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山から里への列車旅 第2回

(01年11月の旅)

待合室内

木次線の始発・備後落合駅その2

  さて、今度は駅の外を歩いてみる。駅前の道路沿いには数軒の民家があり、そのうちのいくつかの家は今も人が住んでいるようだ。驚いたことにタクシーの営業所まであったが、もちろんタクシーの姿はない。たぶん、電話で呼ぶとさっきの備後西城駅近くの営業所からとんでくるのであろう。それから、駅入り口に一軒の旅館があった。雑貨屋を兼ねているようだが、旅館としての営業をしているのかどうかは定かではない。

 川の橋を渡ると国道に出る。道路反対側にも民家があるが、こちらにも廃屋になっている家もあるようだ。そのほかは、ほとんど集落らしい感じはしない。いろいろな条件によって、たまたまこの地がターミナル駅に選ばれただけといったところか。

 待合室やホームにいると、時々地元の住民がこの駅を訪れる。そのつど、乗客かなと思うのだが、どうやらそうではないらしい。車を駅入り口につけたおばさんは、待合室に入ったと思ったら、すぐに出てきた。時刻表を確かめてきたみたいだった。また、私が待合室で駅ノートを読んでいると、近所のおじさんらしき人が入ってきた。乗客かと思いきや、このおじさんは駅の便所を使って、すぐに出て行った。それにしても、リュックをロッカーに入れておいてよかった。どうせ誰も来ないだろうと、待合室に置きっぱなししておいたら、不審物と間違われそうだったからだ。

駅ノート

 さて、駅ノートである。「雑記帳 持ち出し厳禁」と書かれたボール紙製の壁備え付けノート入れの中にあった。持ち出し厳禁を強調していたのは、以前ノートが誰かに持っていかれた苦い経験があったようだからだ。読んでみると、ほとんどは途中下車というより、列車の待ち時間にすることがなくて記載しているようであった。私のように他の交通手段(徒歩、自転車含む)を使ってわざわざ駅を訪れたという人は少ないみたいだ。そのあたりは、飯田線の小和田、田本、金野などといった駅とはちょっと違う。駅そのものより、ローカル線を乗ってきた終着駅・乗換駅がここだった、というムードを楽しむ人が結構多いようである。むろん、私も一筆したためてきた。

 それにしても、強烈に寒い。私はいつの旅行でも「諏訪より寒いところは、北海道以外にない」との考えから、だいたい一枚薄着でやってくる。ところが、この駅周辺は山で日がさえぎられており、なかなか太陽の恩恵を受けられない。ようやく屋根に日が当たり、屋根の霜が解けて水蒸気がたつ頃、お目当ての列車がやってくる時間が近づく。駅の外では出迎えの車も来て、列車の到着を待っているようだ。さらに、木次線のホームにいる私の前を学生風の女性、さらに男性が芸備線ホームへと足早に過ぎ去っていく。細々とはいえ、やっと駅の体裁が整っていく。

 そして、9時19分。木次線がやってくる。乗客はたった一人。それに対し、乗務員が運転手含めて三人。これがローカル線の現状であろう。その2分後、今度は芸備線がやってくる。こちらも乗客はたった一人だった。私は乗務員らが下車するのと入れ替わりに木次線のワンマンカーへ乗り込んだ。

(つづく)
たった一人の乗客を乗せて出発