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山から里への列車旅 第5回

(01年11月の旅)

奥出雲おろち号

奥出雲おろち号と列車交換

  亀嵩(かめだけ)駅は、全国にその名をとどろかせる駅舎にそば屋が同居している駅である。委託業務の人が駅舎の有効利用を目的に始めたそうで、いろいろな旅行雑誌で紹介されている。「亀嵩駅長手打ちそば」のにぎにぎしい看板も掲げられており、ほかのローカル駅とは一味違う。そういえば、備後落合駅にも亀嵩駅の電話番号が張ってあった。電話予約すれば、列車までそばを届けてくれるというのは本当の話のようである。ただし、ロングシートのこの座席では、せっかく届けてもらってもうまくそばを食べられるのかどうか疑問である。ちなみに、この駅で途中下車してそばを食べるというのは、かなり綿密な計画が必要である。なにしろ閑散路線だけに、列車待ちが2時間、3時間というのはざらにあるからだ。

 次の出雲三成駅は、奥出雲おろち号との列車交換がある。私も車外に出て、撮影準備に入る。列車はトロッコ車両のほうから入線してきた。見ると、家族連れの乗車が多く、このあとループが見える側の座席はほぼ埋まっていた。今日は冷え込みが厳しいので、トロッコ車両はさぞかし寒いだろうと推察する。まあ、好きで乗っているので、多少の寒さぐらいは我慢できるのであろう。おろち号は、最後尾の機関車が押しながら駅を去っていった。帰りは機関車が引っ張っていくことになるわけだ。

 このあたり、山間からだんだんと下っているのがわかる。それと同時に、乗客の数も一駅ごとに増えていく。ここまでくると、生活路線の匂いもしてくる。そして、もうひとつの中心駅・木次に到着する。ここで10人ほどの乗降客の入れ替わりがあった。木次駅構内には車両基地もあり、この路線が木次線という名称になったことを裏付けているようにも思えた。

 駅に到着してまもなく、車掌から停車時間とトイレの案内放送があった。このワンマンカーにはトイレがついていないので、駅のトイレを利用してくださいという旨である。それなら、とばかりに、私はこの間を利用してトイレに駆け込んだ。このあとの日程を考えると、しばらくトイレに行く時間がないからである。

 木次を過ぎると、もはや山間の雰囲気は消え、のどかな農村のなかを列車が進んでいく。車内もかなりにぎやかになり、私の隣には化粧と身支度に余念のない女子高生が乗り込むほどである。あの備後落合を出たときの車内とはがらりと変わっている。もし、これが逆ルートであれば、だんだんと乗客が少なくなっていくところを目の当たりにするわけで、どちらがよかったかはもう一度、逆ルートで乗らないとわからない。

 出雲大東、加茂中と、各町の中心部をくねるように走りながら、乗客を乗せていく。列車交換があった加茂中駅では、ついに立つ乗客も出るほどで、通勤・通学の時間帯にはかなりの乗客があることが推測され、この列車をロングシートにしているわけもなんとなく理解できる。南宍道駅を過ぎて、いったん里山風に見えるあたりを通り、やがて宍道駅に到着した。ここまで約2時間半の列車旅を終えた。

(おわり)

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