星ではない』

 Physics Todayという学術雑誌のサイトのVenus is not Earth’s closest neighbor(金星は地球に最も近い隣人ではない)という記事が話題になっています。たとえば地球にもっとも近い惑星は金星じゃなくて水星だったとか、地球に一番近い惑星は何?金星ではなく、水星かもしれないという説(米研究)とかに取り上げられています。もとのページを眺めてみました。

 惑星は太陽の周りを公転しています。水星・金星・地球・火星・木星・土星、ここまでが古代から知られている肉眼でも観測できる惑星で、その後近代になって発見された惑星が続きます。上記の順番はそれぞれの惑星の太陽からの平均距離(公転半径)が小さい順に並んでいて、普通、「地球に一番近い惑星は?」と問われると、「金星」と答えるのが常識だと思います。

 実際には惑星はそれぞれの公転周期で太陽の周りを巡っています。たとえば金星は、地球から見て太陽と同じ側(近い側)にあるときは三日月のように細長くて明るく見えますが(近すぎると新月のように暗くなりますが)、太陽の反対側に行くと丸くて小さく見えます。理科の教科書にこんな絵があったと思います。図はAstroArtsさんから引用させていただきました。

図 1(AstroArts:惑星より)

 Venus is not Earth’s closest neighbor(Tom Stockman, Gabriel Monroe, Samuel Cordner) では、2つの惑星の「距離」を従来のように公転半径の差、という定義ではなく、時間経過とともに動き回る惑星の各瞬間における距離の平均、と定義しています。図2aのように、公転半径r1とr2の2つの惑星を考えて、それぞれの瞬間における距離を考えます。外側の惑星を固定して考えると、可能性がある内側の惑星の相対位置は図2bのように変化すると考えられます。

図 2(Physics todayより)

 仮に「十分な時間の平均を取ると図2bの全ての相対位置の確率が等しい」とするならば(言い換えれば完全な円軌道を仮定し、内側の惑星の相対的な軌道上の位置の分布が一様であると仮定できるならば)、三角不等式から内側の惑星の公転半径が小さいほど平均距離が小さくなることは直感的にわかると思います。

 上記の論文では、そういう近似をするのではなくて、シミュレーションで1万年間の地球と水星の位置を計算して、その平均距離を求めています。地球の公転半径を1AU(1天文単位)としたとき、この計算方法では水星までの平均距離は1.04AUだけれども金星までの平均距離は1.14AUだったのだそうです。

 図2の考察の通り、この定義においては内側の惑星の公転半径が小さいほど1AUに近づくのは特に不思議だ、という感じはしませんでした。なので「それどころか、なんと土星や海王星はおろか、ほかのどの惑星にも一番近いのが水星なのだ」というのは、別に驚くべきことではないと思いました。

 もちろん、距離の定義をこのように変えると今までの常識とは異なる結論が出てきた、ということ自体はとても面白い考察だと思います。そこはとても感心しました。

<おまけのひとこと>
 たとえば自分が古代とか中世とかに生まれて、仮に運よく星の研究ができるような立場になることができたとして、何も予備知識なしで夜空を眺め続けて惑星の振る舞いを説明できるようになるだろうか、と考えると、どう考えても絶対無理だろうと思います。






3月21日(木) バッハのヴァイオリンソナタをフルートで(その1)

 先週末、3/16(土)、3/17(日)は大村さんの「ロックする五角錐」の話をご紹介しましたが、もともと週末の話題として用意していた、音楽の話を書きます。興味がない方、ごめんなさい。



 最近、モダンフルート(普通の金属製の、キーがたくさんついた銀色のフルート)を吹いています。バロックフルート(トラヴェルソ)ももちろん吹いていますが、モダンフルート、3オクターブ目がようやく使えるようになってきたのと、トラヴェルソにはない、最低音のCやC♯があることで、できる曲が広がるのが楽しいのです。

 モダンフルートは、東京で就職して3年になる娘が小学校のころから習っていたのですが、東京では演奏する機会がないようで、楽器がずっと自宅に置かれています。これを私が借りて、最近吹きまくっているのです。

