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山から里への列車旅 第4回

(01年11月の旅)

ホームへ進入する列車

出雲坂根のスイッチバック

  まず列車はゆっくりと引込み線に入った。ポイント切り替え部分がスノーシェルターで覆われており、このあたりの雪深さを感じさせる。列車が止まり、運転手がスイッチバックであることを告げ、ブレーキハンドルを手に反対側の運転席へ車内を移動する。やがて引込み線から本線へと入り、さらに次の引込み線へと入っていく。その先に出雲坂根駅がある。出雲という名称のとおり、ここから島根県に入る。

 視界の先に10人ほどの人の姿が見える。「これはかなりの乗客数だな」と一瞬驚いた。だが、これらの人たちは列車が駅に到着しても列車に乗り込もうという感じはない。どうやらお目当てはこの駅のもうひとつの名物だったようである。

乗客以外?の人でにぎわう出雲坂根駅

 出雲坂根駅は「スイッチバックと延命水のある駅」という愛称を持つ。先ほど見えた人たちはこの延命水をくんだり、飲んだりするため、車でこの駅にやってきた人たちだったのである。観光客のなかに、ポリタンクを手にした人も目立った。肝心の乗客のほうは、おばさんが一人乗り込んだだけであった。ここで数分の停車時間があり、先ほど後部の運転席に移動した運転手がゆっくりと前方の運転席へと移動する。無人駅から乗った人たちのほとんどが、この間運転手から切符を購入していた。

 列車は出雲坂根駅を出発する。ここからの風景はさほど代わり映えのない里山と谷の連続である。あまりにも出雲坂根までの車窓が素晴らしすぎたので、なんだか単調に思えてしまったが、これが逆から乗ってくれば、ちょうどどんどん雰囲気が山に近づいてると感じられていいのかもしれない。

 八川駅に到着。乗降客ゼロ。ただし、この駅では駅舎を利用して朝市が行われていた。どうせ乗る人も、降りる人もいない駅なので、駅舎の利用は自由自在のようである。朝市の売り子が、改札口を行ったり来たりしている。なかなかのどかないい光景だ。

 次の出雲横田駅は、木次駅とともに中心駅のひとつである。下車、乗車客ともにあった。それから列車交換も行われた。時刻表を見ても該当列車が見当たらなかったが、それもそのはず臨時列車だった。団体客が乗っていたようだ。同じ閑散路線でありながら、観光を明確に意図している木次線と、そうでない三江線。あるいは近い将来、明暗を分けてしまうかもしれない。

(つづく)
さらに里へと下ります