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西鹿児島行はやぶさ号に乗る 第4回

(97年11月の旅)

素晴らしい車窓を眺めて

  八代まではほとんど海は見えなかったが、八代を過ぎたころから段々と車窓に海が飛び込んでくるようになった。これからが最盛期の鈴なりのミカン畑を通過し、町場を越えると一気に広がる八代湾。海は少し濁っていたものの、今回の旅行で初めて見る海の風景に思わず歓声を上げてしまったほどだ。けれど、まだまだこんなもんではない。

 鹿児島本線は、まさに八代から先が車窓の美しい路線であった。線路は時折、海岸線すれすれを走っていく。車窓からの眺めは、この路線の花形特急・つばめでも同じに見えるであろうが、わざわざ夜通しかけてやってきた「はやぶさ」に乗っているからこそ、旅の情緒というのがわくのである。

出水平野

 水俣を過ぎると、いよいよ鹿児島県に入る。私にとって何度となく中断を余儀なくされてきたあこがれの地・鹿児島に足を踏みいれるのである。その鹿児島県の入り口が、あの豪雨災害の土砂崩れ現場となった出水市だ。私は反対側の窓からその現場を探してみた。それは探すまでもなく、青い山肌をグッサリえぐり取ったようすから一目瞭然だった。自然災害の恐ろしさを垣間見た瞬間でもあった。

 気を取り直して、再び車窓に目を向ける。ここ出水市はツルが舞い降りる場所としても有名で、ちょうど今の時期から冬にかけてたくさんのツルがやってくる。時間があれば寄ってみたかったけれど、今回は目的が違うので通過する。車窓にチラリと田んぼの中にたたずむ白い影が見えた。もしかするとツルだったかもしれないが、定かではない。

東シナ海

 阿久根を過ぎると、いよいよ東シナ海が目の前に広がってきた。さきほどの八代湾と違って青々と澄んだまさしく南国の海そのものである。今日は雲ひとつない快晴だったこともあり、その海の青さはいちだんと引き締まって見えた。この光景を見れただけでも、今回「はやぶさ」に乗ってよかったと思った。

 川内の手前、薩摩高城という駅で上りの「はやぶさ」号との待ち合わせがあった。こちらが上り列車を待つという形で、上り「はやぶさ」は私の目の前をアッという間に過ぎ去っていった。今晩ひと晩かけて東京まで向かうのである。この駅にも鉄道マニアが何人かいて、「はやぶさ」の交換風景を写真に撮っていた。言うまでもなく、この光景も11月いっぱいで見られなくなってしまうからだ。

(つづく)
終点の西鹿児島に到着します