 フルートで演奏できる良い曲はたくさんあります。でも、ピアノやヴァイオリンに比べると、フルートのために書かれたオリジナルの名曲というのは実はあまり多くなくて、バロック時代と近代フランスのもの以外は目ぼしいオリジナル曲が見当たらないのです。

 バロック時代のころから、ヴァイオリンの曲をフルートで演奏するということはよく行われていたようで、当時出版されていた楽譜にも、「フルートまたはオーボエまたはヴァイオリンのためのソナタ」などと表記されているものがたくさんあります。これは、そのほうが楽譜がたくさん売れるから、という事情もあったようです。

 バッハのヴァイオリンソナタ(無伴奏ではなくて鍵盤楽器と一緒に演奏するほう)をリコーダーで演奏できるように書き換えた楽譜を持っています(図1)。1985年ころに買ったものだと思います。

図 1

 バッハのヴァイオリンソナタ6曲のうち、4曲が収められています。いずれもリコーダーでの演奏を考慮して、少し高い調に移調されています。リコーダーは2オクターブ+1音の音域しかありませんが、ヴァイオリンは3オクターブ以上楽々出せる楽器なので、どうしても無理があります。

 この楽譜をモダンフルートで吹いてみると、リコーダーよりも音域が上下に余裕があるため、もともとのヴァイオリンソナタの音型で演奏できる部分が増えるのです。本来、やむを得ず1オクターブ上げていた部分を戻して演奏してみています(図2)。

図 2

 パート譜に「この区間は下げる」という印を書き込んでいます。どの部分を下げるのかは、原曲のヴァイオリンソナタの楽譜を見ながら確認しています。

図 3

 実はヴァイオリンを弾けないのに、なぜか楽譜だけは持っているのです。3曲ずつ、2冊になっています。私が持っている版は昭和48年(1973年)の初版、950円です。

図 4

 おそらく神保町の古賀書店で1985年ころに買ったのだと思います。定価は2冊で1,900円ですが、買値はそれより高かったかもしれません。昔は本や楽譜やレコードやCDなど、いつどこでどうして買ったのかをよく覚えていたのですが、最近はだいぶ忘れてしまいました。でも楽器は値段も高いですし、おいそれと新しく買えないので、いつどうやって買ったのかをよく覚えています。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 昨夜は、3月末で定年退職される方と転職される方の内輪の送別会があって、参加をしてきました。このお二人は、2010年4月1日付で私が社内で異動になったときに一緒に同じ職場に配属された方で、一緒に歓迎会をやっていただいたというご縁があった方々でした。その後、私がまだ管理職をやっていたころに私の職場に所属をされたりした時期もありました。

 このところ、お世話になった方、ご縁があった方、いろいろと頼りにしていた方が退職されたり転職されたりすることが増えてきました。






3月22日(金) 『金星は地球に一番近い惑星ではない』の近似計算

 一昨日のひとことでご紹介した、Venus is not Earth’s closest neighbor(金星は地球に最も近い隣人ではない)、という文献の結果を自分でも確かめてみたくなって、Excelで簡単にシミュレートしてみました。今日はその結果をご紹介します。



 地球から一番近い惑星を決めるときに、全ての時刻における惑星との距離の平均値を距離と定義すると、いわゆる「水・金・地・火・木・土…」の順番ではなく、一番内側の水星のほうが地球に近いという結論になる、という話でした。

 論文では、1万年間の各惑星の位置から距離を計算し、その平均値を求めていますが、ここでは以下のようにもっと簡略した近似をすることにします。

・各惑星は、太陽を中心とした等速円運動をしている
・地球から見て、円周軌道上の惑星の位置の分布は均等である

 実際にはケプラーの第1法則(楕円軌道の法則)で、軌道は円ではなく楕円ですし、同じくケプラーの第2法則(面積速度一定の法則)で、惑星は太陽に近い時のほうが速度が速いので、等速運動をしているわけではありません。でも、上記の近似なら、簡単に数値計算をしてみることができます。

 図1のように、基準となる惑星(地球)の位置を(1,0)という座標値で表し、太陽は原点(0,0)にあるものとします。距離の単位は天文単位(AU)だと思うとわかりやすいです(1AUは太陽と地球の平均距離です)。惑星の公転半径をrとして、半径rの円周をN等分したN個の点を考え、円周上のそれぞれの点と(1,0)との距離を計算して、その平均値を求めてみました。

