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魅惑の渓谷鉄道へ 第5回

(02年11月の旅)

五ヶ瀬川沿いに

 三度列車を乗り継ぎ、ここで一気に延岡まで下る。やはり団体車両を2両連結しており、今度は幼児の遠足らしい団体が乗っていた。一般車両のほうは、そこそこの乗客がいたという程度だ。

 観光路線らしく、ところどころで減速し観光案内を始める。日向八戸の先にある八戸観音滝は、なかなか壮観であった。そのはるか上方には国道バイパスも走っている。バイパスからはこの滝を見ることができない。そのバイパスが川をまたぐ巨大な橋梁でも、そのつど案内をしてくれる。上から見下ろした光景と、下から見上げる光景の両方を楽しめて、本当にラッキーだった。

はるか上を走る国道

 この路線は、しばらく人口の閑散地を走っているだけあって、川沿いに時折集落が見られるくらいで、あとは山際を川に沿うように走る。ダムが何ヶ所かあるせいか、川幅は広くなったり、水量が減ったりしている。そんな閑散路線のせいか、途中駅もなかなか味のある無人駅が続いていく。日之影温泉の隣の吾味駅も雰囲気はいい。国道・槇峰大橋からの眺め

 なかでも、秘境駅の作者も絶賛しているのが亀ヶ崎駅である。これはちょうど、五ヶ瀬川の蛇行部分に沿うように駅が設けられており、車窓からだけでも眺めは素晴らしい。駅の先には干支大橋と呼ばれるバイパスの橋梁も見える。この駅がある北方町は、日本でただひとつ、集落名に十二支すべてが取り入れられているそうである。ちなみに同じ深い渓流沿いを走る飯田線にたとえるなら、この駅はさしずめ金野駅と同じようなロケーションといえるだろう。

 その北方町の中心部・川水流駅までやってくると、車窓は平凡なものになってくる。川沿いののどかな風景はそれなりに楽しめるわけであるが、ここまでがあまりにもすごい景観ばかりだったので、それでも平凡に思ってしまうのだ。加えて、バイパスも山から下ってきて、ほぼ鉄道と同じような場所を走っているので、往路と同じ風景を眺めることになったこともある。

 それにしても、この鉄道はのどかなものである。団体車両連結のため乗車している車掌は、ワンマン運転のせいかドアの開閉業務も、車内放送業務もしないため、ずいぶん暇そうである。ローカル線には、「常連」ともいうべき乗客がいるが、時々顔なじみの乗客を見つけては世間話をしている。なんとものんびりしたものだ。

難読駅・行縢(むかばき)

 延岡市内に入り、行縢(むかばき)という難読地名の駅を過ぎる。ここは行縢の滝や山歩きの拠点となっているところで、途中には「ひでじビール」という地ビールの工場もある。行縢渓谷の上質の水を使った小さなビール醸造所だそうで、銘柄もむささび、もぐら、きつね、いのししと、行縢山の生息動物の名を付けている。そんなわけで、当地の人にとっては「行縢」の名も難なく読めるのであろうが、よそから来た人でこの名を「むかばき」と読める人はまずいないだろう。

 高千穂鉄道の延岡駅に到着した。もともと旧国鉄だった高千穂鉄道であるが、旧国鉄時代も日豊本線への相互乗り入れをしていなかったらしく、今はJR延岡駅のかたわらにぽつんと一列のホームがあるのみである。しかも、いったん駅舎から駅前広場に出ないと、JRへの乗換はできない。したがって、改札口に駅員はおらず、ワンマンカーの運転士が車内清算業務をしてい た。

(この項おわり)

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