図 1

 今回の実験では円周は1000等分することにしました。まあこんなもので十分でしょう。rの値は変えられるようにしておいて、rの値を0.1から0.9まで0.1刻みで変化させてみた時の結果が図2のグラフです。

図 2

 予想通り、rの値が大きくなるほど平均距離も大きくなっていっていることがわかります。

 次に、論文でのシミュレートの結果と、今回の粗い近似との比較をしてみましょう。論文はケプラーの法則を考慮した、より精度の高い近似、私のほうはものの10分もあればやってみることができるラフな近似です。

 具体的には、公開されている水星や金星の公転半径(AU)の数値を私のExcelシートに代入して、この近似計算だと平均距離がどうなるのかを試してみました(図3)。

図 3

 ご覧のように、有効数字3桁としてみると、同じ結果になっています。悪くない近似だと思います。いずれにせよ、こんな簡単な近似計算でも、この定義においては「水星のほうが金星より地球に近い」という結論を導き出すことができました。

<おまけのひとこと>
 自分でやってみると納得感、満足感があります。楽しいです。






3月23日(土) 3つの素数の問題(出題編)

 こんな問題を知りました。

 3人兄弟がいます。今年の3人のそれぞれの年齢はすべて素数です。さらに、3人のうちのどの二人の年齢差も素数になっています。3人の年齢を当ててください。

 これは良い問題だと思います。

(つづく)



 昨日(3/22(金))は東京に出張でした。すっかり春のような一日でした。朝6時半過ぎに、最寄り駅のホームでツバメが飛んでいるのを見ました。東京に近づくにつれて、車窓からいろいろな花が咲き始めているのが見えました。 朝10時からの打合せで、御茶ノ水駅から湯島まで歩いたのですが、汗ばむくらいでした。

 途中、見かけた桜の花の写真を撮ってみました。

図 1

 東京だと桜は卒業の季節なのですね。

<おまけのひとこと>
 天気が良くて、午前中の打合せが予定よりかなり早く終わったこともあって、すこし散歩をしたのです。そうしたら花粉症の症状がとてもひどくなって、持参したポケットティッシュ5パックを一日ですべて使い切りました。それでも行って良かったと思っています。






3月24日(日) 3つの素数の問題(解説編)、覆面算の問題

 昨日の3つの素数の問題の解説を書く前に、もう1つ、簡単な問題です。

図 1:覆面算

 3桁の数の足し算です。文字A、B、Cに入る数字は何でしょう?

(つづく)



 昨日、「3人兄弟がいます。今年の3人のそれぞれの年齢はすべて素数です。さらに、3人のうちのどの二人の年齢差も素数になっています。3人の年齢を当ててください。」という問題をご紹介しました。今日はその解説を書きます。

 素数というのは、小さいほうから順に 2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, … と続いています。2を除いて、すべての素数は奇数です。なので、2以外の2つの素数の差は必ず偶数になります。 この問題では、「どの二人の年齢の差も素数」だと言っているので、3つの数すべてが奇数ということはあり得ません。ということは、3つの数には「2」が必ず含まれるはずです。

 一人の年齢は2歳と確定したので、残りの二人の年齢を考えてみます。残りの二人の年齢を x, y (y < x)としましょう。どちらも奇数な素数のはずなので、差は偶数です。唯一許される偶数の素数は2なので、xとyの差は2しかあり得ません。つまり x=y+2 です。xとyは双子素数ということですね。

 次に「どの二人の年齢の差も素数」の条件から、「x歳-2歳」も素数、「y歳-2歳」も素数にならなければなりません。x-2=y なので、これは素数になっています。残った y-2 も素数になるというのはどういうことなのか、考えてみましょう。

 整理すると、小さい順に y-2、y、(x=)y+2 の3つの連続する奇数がすべて素数になっているということになります。一般に、連続する3つの奇数のうちの1つは必ず3の倍数になります。なので、一般に連続する3つの奇数がすべて素数になることはありません。唯一の例外が、“3, 5, 7”の3つの連続する奇数のときです。この場合のみ、3つとも素数になっている、つまり y=5 のときのみ条件を満たすのです。

 なので、この問題の答は「2歳、5歳、7歳」です。 たぶん、素数の小さいほうからあてずっぽうに検討していってもそんなに苦労せずに答に到達すると思いますが、ちゃんと考えると試行錯誤せずに理詰めで答が導き出せるところがいいなあと思ってご紹介した次第です。

<おまけのひとこと>
 昨日(3/23(土))は、春のお彼岸のお墓参りに行きました。花粉症がひどくて、くしゃみをしすぎて横隔膜のあたりが筋肉痛っぽい痛みが出始めました。困ったものです。






3月25日(月) ジグザグ立方体の実物を見た

 先週の金曜日の出張で、午前中に2時間確保してあった打合せの時間が半分で終わったので、お昼まで1時間ほど余裕ができました。湯島にいたので、不忍池を通って上野公園をちょっと散歩して行くことにしました。

 都美館(東京都美術館)の前を通ったら、菱形十二面体のようなかたちのオブジェが目に入りました(図1)。

図 1

 参考までに菱形十二面体というのはこんなかたちです(図2)。

図 2

 「これは!」と思って近くまで行ってみることにしました。近づいてみると、凸多面体ではないですし、面も菱形ではなく正方形のようです(図3)。

図 3

 ぐるっと一回りしてみました。あ、これは知っているかたちです(図4)。

図 4

 つい最近模型も作りました(再掲図)。

再掲図

 これはジグザグ立方体でした。都美館の前のオブジェには、タイトルや作者などの解説は何も掲示されていませんでした。ちょっと扱いが可哀想な気がしました。

<おまけのひとこと>
 図1の写真に視点が似ている菱形十二面体のCGを過去のページから探してみたのですが、良いものがみつからず、CGを新たに作ったりしていたら遅くなってしまいました。そろそろ5時です。急がないと…






3月26日(火) 都美館の野外オブジェ:三本の直方体B(堀内正和)

 東京都美術館の前にあったオブジェのご紹介の2つ目です。まずは写真を。

図 1 図 2

 こちらの東京都美術館の収蔵品のページに、作者と作品名、制作年が載っています。昨日の3つの立方体を連結したかたちは「三つの立方体A」という名前になっています。本日の写真の「三本の直方体B」と同じ堀内正和作で、制作年は2つとも1978年だそうです。栃木県立美術館のほうにある作品は1974年の制作と紹介されているので、都美館にあるものはその4年後に同じデザインのものを再度作られたということなのだと思います。

図 3

 この「三本の直方体B」も、CGを作ってみたりバリエーションを考えたりしてみたくなりました。

(つづく)



 昨日の夜は非常に疲れる会議があって、精神的に消耗して帰宅しました。 1フレーズごとに無理矢理転調するドドドの歌という動画を見て、大笑いしたら少しすっきりしました。声も技術も素晴らしいですね。これが声質が良くなかったり、ピッチが不正確だったりすると、単なる聞くに耐えない歌になってしまうところです。実に高度な芸だと思います。

三関健斗「1フレーズごとに無理矢理転調するドドドの歌」冒頭

 この曲、思い切りテンポを落として、ピアノ独奏でバラード風に演奏して、転調する部分をそれらしい和声進行で補完すると意外と面白い曲になったりしないかなあと思いました。今度やってみようかな。

<おまけのひとこと>
 昨日は外出先の事業所で18時から会議でした。1時間の予定が2時間かかってしまい、本来19時からの打合せの相手に1時間以上待ってもらってしまいました。

 外出先の事業所は会社でも最大規模で、構内に食堂も5か所くらいあります。昨日は遅くなることを覚悟して18時前に夕食のラーメンを食べたのですが、勤務先事業所では380円のラーメンがこちらでは230円なのです(税別)。中身は少なくとも値段の差ほどの違いはありません。羨ましい…






3月27日(水) 三本の直方体B(堀内正和)のCG(その1)

 昨日の「三本の直方体B」(堀内正和)のCGを作ってみました(図1)。gifアニメーションにしてみたのですが、ファイルサイズを抑えるため、画像の大きさが小さくてすみません。

図 1

 たぶんこのかたちを作るには、細長い四角柱3本を互いに直交するように接する配置にして、切り落とすのがわかりやすいと思いました。でも、パズルっぽく、こんな部品(図2)を組み合わせる、というアプローチをしてみました。

図 2

 適当に置いてもうまくいきません(図3)。

図 3

 どんなふうに配置したらいいでしょうか?

(つづく)

<おまけのひとこと>
 思いのほかCGを作るのに時間がかかってしまって、今朝は遅くなってしまいました。簡単な更新です。






3月28日(木) 三本の直方体B(堀内正和)のCG(その2)

 「三本の直方体B」(堀内正和)のCGを作るのに、思いのほか時間がかかってしまったという話を昨日書きました。四角柱を斜めに切り落としたかたちを組み合わせればできそうだ、というところまではすぐに思いついて、最初は適当に配置すればできるかな、と思ったのですが、意外と厄介だったのです。たぶん、実物を手に取ってやってみれば別に難しくなかったのだろうとは思うのですが…(言い訳)

 最初に失敗して、「これはちゃんと考えよう」と思って作ってみたのが図1です。交差する3本の柱を、赤い六角形の面で切り落とせばよいはずです。

図 1

 中央の部分は、昔ご紹介した立方体−(マイナス)小立方体2つのかたちになっています。

 これが、「互いに接する3本の四角柱」になっていることがわかりますか? このかたちは小立方体が6個、円環状に連結されていますが、隣接する2個ずつ3組に分ければ、それが「互いに接する3本の四角柱」になります。組み分けのしかたは2通りあって、右回りか左回りになります。

 図1だとよくわからないので、3本の直方体の色を変えて、アニメーションにしてみました(図2)。

図 2

 最後の状態だけ、大きな画像を載せておきます(図3)。

図 3

 これで3本の位置関係がわかったので、昨日ご紹介した部品である「斜めに切り落とした四角柱」に置き換えてみました(図4)。

図 4

 これも、小さなサイズのアニメーションファイルも作ってみました(図5)。

図 5

 こういう図を作っているととても楽しいです。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 昨日はたいへん風が強い一日でした。土ぼこりが舞い上がって山並みがかすんで見えました。これを書いている3/28(木)の早朝(4時くらい)も、外は強い風が吹いている音が聞こえてきます。






3月29日(金) 三本の直方体B(堀内正和)のCG(その3)

 昨日の「三本の直方体B」(堀内正和)のCGの話の続きです。基本部品の組み合わせ方がわかったので、それを2組作って合成しました。図1と図2を合わせると

図 1 図 2

 こうなります(図3)。

図 3

 3本の四角柱が互いに接しながら直交しているかたちです。斜めに切り落とした単位四角柱2つで長い四角柱が構成されています。

 2組の合わさる部分は正六角形なので、60度回転させてやってもぴったり合わさります。図4は、図1を回転させてみたものです。

図 4 図 2(再)

 この2つを合わせると、図5になります。これこそが「三本の直方体B」のかたちです。

図 5

図3と図5のかたちを交互に表示してみました(図6)。

図 6

 右回りの回転が見えたり、左回りの回転が見えたり、交互に行ったり来たりしているように見えたりして面白いです。

 さて、今回合成してみた二組は完全に合同なかたちでした。同じ部品(下図)3つで、鏡像体を作ることができます。

 片方を鏡像体にしたら、出来上がるかたちはどうなるでしょうか?

(つづく)



 信濃毎日新聞のサイトに、3月27日(水)の砂嵐の写真が掲載されていました。圧縮率を上げてサイズを小さくしたものを転載させていただきます(図7)。

図 7

 土ぼこりが舞って、数メートル先がよく見えないという恐ろしい状態です。霧とか雨とかであれば天候が回復すれば消えてなくなりますが、砂や土は勝手に消え去ってくれません。大変です。

<おまけのひとこと>
 2018年度も(稼働日としては)今日で終わりです。来週からの新年度では、いろいろと変化があります。昨日も新しく上司になる方と話をして、さっそく仕事が増えそうです。新しい上司といっても、もう数年前から一緒に仕事をしている方なので、別にやりにくいことはないと思っています。期待していただけるということはありがたいことです。






3月30日(土) 「三本の直方体」からの変化(その1)

 昨日までご紹介してきた「三本の直方体B」(堀内正和)の基本部品3つを組んだものを、片方だけ鏡像反転して組み合わせたらどうなるでしょう? という疑問が浮かんだのでさっそくやってみました。こんなかたちになりました(図1)。

図 1

 四角柱2つをL字型に組み合わせたものを3つ、互いに接するように配置したかたちになっています。

 3つのL字型をばらばらにしてみると、こうなっています(図2〜図4)。

図 2 図 3 図 4

 「なるほど」という感じです。これも、上下に分けると境界面は正六角形なので60度回転させることができます。そうするとどうなるでしょう?

(つづく)



 昨日(3/29)も東京に出張でした、最近は毎月何回か出張があります。春休みなので、子供連れで移動しているグループが近くの席になることもけっこうあります。子供にとって1〜2時間の列車の移動というのは、静かにしているのは大変だ、ということはよくわかります。昨日、通路をはさんで隣になった女の子の姉妹と思われる小学生の二人が、最初は普通におしゃべりしているくらいだったのですが、だんだん飽きてきて手遊び歌を始めました。興奮してきたせいもあるのでしょうけれども、トンネルが連続する区間でトンネルの騒音に負けないように大声で遊んでいて、ちょっと困りました。(同行していたのはお母さんとおばあさん?と思しき方でしたが、子供たちの後ろの席にいて、寝ているようでした。)

 私はいつも、そういうときの自衛のために古い携帯オーディオプレーヤーを持ち歩いているのですが、その音量をふだんよりかなり大きくしても子供たちの声に負けるのです。終点までこれだと疲れるなあと思っていたのですが、八王子で降りてくれてほっとしました。

 帰りの特急も混雑していて、途中までオーディオプレーヤーを聴いていたのですが、充電が切れてしまいました。ありがたいことに新しいE353系は各座席で電源が取れます。

図 5

 今回の座席は前に座席のない車両の先頭のシートだったため、図5の「一部の座席」ということで、ひじ掛けの下にコンセントがあるタイプでした。ダイレクトに電源プラグとUSBインタフェースが付いている小さなACアダプタを電源に挿して、そこに直接USBメモリ型の小さなオーディオプレーヤーを挿して充電しておきました。

 今思い返すと「下車するときに忘れないようにしないといけないな」と思ったかすかな記憶があるのですが、乗車前に八重洲ブックセンターで買ってきた折り紙の本と数学の本が面白くて、それを読んでいたら下車するときには充電中のオーディオプレーヤーのことはすっかり頭から消え去っていました。

 駅を出て駐車場まで歩いて車に乗ったときに、「しまった、忘れた!」と思い出しました。駅に電話しようと思ったのですが、今はJRの駅は電話番号を公開していないのですね。駅まで戻って、駅の窓口で車内に忘れ物をしてしまった旨を駅員さんに伝えました。(「JR東日本お問い合わせセンター(お忘れ物)」に連絡するのが正しいようです。)

 その時点で下車してから20分くらい経過していました。駅員さんは列車の現在位置をすばやく確認してくれて、「終着駅の1つ手前の駅を発車したところなので、無線で連絡します」と言って、私が伝えた座席番号と、忘れ物の内容を伝えてくれました。

 それから20分くらいして、「見つかったという連絡がありましたよ」と教えていただけました。迅速かつ丁寧に対応していただいて、とても感謝しています。終着駅に保管されているということなので、取りに行こうと思います。

<おまけのひとこと>
 『カレチ』という池田邦彦の鉄道マンガをちょっと思い出しました。






3月31日(日) バッハの鍵盤作品のポケットスコア

 月の最終日で日曜日の今日は、いつもの話題はお休みして音楽の話を書こうと思います。興味がない方、ごめんなさい。



 久しぶりにこんな楽譜を取り出してきて弾いてみました。

図 1

 これは、Belwin Mills という出版社の Kalmus Study Scores というシリーズの1冊で、バッハの鍵盤のための曲が集められているものです。ポケットスコアなので持ち歩くのは簡単ですが、楽器の前に置いて演奏するにはやや小さいです。これは昔、私の姉が新婚旅行でウィーンに行ったときにお土産に買って来てくれた何冊かの楽譜のうちの1冊です。検索してみると、こちらのアマゾンのサイトには中古品が出ていて、19.95ドル+送料3.78ドルという値付けがされていましたが、それ以外にはwebでは情報をみつけることができませんでした。

 こちらが目次です(図2)。

図 2

 曲目解説とかは一切なくて、このページの次からはいきなり楽譜が始まっています。曲のタイトルと調性だけが書かれていて、いわゆるBWV番号などの情報はありません。冒頭の2曲のトッカータは、いわゆるクラヴィーアのための7つのトッカータの最初の2曲(BWV 910とBWV 911)ですが、それからあとの曲は、聴いたことがある曲もある(と思う)のですが、いつ、どんな楽器のために、どんな目的で作曲されたものなのか、私にはよくわかりません。いくつかは“unfinished”(未完成)と書かれていて、曲の途中で楽譜は途切れています。

 おそらく、図1の表紙の画像に書かれている美しい手書きの書体の文字の最下段に 1731 という年号(と思われる数字)が書かれているので、それがこの楽譜の元になった資料なのだと思います。(imslpあたりでこの資料を探すと、いろいろな情報がわかるかもしれないと思いました。)

 当時の音楽家は職人であり、教会や王侯貴族に雇われて作曲し演奏することが職業であって、ベートーヴェン以降のように芸術家として作品を創造するというスタイルではなかったそうです。 もっとも、そういった雇い主からの依頼や指示で作曲する以外には全く曲を作らなかったかというと、そういうわけでもなさそうで、たとえば勉強や研究のためとか、子弟の教育のためとか、求職のために作品を献呈し実力をアピールするため、等の曲も残っています。

 図3は、目次の3曲目の“Fugue in a minor”(フーガ イ短調)と書かれた曲の冒頭です。目次では Fugue と書かれていますが、楽譜のタイトルは FUGA となっています。Fugueというのが英語表記で、Fugaというのはイタリア語だと思います。楽譜が一般に出版され始め、表記法が統一され始めたのが17世紀のバロック時代だと思うのですが、イタリアがその当時の音楽の先進国であったため、音楽用語はイタリア語で書かれるものが多いです。

図 3

 一段目にファンタジアと書かれており、2分音符の和音が続いています。大譜表の中央にアルペジオという表記があって、これは分散和音として適当に演奏しなさい、という指示です。

 2段目の冒頭にフーガと書かれており、この後楽譜の8ページにわたって延々と三声のフーガが展開されてゆきます。(三声なのでやや演奏が易しいです。) 最初はシャープやフラットのついていないイ短調から始まって、属調側(シャープが1つ増える、もしくはフラットが1つ減る)には2段階、下属調側(逆にシャープが1つ減る、もしくはフラットが1つ増える)にも2段階の転調をします。

図 4

 楽譜が小さいのでよくわからないと思いますが、3段目に第2声部が入ってくるところでシャープが1つ増えたホ短調になっています。(フーガでは基本的な作法です。)

 次の譜例(図5)はまた別の曲です。楽譜そのものの幾何学的な繰り返しパターンがとても美しいです。

図 5

 この楽譜のうち、二十数ページを鍵盤で音を出してみるのに1時間以上かかりましたが、とても楽しい時間でした。可能であれば演奏を目的としたサイズの楽譜が欲しいなあと思いました。拡大コピーをしてもいいのですけれども、コピーした楽譜はすぐどこかに散逸してしまうのです。製本したり、スケッチブックに貼ったり、クリアフォルダに入れたりしてみたこともあるのですが、演奏したり書き込みしたりするときに扱いにくいのです。

 こういう曲を弾いていると、オルガンも欲しいなあとか思ってしまいます。ローランドの古楽用の電子チェンバロのオルガン音源がいいらしいです。

<おまけのひとこと>
 図が png形式だったりjpg形式だったりしていますが、少しでもファイルサイズが小さくて、かつ少しでも見やすいようにと思って試行錯誤した結果のものを載せています。






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